Kroneなヤツらのソード・ワールド 作:霧子のエビの天ぷら
プロデューサー(以下、P):……志希。
一ノ瀬志希(以下、志希):なーにー?
P:暑い。引っ付くな。
志希:えーいいじゃんいいじゃん。
P:いろいろと仕事に集中できん。
志希:あててんのよ。……いや仕事って言ってもこれあれでしょ。半分以上TRPG関連じゃん。
P:リプレイ方面でも売り込んでみようかとな。それで、今日はどうしたんだ? 何か相談か?
志希:次のSWのシナリオって考えてある?
P:……まあだいたいな。多少の調整はまだ残ってるが。
志希:じゃあさ、その次なんだけど……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
P:おはよう。今日は雨だがみんなよく集まってくれたな。
塩見周子(以下、周子):前々から決まってたことやし、ルールブックⅡも出たしそろそろやろうなって思ってたよ。
P(以下、GM):待たせてしまって申し訳ない。早速だが成長報告をお願いするよ。まずは志希から。
志希:はーい。なんか前回途中で死んじゃったシキちゃんでーす。そんなシキちゃんの能力値成長は生命力と精神力が+1、知力が+2されて少しはまともになったよ。まあもともとちょっと突かれたら死んでしまいそうな耐久力だったんだけど。技能としてはソーサラーLv9、コンジャラーLv5、セージLv8になって、特技は《魔法拡大/数》と《魔法拡大/すべて》を習得、自動習得は追加で《弱点看破》が生えてきたから弱点無事に抜けたら結構ダメージ出るようになるよ。攻撃方法は【ファイアーボール】ぐらいだったのが【エネルギージャベリン】を新しく追加されたから多少はマシになるかな? もしかしたら何も変わらないかもしれないけど。それ以外の買い物に関しては装飾品でマナリング買ってダメージ+1、A級の金マテリアルカードを12枚まで買い足して、魔晶石5点分を4つ、魔香水を3つほど買い足しておいたよ。
GM:なるほど。《魔法拡大》はまあ鉄板だよな。穢れの影響もどうやら出なかったみたいだし今後は活躍できたらいいな。
志希:にゃはは、できればその辺はGMで用意してくれるとありがたいかなって思うな。
GM:活躍できるか否かは志希しだいだろうに。でも全く活躍できないようにするなんてことはないからそこは心配しなくていいよ。次はフレデリカ。
フレデリカ:はいはーい。前回いろいろあったけど今日もアタシは元気です、リリィちゃんだよ~。能力値成長はなんと驚き全部精神力、おかげで精神力のボーナスが3になって精神力は21まで上がって、プリースト技能をLv10、アルケミストをLv7、フェアリーテイマーを新規で取得してLv3まで上昇させたよ。選択は土、水・氷、風、光の4属性の予定。戦闘特技としては《カード軽減》を取って、アルケミスト技能で新規取得した【アーマーラスト】を使用しやすくしてより前衛組のダメージが出やすくなったかな。名誉点をお支払いして獲得できたのはグレートソード級までだったなぁ……シキちゃんとちょっと離されちゃった。もっと頑張らないとなぁ。新しく買ったものは耳に華美なる宝石飾りを買って先に宝石6個揃えて、おしゃれ靴を買って専用化してMPを増やして、マテリアルカードもちょっと増やしたよ。そしてそして、ついに! S級マテリアルカードを赤と白の1枚ずつだけだけど手を出してみたのだ!
GM:かなりアルケミストに寄った成長方針だな。前回のあれが結構響いたのか?
フレデリカ:うーん、そういうワケじゃないんだけど……【アーマーラスト】で防護点下げられるのは強いけど黒2枚の消費は重くてね。それに今後のアルケミスト技能で追加する予定の物は全部複数枚のマテリアルカードが要求されるから、余裕がある今のうちにとっておこうと思って。
GM:……獲得名誉点も結構たまったしそろそろかな。
フレデリカ:何が?
