Kroneなヤツらのソード・ワールド 作:霧子のエビの天ぷら
シキ:客が来てるよ。スカノッディ工房。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
カナデ:すみません、お待たせいたしました。
パウロウィニア:あぁ、別にいいのよ。英雄サマのご注文の品を届けに来ただけだしね。
ミカ:ということは、できたの?
パウロウィニア:ええ、もちろんよ。
???:フン、おぬしら、連絡を絶って死んだかと思ったら帰ってくるなりこんなものの加工依頼をよこしおって……おかげで貯めておいたイグニタイト鉱石とマナタイト鉱石が全部空になっちまったぞ。
カナデ:あら、ムルキベルさん。いらしたんですか。
ムルキベル:フン、これほどの大仕事ともなれば施工主であるワシが出向かずしてなんとする。
冒険者A:ムルキベル……? どこかで聞いた名だ。
冒険者B:お前知らないのかよ、ムルキベル・スカノッディといやぁ、この街の屈指の鍛冶師で30年前、あのブレードスミス・フェスティバルで5年連続最高金賞と国王特別奨励賞を獲得したっていう天才鍛冶師だぜ。最近ではめっきり噂話を聞かなくなったが……まだ現役だったとは驚いた。
冒険者C:あの黒い肌……なるほど、ダークドワーフにはその種族にしか伝わっていない門外不出の特殊な加工技術があると聞いたことがある。それを利用したのか……。
冒険者D:あのひげもじゃのジジイが、シューコ様の武具を……?
ミカ:どんな感じに仕上がったの?
ムルキベル:概ね上々、といったところか。数が多いゆえに孫娘のはぁとにも手伝ってもらったが、なかなかのものじゃよ。これほど素晴らしい武具を強化したのはざっと200年ぶりか……懐かしいものよ。カカカ。
ミィユ:マイスター、そろそろ。
ムルキベル:む、わかった。ではミィユ、頼む。これが、今回の依頼の品じゃ。
ミィユが布を取り払うと、そこには美しくも荘厳な輝きを放つ武具が、朝日を浴びて爛々と輝いていた。
ミカ:すごい……この輝き、初めて……。
シューコ:じいちゃん、これもう装備しても?
ムルキベル:構わんよ。ミィユ、手を貸してあげなさい。この輝き、特に武具は素体がよかったからの一言に尽きる。鉱石と合わせたときの音の響き方、武具が新しい息吹を上げたと感じさせたほどだ。だが、シューコ。おぬしの剣はまだ目覚めてはおらんようだ。
シューコ:……へ?
ムルキベル:カナデ殿の弓、ミカ殿の双剣。どちらもすばらしいの一言。持つ手が震えるほどであったよ……。だが、シューコ殿の武器……エアといったかな。彼のものにはそこまでの輝きは感じることができなかった。そう、まるで、武器が眠っておるかのように……。
シューコ:……。
ムルキベル:おぬしがその武器の性能を引き出せいておらんとは言わんよ。だが、もしかしたら、その武器には、あるいはその“先”があるのやもしれん。
カナデ:ありがとうございます、マイスター・ムルキベル。
ムルキベル:フン、礼ならパウロウィニアに言え。ワシのもとまでこれらの武具を運び込み、手伝わせたのは紛れもないやつじゃ。
ミカ:ありがとうございます、パウロウィニアさん。
パウロウィニア:ああ、いいのいいの。前にみんなにはオレンジメタリアの時にお世話になったしね。その時の、恩返しってやつかな。
ミィユ:いかがでしょう、多少重量は増加しましたが、防御力は大きく上がり、市場で出回るものとは一線を画す仕上がりになったと自負しています。
シューコ:……ええな、今までのよりなんだかしっくりくる。
ミィユ:シューコ様がお忙しいご様子でしたので、構造的な面での最適化は行っていない状態ですが……。
シューコ:あぁ、ええよええよ。もともと、防御力を上げれればそれで十分やったしね。
ミィユ:……承知しました。では、我々はこれで。
冒険者C:おぉ……素晴らしい輝きだ……。
冒険者E:あれはインペリアル……! とてつもない筋力を要求される最高級品だぜ……それをあんなに軽々……すげえや、シューコ様。
冒険者A:おい、見てみろよミカ様の剣。なんて神々しい……。まるで始まりの剣……ルミエルとイグニスのようではないか……。
リリィ:いやー。みんないい感じに強くなってるねぇ。
ミカ:リリィ、あなたはよかったの? なにもオーダーしなくて。
リリィ:んー、アタシの場合もうそこまで加工に頼る必要性がないんだよねー実は。マナコートでも十分な防御力だしさ。
アスカ:やあ。
シキ:やっほー、アスカちゃん。
カナデ:あの時以来かしら、それで、何かあった?
