「てことで話を纏めると、人間の脳から出る信号を神臓がキャッチ、神臓はキャッチされた信号をもとに能力を発現させると言う事になる。ただしこの神臓がどのようにして超自然的な現象を発現させるのかはよくわかってない。」
転校初日から数日が経過し段々と学校生活と言うものに慣れてきた。この学校は一般的な学校で行われる教科に能力に関する授業を加えた専門学校の高等科のような体制を取っている。今の授業はサージェスト基礎、能力の概要や発現のしかた等を勉強する。担当者は我らが担任菅沢圭司、普段の不良教師っぷりが180度反転飛び級でここの高等課程を卒業しこの学園の教職に就いたとも噂されるその実力を遺憾なく発揮している。
「まぁ研究にでも携わらないなら小難しい用語はパスして簡単に覚えちまえばいい、どうせ使う機会なんてねぇしな。さてちょっと寄り道して豆知識だ、能力は一人に付き発現する能力は一つだが例外的に二つ以上能力を持つ人間がいる、わかる奴いるか?じゃあ、二階堂・・・は寝てんのかポンコツだな、じゃあ飯塚」
先生は積極的に生徒を指名していくスタイルの授業のようで雑学もふんだんに盛り込んでくる。隣でスヤスヤと気持ち良さそうに寝ている翔を冷たい目で一瞥して更に前の飯塚楓さん(確か
「はい、えーと固有の能力ではなく多数の超自然現象を一つの能力として発現させる所謂魔法使いと言われる人たちっすか?」
「その通りよく勉強してるな、まぁ正解は半分だな補足するならもうひとパターン人間がいる。実際に確認されたことは今のところないが多重能力者とか言われているな、基本的な能力発生経路は同じだが二つ以上の力が扱える。この多重能力者の存在を否定する研究者も多いが私的にはいると思っている、存在を示唆した文献もいくつかある。」
多重能力者・・・確かに魔法使いではないが複数の能力を扱う人間は文献上存在しているのだが実際に確認はされていないし存在すると言う確固たる研究結果もない。が俺は多重能力者を一人知っている、彼女は美しく聡明で誰よりも誇り高く義を貫く人だった、俺たちの標的そしてかつての育て親・・・
「彩月さん・・・」
「おーい颯天聞いてるか?」
「え?は、はい」
突然の呼びかけに声が上擦ってしまった、恥ずかしいなぁ。どうやら菅沢先生が声を掛けたようで不思議そうに俺の顔を覗いている
「いや普段真面目に授業聞いてるお前が授業終わったのに窓の外見てボケェっとしてるからよ、ちゃんと私の聞いてたか?試験に落ちても知らんぞ」
幸いノートは取っていたので大丈夫ですとだけ言っておいた。
「ならいいんだが。あぁそうだ他の奴にも言ったが校外に飯食いに行くなら気を付けろよ?通り魔事件が多発してるからな」
あぁ確かボスからそんな話は聞いたな。菅沢先生はそれだけ言うとさっさと行ってしまった。
「おーい颯天飯行くか?」
今度は翔か、さっきまでグウスカ寝てたのに飯の時には起きるんだな。因みにこの学園規模がデカいだけあって食堂が複数存在するしチェーン店や喫茶店も敷地内にあるうえに届け出を出せば校外にも昼食を取りに行ける。
「そうするか、今日はどこ行くかな」
「お、いたいた。翔ビックニュースだ!」
どこの食堂に行くかを悩んでいた時、がたいの良い連中が集まってきた。なんかすげぇ暑苦しい・・・確か野球部、水泳部、ラグビー部、空手部、サッカー部だったか?