GM:シナリオ始まったら郵便物が届くだろうとだけは言っておくよ。次は、ミカ。
美嘉:前回なし崩し的にナイトメアだってバラしちゃったけど大丈夫なのかなぁ……と不安いっぱいのミカだよ。能力値成長は敏捷度が1、筋力が3。これで筋力の合計値は23になったから、必要筋力12までの物なら装備できるよね。……金属鎧までがすっごく遠い。技能面はフェンサーを10、スカウトを9まで上げて残りの経験点でエンハンサーを3まで上げたよ。取ってきた特技は《変幻自在Ⅰ》、練技として【キャッツアイ】【ガゼルフット】【マッスルベアー】を持ってきて、もっと前線で活躍できるようになったかな? アイテム面は聖剣を専用化して命中判定時器用度+2、装飾品として《勇者の証:技》を持ってきたから成長方面のサポートもして、ヒーリングポーション+1を5本、研磨のやすりを1個、魔晶石3点分を10個買い足して、ある程度はマシになった……らいいなぁ。
GM:やっぱり来たかエンハンサー。
美嘉:そりゃそうでしょ。命中も回避も筋力ボーナスも上がる上に消費MP3は取らないほうが損だと思うよ。
GM:だよなぁ……しかし研磨のやすりか。どんな効果だったっけ?
美嘉:使用に10分必要、使用した日の間追加ダメージ1点。3回消費でなくなる消耗品だよ。
GM:ダメージ出す役としては悪くない一品か。それ両方の武器に使うんだろ? オープニングの段階で使ったってことにしておいてくれ。
美嘉:ありがと。あー、これオープニングどうしよっかなぁ。
GM:大丈夫だって、仲間を信じろ。次は周子。
周子:はーい。ついにマモレナカッタ……をしてしまったシューコちゃんやで~。さすがにボス戦は何とかなったとはいえ道中で死人を出してしまったのは壁役失格かな……ちょっと精神的にキテる。能力値成長は器用度1、敏捷度2、生命力1で19-15-19-26-13-7になったね。技能のほうはファイター10、レンジャー8、エンハンサー1、コンジャラー1、戦闘特技は超頑強を取得、練技には【ビートルスキン】を選択して、アイテム方面は魔香草が合計で25本、救命草が12本、ヒーリングポーション+1を20本、トリートポーションが7本、アウェイクポーションが2本に魔香水が5個。これでもう大丈夫やと思うな、少なくとも今回は。HPは特技と専用化アイテムのおかげで103点まで伸びたわ。
GM:お前は一体何ラウンド戦うことを想定してるんだっつの。しかしそこまで行くと回復が追い付かないような……?
周子:そればっかりはもうどうしようもないなぁ……少なくとも今のところは。今回のセッションが終わったらそれなりに楽になるんやけど。《かばうⅡ》だけじゃなくて《ガーディアンⅡ》も書き換え取得できたから何とかするしかないんじゃない?
GM:《ポーションマスター》が解決策には……ならんだろうな。なってその場しのぎだろう。
フレデリカ:あー、それに関しては解決できるかも。アタシが次に《ダブルキャスト》取ってくればちょっと弱くなるけど回復魔法2回打てるようになるから、それで多少はラクになると思うな。
GM:……たしかに《ダブルキャスト》には発動魔法のレベル制限こそあれど、発動魔法の内容にまで制限があるわけじゃないしな。条件が多少厳しいところはあるが、いい特技だと思う。半分であり威力-10っていうのがどこまで響くか次第だが。
周子:あー、そりゃありがたいなぁ。前回のセッションでもなんだかんだ言って回復量追いつけてなかった……というかそもそも耐えられなかったんだけど。
GM:そればっかりはHPを伸ばさないことには仕方のないことだろう。前回は頭数を減らせなかったって言うのもあるが……。それをとやかく言っても仕方あるまいて。ラスト、奏よろしくな。
奏:なんだか言いようのない不安感が頭の中にあるわね……大丈夫なのかしら、今回のセッション? できる限りのことをするしかないのだけど……。まぁいいわ。フランベルジュ級の冒険者、《瑠璃色のチューリップ》の“冷酷な狙撃手”ことカナデよ。能力値成長は器用、敏捷、筋力、生命力がそれぞれ1ずつ伸びて24-25-14-11-13-15ね。技能方面はシューター10、スカウト9、マギテック2、コンジャラー1、エンハンサー2取得して戦闘特技は《射手の体術》、自動取得とか練技は《ファストアクション》、《影走り》、《キャッツアイ》、《マッスルベアー》。装飾品は魔法の発動体と勇者の証:技、マギスフィア小を1つ買って、ルールブックExに載ってるマギスフィアの加工をしたいのだけど……大丈夫かしら?
