東方変違原   作:左三文

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登場人物一覧
橙/化け猫
河城にとり/河童
レリーブル/本の妖精
リブラン/花の妖精
セメン/石の妖精
アネモネ/風の妖精
レンズロー/水の妖精
サーフィスウォーター/水の妖精
リップルアクア/水の妖精
フルードヴァッサー/水の妖精


第四話 遭遇

「うーん、うーん」

 裏の森、その森の中心部に位置する一際大きい木の上で、唸る猫が一匹。

 彼女の名前は橙。八雲紫の式の式。つまり、八雲藍の式神である彼女は、木の上で胡座をかき、腕を組んで考え込んでいた。

(藍様の命でこの森に来たけれど、うーむ、何も手がかりがない)

 藍に命じられ、異変の調査に乗り出して早三日。未だにどんな異変が起こっているのかも分からない。

(うー、どうせならもっと大っぴらに異変を起こしてほしいんだけど)

 橙の願いとは裏腹に、森の中は平穏そのもの。藍に命じられなければ、橙が来る事もないぐらいに、森の中は平然としていた。

「いつまで人の家の上で唸っているのかしら」

 突然、橙の背後から声がする。橙が後ろを振り返ると、そこには空中に仁王立ちした妖精が立っていた。

「あんた誰?」

 橙は怪訝な顔で目の前の妖精に言う。そんな橙の言い様に鼻を鳴らすと、妖精は腕を組んで話し出した。

「人に名前を聞く時は自分から名乗るべきではなくって? まあ良いでしょう、私の名前は……」

「やーと見つけたー! お前が橙だなー!」

 名乗ろうとした妖精の言葉を遮り、新たな妖精が橙の前に現れる。

 胸を張り、自信満々なその妖精は、橙を見るとふふんと笑った。

「誰? そこの妖精の知り合い?」

「んー? そこの妖精ー?」

 橙は、自己紹介を邪魔されて固まっている妖精を指差す。

「おー! これはこれは! アネモネじゃないかー!」

「五月蝿いわ、この阿保」

「おー! アネモネはご機嫌斜めだなー!」

「あなたの所為でね!」

 わははーと妖精が笑うと、アネモネは呆れた顔でため息を吐いた。

 アネモネのその様子から、笑っている妖精とアネモネは旧知の仲であると伺える。そんな二人のやり取りを眺める橙は、怠そうに口を開く。

「……で、結局誰よあんた?」

「ん? おお橙! 名乗るのはまだ早いからちょっと待ってほしいぞー!」

「いやいや何でよ」

 面倒な、そう橙が思っている間に、元気一杯なその妖精は後に振り返ると、大声で橙がいる事を誰かに伝える。

「おーい! 橙はここにいるぞー!」

「ちょっ、いきなり何を言って」

 橙の困惑をよそに、ぞろぞろと妖精が現れる。その妖精の中にはレリーブルとリブランも含まれていた。

「え~と、透き通る水底の水~」

 現れた妖精の一人が、気怠げに橙の前に出て言う。

「レンズ・ロー」

 そう気怠げに言うと、前に出た妖精はポーズを決める。

「日の光を反射する、映す水面の水」

 今度は違う妖精が不適な態度で言う。

「サーフィス・ウォーター!」

 レンズと同じように、サーフィスもポーズを決める。

「絶え間無く揺れ動く、広がる波紋の水」

 同じくもう一人の妖精が笑顔を浮かべながら言う。

「リップル・アクア!」

 そう言うとリップルは、サーフィスの反対側でポーズを決める。そして最後に残った妖精が三人の真ん中に入ると、不適な笑みを浮かべながら口を開く。

「そして、雨から地に集水する、溜まる湖の水」

 真ん中でポーズを決めると、ドヤ顔を浮かべる。

「フルード・ヴァッサー!」

『我ら霧の湖より生まれし水の四妖精!』

 四人の妖精がポーズを決めながら、声を合わせて言った。まるで効果音でもつきそうなその登場に橙は呆気にとられ、口を開いて呆然とする。

「私の名前はレリーブル、本の妖精だ」

「私の名前はリブラン! 花の妖精ですよー! よろしくー!」

 そんなポーズを決めている妖精の横から、レリーブルとリブランが顔を出して自己紹介をする。しかし水の四妖精のインパクトが強すぎて、橙は反応を返す事が出来なかった。

(なんだか、面倒な事に巻き込まれた)

