Kroneなヤツらのソード・ワールド 作:霧子のエビの天ぷら
城ヶ崎美嘉(以下、美嘉):やっほ、プロデューサー☆
プロデューサー(以下、P):……おう、どした……。
美嘉:うわぁ、死んだ顔してる……大丈夫なの?
プロデューサー:今の時期は年末年始で特番組まれることが多いからな……毎年恒例のSPLiveもあるし、全く大丈夫じゃない。体重いし。それで、どうしたんだ? 何か用事か?
美嘉:うん、前のセッションからだいぶ時間たっちゃったじゃん? そろそろ次はしないのかなって。
P:ああ、それか。……予定空いてるかな。
美嘉:次の土曜日、みんなあいてるみたいだからその日がいいな。
P:……なんだ、えらく準備がいいな?
美嘉:あ、アハハ。キノセイダヨウン。
P:何企んでるのか知らないが、ほどほどにな?
美嘉:はーい。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
一ノ瀬志希(以下、志希):……へくちっ。さむ~い。
宮本フレデリカ(以下、フレデリカ):あれ、シキちゃん、風邪ひいちゃった?
速水奏(以下、奏):最近ぐっと冷え込んできたものね……今度のライブ、ステージ衣装のどこか見えないところにカイロ入れておこうかしら?
美嘉:うーん、人多いしダンスするしで結構あったまると思うけどなぁ。
塩見周子(以下、周子):おはよー。寒いわぁ、ほんと。
奏:おはよう、周子。今日もかなりもこもこしてるわね。
周子:あたしからすれば奏のカッコは薄着過ぎて見てるだけで寒くなってくるんやけど。厚着はせんの?
奏:してもいいのだけれど、今クリーニングに出してるのよね。明日取りに行こうかと。
P:おはようさん。もうみんな揃ってるんだな、早いな。
志希:おはよープロデューサー。……ズビ。
P:なんだ、風邪ひいたのか?
志希:うーん、そうかも……プロデューサーにつきっきりで看病してもらったらすぐに治るかもねえ。
P:……次のライブも近いし仕方ないな。おとなしくしてろよ?
フレデリカ:およよ、プロデューサーやさしー! アタシもついていっていい?
P:……あーもう好きにしろ。紅茶作ってくるからその間にキャラシとかの準備しておいてくれ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
P:……あったかい紅茶が胃に染み渡るよ……さて、それじゃあキャラ紹介を行ってもらうとしよう。前回の終了時に宣言したとおりに今回からSW2.0サプリメントであるカルディアグレイズ、ウィザーズトゥームの採用を行う。それも踏まえたキャラ成長報告をよろしく。志希から。
志希:はーい。あたしあんまり仕事出来てないような気がするんだけど大丈夫かな? “奔放な魔女”シキ=アーキテクスちゃんの成長は知力+3と精神力+1。知力ボーナスはあと1で5にまで到達できるね。そろそろ精神力も伸びてほしいんだけど。技能成長はソーサラーLv11、新規取得はウォーリーダー技能とデーモンルーラー技能、それぞれLv1を追加で獲得。MPの合計値はこれで本人が76、【ファミリア】が【ファミリアⅡ】になって追加MPが15点まで伸びたので合計は91点。まああんまりガス欠することはないかなって思うよ。鼓砲は【軍師の知略】をまずは獲得。装備品なんだけど、いろいろあってお金がたまったからマナコートを追加で購入。あとは魔神の契約書は20枚と軍師徽章を買っておいて、金のA級マテリアルカードは12枚まで補給。合計でミカちゃんから4000Gの借金になっちゃった、にゃはは。
P:随分といろいろ変わったな。魔物知識判定に先制判定までできるようになるとは。しかし達成値は足りんだろまだ。戦闘特技はどうしたんだ?
志希:それはおいおい、ということで。戦闘特技は《魔法拡大/すべて》を放棄して《魔力強化Ⅰ》、新しく《ダブルキャスト》を獲得。ルールブックⅢの発売が待たれるよ……。
P:随分と強くなったもんだ。ダブルキャストに拡大数、魔法制御といろんな魔法を使い分けることを念頭に置いた特技構成だし、魔力強化もしれっと入れてやがる……。
志希:まあハイマンじゃないからね。これぐらいやらないと固定値の問題もあるし。ルールブックⅢで魔力強化Ⅱの習得条件とか、《バトルマスター》の魔法使い版とか出たらいいなって。そしたらもっとできることあるのに。
P:……例えば?