ミカ:アスカが来たってことは、国王陛下からのお呼び出し?
アスカ:その通り、といいたいところだが実はそうじゃない。まだ王宮自体は復旧工事の最中で、陛下は姫殿下ともども別荘で暮らしていらっしゃるよ。そんなことより、話があるんだ。……ここじゃ、さすがに人が多すぎるね。
ローヘリオン:悪かったなぁ、閑古鳥鳴いてた先月よりはいいだろ!
アスカ:まったく、帰ってくる前は必死に経営を回して、帰ってきても必死に仕事とはね。さすが、トップの冒険者様を持つ店は次元が違うね。
ローヘリオン:ウチにはそんな防音設備ねぇしな……そっちで頼むわ。
サエ:なんやシューコはん、またお出かけどす?
シューコ:んー、お呼び出しがかかっちゃさすがにねぇ。
ローヘリオン:こっちも注文が落ち着いてきたころだしな……サエ、そっちも休んでいいぞ。
サエ:そう? なら遠慮なく。
カナデ:それじゃあ、行ってきます。
ローヘリオン:おう、今度は長くなるなよ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
アスカ:ただいま。
職員A:おかえりなさい、局長。……うわっ、《瑠璃色のチューリップ》!? ホンモノ!?
職員B:え、嘘だろ……マジかよ! すげえ、ほんとに来るとは!
アスカ:うるさいよ。だいたい来るって前から言ってただろ。
職員C:すみません、局長。あの“生ける伝説”がウチを利用してるなんて信じない人が多くて……。
職員D:局長、例の件の解析データ、あがりました。あとでご確認を。
アスカ:いや、今から確認しよう。“蛇”に食わせておいてくれ。
ミカ:へぇー、アスカってホントに出世したんだね。
アスカ:上の席が空けば誰かは出世するさ。組織とはそういうものだ。
シキ:ところで、前の局長さんは? たしか、アリーとか言ったっけ。
アスカ:ああ、アリーか。彼女は今回のいざこざで死んだよ。
リリィ:あらら。
アスカ:ウチだけじゃないけど、ウチも結構な数メンバーがやられててね。復興作業に出てるものもいるが、今ここに残ってるのは大半があの動乱を生き残った者だけだ。さ、無駄話はこれぐらいにして、本題に入ろう。──中へ。
シューコ:おっじゃましまーす。
アスカ:さて、あれからだいたい2週間といったところだが、調子はどうだい。
ミカ:そうだね、道具もそろったし、いつでも行けるよ。
シキ:確か、魔動死骸区だっけ?
アスカ:ああ。今しがたそこに関する報告書が上がったところだ。……フム……。
リリィ:なにがどうなったの? ミスリルゴーレムがたいりょうはっせいしたとか?
アスカ:それぐらいなら君たちで十分対処できるだろう? そっちじゃなくて、君たちは知らないだろうが、あのあたりに調査に行ったとき、マギスフィアが奇妙な反応をしたんだ。まるで通信を受け取っているかのような、何かのメッセージを伝えているような、そんな感じの反応をね。
シキ:えー見せて見せてー。
アスカ:そうだね、君の知見も借りたい。どうだろう。
☆文献調査判定
シキ (2,6)+45→53 かなり解ったけど……?
シキ:んー……確かにアスカちゃんの言う通り何らかのシグナルになってるのは間違いなさそうだねえ。
アスカ:やはり君から見てもそうか。それで、これが何を意味するかはわかるかい?
