東方葉鬼花   作:七色 壊

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ちょっと、文章おかしいところあるかも……ご了承下さいませ


天邪鬼の、最初で最後の人助け

葉が意識を取り戻してから、暫くが経ったころ。人気の少ない場所に鬼人正邪と博麗霊夢はいた。

 

「なによ、急に呼びつけて」

 

最初に口を開いたのは霊夢だ。彼女はこんな人気のないところに自分を呼びつけた正邪を訝しげな表情で見返す。

 

「私分かったんだ」

 

不意に正邪が喋った。霊夢が、何をよ、と聞き返す。

 

「私は、今まで人の嫌がることしかやってなかった。まぁ、それは天邪鬼だからってのもあったし、この能力の影響もでかい。全てをひっくり返すこの力は、人を嫌な気分にさせるのにはもってこいの力だからな……」

 

それに対して霊夢は激しく肯定しながら首を縦に振る。

 

「ほんとそれ……あれは面倒かったわ。自分の操作は逆になるし、弾は逆から飛んでくるし、位置はおかしな事になるしで、あれは本当に殺意が湧いたわ」

 

過去の異変を思い出し、怒りを吹き返す霊夢。その様子に正邪は僅かに苦笑する。

 

「でもさ、こんな事を考えれるようになっちゃったら天邪鬼失格かもしれないけど……」

 

正邪の表情が陰る。なにかを思いつめているような

 

「私は、この力を使って葉を、救ういたい……今までとは考え方を変えて、この力を使えば、私はあいつを救える……」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

博麗神社の縁側にて、二人の少女がお酒を交わしながら喋っている。

博麗霊夢と、霧雨魔理沙。霊夢は先程正邪が自分に言ったことを魔理沙にも伝えた。

 

「――という事よ」

 

霊夢が、喋り終えると魔理沙は酒のアテのキノコをつまみながら答える。

 

「ふ〜ん? それで、具体的にはどうやるって?」

 

得体の知れない色のキノコを齧りながら魔理沙が聞く。一方霊夢は、キノコには一切手をつけず酒を飲む。

 

「それが教えてくんないのよね〜。これは私の戦いだって言ってさぁ。『博麗の巫女、貴様は手を出すな!』ですってよ」

 

「ほう、それは随分強気だな。ま、本人がそう言うんだ。私らは手を出さず、遠くから見守ってやろうぜ。どのみちあいつの決断だ。私らが手を出す、そんな野暮なことは私もしたくなかったし……」

 

「魔理沙……」

 

「よし、酒だ。今日はとりあえず飲もうぜ。明日のことは明日考えればいいんだ」

 

二人の頭上には、いつのまにか半分に切れた月が出ていた。たが、霊夢はそれを見てもいい気分にはなれなかった。何故ならそれは、美しい酒のアテではなく、あの心優しい妖怪を死に導く、残酷なカウントダウンだったから……

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「葉〜ちゃん。はい、あ〜ん」

 

「は、恥ずかしいです……はむ……」

 

「はい、よく出来ました。よしよし」

 

「うぅ、恥ずかしいので頭を撫でないでください」

 

時刻は夕方を過ぎ、夕食時に差し掛かる。人里離れた小さな家の中で緑の少女が、小さい少女にご飯を食べさせてもらっている。

小さい少女である針妙丸は、何故か、メイド服を着用し布団の上で寝ている葉に対してやたらとお世話をしていた。彼女は、葉の頭の濡れた布巾を取り替え、そして、夕食であるお粥を食べさせる。

そして、その光景を隣で見ているのは天邪鬼の鬼人正邪。彼女は何やらぎこちない表情でそれを見ていた。

 

「あー、姫? いったい何をされているのですか?」

 

とうとう痺れを切らした正邪が聞いた。すると、針妙丸は本当に楽しそうにはにかみながら正邪の方を振り向く

 

「え? だって病人の看病ってこうやってやるんでしょ?」

 

と、さも当たり前な常識を語るよう答える。

 

「いやいや、しませんよ! 百歩譲ってご飯を食べさせたりするのはしますが、メイド服は着ませんよ!」

 

と、正邪が言うと、針妙丸はまるでこの世の終わりを見たような驚きの表情を浮かべる

 

「うそ! だって、香霖堂で見つけた本にそうやって書いてあったよ! それで、この後はお薬におまじないをかけてから飲ませるって……」

 

そう言いながら、薬(幽香に渡されたもの)を指差しながら答える。

 

「それ、間違った知識を植え付けられてますよ、それに姫1人じゃ本をめくる力がないでしょう? いったい誰にその本を読まされたんですか?」

 