志希:5倍拡大【ディメンジョンソード】と【エネルギージャベリン】。
P:脳筋の極みだな。次はフレデリカ。
フレデリカ:あいさー。支援回復大活躍、アタシの辞書に不可能という文字なんてなかったりあったりするかもしれないよ? “囚われない”リリィ・フレディちゃんでーす。能力値成長は精神が2点と知力、生命力が1点。技能成長はプリーストがLv11、ソーサラーがLv4、セージがLv4になってウォーリーダーLv2。戦闘特技は《ダブルキャスト》と《キャパシティ》。これでMPの合計値は本体が94、ファミリアの猫を選択してMPは7点増加して合計で101点! 息切れの心配はもうないね! ……ないよね?
P:俺に聞くな。無駄使いしなきゃ早々切れることはないだろうが……。それはそれとして、前回まで一部賦術の裁定間違えてたな。
フレデリカ:あ、バレた。
P:気が付いてるなら言ってほしかったぜ宮本さんや……。今回から1Rだけの適用にするから、そこんとこよろしくな。賦術の取り直しはしないのか?
フレデリカ:欲しいものも最終的には取りに行くしいいかなって。鼓砲は【軍師の知略】と【怒涛の攻陣Ⅰ】。消耗品としては女神のヴェールで回復魔法のクリティカル値を10にして、浄化の聖印でMPの増加をなくして、軍師徽章でウォーリーダー技能を使えるようにして、武器としてクォータースタッフを買って防護点アップ! マナコートは……お金に余裕が出たら買おうかな? マテリアルカードも忘れずに補給したよ!
P:随分とたくさん買ったな。
フレデリカ:まあ借金合計20200Gなんだけど。
P:借金額多すぎるわ! まずはそれを返済することから始めような? 次は美嘉。
美嘉:はーい☆ こっちは所持技能数がなんだか洗練されてるというか欲しいものが少ないからなんだかこう……技能欄がさみしい! “夢追い人”ミカの成長は、まずはフェンサー技能がLv12、スカウト技能がLv10。能力値の成長は敏捷度と筋力が2ずつ、これでようやく敏捷の腕輪がなくても能力ボーナスが4だよ……先が遠いなぁ、本当に。戦闘特技はいろいろ入れ替えて、《双撃》を外して、その枠に《必殺攻撃Ⅱ》を入れて、Lv7で《頑強》、Lv11の枠では《武器習熟A/ソード》を獲得。武器は片方をディフェンダーに変更して専用化、あとは研磨のやすりを2個買ったっていうぐらいかな。今回もすぐに使用するってことで。
P:随分と成長がとがってきたな。今後はどうするんだ?
美嘉:……迷うんだけどやっぱりファイター技能とレンジャー技能を取ってこようかな。自動取得の《タフネス》《ポーションマスター》《不屈》は普通にいい特技だし、ファイターを伸ばせば《超頑強》にも手が届くようになるし。HPは今69点あるけど、もう少し増やしておきたいっていうのが本音。ただまあ、Lv5以上の練技を見越すと《練義の達人》も欲しくなるんだよね。
P:ミカの今後は《変幻自在Ⅱ》の性能にかかっている、と見たほうがいいか。果たしてどうなるんだろうなぁ。特技3回か、特技のペナルティ軽減か、それともそれ以外の何かが来るか。……早く発売になんねえかなぁ。次は周子。
周子:やっぱりかばう役って活躍が地味になるんはどうしようもないんかな。今回であたしも少し特技編成見直してみたからそれで何とかなるとええなぁ。“勇敢な盾”ことシューコちゃんでーす。技能レベルはファイターがLv12、レンジャーがLv8、エンハンサーLv2にしたっていうぐらいかなぁ。正直変化はかなり地味やから、何とかしたいんやけど、どうしたものかな。特技の構成としてはLv11に《超頑強》を先送りすることで《全力攻撃Ⅱ》まで一気に派生、アイテム関連は魔香草が50個と救命草が120個。これがあればしばらくは足りるやろ。習熟の関係上装備品が困窮してきて、どうしようかなぁ、本当に。迷う。
P:まあHPタンクはそうなるよなぁ。今後のほかキャラの成長しだいではかばう役である意味合いすらも脅かされかねんが。……てかおい待て。今救命草何本っていった?