「お、どうしたお前ら」
「いや、第二食堂の隣に元この学園の歴史学講師がやってるラーメン屋があるんだけどよ、歴史のクイズに三問答えたらラーメン特盛とから揚げ丼付けてくれるらしいだがやたらと問題が難しいんだ。そこで翔の出番ってことで呼びに来たんだ」
「なぁそれって一人で答えて全員分無料になるのか?」
盛り上がってるところに水を差すようだが思わず突っ込んでしまった。
「あ!そっかぁ・・・まぁなんとかなるだろ」
「成程・・・行くしかないな!紀元前から最近の時事までどんな問題でも答えてやるよ!って事ですまん颯天いいか?」
「あ、あぁ行ってこい俺はそんなに食えん」
「よしそうと決まれば行くぞ!もちろんお前ら替え玉は頼むよな?」
暑苦しい連中はワイワイと余計に暑苦しくなって去っていった。てか特盛食べた後に替え玉頼んでから揚げ丼食うのか・・・しかしおかげで今日の昼食は一人になってしまった。どこに行こうかを再び悩んでいた時に携帯が鳴った。この携帯は隊員の連絡用?俺は校舎を出て人いないところに移動した
「はい、こちらクラーケン6」
「お、クラーケン6か丁度いいや、俺だジズだ」
ジズ、俺や翔が所属する実際に現場に出て犯罪者や標的と交戦する部隊のトップで管理者になったばかりの頃の上官でもある、普段はずぼらな人だが確かな実力を持っている。
「お久しぶりです上官。何かあったんですか?」
「おいおい上官はやめてくれよ俺だってもうそんな大層なもんじゃないって、今やお前ら若い奴の方が上官みたいなもんだろ。まぁ本題に戻るが、俺は今別件で安桜市にいるんだが標的であるクレーエを繁華街で見つけた。お前らが追ってるんだろう?」
クレーエ!やはりこの街にいたか
「繁華街の裏路地に入っていくのまでは追えたんだがそこで見失った。近くに潜伏先があるのかもな、座標を送っておくから引き続き頑張れよ俺たち年寄りがサボれるようにな!」
ありがとうございますと言って携帯を切る。ついに教授に追い付いた、今度こそあの時集落を捨てすべてを焼き払った理由を問い詰めてやる。
「・・・取り敢えず飯食わなきゃな」
しかし通信を他の生徒に聞かれないためとは言え随分端の方に来てしまった。この辺に飲食店か食堂あるかな
「ん?喫茶店カメリア・・・こんな校舎の端っこに喫茶店があるもんなのか。ここでいいか」
こんな隅にも喫茶店があるのも不思議なものだが入ってみれば隠れた名店かもしれないし。扉を押すとカランカランと扉に付けられた鐘が音を立てる。席はカウンター席のみの小さなものだが、多種多様な植物にあえて汚したり壊れたように配置されたアンティーク品や壁と退廃的だがどこか幻想的な雰囲気すらある店内。壁の防音材が気になるけど悪くないなこういうお店
「はーいいらっしゃい。カウンター席しかないけどいいかな?」
奥から一人の女性が顔を出す。歳は俺と大して変わらないように見える、今どきの服装にすらっとした足は不自由なようで杖を突いている。まずは席に座ろうかな
「お客さん初めましてだね、私は
「初めまして今月からこの学園に転入した2年B組の九鬼 颯天です。」
「転入生君かあ。どうりで学園内でも見た事ないわけだ。今2年って事は私の三つ下かな?後輩君だぁ」
どうやら芽亜先輩は二年前に学園を卒業してそのままこの場所で喫茶店を開いたらしい。色々面白い話も聞けそうだから取り敢えずパスタと紅茶を頼んだ
「芽亜先輩はどうして進学や企業に行かずに喫茶店を?」
「んーまぁ私は在学中はやんちゃだったからね、それにここで他の生徒の悩みを聞きながらアドバイスしてそれでその人の気持ちがスッキリしてくれればこっちも頑張ったなって実感わくじゃない」
「とてもやんちゃしてたようには見えないですけど・・・でもその気持ちとてもカッコいいです」
「あはは、とか言ってあんまりお客さん来ないんだけどね。ほいできたよ」
出てきたパスタはアサリやイカ、エビなどが入った所謂ペスカトーレで綺麗な盛り付けのそれはレストランで出てくる品のようでとても美味しそうだ。
「すげぇ・・・」
「そんなにすごい物じゃないって、紅茶はアッサムだよん」
一口食べても同じような感想しか出てこない、それ程美味しい
「あはは、そんなにガッツかなくってもいいって気に入ってもらえたなら嬉しいけどさ」
無心でパスタにガッツいているとカランカランと鐘がなった。お客さんかな?