GM:マギスフィアの加工……【ターゲットサイト】のMP軽減か?
奏:ええ。2.5のルールブックには掲載されていないルールだけど、大丈夫かなって。
GM:……許可しよう。ところでそこまでやるってことは、今後はマギシュー方向にシフトしていくのか?
奏:それも考えたけど、やっぱり弓メインで行こうと思うわ。マギテックは《ターゲットサイト》と練技で使うMPの確保のためだし今後も無理のない範囲で伸ばしていこうっていうぐらいだし……ある程度自身でできること増やしていきたいから、今後はアルケミストの技能も視野に入れてなんとか伸ばしていこうかと思うわ。
GM:お前もアルケミストかよ。
奏:そうよ、悪い?
GM:いや、全然。PCを強くしようという心意気は歓迎するぞ。しかしそうなるとこれは……。
奏:何か言った?
GM:……なに、こっちの話だ。皆の成長を確認したところで、今回のセッションに入ろう。よろしく頼むぞ。
LiPPS:よろしくお願いします!
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
シキ:……。
ミカ:……。
カナデ:……。
シューコ:(うっわ空気おっも……)
リリィ:ねーねーみんなどうしたの、お葬式みたいな顔しちゃって。飼ってたペットが古池に飛び込んでばっちゃーん?
シューコ:絶妙にわかりにくいようなわかりやすいような……。
シキ:カナデちゃんもミカちゃんも、せっかくあたしが無事にふっかーっつってしたんだから、もうちょっと喜んでほしいなぁ。
ミカ:いや、その……。
カナデ:ミカはともかくわたしはシキが死ぬ原因を作ったようなものなんだけど……?
シキ:? 別にあたしは気にしてないよ。冒険者になった時から覚悟はできてたし。それにそのぐらいスリリングな方が楽しくて退屈しなくて済むしね~。
カナデ:……そう言ってくれるとありがたいわね。少し気が楽になったわ。
シキ:それでミカちゃんはなんでへこんでるのかにゃ~?
ミカ:えっと、その……。
シキ:ひょっとして、自分がナイトメアだってこと、気にしてる? あたしは直接見てないけど、ばれちゃったとか。
ミカ:!? な、なんで……?
シキ:随分前から知ってたよ。知ってたし、隠そうとしてるのもわかってた。そのニット帽も角を隠すためでしょ? まあ仕方ないよね、ナイトメアだと拒否されたりパーティー解消されたりするかもしれないからそれが怖かったんでしょ? まー、なんでそこまでして冒険者になりたいのかは聞かないけどさ。ちょっとぐらい信用して欲しいな。
ミカ:……ごめん。ありがと。
シキ:にゃはは、謝るのか礼を言うのかどっちなのさ。
シューコ:ま、アタシにはよくわからん感覚やし別にどうでもええな。前にもう一人いるだけでも結構楽しいもんやし。なーなー、今日はなんか依頼来てへんの?
GM:……忘れてた。
周子:おい。
GM:そっちじゃねえよ。生活費だ。誰か一人2d6振ってくれ。
志希:それじゃーあたしが。……1-4で5。
GM:5か。それじゃ5日分の生活費を徴収する。それぞれ思うままの額を払ってくれ。
シキ:30G×5日分+買い食い→250G 残り1327G
リリィ:30G×5日分+買い食い→250G 残り225G
ミカ:20G×5日分+寄付金→300G 残り3187G
シューコ:10G(従業員割引)×5日分→50G 残り1435G
カナデ:20G×5日分→100G 残り1199G
GM:概ね予想通りだが……買い食い?
