東方葉鬼花   作:七色 壊

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結構早めの投稿。調子がいいだけ……


葉っぱと天邪鬼

目を開けるとそこには見慣れない天井が広がっていた。痛む体を起こし、辺りを見渡す。どうやら今は何処かの家の布団で眠っていたようだ。服を脱ぐと体に包帯が巻かれている。

 

「いったい誰が…………」

 

もう一度辺りを見回してみる。あるのはベッドと小さな机だけのなんとも殺風景な部屋。

と、正邪は机の上に手紙らしきものと、コップにジュースらしきものがおいてあることに気がつき、ベッドから起き上がった。近づくとやはりそれは手紙だった。正邪はその手紙を手に取り中身を取り出した。

 

『起きたらこのジュースを飲んでください。お姉ちゃんに教わった秘伝のジュースです。すぐに帰ってきますので待っていて下さい』

 

手紙にはなんとも真面目そうなきれいな字で書かれていた。正邪は黙って手紙を起き、ジュースを見る。サッと手にもって用心深くそれを観察する。が特に違和感はない。次に臭いを嗅いでみるも甘い香りが漂うだけで不自然さは感じられない。正邪は意を決してそのジュースを口元に運び、飲んだ。

 

「……ゴクッ………………あっ……」

 

それを一口のみ思わず声を漏らした。

 

「……おいしい」

 

あまりの美味しさに一気に飲み干し、暫くの間惚けていた。そのせいで回りへの警戒が疎かになっていた。

彼女が部屋に入ってくるまで気配が感じられなかった。

正邪が気がつくと、扉の前には緑色の服をきた幼顔の少女が立っていた。

 

「「…………あっ……」」

 

二人の声が重なった。正邪はヤバいと言った表情であたふたしている。

そんな正邪とは裏腹に緑の少女は正邪を見るなり顔をパーッっと綻ばせ笑った。

そのときの正邪はこれからの自分の人生にこの少女が深く関わってくるなど思いもしなかった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

突然だが、私は鬼人正邪。基本的に人に嫌がらせをすることが大好きな天邪鬼だ。ましてや誰かに助けられ、世話を焼かれる何てことはもっての他だ。それなのに…………

 

「少し待っていて下さい。もうすぐお料理できるので。」

 

恐らく私を助けてくれたこの緑の少女。先程の部屋で出会い、ちょうどお昼だといって私をこの椅子に座らせた。

 

「今日は大根さんがおいしいって教えてくれたんでおでんを作ろうと思うんですよ。他の具材は人里で買ってきまして、もうすぐできますんで」

 

と言いながら、せっせと大根を切っていく。誰もそんなこと聞いていない。て言うかおでん? 今は夏だぞ、しかも真っ昼間。大丈夫かこの人。

 

「あ、そうだ。待っている間にこのジュースをどうぞ。」

 

と、出されたのは先程のジュース。思わず手が伸びてしまいハッと手を戻した。

そのようすに少女は首を傾げ少し困り顔になって

 

「口に合いませんでしたか?」

 

と、聞いてくるので貰わない訳にもいかず渋々飲んだ。やっぱりおいしかった。

 

「あの、お名前聞いても良いですか?」

 

少女が聞いてくる。

 

「せ、正邪…………」

 

素っ気なく答えた。が、少女は何故か嬉しそうにこちらの手を握り笑ってきた。この笑顔はなぜだか知らないが癒される。天邪鬼の私ですらそう感じてしまう。

私は照れ臭くなって、目を反らした。そして知らした先にはおでんのお鍋がピーピー音を立てているのが目に入った。

 

「あの…………おでん、大変なことになってますよ」

 

そう言うと彼女は、えっ!? と呟き鍋を見て叫んだ。

 

「ああああああああああああああ! しまったああああ!」

 

大急ぎで台所に戻る少女。道中焦りからか色々な物にぶつかり、悲鳴が飛び交う。

その光景に思わず……

 

「…………ふふっ……」

 

ハッと口を覆い、再び台所を見る。どうやら鍋は噴火する前に間に合ったようだ。さて、あのおでん本当に食べるのだろうか? 食べるんだろうな。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「おいしいですか?」

 

