Kroneなヤツらのソード・ワールド   作:霧子のエビの天ぷら

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Lesson9-3 灰の未来

美嘉:おはようございます。

 

P:よう。オフだってのに朝早くにすまんな。

 

美嘉:いいよ、あたしとPの仲じゃん?

 

P:そういってもらえると助かる。さ、今日は前から言ってたと思うが、美嘉のソロセッションだ。

 

美嘉:ほんとに大丈夫かなぁ……。

 

P:ソロでも問題ないように難易度調整してあるから大丈夫だ。さ、始めようか。

 

美嘉:よろしくお願いします!

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

ミカ:……ぅ……。

 

 

目が覚めたら、目の前には町のような建物群が広がっていた。誰もいない、大きな通り。どうやらしばらく眠っていたらしく、ミカの体には灰のような、土埃のようなものが少し積もっていた。

 

ミカ:いたた……。あれ、あたしだけ……? 他のみんなは……。

 

その周辺には、誰もいなかった。

 

ミカ:……。みんなならきっと大丈夫。それよりも……ここがどこなのか、手掛かりを探さないと……。

 

 

GM:ふむ。ではどこにいく? 道は後ろ以外にはつながっているようだが。

 

美嘉:そりゃひとまずは前でしょ。というか、ここどんな場所?

 

GM:廃墟、のように見えるな。これ以上の情報は、セージ技能は持ってないから、知力Bだけを基準に判定してくれ。

 

 

ミカ (1,1)+2→自動失敗

 

 

美嘉:そんなバカな!

 

GM:はいはいいつものいつもの。さっぱりわからなかったようだな。

 

美嘉:むむむ……。

 

GM:まあさすがに何もわからないってのもつらかろう。さっきも言ったが見たところ廃墟だな。空からは正体不明の灰が降り続いている。どうやらかなり長い間降ってるようで、そこそこの厚みになるまで積もってるところも見られる。太陽は見えているが、降りしきる灰と風によって舞い上がる塵と埃によってさながら曇天だ。どことなく見おぼえがある感じはするが、どこかは思い出せない。

 

 

ミカ:……ホコリ、結構積もってる。ここ、以前誰か住んでたのかな。結構生活してた感じあるし……でも何でいなくなったんだろう……ッ!?

 

 

《危機感知判定》

ミカ (3,4)+16→23 迫りくる魔神の群れに気が付いた!

 

 

美嘉:え!? 数は、どれぐらい?

 

GM:数えるのもばかばかしくなるぐらい。少なくとも頭は20個は見えるな。

 

美嘉:それはさすがに逃げなきゃ死ぬよね。

 

GM:なにを当たり前のことを……当然じゃないか。

 

 

ミカ:ちょ、ちょっとぉ!? いくら何でも無理でしょこれは~!

 

状況の把握が遅々として進まないミカと、それを追う魔神。廃墟となった空間での、デスレースが始まった。

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

GM:さ、判定してみようか。果たしてうまく逃げられるかな。練技を使ってもいい。《スカウト技能+敏捷度B》を基準に26の判定に3回連続で成功してくれたまえ。失敗したらその回数だけ20点の確定ダメージな。

 

美嘉:思ってたより痛い!? 【ケンタウロスレッグ】使って逃げるよ!

 

 

《逃走判定》

ミカ (3,4)+20→27 成功

   (1,4)+20→25 失敗

   (3,3)+20→26 成功 20点のダメージを1回受けた!

 

 

GM:慣れない街を右に左に必死に逃げ回っている。一般的な人間と比べるとかなりの俊敏性を誇っているミカだが、それでも少しずつ追い詰められていく。そんなときに……聞き耳判定だ、《スカウト技能+知力B》を基準に目標値20の判定をしてくれ。

 

美嘉:うっ……なんか怖いなぁ。

 

 

ミカ (4,4)+16→24 成功! 誰かが呼び掛けているのに気が付いた!

 

 

???:こっちだ、こっちへ来い!