周子:え? 120本。
P:か、買いすぎだろ……!? しれっと魔香草も50本も買ってるし……これはリソースを削りきるのは無理か……。
周子:裏を返せばそれぐらいしかやることがないとも言う。
P:メインファイターの短所が徐々に浮き出てきてるなぁ……その耐久力はこちらにとっては十分な脅威なんだが。最後に奏。
奏:前回はとてもスリルがあって楽しかったわね。まあああいう戦闘は本当にたまにでいいのだけど。現状メインのダメージディーラーを張れてる“冷酷な狙撃手”ことカナデよ。能力値成長は器用度が3上がって29、敏捷度が1上がって24。美嘉じゃないけど、あたしもこれで腕輪なしで敏捷度ボーナス4に届くし、武器の専用化の影響で命中判定時には器用度ボーナスが5点にまで上がるしますます活躍できそうで楽しみだわ。技能的にはシューター技能がLv12、マギテックコンジャラーミスティックがLv2でエンハンサーをLv3にまで上げたわね。スカウト技能はLv9までしかあげれなかったわ。戦闘特技は《武器習熟S/ボウ》を取得、占術は【幸運の星の導きを知る】と【幸運は富をもたらす】の2つね。見てて思ったんだけど、ミスティック技能ってどうにも使いにくいものが多いわね。レベルを上げるとそうでもないのだけど……。
P:奏は順調に強みを伸ばすビルドって感じだな。今後のビルドプランとかは考えてあるのか?
奏:そう簡単に思いついたら苦労はしないわよ。一通りの魔法技能を取っていって、MPを伸ばして、《キャパシティ》取って、っていうぐらいしか思いつかないわ、少なくとも今は。幻視系の技能がなかなかいいのが揃ってるからそっちをメインで伸ばすのも悪くないかもしれないけど。私もルールブックⅢ次第かしらね? 何か新しい戦闘特技でもあればいいのだけれど。
P:ミスティックはなぁ……幻視系は強いんだがLv1からとれるものでそれほど有用なものがないっていうのが問題だよな。まあキャラ紹介も終わったわけだし、今回のセッションを開始しよう。よろしく!
LiPPS:よろしくお願いしまーす!
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ハーヴェス王国、その中にある冒険者の店《曙の黒槍亭》。国家プロジェクトである鉄道整備が街に大きな賑わいをもたらした。その賑わいはこの冒険者の宿にも来て、いつも以上の賑わいを見せていた。だが、今日はそんないつもとは違う、ざわつきともとれる賑わいを見せていた。
GM:さて諸君、まずは生活費の徴収だ。今回は前回の狩りでちょっとしてお祭り騒ぎになってて、店が格安で提供してくれたってことで1日当たり10Gだ。
周子:じゃああたしが振るよ。2d6は……8と。合計80Gやね。
シキ→237G
リリィ→2225G
ミカ→6012G
シューコ→12435G
カナデ→28149G
ミカ:ふわぁふ……おはよ。
カナデ:おはよう、ミカ。今日もずいぶんと眠そうね?
ミカ:最近変な夢よく見るんだよね。そのせいでなんだか寝つきが悪くて。
カナデ:夢? どんなの? 最近ミスティック技能勉強してるし、夢占いでもしましょうか?
ミカ:うーん、真っ白い、ぼんやりとした空間で……誰かが何か語り掛けてくるんだけど……何だったかなぁ。よく思い出せない。
カナデ:さすがに情報が少なすぎるわね、それじゃ。
シキ:ミカちゃん、おはよー。何の話?
リリィ:2人とも、おはよっ。
ミカ:おはよう、2人とも。相変わらず仲いいんだ?
シキ:まああたしはリリィちゃんの専属教師みたいなところあるしねー。
???:半分以上はご主人の趣味でしょうに。
GM:そうしゃべったのはシキのそばにいた黒猫だな。黒い毛並みに金の猫目がまぶしい。
ミカ:うわ、しゃべった!? てかなに、今なんて!?
カナデ:……魔法文明語……その子、ファミリア?
シキ:そだよー。あたしのファミリア。
るな:お二方、いつもご主人がお世話になっております。今後は、私のこともどうぞよしなに。
カナデ:あら、主人に似ずに礼儀正しいのね?