 そう思い橙は、小さくため息を吐いた。

 

少女困惑中……。

 

「セメン、また来たのかい?」

「もちろん、掘り出し物一杯持ってきたから、沢山買い取ってよにとり」

「まあ、程々に買わせてもらうよ」

 妖怪の山の中、玄武の沢に位置する河童のアジトの一つ、河城にとりの自宅にて、一人の妖精が河童に商談を持ちかけていた。

「セメンが売る鉄は安くて純度も良いから、正直買い占めたいんだけど、買い占めると他の河童達から文句を言われるからね~」

「最初は誰も買い取ってくれなかったけどね」

「まあ妖精が売る物だと、皆期待しないからね」

「そう言う割には、にとりは買い取ってくれたよね?」

「皆からたらい回しにされて可哀想だったからね、それに安かったし」

 にとりは照れ顔を浮かべると、笑いながら頬を掻いた。そんなにとりを見てセメンは笑みを浮かべる。セメンにとってこの商売はただの暇潰しでしかなかったが、気が付くと暇潰しから日課に変わっていた。

「そういえばさっきから気になってたんだけど、そのつるはしはなんだい? なんだか薄く光ってるみたいだけど」

 にとりの指先は、セメンが手にしているつるはしに向けられている。そのつるはしは薄く白色に光っていた。

 セメンは最初、何の事だか分からなかったが、少ししてから思い出す。

「霧雨魔理沙って人に頼んで、つるはしに魔法をかけてもらったんだよ」

「へぇ、一体どんな魔法をかけてもらったんだい?」

「つるはしを軽くする魔法」

 そう言うとセメンは、軽くつるはしを振る。つるはしを片手で振るセメンを見て、成る程とにとりは納得した。

「そうだ、話は変わるんだけどさ。 ワティを見なかった? 会う約束をしてたんだけど来てなくてさ」

「ワティ? ああ、あの無口な妖精の事かい? 悪いけど見てないね」

「そっか……うーん、裏の森にまだいるのかな? まあいいや、それじゃあばいばいにとり」

「ああ、それじゃあねセメン。 ワティを見かけたらセメンが探してたって伝えとくよ」

 ありがとーと言い残すと、セメンは他の河童の元に向かっていった。そんなセメンを見送りながら、にとりはふと思った。

「……妖精といえば、最近妖精を見ない様な気がするな?」

 まあ、気のせいだろうとにとりは呟くと、買った鉄を、自分の工房に持っていった。

 

少女製作中……。

 

 レリーブルが橙に遭遇する数十分前、レリーブルとリブランは四人の妖精と遭遇していた。その四人の妖精の内一人が、前に出て来て自己紹介を始める。

 以下略。

『我ら霧の湖より生まれし水の四妖精!』

 ポーズを決める四人を見て、レリーブルは丁度良いと思った。

 水の四妖精の一人、リップル・アクア。彼女の能力は橙を探すのに最適である。とはいえ、橙が裏の森にいる事が前提条件ではあるが、レリーブルはそう考えると、妖怪の山を眺める。

 進めど進めど一向につかない。森から出られない。ならばそれは、橙も同じではないのだろうかと、レリーブルは考える。

(……あくまでも予想だが……)

 レリーブルはそう結論づけると、ポーズを決めている水の四妖精に話かける。

「やあやあ、霧の湖で活動している君達が裏の森にいるなんて、もしかしてまたフラメに戦いを挑もうとしていたのかい?」

「そうだぞー!」

 レリーブルの言葉に、リップルは元気一杯に返事をする。

「まぁ~負けたんだけどね~」

 リップルに続いて、レンズが気怠げに言う。

「朝早くから奇襲をかけたのに、負けるなんてありえないわ!」

 不満を露にしたサーフィスが、空中で地団駄を踏む。

「負けたんで大人しく霧の湖に帰ろうとしてるんだけど、何でか帰れなくてさ」

 腕を組んだフルードが、レリーブルに愚痴を溢す。そこまで聞いてレリーブルは、彼女達もまた、裏の森に閉じ込められたのだと理解する。

(やはりこれは異変、裏の森から出られなくなる異変? 何だか地味な異変だな)