「あ、いらっしゃい。お客さんいるけどいつものとこ座りなよ」
「そうするよ芽亜姉」
ん?この声どこかで・・・横を向くと見覚えのある着崩した制服、ところどこに見える応急処置の跡、向こうも俺の顔に覚えがあるようであからさまに嫌な顔をしている。
「颯天・・・こんなところで何やってんだ」
「よう、奏元気か?」
櫻井 奏、転入初日に喧嘩を吹っかけて来た不良生徒、俺と大野朝陽両名にボコられたがそれなりの実力とタフネスさは認めるよ
「あれ二人とも知り合い?あ、そうか二人ともB組か。ん?って事は奏あんた喧嘩したの颯天君でしょ」
奏は、ばつが悪いようで言葉を詰まらせた後そうだよとだけ答えた。芽亜先輩の前だと随分大人しいんだな
「奏ぁあんたはねぇ、他の生徒に突っかかるのは止めなさいっていつも言ってるでしょ?」
「けどよぉ芽亜姉・・・」
「言い訳無用!」
芽亜先輩に小突かれ小さくなる奏。すげぇなあの奏を抑え込んでる、その時三度扉の鐘が鳴る
「いらっしゃ・・・あら井上さんお久しぶりね今お茶出すから少し待っててもらえます?」
入ってきた四十代程の男はスーツ姿で一見教師のようにも見えるが眼鏡の奥の切れ目はただただ冷たくその雰囲気も一般人とは違う。この男中々強いな、いくつもの修羅場を潜り抜けて来た精強さが伺える。
「お久しぶりですね芽亜さん、手短に済ませますのでどうぞお気遣いなく。それでどうです?我々ピュニーアとして仕事をする件考えてくれましたか?」
ピュニーアか、俺たち管理者と同じく能力犯罪者の鎮圧を生業にする組織。その筋では結構な老舗で実力も高いと聞く。
「オイ、芽亜姉はその件何度も断ってるんだろ?しつこいってよ」
お、奏が噛みついたな。さっき小突かれて大人しくなったのにこいつもこいつだな
「奏か。私は芽亜さんとの交渉中だ口を挟まないでくれるかな?そこの学生君も同じくね。君達じゃ力が足りていない」
ピュニーアは実力者を厳選して組織としている、時には強引な手を使っても隊員を集めてるらしい。奏は何も言い返せずに男を睨んでいる。まぁそいつ強いけど気にすることは無いと思うぞ奏、大野組長よりは弱いし。俺の正体に気が付けない時点である程度の察しが付く。うん紅茶が旨い
「ごめんなさいね井上さん、私はまだまだこの店でやることがあるの。私の実力を認めてくれてるのはありがたく思うわ」
でもねっと一旦言葉を切った芽亜先輩の狂気じみた笑顔と空気を震わせるような殺気にカップを落としそうになる。こりゃまたとんでもない殺気・・・これがやんちゃしてたってレベルか?