志希:せっかく復活したんだからその分でお祝いしよーって。
フレデリカ:イエスシキの復活祭だー。
GM:おう新興宗教やめーや。 それで、ミカの寄付ってのは?
美嘉:あれ、ダメだった?
GM:そんなことはないさ。ただ、急にどうしたんだろうなと思ってな。
美嘉:……前回のあれでシキが死んじゃったから、無事に生き返ってきますようにっていうのと、帰ってきたから神様ありがとうってことで。
GM:ふむ……神殿はどこにする?
美嘉:うーん……悩むところだけどライフォスにしようかな。
GM:妥当なところだな。では続きをしよう。
ローヘリオン:依頼、依頼なぁ……ちょっと待ってろ、何かそれっぽいものがないか探してくる。
GM:そう言ってローヘリオンは店の奥に引っ込んでいったな。今はクリップボードに貼られているものは、それこそ駆け出しの冒険者に投げるようなものばかりだから君たちに投げるには不十分だろう。レベル的にも、名誉点的にも。
シキ:ふわぁ……。さすがにあれから何もやってないからタイクツ~。
リリィ:そだねー、トランプでもする? ババ抜きとか。
シキ:お、いいね。やるやるー。
GM:ヒマつぶしのためにババ抜きを始めてだいたい手番が2巡して、そろそろ誰かが上がりそうかなって時になってスーツを着たルーンフォークの青年がやってきた。
青年A:こんにちはー。……《瑠璃色のチューリップ》のリリィ・フレディさんはいらっしゃいますか?
シキ:リリィちゃん、なんか呼ばれてるよ?
リリィ:あれ、なんだろ? ちょっと行ってくるね。
GM:青年が、リリィが外に出てくるのを確認すると、立ち話もなんだからお仲間と一緒のテーブルに座らせてもらってもよいかとの提案をされるぞ。
フレデリカ:……? なんだろ、まあいいよね?
奏:いいんじゃないかしら。何も爆弾を持ってくるわけじゃないんだろうし。
GM:協力的なPLでありがたいことこの上ないよ。テーブルに着くと彼は持っていたトランクケースを中央に置いた。
青年A:私はRD社の者なのですが、この度、リリィ様がアルケミストとしての活躍が目覚ましく、わが社の耳にもその後活躍数々が届くようになりました。そして、今後も目覚ましい活躍を続けていただきたいと願っております。
リリィ:フンフンフフーン、任せておきたまえ助手くん!
青年A:ありがたきお言葉。そこでですね、わがRD社との業務提携……というよりわが社で現在開発中の新製品、それのテストをお願いしたいのです。
GM:そう言ってルーンフォークの青年は黒いトランクケースをゆっくり開けた。中には白銀に輝く見たことのない形状のブツが入っていた。……さて、フレデリカさんや。君にこれをあげよう。
・アロンダイト・プロトディスク カテゴリ:装飾品 装備部位:左手、右手、腰、その他 製造時期:現代 売却:不可
「クイックタクティクス」補助動作で賦術を使用する場合、複数の対象に行使できるようになる。
「アルケミーサポート」アルケミスト技能を用いて判定するすべての判定に+1の修正を加える。
【説明】
現代で作られた次世代型アルケミーキットの試作品。希少金属アロンダイトを惜しみなく使った特別製で、賦術の性能をさらに引き出す。
フレデリカ:ほほう! これなーに?
GM:俺からのプレゼントだ。ぜひ受け取ってほしい。
青年A:こちらがわが社で作った次世代型アルケミーキット、その試作品である“アロンダイト・プロトディスク”です。試作品でありながらも現在流通している既製品とは比較にならないほどの性能を引き出すことができます。また、耐久性もわが社独自のストレステストにも合格しており、戦場においても問題なくその性能を発揮できることでしょう。
ミカ:へ~、そりゃ凄いじゃん。
カナデ:それで、リリィはどうするの? もらっとく?