シキ:うわすっごい失礼。
リリィ:いやーこの子毛並み綺麗でふわふわしてるんだよねー。あたしも一応ファミリア出せるんだけど……あんまりなついてくれなくてさ。
ミカ:そっちの自由性はご主人に似たのかぁ……。
シューコ:ほいよ、モーニングセット。
ミカ:シューコ、おはよう。
シューコ:おはよう。最近は忙しゅうてかなわんわ。あんまり冒険者のほうをさぼるのもよくないんやけどなぁ。
カナデ:まあそういわないの。
リリィ:シューコちゃん、アタシにもモーニングちょうだい! その間にお祈りしておくから。
【ラック】(3,6)+15→24 成功
白い毛並みの猫が、どこからかトコトコと歩いてきた。
リリィ:あれ、アタシのファミリア……? もーどこいってたの?
るな:……ご主人、どうやら、少し騒がしくなるようです。
シキ:……?
GM:一同が首をかしげていると、バーンと大きく店の扉が開かれ、その先から貴族然とした風貌の妙齢の男が何人もの衛士を連れて店内に入ってきた。
???:朝早くから仕事もせずにたむろとは、いい気なものだ。オホン、吾輩はハーヴェス王国専属軍略指揮官エルナード・フィオルギア・レイ・ネージュアである。本日の朝6時付けを持って、諸君ら冒険者に、敬愛なる我らが王、ヴァイス・ハーヴェス王の名のもとにハーヴェス王国として在る依頼を出す。この依頼を達成したものは我が王より多大なる報酬と絶大な名誉が与えられることであろう、腕に覚えのあるものはぜひ挑んで欲しいとの陛下からの言伝である。貴様ら無能な冒険者風情に、我らが王が仕事を与えてやろうといっているのだ、この依頼は、なににおいても最優先されるべきであるということを忘れるな!
ミカ:……なにアイツ。感じ悪いなぁ。
カナデ:相変わらず、この国も貴族政治は一枚岩にはなりえないのね。
シューコ:そーゆーの、イラッとするわ。ウチの顧客を貶すんならウチらのこと利用せんでもええんよ?
エルナード:ん? なんだ貴様は。誰に向かって口をきいている?
シューコ:人にもの頼む態度さえも教えてもらってないかわいそうな子どもに言うとるんよ。
ミカ:ちょっとシューコ!?
シューコ:ごめんな―ミカちゃん、モーニングセットドリンクコーヒーやっけ? 少し遅なるわ。
エルナード:そっちこそ、貴族に対しものを申すときの態度が鳴っていないようだな。どうやらその頭の中には屑鉄ばかりが詰まっているようだ、一度メンテナンスすることをお勧めするよ。
ミカ:……ッ! さっきから黙って聞いてれば――。
カナデ:ミカ。それ以上はここだけの問題じゃ済まなくなるわ。今は抑えなさい。
エルナード:フム、どうやらそちらのお嬢さんは分をわきまえているようだ。どうかね、今度一緒にお食事でも。
カナデ:謹んでお断りします。仲間をバカにされた相手とのんきに食事をとるほど私は薄情ではないので。それに、あなたも用がお済みになられたのでしたらお引き取りいただけませんか? 私も、堪忍袋の緒はそう強いほうではないので。
エルナード:それは残念だよ。お嬢さんには見込みがあると思ったのに、まさかこんなゴミどもと同類だなんて。
バシッ、と、カナデの鋭い平手打ちが頬に刺さった。
エルナード:……ほう、意外と弱い緒であったな。
カナデ:……お引き取りください。
エルナード:その方がよさそうだ、これ以上こんな陰気臭い場所にいては貴族の名が汚れてしまうよ。では、これで。ゴミはゴミなりに陛下の期待に応えてくれたまえ。ハッハッハ。
そういい捨ててエルナードは店から出て行った。
ローヘリオン:……ま、長いことやってればああいう手合いとの付き合いもある。どんな奴であろうとも俺たちの仕事口であることには違いないんだ。それより、聞いたなお前ら! 国王直々っていうビッグな依頼だ、報酬は聞いて驚け、100万Gだ! おそらくこの依頼は国中に出されているだろう、だが、この報酬は俺らで勝ち取るぞ!!
ウォォォォォ!! と、大きな雄たけびが店の中に轟いた。
ミカ:……そういうものなのかなぁ。
カナデ:そういうものよ、きっと。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
衛士A:エルナード様、次の店への広報はいかがなさいましょう。
エルナード:貴様らがやれ……といいたいところだが、陛下から直々に頭を下げられては私がやらぬわけにはいかんだろう。次も私がやる。
衛士A:了解しました。次は、西通りの【草原の白百合亭】になります。
エルナード:……まったく、あの程度のものを調査するだけなのに、なぜ陛下はあのような低俗な連中を……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ローヘリオン:それで、お前らはどうするんだ、この依頼。行くのか? 先日あんなデカブツ狩ったばかりで疲れてるだろう?
