「なんだ? お前は。ここはお前のような人間が来るところではない。即刻立ち去れい!」
異変解決に来た博麗の巫女「博麗霊夢」その目の前には天邪鬼「鬼人正」が、威武堂々の構えで立ちふさがっていた。
「はいそうですか……って立ち去る訳がないでしょ? 空中にこんなお城を建てて何考えてるのよ。」
霊夢は、そう言いながらいつもお祓い棒を正邪へと突き立てる。その本体からは不気味なオーラが溢れ出す。
「……ほう、そうかそのお祓い棒。自我を持っているようだな。そいつに導かれてやって来たって訳か。」
「何だって?」
霊夢はハッとお祓い棒を見るが特に変化はない模様。再び正邪と睨み合う。
「困ったもんだ。アレの代償が大きすぎたか。すんなり世の中をひっくり返せないもんだなぁ」
その言葉を聞いた霊夢の顔が僅かに引きつる。若干おずおずとした口調で口を開く霊夢。
「あんた、もしかして……本当に下克上を企んで……」
それを聞き正邪の口がにんまりとつり上がる。
「ふっふっふ、如何にも。これからは強者が力を失い、弱者がこの世を統べるのだ。」
自慢気に両腕を組み、仁王立ちする正邪。そんな正邪の前で当代博麗の巫女
「呆れたわ。そんな誰も得をしないようなことをする妖怪がいるなんて……」
霊夢がそんな事を呟いた。
「誰も得をしないだと……」
正邪も呟いた。先程とは真逆の怒りが滲み出たような声音で……
「我ら力弱き者達が如何に虐げられていたか、お前たちには分かるまい! ならば、何もかもひっくり返る逆さ城で口を念願の挫折を味わうがいい。」
そう叫ぶと同時に正邪が飛んだ。手には一枚のスペルカードが握られている。
「逆転『リバースヒエラルキー』!」
正邪が宣言すると同時に正邪を中心に赤い段幕が連なって飛び交い、直ぐ様霊夢の元へとやってくる。
「この程度の弾幕で……」
「まだ終わらせんぞ!」「ッツ!?」
正邪はそう叫ぶと片手を掲げ、親指を立てひっくり返した。
「落ちろ……」
その瞬間霊夢の立ち位置が一瞬にして間反対のほうへとひっくり返った。
「ぉおっとっと……なにこれ? 入れ替わった?!」
一瞬の出来事にさすがの霊夢も驚きを隠せないと言った顔で声を上げる。段幕は止めどなく流れてくる。
「私の能力はすべてをひっくり返す! その気になれば貴様との力関係だってひっくり返せるのだ。さあ人間よ、諦めてこの城から立ち去るのだ!…………っと?」
暫くの間段幕を張り続けているがここに来て正邪は妙な違和感に気ずき、辺りを見渡す。そしてさらに首を傾げる。
巫女が……いない?
「なっ!? どこだ! どこにいった!」
気づけば辺りには自分以外の影は見えなくなっていた。いつも通りの静かな逆さ城がそこにはあった。
「なんだ? 私の攻撃に恐れをなして逃げ帰ったか? まあ、無理のない。さて、静かになったし姫の元へと帰るとするか」
が、その直後正邪の真上から凛と澄んだ巫女の声が響いた。
「自分から段幕を止めてくれるなんて親切ね。お陰で手間が省けたわ」
「なにっ!?」
「霊符『夢想封印』」
正邪が振り替えるとそこには、七色に光る美しい段幕がこちらに向かって飛び交っていた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふう、こんなものね」
数分後の現在。霊夢は異変の主犯かもしれないこの天邪鬼を取り押さえることに成功した。縄でぐるぐる巻きにされた正邪は身動きひとつとれずにただもがく。
「おのれ巫女め。だが残念だな。異変の主犯は私ではない、私がいなくなっても姫さえいれば……我らは…………!」
「おい、天邪鬼。お前の言う姫ってこいつのことか?」
と、今度は違うほうから違う声が聞こえてきた。そこにいたのは白黒の魔法使いのような女とその背後、白黒に隠れるように立つ小さな女の子がいた。
「ひ……姫…………?」