 考え込むレリーブルの横で、リブランはリップルに話しかける。

「リップル久しぶりですねー!」

「おー! リブラン! 久しぶりだなー!」

 元気一杯なリップルを見て、リブランは笑顔を浮かべる。

「そうだ思い出した! リップルにお願いしたい事があるんですよー!」

「おー! 何だ何だ! お手伝いかー!」

 リブランは考え込んで動かないレリーブルから、幻想郷縁起をとると、六十二ページを開いてリップルに見せる。リップルはおーと言いながらそのページに書いてある事を読み上げる。

「『凶兆の黒猫、橙』……何だーこれはー!」

「この橙って妖怪を探すのを手伝ってほしいんですよーお願いできますか?」

「うーん! 任せろー!」

 リップルはどんと胸を叩くと、自らの能力を使用する。

 リップルの能力は、相手との距離を知る程度の能力。一見するとスター・サファイアの動く物の気配を探る程度の能力と相通ずる能力ではあるが、その実リップルとスターの能力は似て非なるものである。

 スターの能力が、自らを中心として円上に能力を展開するのに対して、リップルの能力は、自分と相手を線で繋ぎ、そうして相手との距離を知るのがリップルの能力である。

 スターが団体に効果がある能力ならば、リップルは個人に効果を発揮する能力なのである。

 また、スターの能力とは違い、リップルの能力には一つ条件がある。その条件は相手の姿を知る事である。姿を知るなら何でも良く、写真やイラスト、もしくは口頭による説明でも可。ただし口頭では違う相手との距離を知る等良く失敗する事がある。だからこそリブランは、手っ取り早く幻想郷縁起のイラストを見せたのだ。

 リップルが能力を発動してから数分後、リップルはとある方向を指差すと、こっちだーと言って飛んでいった。

 リブランはリップルが飛んでいった方向を確認すると、レリーブルに伝えようと振り返る。

「進んでも進んでも帰れないなんて、本当に腹が立つわ!」

「レリーブル、どうやったら帰れるか教えてくれ」

「分からん、寧ろ私が教えてほしい」

「む~、開け~ごま~……む~」

 サーフィスは腹を立てると、妖怪の山に向かって文句を言い、フルードとレリーブルは脱出について話し合い、レンズに至っては何をしてるのか分からない。そんな和気藹々とした光景を見たリブランは、笑みを浮かべると、全員に伝わるよう大声で言った。

「リップルが橙を見つけましたよー! こっちですからついてきてくださいねー!」

 そう言い終わるとリブランはリップルの方向に飛んでいく。後で慌てる妖精達の喧騒を聴きながら。





種族:化け猫
能力:妖術を扱う程度の能力
二つ名:凶兆の黒猫
河城にとり
種族:河童
能力:水を操る程度の能力
二つ名:超妖怪弾頭
レリーブル
種族:妖精
能力:本を生み出す程度の能力
二つ名:永遠の本棚
リブラン
種族:妖精
能力:汚れを落とす程度能力
二つ名:汚れ無き花妖精
アネモネ
種族:妖精
能力:風を送る程度の能力
二つ名:ささやかな微風
セメン
種族:妖精
能力:石を磨く程度の能力
二つ名:気紛れな石妖精
フルードヴァッサー
種族:妖精
能力:水を集める程度の能力
二つ名:浮遊する集水
サーフィスウォーター
種族:妖精
能力:姿を被せる程度の能力
二つ名:水面に映る虚像
リップルアクア
種族:妖精
能力:相手との距離を知る程度の能力
二つ名:緩やかに広がる波紋
レンズロー
種族:妖精
能力:透ける程度の能力
二つ名:自由奔放な水妖精
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