 

ミカ:(誰、何者!? ……いや、今は迷ってる時じゃない!) ──ッ! ぐぅ、ちょっと掠ったか……。

 

???:……静かに。じっとしてろ。

 

ミカ:……。

 

 

建物の影に潜んでいると、魔神たちはミカのことを見失ったのか、周辺をうろうろした後どこかへ去っていった。

 

 

ミカ:もう、大丈夫みたい。

 

???:の、ようだな。潜める場所を何か所か選んでおいてよかったよ。……あれから、随分と腕を上げたようだな。以前あった時とは見違えるぐらいだ。

 

ミカ:えっと……助かった。ありがとう。でも、あなた誰?

 

???:お前とこうして会うのは初めてだな。俺が初めて見たときはあの塔の入り口だったか。随分と俺たちの邪魔をしてくれたようで、ライバルとして嬉しい限りだよ。初めまして、ミカ・キャストルテイン・フルーレ。俺の名はネクベス。種族としてはドレイクカウントデュアルソード。次期蛮王となる……はずだったものだ。“悪魔の瞳”のリーダーだと言ったら、話は通じやすいかな?

 

ミカ:な──、あんたが、“悪魔の瞳”の、リーダー!?

 

ネクベス:その通りだ。少し話を聞いてくれる気になったか?

 

ミカ:まさか、今すぐにでもあんたを倒せば、世界は平和になるんでしょ! 次期蛮王なんだから!

 

ネクベス:……だろうな。ま、そうなるとは思っていたよ。いろいろ話したいこともあるし、ここがいずれ奴らに見つかるだろうな。俺の隠れ家に案内する。ついてきてくれ。

 

GM:そういうとネクベスは無防備に後ろを見せてついてくるように促してきた。さ、どうする?

 

ミカ:……すごく怪しいけど、今は着いていった方がよさそうね。

 

ネクベス:賢明だな。お前がここまで強くなった理由がよくわかるよ。

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

GM:彼はやがて少し広い木造の建物に連れてきた。自分もその辺の椅子に腰かけて適当に座るように促す。

 

ネクベス:ここなら、しばらくは安全だろう。どうだ、酒でも飲むか?

 

ミカ:いいから、話って何よ。

 

ネクベス:まあそう焦るなよ。さっきも言ったが、俺は次期蛮王になるはずだったんだ。もう、なれはしないのさ。俺たち蛮族の世界は良くも悪くも実力主義でな、力あるものが偉いという暗黙のルールがあったのさ。力ってのは腕っぷしだけじゃねえ。無論それもでかいが、智略や人脈なんかも対象になる。そして、下克上は成立しやすいが一度落ちた者に対する評価は非常に厳しい。聞いたことはあるだろう、ウィークリングってやつを。

 

 

《知識判定:5》

ミカ (2,3)→5 成功 

 

 

ミカ:それぐらい知ってる。蛮族の中で、たまに生まれてくる穢れが薄い子でしょ? でもそれが何の関係があるの?

 

ネクベス:もののたとえ、ってやつだ。ウィークリングの様に穢れが薄いもの、ドレイクブロークンの様に剣を折られたもの、ラルヴァのような人間との混血種……いずれも本来の蛮族から見れば下にいる連中というわけだ。そして、それはどれだけ上り詰めたものでさえも例外ではない。俺のようにな。

 

GM:そういうと彼は1本の剣を取り出した。その剣は美しい装飾が施されていたが、先端の四分の一ほど無くなっていた。

 

ミカ:これは……。

 

ネクベス:俺が龍化するときに使用する剣だ。やつらと交戦したときに折られてしまった。

 

ミカ:やつら?

 

ネクベス:お前、ヴェルファウストって名乗る魔神に会ったことないか?

 

ミカ:会ったことあるもなにも、あたしたちは最後にそいつにあって、そしたらここに……。

 

ネクベス:……なるほどな。これも剣が呼び寄せた結果というわけか。

 

ミカ:いや、1人で合点してないで説明を……。

 