正邪がそっと呟くと、少女は怯えたように白黒にしがみついた。
そして……
「こ、来ないで…………」
直後少女はしまったといった風に口を閉ざした。
ボソッと少女の口から漏れ出たその言葉に正邪の瞳は黒く濁った。
「…………姫……真実を知ってしまったんですね。私があなたを騙していることも……利用しているだけのことも……」
「正邪……あの……」
正邪は少女の言葉にを遮るように、ふらふらと立ち上がり巫女とは向き合った。
「私はまだ諦めないからな、巫女め。覚えていろ」
そういって正邪は懐から人形を取り出す
「呪いのデコイ人形」
正邪が放った人形は霊夢達の目を欺き正邪の存在を見謝らせた。
「くっ、逃がすもんか」
すかさず霊夢も結界を張って逃がさないように弾幕を展開する
「結界『二重弾幕結界』」
霊夢を中心に二重の結界が広がっていく。
が、正邪が手に持つものを見て舌を鳴らす。
「隙間の折りたたみ傘」
妖怪の賢者が持っている傘によくにたアイテムを使い正邪は隙間を作り出した。
「じゃあな、博麗の巫女。いつかまた下克上の時を楽しみに待っているがいい」
「ッツ、待ちなさい!」
霊夢が正邪を取り押さえようとするがすでに正邪は隙間の中に入り込み、今にも逃げ出そうとしている。
正邪は最後に白黒にしがみつく少女「少名針妙丸」を一瞥し素早く隙間に駆け込んだ。霊夢の手は惜しくも隙間があった場所を虚しく通りすぎただけだった。
「あぁもう、逃げられた。魔理沙、あんたも見てないで手伝ったらどうだったのよ。」
と、ご立腹の霊夢に魔理沙は
「まあまあ、そんなに怒んなって。私はこいつのお守りをしてたから動けなかっただけだぜ? しょうがない、しょうがない」
「もう!」と頬を膨らます霊夢。そんな彼女は魔理沙の足元にいる小さい少女を一瞥し、魔理沙に説明を求める。
「こいつは、さっき通りかかったら襲ってきたから退治しただけだぜ。なんでもさっきの正邪に打ち出の小槌を悪用されているのを知らずにこの異変を起こしたらしい。だから真の黒幕はさっきの正邪ってことだ」
「はあ、めんどくさ。とにかく帰りましょう。こんなところにいたら酔いそうだわ。あんたその子どうするの?」
「どうしよっかな~」
「兎に角帰るわよ」
ふわふわと空を飛び始める霊夢と魔理沙。その魔理沙の背中に飛び乗る針妙丸。
彼女は最後に再び逆さ城を振り返り逃げ出した友人を思い浮かべ呟いた。
「ごめんね…………」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
月明かりに照らされ一人森をさ迷う哀れな反逆者。縄を引きちぎり逃げ出そうとするも、体の傷が酷く体をひこずるように歩いている。
「ッハァ……ハァ……ハァ、いてぇ。…………姫…………」
息を荒く吐き出し、虚ろの瞳で森を歩くもその歩みは儚く…………
ドサッっと言う音ともに倒れそのまま意識は深い闇へと落ちていった。
霊夢は今自分の神社でお茶を啜っている。静かな境内に綺麗な草花。美味しいお茶に煎餅と何一つ変わらない博麗神社が今日も続いていた。
「ねえねえ、なに飲んでるの? 私にもちょうだ~い」
この小さい小娘を除いて
「これはお茶。日本人がのむ飲み物よ」
霊夢が説明すると少女は、目の前にあった煎餅を徐に手を取りかじった。
「…………硬い……」
次にお茶を啜り
「苦い…………」
と顔を歪めた。
「なんで、この子はうちにいるのかしら…………」
霊夢のぼやきに少女は分かってないような無垢な瞳で霊夢を見つめニコッと笑った。
「ハァ……」
霊夢はなにげなしに庭を見た。植物が枯れている。それを見て霊夢はバッと立ち上がった小さい少女が不思議そうに見上げている。
「植物が…………枯れてる?」
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