シキ:あたしは受けたいかな。さすがにそろそろ運動しないとな待っちゃうし、何より新魔法も試したいし。
リリィ:アタシは早く借金地獄から解放されたいよ……ヨヨヨ。
ミカ:いやそれは自業自得……まあPT全体で見れば安い出費だけどさ。あたしも、まだいろいろと探してるものがあるから行きたいけど。
シューコ:ま、みんな行くなら行こうかな。なんだかんだ言って冒険楽しいしね。
カナデ:決まりね。……私たち最初に登れるかしら? 体力あんまりないのだけれど。
シューコ:どうせろくでもないものだから大丈夫やろ、後から行っても。
ローヘリオン:わかった。一応これが公式の依頼書だ、目を通しておいてくれ。
依頼主:ハーヴェス王国国王 ヴァイス・ハーヴェス およびハーヴェス王国冒険者ギルド連合
依頼目標:サンドキア周辺に発生した“塔”内部の調査
報酬金:1000000G+名誉点100点
ハーヴェス王国から湾にでて南へおよそ150km、空中浮遊神殿サンドキアがあることはすでに冒険者諸君なら周知の事実であると思われる。
つい先日、その空中浮遊神殿の周辺に特殊なマナ領域が展開され、突如として海底から遥か天空まで伸びる塔が現れた。その塔にはハーヴェス王国から船でのアクセスができるように、周辺諸国との談話は済んでいる。そこで、勇気ある冒険者諸君にこの塔の内部調査を依頼したい。この依頼は国家プロジェクトとして国中の全冒険者ギルドに話は通してある。腕に自信のあるもの、立身出世を狙うもの、一攫千金を狙うもの、君たちの目的は問わない。
この依頼を成し遂げてくれたものには多大な報酬と名誉を与えることを約束しよう。我が国の冒険者はみな優秀であると示してくれ。
期待している。
ハーヴェス王国現国王 ヴァイス・ハーヴェス
ミカ:……これ本物なの? 胡散臭い感じだけど。
ローヘリオン:間違いなく本物だよ。署名の横の押印がちょっと斜めになってるのが特徴的だ。たまに押印自体がファンシーなものになっていたりもするが……それがたぶん偽造対策何だろう。
シキ:100マン、100マンねえ……。
リリィ:本当にくれるのかな?
ローヘリオン:行ってみんことにはわからんだろうよ。全部で何層あるかもわからんバカでかい塔だ、ここからも晴れた日にはよく見える。今日はあいにくの曇り空だがな。
シューコ:確かあそこまでなら……船があったっけ。それに乗ろか。今ならたぶん冒険者登録したら連れてってもらえるやろ。
GM:さて、ここで最後のお買いものフェイズだ。何か欲しいものがあればこの段階で買っておいてくれ。
フレデリカ:うーん、特にないかなぁ。
美嘉:あたしも。だいたい欲しいものは買っちゃったし、草系統は周子がまとめて持ってくれてるからね。
周子:いや、さすがにどんだけ長くても救命草120本は無くならんやろさすがに。……なんか不安になってきたな、魔香草50本追加で買っておくわ。
GM:お、おう……。
奏:私も徹甲矢を128本と普通の矢を120本追加で買っておくわ。これでお金は316G……。安いわね。普通の矢をもう120本追加で買って合計で416G支払っておくわ。……アウェイクポーション買ってなかったわね。ついでに買っておかないと。
GM:そっちもそっちで買い込むなぁ。弾切れと死が直結してるから仕方ないといえば仕方ないが。
奏:前回は対象が一体だけだったからほかの能力を使う機会はなかったけど、今回はお金に余裕もあるし使えるように準備しておこうと思って。
GM:なるほど、正しい判断だ。買い物は終わったな? では、出発するぞ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ハーヴェス王国の港。そこにはすでに多くの冒険者、あるいは斥候の人族が集まって即席でチームを組んだり、パーティーとして船の登録をしたりしていた。皆目指すところは同じだと、言わずともわかる。
シキ:はえー、みんなやる気すごいねえ。
リリィ:珍しくお金をたくさん稼げるかもしれないってところだもん、仕方ないよ。
カナデ:……登録終わったわよ。この次の船で目的地まで直行ね。
シューコ:お疲れさん。団子あるけど食べる?