シキ:うんにゃ。シグナルはシグナルなんだろうけど、言語的なパターンがよくわかんない。もしかしたら、手当たり次第に適当に打ってるものなのかもね。
アスカ:そうか……いや、いい。気にしないでくれ。陛下もこの件はダメで元々だったんだ。何らかの知的生命体がコンタクトを取ろうとしていることがわかっただけで上々さ。さて、そろそろ本題に入るとしようか。
シキ:今回は誰から? アスカちゃん?
アスカ:もしかしたらまたボクが君たちに依頼を出す日が来るかもしれないね。だが、今日は違う。今日はハーヴェス王国から直接の依頼だ。
Mission10 魔動死骸区域深部調査
依頼主:ハーヴェス王国
依頼目標:魔動死骸区深部の調査
報酬:250000G
先日は我が国を救援いただき感謝します。皆様ご存知の通り、いまだに状況は芳しくありません。しかし、世界のどこかから強力な飛空艇のコアを探し出し、それを回収することができれば我々の逆転勝利は目前となります。
乗り越えるべき障害はいくつか立ちはだかっていますが、まずは第一探索域である魔動死骸区の深部の調査をお願いします。
魔神軍“悪魔の瞳”と交戦中の各国家との交信、交渉はこちらで進めます。
この件は、皆様以外に成し遂げられるものはいないと確信しております。何卒よろしくお願い申し上げます。
カナデ:確認したわ。いいでしょう、受けましょう。
アスカ:それはよかった。陛下もお喜びになるだろうね。前金分の50000Gはあるが、必要かな?
ミカ:……いや、大丈夫だよ。それじゃ、行こう。
アスカ:目的地まではボクが道案内をしよう。ついてきてくれ。
リリィ:お祈り済ませたらね。
【ラック】リリィ (4,6)(1,5)+49→65 成功
ミカ:あたしも、武器研いでおくよ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
アスカ:着いたよ。ここが、例の場所さ。
カナデ:魔動死骸区、立ち入るのは初めてかしら。
アスカ:そうだね、死骸区、といっても独立した地域だし、ここに住んでいる人も多いんだ。発掘調査のようなものはやってることもあるけど、君たちには依頼したことはないかな。
シューコ:ふーん、そんな依頼もあるんやね。
???:ややや、キミは……誰だったかな。つい先日あったことがあるような気がするよ。
アスカ:……気のせいじゃないかな? 少なくともボクは、君と会話をした覚えはないんだが。
???:ヒドイじゃないか、あの熱い語らいを忘れてしまうなんて。でも、約束通り運命の子を連れてきてくれたことには感謝するよ、アスカくん。
カナデ:……どなた?
ネフティス:初めまして、になるね。わたしはネフティス。君たちのことはよーっく知ってるよぉ。運命の子、フォルトゥナの継承者。先日はずいぶんと大活躍だったそうじゃないかおかげでわたしが持ち場を離れて叱られるなんてこともないようで安心したよ。
ミカ:……あなたは、こことはどんな関係なの?
ネフティス:関係? カンケイ、かぁ……そう聞かれると困るなぁ。わたし自身は別にこの場所に入れ込みも思い入れも何もないんだけどさ、契約者がここがいいっていうもんだからシカタナクって感じだよ。
シキ:契約者?
ネフティス:そうだよ。君たちが産まれるずっと前、むかーしにね、冥府でのんびり自堕落ライフを送っていたわたしをわざわざ召喚してここで研究をしたいから守ってくれって契約を交わしたの。最近契約の更新があって少し内容が変わったんだけど……まあそんなこと君たちにはどうでもいいか。
ミカ:結局、あなたはここで何してるの?
ネフティス:ん、あー聞いちゃう? それ聞いちゃう? ざっくり言っちゃうとさ、キミたちを待ってたんだよねえ。だけどさ、君たちが来たからってはいどうぞって通すわけにはいかないのよね、さすがに。もし何らかの間違いで君たちが思ってたよりヨワヨワなんだとしたらさ、さすがにこの奥に通すわけにはいかないんだよねぇ。
ミカ:つまり、やるってこと?
ネフティス:ソユコト。いやぁ、物分かりがいい子で助かるよ……。
アスカ:……どうやら、ボクはお呼びではないようだね。後のことは頼んだよ。
ネフティス:さあ、遊ぼうか。