真夏の真っ昼間におでんを頬張ると言う謎に挑戦を繰り広げている最中彼女はそればかりか聞いてくる。なんどもおいしいと答えているが止まない。

 

「おいしいよ。特にこの大根がいいね、よく染みておいしい」

 

そう言うと少女はやはりあの笑顔をこちらに向ける。その笑顔は心地よいながらも、少しまぶしい。それでいて何処か悲しくも見える。

 

「そういえば、あなたの名前を聞いていないな。」

 

この緑の少女は私を助けてくれた人……妖怪? まあ、どちらにしろ受けてしまった恩は返さないとむず痒くて生きて行けない。

 

「私ですか? 私は植物の妖怪で『瀬笈 葉』といいます。普段はこの家で近くの植物を見回ったり、里の子供達と遊んだりしてます」

 

『せおい は』変わった名だ。まあ『きじん せいじゃ』も負けていないと思うが……

 

「さっき、大根がおいしいって教えてくれたっていっていたけど、誰に聞いたんだい?」

 

「大根さんに」

 

「だれに……?」

 

「はい、大根さんに聞きました。お庭にいますよ。行きますか?」

 

ん? 話が噛み合わないな。大根さん? 変わった名字だ……庭にいる?

正邪は庭を見回した。が、庭には畑があるだけで人はいない。畑にはニンジンやキャベツ、大根が植えられている。だいこん?

 

「はい、私の能力は『植物の声を聞く程度の能力』なので、大根さんに一番美味しい時を教えてもらったんです。喜んでますよ」

 

「そ、そうか」

 

若干苦笑いを含みながら答えた。この子は頭があれなのか、それとも真実なのか。まぁ、幻想郷も広いしこんな事もあるか。

正邪が、苦笑いを堪えながら確かに美味しい大根を頬張る。

すると、葉は突然ピクッと何かに反応したようにあたりを見回し出した。

 

「ん? どうたんだ?」

 

「あ、私ちょっと出かけるところがあるので少し出掛けます。東のとある神社に行かないといけないので、好きなだけゆっくりしていて下さいね」

 

葉はそういって荷物をまとめ家の扉を出て歩いていった。西の方に……

 

「そっち、違うって」

 

大丈夫かなと思いながらも正邪は能力を展開。葉の進行方向を逆転させ、無理やり東に向かわせた。

葉が飛んでいった空を見つめ、ボーッと目をつむる。

植物がたくさんある。風に舞、木々が踊る。それに会わせるように小鳥が鳴いている。心地よい。こんなところがまだ、ここにあったんだ。

正邪の頬に水が滴った。無意識のうちに涙を流していたことに気付き涙を拭おうと下を向いて、唸った。

 

……植物が、枯れてる?

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

それから暫くの時間が経った。正邪は特にいくところもないので葉の家で休んでいる。気がつくと机の上にさっきのジュースが置いてあった。いつの間に置いたのかと不思議に思ったが、あの子は不思議と甘えたくなるようなそんな気分にさせてくれる。が、嫌な感じはしなかった。暫くだけここにいてもいいかも知れない。

 

「……………………静かだな……」

 

ボソッと呟いてジュースを飲む、既に時刻は夕方に差し掛かっていた。

 

「ん?」

 

サッと部屋のなかを見回していると、小さな机の上に写真立てが置いてあるのが目にはいった。

 

「これは…………葉……かな?」

 

そこには葉が写っていた。と、同時にもう一人見知らぬ人もいた。葉とよくにた出で立ちの少女で、紫色の服を着ている。少しの間正邪はその写真に魅入っていた。

 

「虹霓文花……私のお姉ちゃんだよ」

 

気がつけばまた葉がそこに立っていた。天邪鬼としての警戒心が不思議と彼女には全く働かなかった。

 

「文花? 葉のお姉ちゃんか……今はどこで何してるんだ?」

 

正邪が写真をみながらそう問う。が、葉からの返事は来ない。不思議に思って振り向くと、そこには…………翳りのある瞳で俯く葉の姿があった。

困惑する正邪。本来なら大好物の泣き顔。このときだけは胸の奥が締め付けられるように…………痛かった。

直後……

 

「ああああああ! あんた! こんなところにいたー!」

 