リリィ:もちろん! こんな楽しそうなの手離したくないし。
青年A:それでは決まりですね。本製品ですが使用の際のデータは自動的に本社にデータが転送されます。そのデータを用いて改良を加え、完成品として出来上がった暁には今回お渡しいたします製品と引き換え、ということにさせていただきます。では、私はこれで失礼いたします。
GM:そう言ってルーンフォークの青年は会釈をして去っていったぞ。残されたのは白銀のアルケミーキットだけだな。
フレデリカ:ふふん、もちろん装備するよ。今持ってるやつは……捨てちゃお。ポイっと。
リリィ:えへへ、似合うかな?
シューコ:おー、ええやんええやん。かっこいいで。
シキ:ふんふん、これは今後の活躍にも期待しているよ、助手くん!
リリィ:了解しました、博士!
ローヘリオン:おう、見つかったぞ……ってどうした、それ?
シューコ:なんか企業とタイアップ? するんやって。
ローヘリオン:なんだそりゃ?
リリィ:んー、お話はだいたいよくわからなかったけどなんだかいいものくれたから利用してみようかなって。
ローヘリオン:お、おう……気を付けてな。それはそれとして、依頼あったぞ。ここ数日ごたごたしてたから忘れてたけど、高名な貴族様から直接名指しの依頼だ。
ミカ:……高名な、貴族ぅ?
Mission5 砂漠の王者
依頼主:リィク・バルティック=ウィンダー
依頼目標:キングガイアサンドスカイホエールの討伐
報酬:12000G/人+消耗品1000G分
我がハーヴェス王国を主導としてブルライト地方を縦断する鉄道の計画が持ち上がっているのは知っているね? グランゼール経由ユーシズ魔導公国行は問題なく着工できたようだが、ラージャハ帝国方面で問題があって工事がかなり遅れているんだ。君たちには国家プロジェクトでもあるこの工事の障害を排除してほしい。対象に関する詳しいデータ、作戦は直接会って話をしたい。
この依頼は当ウィンダー家以外にも多くの王侯貴族が注目している大事な作戦となる。成功の暁には、君たちの名声は今まで以上に広く広がるだろう。
シキ:チェンジで。
ミカ:えっ。
シキ:いやーダメでしょこれは。地雷臭がすごいっていうか……だまされて背中からぐさーってされそう。
ローヘリオン:……何があったんだよ……。少なくとも、今の段階ではこれ以外の依頼でお前たち向けの物はないぞ?
シキ:そうは言われても……。
カナデ:……受けます。
ミカ:カナデ……?
カナデ:ごめんなさい、みんなを下らない私情に巻き込んでしまったわね。……私もいいい加減、向き合おうかと思って。
シューコ:最近なんか元気ないなと思ったんやけど……そんなこと考えとったんやな。
カナデ:ミカも、なし崩し的とはいえみんなと向き合おうとしてくれた。それなら、それなら私も前を向くのが筋ってものじゃないかしら。
シキ:……あー、もうわかったって。今後も冒険者であるために、カナデちゃんがカナデちゃんであるために必要なんでしょ?
リリィ:多分そうだと思うよ。自分の身を守れるのは自分だけ、今までは守るための力を付けていたに過ぎないんだよ。でも今ならきっと大丈夫。アタシもいるし、神様もきっと見ててくれるよ。
カナデ:ということですので……よろしくお願いします。
ローヘリオン:……いいんだな?
カナデ:はい。もう決めたことですから。
ローヘリオン:わかった。先方にはこっちから連絡を取るから、この依頼を任せるぞ。
カナデ:はい。……行ってきます。
ローヘリオン:気を付けてな。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ハーヴェス王国の高級住宅街。主に高名な貴族や政治家、あるいは何かしらの理由で財を成した者が住まう豪邸が立ち並び、その治安は高いレベルで保たれている。相互監視社会で成り立つこの静かな町に、彼女たちはやってきた。依頼を成すために、あるいは、過去と向き合うために。
GM:門の前まで来るとたまたま庭掃除をしていた執事が応対してくれるぞ。
執事A:……おや、いかがなさいましたか?