「私の大事な弟分の奏、それに今日初めて会ったけど後輩君を無意味に貶めるのなら私だって容赦はないわよ?」
ピュニーアの男も額に汗を浮かべ口ごもってしまう。当然だこれ程の殺気、今まで戦ってきた能力者ですら中々いないぞ、それこそ四方を戦車に囲まれたような気さえしてくる。
「血の雨を降らせる聖女、その実力は健在か・・・しかし芽亜さんあなたの実力は力なき者の為にも必要なのですよ」
「わかっているわ井上さん、でも私はまだこの店で仕事をしていたいの、それに今私は杖を突かないと歩くのもままならない身体よ?そんなのが組織にいたとしても足手まといになるだけでしょ?」
ここまで言われてしまえばあの男も何も言い返せないようでうつむいて汗をぬぐっている。
「さぁこの話はこれでお終い。井上さんも何か食べて行って、ささやかなお詫びよ」
「あ、あぁそれじゃコーヒーとトーストを頼む」
「かしこまりました!それじゃ気分ぶち上げるから曲かけるわよ?」
俺とピュニーアの男は首を傾げ奏は何かを察したような顔で耳を塞ぐ。芽亜先輩がスイッチを入れた瞬間に店内に重く強烈なバスドラムの音が流れ始める。防音材はハードコアを流すためか!うっ腹に響く・・・
「ってわけで校舎の端っこにある喫茶店中々よかったぞ、料理も美味いし」
午後の授業を終え寮に帰ってきた俺たちはいつもの通りどちらかの部屋に固まる、今日は俺の部屋だ。
「へぇ颯天がそこまで言うほどの店か、今度俺も行ってみるかな。んでその芽亜さんとやら何者なんだ?」
「わからん、ただとんでもない実力者って事だけは想像が付く・・・そう言えば聖女とか言われてたな」
「ん?それって血の雨を降らせる聖女ってやつか?」
「あぁそれだそれだ、何か知ってるのか?」
うーんと少し考えたのちに翔はゆっくりと口を開いた。
「今日一緒に飯食った連中に空手部の奴がいたんだが、そいつの兄貴がここの卒業生らしくてな、なんでも3~4年前そいつの兄貴が一年生の頃の話だ。当時学校内で名実共に最強と言われていた三年生の灼陽と霊月つまり朝陽と輝夜だな、その二人に喧嘩売ろうなんて奴は当然ながらいなかったわけだ。だがそれ以上に恐れられていた女子生徒が血の雨を降らせる聖女と呼ばれてたって話だ。」
「あの二人以上にか・・・にわかには信じられん話だがな」
「それだけじゃねぇ噂によると・・・」
翔が何かを言いかけたその時、ピピピっと呼び出し音が流れる。アレ?、また隊員の連絡用携帯だ珍しいな一日に二回もかかってくるなんてしかもテレビ通話だ
「はい、クラーケン6です。」
「おうクラーケン度々悪いなジスだ」
画面の向こうにはよく知った女性の顔が
「お、上官じゃねえっすかお久しぶりっすメイデンB1っす」
翔が身を乗り出して画面に手を振る。
「おう、メイデンもいたのか久し振りだな。丁度いい仕事の話だ」
仕事、そう聞いた途端に翔の顔から笑顔が消える俺もおそらく似たような顔をしているんだろう。
「ふふっ良い顔つきじゃねぇかよ。内容をそちらに送る確認してくれ」
部屋にある受信機から内容の書かれた紙が送られてくる。因みにうちらの組織は紙媒体で情報を伝えることが多い。確かに燃やしてしまえば情報は洩れないし便利と言えば便利だがもっとほかの手段があると思うんだけどなぁ・・・んで肝心の内容の方はっと
・依頼人 ジズ
・依頼内容 安桜市及び学園周辺で発生した通り魔事件の解決
・条件 実行者の捕縛または粛清
「折角同じ地域にいるんだ明日は休みだろう?詳しい内容は会って話そうじゃないか。09:00に駅にて落ち合おう通信終わり。」
「だそうだ翔。この学園に来て初めての依頼だ準備でもしとこうや」
俺は任務用の服や武器等が入ったバックをベッドの下から取り出す。翔はすでに黙々と武器の整備、分解を始めている。
「そういやさっきの噂ってのは結局何なんだ?」
「ん、あぁその芽亜ってのは喧嘩で数々の男達を血祭りに上げ噂が間違いじゃなければ在学中に一人殺っちまってるってだけの話だ・・・」
仕事モードの翔が言った言葉に開いた口が塞がらない、あの芽亜先輩が・・・?
元号が変わって一発目。本当はGW中に上げようと思っていたのにあれよあれよと言う間にもう5月も半ば、思いついたネタが上書きされ忘れていく毎日・・・
今回も誤字脱字やアドバイス等をよろしくお願いいたします。