ネクベス:少し昔話をしよう。あれは俺がまだお前よりも小さいガキだった頃の話だ。俺はドレイクとして生まれたが、人族の母親を持っているにもかかわらずほぼ完全なドレイクとして生まれた。人族の母親とドレイクの父親から生まれるのは、ウィークリングがほとんどであるにもかかわらず、だ。異なっているものはただ1つ、生まれながらにして剣を2本持っていたことだ。通常、ドレイクは龍化するために必要な剣1本だけ持った状態で生まれてくる。俺はドレイクの中でも異常だったのさ。当然、迫害も受けた。理不尽な暴力だってな。だが、そいつも全部この剣がねじ伏せてくれたのさ。やがて、俺と黒い剣の周りにはその力を認めて仲間が集まってきた。オーガ、ヘカトンケイレス、リャナンシー、トロール……蛮族という点以外はその種族に共通点はなかった。俺は、集まってきたやつらをまとめ上げ、力あるものが正しく評価される秩序ある世界を作ろうとした。それが、蛮族軍“悪魔の瞳”の前身団体というわけさ。

 

ミカ:……。

 

ネクベス:俺たちが頭角を現すにつれて、組織はどんどん大きくなっていった。アルフレイム大陸の地下で彼らの大部分をまとめ上げるのにそう時間はかからなかった。そんなある日、ある魔神が俺にコンタクトを取ってきた。ヤツは、自らを魔法文明時代より生き永らえる魔神、イーヴィルグレーターノーブルデーモンのヴェルファウストと称し、俺たちに技術をもたらした。それはとても魅力的で強力で、俺たちはさらに強くなり、向かうところ敵なしというまでになった。俺たちはやがて人族から自らの住みかを奪い取るために魔神を使役するという地点に至った。幸いにして、魔神が現れる“奈落の魔域”もあったことだしな。より強力な魔神を呼び出し、使役するために、魔神を長時間契約につなぎとめるためのより強いくさびが求められた。そのくさびの候補として挙がったのが、“フォルトゥナの欠片”と呼ばれる神器だった。俺も最初は我が目を疑ったよ。その神器の1つ、魔剣ダモクレスが自分の手の中にあるのだから。俺たちはこの魔剣を調べ上げ、こいつが放つ独特な波動と似た波動を持つモノを調べ上げた。もっとも、それらの中でより強力なものの大半が人族の手にあったし、白い剣は行方不明となっていたが。

 

ミカ:それが、この剣だってこと?

 

ネクベス:そうだ。俺たちは調べるうえでそれらにまつわる伝承も調べつくした。そして、黒い剣は白い剣と揃えることで初めて真の力を発揮するということを知った。……話を戻そう。フォルトゥナの欠片を集め、強大な魔神を使役できるようになってきてから少ししてから、不自然な部隊の全滅が目立ってきた。最初は気に留めもしなかったが、やがてその日の交戦結果にかかわらない一定数の減少がヴェルファウストの仕組んだ罠だと気が付いた。ヤツは、フォルトゥナの欠片の個数が有限であることを知って強力な蛮族の魂でそれの代わりにしてたのさ。それを知った俺は、奴に戦いを挑んだ。だが、結果はこのざまだ。俺は剣を折られ、ここに飛ばされた。ダモクレスがやつの攻撃で折れなかったのは、おそらくはこれがフォルトゥナの欠片だからだろう。始まりの剣の破壊は、断片であったとしても同じ始まりの剣でなければかなわない……そういうことだ。

 

ミカ:話は分かった。つまりあんたは、もう蛮王じゃないってことよね。

 

ネクベス:そうだ。俺にはたとえ元の場所に戻れたとしても蛮王の座に就くことはできんだろう。今の俺はドレイクカウントデュアルソードブロ-クン、だからな。

 

ミカ:じゃあ次の質問。ここはどこ?

 

ネクベス:なんだ、まだ知らなかったのか? ああ、そういえばお前はこっちに来てからまだ日が浅かったな。ここは、俺よりお前のほうが親しみがあると思っていたが……無理もない。この紋章に見覚えはないか?

 

 

そういって彼が指さしたのは真っ黒な槍が2本、太陽を背に交差している紋章だった。

 

 

ミカ:これって……! まさか!

 

ネクベス:ああ、そうだ。ここは、かつて“導きの港”と呼ばれた地。人類の最後の安息地。呪いと祝福の大地にて、水の都ともうたわれ、その美しさを称えられた国。そう、この国は──。

 

ミカ:……ハーヴェス……。

 


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