リリィ:あ、たべるたべるー。
シューコ:リリィ、あんた今日これで6個めやで? 太るよ?
リリィ:カロリー消費するからセーフだって神様が言ってた。
GM:そのまま待つこと30分ぐらいで船が来た。道中では特に何事もなく安全な航行ができた。
美嘉:え、あれ? できるの?
GM:道中表用意するのは面倒なんだ。しかしまぁ、PCたちからしてみれば不自然な感じがしたな。これ以上は異常感知判定で目標値は10だ。屋外なのでレンジャー技能も使用できるぞ。
シキ:(1,2)→3 失敗
リリィ:(1,1)→自動失敗
ミカ:(3,5)+11→19 成功
シューコ:(6,6)+10→自動成功
カナデ:(5,6)+11→22 成功
フレデリカ:……わーお。
志希:こっちは失敗したうえにピンゾロならず……。
GM:フレデリカがファンブルするなんて珍しいな。まあ50点受け取れよ。
周子:こんなところで6ゾロ出ても。
GM:嬉しくは……ないだろうな。さて、感じた不自然さだが。近づくにつれてより安全になっていってるって感じがしたな。
美嘉:はい?
GM:目的地に接近していくにつれて生物の数……海中の蛮族やら動物やら魚類が少なくなってるのが眼に見えてわかるんだ。というか、目につく生物がその塔から逃げるように泳いでるっていうのがわかる。この船やほかの船には目もくれず一目散って感じだな。
奏:……どういうこと? 水質汚染でも広がっているのかしら。
GM:いや、そんな話は聞いたことはないな。というか目的地の周辺には何もなくて、水質汚染やら毒の散布を行うには不便すぎるということをPCは知ってていい。
カナデ:……随分と魚が少ないのね、この辺りは。
シキ:うーん、なんかちょっと違う感じがするな。
シューコ:違うって、何が?
シキ:魚はいるんだよ。だけど、あたしたちとは逆方向に向かってるのがほとんど。海の中に何か強いやつでも出た……って感じじゃなさそう。
カナデ:……この先に、なにがあるのかしら。
船長:皆さん、見えてきましたよ。あれが、今回の目的地です。
目の前には、雲を突き抜けてはるか上空へと延びる白い巨大な構造物がそびえたっていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
アスカ:やぁ。やっぱり君たちも来たんだね。
ミカ:あれ、アスカさんじゃん。どうしたの?
アスカ:どうしたもこうしたも……仕事だよ。君たちのところにも来たんだろう? 国の役人が。
カナデ:役人……ああ、エルナード卿のこと?
アスカ:へぇ、あの“冒険者嫌い”がねぇ。大方、お人よし国王にでも頭下げられたんだろうけど……珍しいこともあったものだ。
シューコ:ところでアスカさん、仕事って?
アスカ:いやなに、この塔の中身の調査さ。いろんな奴に話聞いてるとどうにも妙な感じでね。
カナデ:妙?
アスカ:……信じがたい話だが、入った人によって中身が違うんだ。
ミカ:中身が違うって、どういうこと?
アスカ:そのままの意味と受け取ってもらって構わない。ボクが見た限りでは1層目にはアンデッドが何匹かいたんだが……ほかのやつらの証言では蛮族がいたり、魔神がいたり、幻獣がいたりとばらばらなんだ。その組み合わせに至るまでこれといった規則性が見えない。どうなってるんだか……。
シキ:そりゃまぁ随分と変なこともあったもので。
アスカ:まったくだ。君たちにも一応話を聞きたい、調査が終わったらボクのところに来てくれ。ボクは一足先に帰ってるよ。
リリィ:帰るの?
アスカ:最近出世してね。こう見えても組織のNo.2になって書類がたまってるんだ。それに、今回の件についていろいろとまとめなくちゃいけない。これが意外と難儀でね……曲がりなりにも国王に献上する報告書だ、下手なものを書いてウチの肩身がこれ以上狭くなっては困りものだ。
リリィ:大変なんだねぇ、アスカチャンも。
アスカ:そういう君もそうだろう、神殿が周辺にない神官って苦労するっていうレベルものじゃ……まあいい。ボクは先に帰ってる、《常夜の赤烏》で待ってるから、早く来てくれよ。今度は、死体が一緒じゃないほうがいいね。
カナデ:随分な皮肉だこと。神様に祈るしかないわね。
シューコ:準備できた? カナデ、そろそろ入るよ。
アスカ:気を付けて。ミルタバルの加護があらんことを。