ミカ:あ、私たち依頼を受けてここまで……。
カナデ:お兄様からの依頼を受けてきたの。通してくれない?
執事A:これはこれは、おかえりなさいませお嬢様。なるほど、たしかにその件は伺っております。中で応対いたしますので、どうぞおあがりください。
GM:門戸は開かれたな。さて、どうする?
美嘉:どうするもこうするも、入るしかないでしょ。
志希:鬼が出るか蛇が出るか……くわばらくわばら。
フレデリカ:豚バラ豚バラ。
GM:なんだ、今日は鍋か?
周子:……お腹すいてきたなぁ。
中に入るとまた別の家政婦に案内され、大きな一室に通された。
家政婦A:……どうぞ、こちらでお待ちくださいませ。
カナデ:……懐かしいわね。
家政婦A:そうですね、お嬢様が家を出てからの8年間、当家の内装は特に変わっておりませんので。なんでしたらお嬢様の秘蔵写真を収めたアルバムをお持ちしましょうか? ご友人様方と交流を深めるいい機会だと思いますが。
シキ:え、なにそれ気になる。
リリィ:気になりすぎて森になっちゃいそう。
カナデ:やめて。あなたも、変なネタ提供しないで頂戴。
家政婦A:お嬢様がいつも通りで安心しました。もうそろそろ若旦那様が起こしになられる頃だと思いますので、どうぞお好きな席にお座りくださいませ。
GM:ほどなくして君たちが2個前のセッションのエンディングで会ったあの青年がやってくるぞ。従者も何人か引き連れて何とも神妙な面持ちをしているな。
リィク:皆さん、お待たせして申し訳ない。事が事だけに少し早めに出していたのだが、こうも素早くそちら側が受けてくれるとは思わなかったので少し準備に時間がかかってしまった。
カナデ:いえ、こちらも今来たところですので。
リィク:曲がりなりにも血のつながった妹にそう他人行儀にされると傷つくものだな……。では、説明を頼むよ。あぁ、君は飲み物を持ってきてくれ。少し長くなる。
家政婦B:若旦那様、では……。
リィク:……これもまた、フォルトゥナコード、ということだろう。
家政婦B:……かしこまりました。
カナデ:……は?
リィク:こちらの話だ。では、説明を頼むよ。
家政婦A:かしこまりました。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
家政婦A:皆様、まずは手始めにこちらの映像をご確認ください。マナカメラを用いて撮影した、およそ10年前の映像になります。
そこには、広大な砂漠が広がっていた。どこまでも続いていそうな、澄んだ青空。そこに移る、一艘の船。巨大なそれは、甲板に多くの人を乗せ砂漠を海のように泳いでいく。その、一見して観光用のプロモーションビデオともとれるような映像は、わずか10秒で絶望に満ち溢れた戦場へと変わった。
ミカ:なに……これ……?
家政婦A:これは今から10年ほど前、現在のハーヴェス・ラハージャ間の鉄道網を引くことが決定した際に出港した安全調査船団から送られてきた映像です。この映像を最後に、撮影したと思われる船からの一切の連絡が途絶えました。その後、今回の事態を引き起こしたと考えられる生物の討伐隊を編成、辛くもそれを打ち倒すことに成功しています。それが、今から8年前の出来事です。
シューコ:ふーん。でもそんなに前のことをなんで今更?
家政婦A:本題はここからです。次の映像は、今からちょうど2週間ほど前の映像です。
そこに移っていたのは、鉄道の建設現場。少しの地響きとともに、倒されたといっていた巨大な生物が再び姿を現し、そしてすべてを蹂躙していった。歩く災害、そう呼ぶのがふさわしい惨状だった。
ミカ:あれ、さっきの話じゃあいつ倒されたんじゃ?