場の雰囲気をぶち壊すような声と共にドアを蹴破って紅白の巫女が入ってきた。

 

「は、博麗霊夢! なんでここに……」

 

「こっちの台詞よ。葉に忘れ物を届けに来たらなんであんたがいるのよ。あっ、これ忘れ物よ」

 

巫女は懐から石の玉を取り出した。

 

「あっ、ありがとうございます。」

 

陰陽師の紋様が刻まれた不思議な玉。その玉からはこれといって力は感じない。むしろその逆の力を感じる。

 

「んで、あんたがここにいる理由を聞かせて貰おうかしら。そしたらすぐに退治してあげるから」

 

霊夢は身構える。それにならって正邪も腰を落とし臨戦状態に入る。

と、その隣であたふたしていた葉は慌てて止めに入る

 

「まま、待ってください。霊夢さん、正邪さんとはお知り合い何ですか?」

 

「はあ? 知り合いと言うか異変の主犯よ。」

 

異変と聞き、葉が驚きの眼差しで正邪を見つめる。正邪は狼狽えるように後退る。

 

ヤバい、どうしよう。

 

正邪の中で焦りが乱反射し心臓の鼓動が早まる。

正邪は逃げ出そうと、懐に手を入れ……

 

「霊夢さん、待ってください。」

 

るのをやめ、驚きの眼差しで前を見つめる。それは霊夢も同じだった。

 

「霊夢さん、お願いします。彼女を見逃して上げて下さい」

 

葉が正邪の前にたち頭を下げたからだ。

 

「あんた……なにいってんの?」

 

「私には分かるんです。今日まで一緒に暮らして、正邪さんはそんなに悪い人じゃないって、きっと異変を起こしたのだって何か理由があると思うんです」

 

予想外の葉の説得に正邪も霊夢も唖然として呆けている。

てか、今日一日一緒にいただけなのに……

心の中で苦笑いをする正邪。心の中で放心する霊夢。そんな二人に真ん中で葉は真剣な眼差しで霊夢を見つめる。

 

「でも、そいつを倒さないと異変が……」

 

「異変は、今どうこうしないとダメですか? それにほらもう異変の被害は収まってるじゃないですか……」

 

霊夢は困ったように頬を掻く。

 

「だから、お願いします。正邪さんを……」

 

一瞬葉がふらつき、正邪の方に倒れてくる。正邪は倒れる葉をつかみ顔をみて目を剥いた

 

「葉……お前……目が」

 

「せい……じゃ…………さんを……みのが……して…………」

 

直後に葉の瞳が閉じられ、意識がなくなった。

 

「なっ、おいどうしたら葉! おいどうしたんだよ!」

 

焦った正邪は葉を抱き抱えたまま葉の名前を呼んだ

 

「おい巫女、葉はどうしたんだ!」

 

すると霊夢も血相を変え、葉に近寄りこう言った。

 

「今すぐ水と栄養のある腐葉土を持ってきなさい。私は幽香をつれてくるからすぐにベッドに運んで!」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

その日の夜、倒れた葉をベッドに運んだ正邪は霊夢が連れてきた妖怪「風見幽香」の処置を隣で見ていた。

 

「まあ、これで大丈夫でしょう。いつもの発作よ、今は抑えてあるから」

 

そういって幽香は立ち上がる。と、同時に正邪は葉に駆け寄る。

 

「葉は、なんなんだ? 妖怪が病気にかかるなんて聞いたことがないぞ」

 

「その件に関しては後で説明するから、今は静かにしてなさい」

 

霊夢が言う。悔しい思いを噛みしめ渋々部屋から出ていく正邪。

 

「じゃ、私も帰るわ」

 

幽香も、続いて部屋から立ち去ろうとして霊夢の前に立ち耳打ちした。

 

「…………もう………………満月…………だからね」

 

それを聞き霊夢の顔が明らかに沈むのが正邪に目にもはっきり映った。あの巫女をここまで心配させるこの少女は一体…………ここから葉に興味を持ち始めた正邪は葉の看病を兼ねてこの家に居候することとなった。




結構長めのストーリーになったかな?
何はともあれ、葉の異変に気付き始めた正邪。これから彼女がどんな行動に出るのか楽しみです。
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