リィク:確かに、10年前に出現した個体は出現から2年後に倒されている。その遺体はライフォス神殿の神官長による儀礼を行った後に剝製にされ、現在では国営の鉄道博物館に展示されているよ。今でも確認できるから間違いないだろう。それから導き出される結論は……。
カナデ:……8年前の者とは、別個体。
リィク:そうだ。出現はたまたまか、それとも巣が近くにあるからなのかは現在調査中だがこいつがいるのでは鉄道整備事業に大幅な遅れが出てしまう。多少政治的な判断になるが、我々としては一刻も早い事態の解決を望んでいる。そこで、君たちにはやつの撃破を依頼したい。頼めるだろうか。
ミカ:受けてくれるだろうかって……。
シューコ:受ける気がなきゃ最初からここには来てないわな。
志希:GM、魔物知識判定。
GM:お、きたか。映像から確認できたのは上半身と顔だけだったのでデータは一部だけの公開だ。
フレデリカ:あ、それじゃあB級【エンサイクロペディア】使っておくね。
シキ:(3,6)+1+14→24 データ/弱点看破成功
GM:うお、弱点まで抜いていったか。それはさておきデータ公開だ。
キングガイアサンドスカイホエールLv14
知能:高い 知覚:五感 言語:なし 反応:敵対的 分類:動物
知名度/弱点値:19/24 先制値:18 移動速度:10/40(砂中水泳) 生命抵抗:21(28) 精神抵抗:18(25)
攻撃方法:頭部 命中:16 打撃点:2d+25 回避:16 防護:8 HP:370
上半身 命中:― 打撃点:― 回避:9 防護:10 HP:1000
志希:HP4桁かぁ……。
美嘉:え、なにこれ。
GM:なにって、今回のターゲットだが。
美嘉:いやHP4桁は多すぎでしょ!
周子:……あっ、ふーん。
GM:なぁにまだ一部だけだから。ちなみにHPと抵抗値に剣の欠片による修正は反映済みで弱点は水・氷属性だ。
志希:……うん、どうしようもないね。弱点は突けないかな。ソーサラーが1Lv足りなかったかな。
リィク:話がまとまったようでなによりだ。依頼を頼む側として、1000G分の消耗品代は当家で負担させてもらおう。必要なものはまとめてそこの彼女にでも伝えるといい。それと……カナデ。話がある。来てくれ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ウィンダー家の屋敷の中のある一室。そこは外の景色がよく、もう誰も使わない普段は鍵のかかった開かずの間。兄妹の、思い出の場所。
リィク:カナデ、覚えてるか。母さんのことを。
カナデ:いまさら何? あの日以来、一日たりとも忘れたことはないわ。
リィク:今から8年前、母さんは死んだ。親父の国外での仕事に同伴していった矢先で、蛮族に襲われた。確か、そうだったよな?
カナデ:……ええ。だから私は冒険者になった。母さんの復讐のために。
リィク:もし、もしの話だ。もしそれが違ったら……母さんが蛮族に殺されたのではないのだとしたら、どうする? お前は冒険者をやめるか?
カナデ:そんなわけないでしょう。今はもう、仲間もできたもの。それに、お堅い貴族政治の世界より、こっちの方が性に合ってるわ。で、それがどうしたの、兄さん。
リィク:はは、久しぶりに兄さんって呼んでくれたな。昔みたいにお兄ちゃんって呼んでくれてもいいんだぞ?
カナデ:茶化すなら、帰るけど。
リィク:まぁ待て。……お前がそう答えてくれて安心したよ。
カナデ:さっきから話が見えないのだけど。
リィク:こいつを、母さんの形見をお前に託す。
GM:というわけでカナデにこれをやろう。
・聖弓ディグリアスムーン カテゴリ:ボウ ランク:SS
用法:2H 必筋:10 命中:+1 威力:50 追加ダメージ:+1 C値:9 売却:不可 製作時期:不明 射程:50m
【非ランク効果】
「祝福の弓」常時効果。シューター技能以外の戦闘系技能を習得していない場合、この武器をランクBの武器として扱い、ランク効果をすべて適用する。
【ランク効果】
「明けの明星」常時効果。この武器を用いて攻撃する場合、自身の命中と対象の回避の達成値の差分値を合算ダメージに加える。
「星墜とし」任意効果。同一種類の矢弾を10本同時に消費することで、1つのエリアに存在する全対象に同時に射撃攻撃を行うことができ、命中した対象は使用者の次の手番まで飛行状態が解除され、それに伴う修正も無効化される。ただしこの攻撃を乱戦エリアに打ち込むとき、対象を任意で決めることはできない。この効果は命中判定時に使用するが宣言特技として扱わない。
「フルパワーショット」特殊効果。この武器を用いて攻撃するとき、装備者自身のHPかMPを各5点支払うことで、《狙撃》の効果を適用した攻撃を即座に行うことができる。この効果によるMPの消費は魔晶石で代用することができない。
「カウンターショット」特殊効果。装備者が回避/消滅である攻撃を、シューター技能を用いた回避に成功した場合、この武器を用いて攻撃することができる。ただし、宣言特技による自身のダメージへの影響を付与することができず、対象は攻撃してきた敵1体(部位1つ)のみである。
【説明】
かつて大破局の際に降臨した神によって人族にもたらされたという伝説の武器。一説によると蛮族の王を倒した冒険者の物だったらしい。
美嘉:うわなにこれ。
志希:控えめに言って頭おかしいと思うな……。
GM:せっかくのオリジナル武器なんだしそれぐらいぶっ飛んだの用意したいじゃないか。公式、というか店売り未満だったらつまらんだろう、とくに高レベル卓の場合。
奏:これは……なかなかに難しい武器ね。処理が多くて忘れそうだわ。
GM:使いたいように使えばいいさ。
奏:というか、「フルパワーショット」の記述ってどういうこと?
GM:あーそれか。実はな、戦闘特技《狙撃》に関してだが、今まで裁定を間違っていた可能性がある。正確には、発動したターンには武器攻撃の代わりにその特技を宣言し、次のラウンドに宣言した対象に武器攻撃を行うもの、だと思われる。ダメージ算出の処理自体は間違ってはないだろうが、カナデは今まで本来の倍のペースで撃ってたことになる。
奏:なるほどね。それを正すためにこれをってこと。
GM:ああ。つけなくてもよかったんだが……正直付けたほうが強いしな。
フレデリカ:カナデちゃんにこれぐらいのものあげるってことはさ、アタシにもこれぐらいのものくれるってこと?
GM:ん? んー……まあ思いついたらな。
美嘉:ていうか前回のあたしのと性能違いすぎない?
GM:そっちはまぁ……今後のお楽しみってやつだ。
カナデ:兄さん、これって!
リィク:母さんがかつて、奴を狩る時に使っていた弓だ。これを母さんがどこで手に入れたのかはわからない……だが、きっと母さんはお前がこれを扱うようになることを期待していたんだと思う。
カナデ:……え?
リィク:母さんが、死ぬ前に言ってたんだよ。もし私がこのまま死ぬことがあったら、私の部屋の中にある箱は、カナデに渡してくれって。
カナデ:母さんが、そんなことを?
リィク:ああ。だが、母さんが死んだときはお前はまだ9歳だった。子どもにこんなものを渡すわけにはいかなかったし、なにより冒険者になるかもわからなかったしな。しかし、お前は何かに導かれるように冒険者となり、弓使いとなった。きっと、こうなることは運命だったんだと思う。
カナデ:ということは、今回の対象がもしかして母さんを……?
リィク:いや、違う。あの時母さんが狩ったのとは別個体だと確認している。子が成長し成体になって観測されたと思われる。確かにあの時の戦闘でも母さんは無傷ではなかったが……それが原因で死ぬとは考えられないほどの軽傷だった。俺が看病してたからよく覚えてるよ。
カナデ:それじゃあ、一体……。
リィク:……すまない、余計なことを言ってしまった。今は、この依頼に集中してくれ。経緯がどうであれ、この依頼が国家にとっての大事なプロジェクトになることは事実なんだ。よろしく頼むよ。
カナデ:わかった。ありがとう……お兄ちゃん。