「魔理沙」

 

その瞬間正邪と、そして布団の上の葉までもが、あ、やっぱり、と言った感情に包まれた

 

「はぁ、とにかく姫。その知識は少しおかしいのでもう金輪際やめて下さい。お姫様がやる事ではありませんし……」

 

子供を嗜める……と言うよりは小さなお姫様を嗜める付き人のような雰囲気で正邪が言った。

 

「……ふふっ」

 

すると、突然誰かが笑った。笑ったのは葉だった。まだ少々顔色が優れないところもあるが命に別状はなさそうだ。

 

「ん? 葉、どうした?」

 

正邪が聞く。すると葉は小さな微笑を浮かべて喋る。

 

「お二人……仲良いですね。まるで姉妹みたいです」

 

そう言いながら葉は部屋に飾ってある写真を見た。そこには葉ともう1人紫色の少女が写っていた。

 

「あの写真の人って、葉のお姉ちゃんだよね?」

 

針妙丸が、正邪の裾をくいくいと引っ張る。どうやら連れて言ってと訴えているようだ。

正邪が針妙丸を肩に乗せ、写真の前まで行き、彼女を写真の前に置いた。

 

「うん。もう随分と前にいなくなっちゃいましたけどね……お姉ちゃん、今どこにいるんだろう。私が……消えちゃう前に、もう一度だけ……逢いたいな」

 

「…………」

 

部屋を思い沈黙が包んだ。針妙丸は泣きそうな、正邪は何が神妙な顔つきで葉を見つめる

 

「ハッ⁉︎ お、重い空気にしちゃいました! は、話変えましょう! あ、そうだ確かお二人はわたしが寝ている間ずっと家や、植物の世話をしてくださったんですよね。改めてありがとうございます。植物たちもお礼を言っていますよ」

 

葉は、窓から見える野菜畑を指差してそう言った。自分で作ってしまった空気を払拭しようと頑張って話題を変える。

そして、針妙丸も空気の重さに耐えられなかったのか、雰囲気を変えようと明るい口調で話し出す。

 

「そうだよ。葉〜ちゃん毎日やる事多すぎて大変だった。こんなことを毎日繰り返して葉〜ちゃんは偉いよね」

 

「いえいえ、これが私に出来る数少ない事ですし、今の生活にも満足してますからね」

 

そんな感じの会話を暫く繰り広げ3人はは夕食を終えた。その後、葉は再び寝てしまった。が、それは苦しい眠りではなく、安らかな安堵の眠りであった。

そして、その表情を、正邪は何か意を決したような表情で見つめていた。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

それから少しだけ日が経った。月はどんどんと満月に近づく。

今の月は三日月……それを見て正邪は忌々しげに舌打ちする。

彼女がいるのは、葉の家から更に西に行った小高い丘。そこには一つの墓石のようなものが置いてある。荒く削られた墓石には、虹霓文花の文字が見て取れる。

正邪は夜中に一人抜け出し、ここを訪れた。葉が大好きだと言うお姉ちゃんに逢いに行くために。

 

「文花さん、初めまして。鬼人正邪です。あなたの妹にお世話になっています」

 

正邪は、微笑を浮かべながら墓石を撫でる。ゴツゴツとした感触が掌を伝う。

 

「文花さん、霊夢さんに聞きましたよ。あなたは自分が異変の黒幕だと言い張ってみんなの気を引いたって。でも、それは葉を守るための自己犠牲だった。あなたは素晴らしい人だ。偶然出会っただけの葉のためにそこまで、自分が消えることも厭わないで大切な人を救えるその心が……いや、そこまで思えるような人に出会えたあなたが羨ましい。葉は、本当にドジで、何かやらせれば必ず何かやらかして帰ってくるような奴で、方向感覚も崩壊してるし、料理させれば必ず火を吹かす。全くもって見ていられないどうしようもない奴ですよ。

……でも、だからこそ守りたくなるんですよね。私の心はあなたのように綺麗じゃないけど、私も少しでもあなたのようになれたらいいな……と……?」

すると、後ろに僅かな気配を感じた。振り返るとそこに経っていたのは、風見幽香だった

 

「わたしにも、どうすることも出来なかったあの子をあんたが助けるって言うの?」

 

立っているだけでも、凄まじい妖気を放つ幽香。が、それに全く気圧されることもなく、まっすぐな瞳で幽香を見つめ返す。

 

「あぁ、あんたや巫女が成し遂げられなかったことを、文花さんが成し遂げたかったことをやってやる。そのために私は今ここにいるんだ」

 

正邪はキッパリと自分の思いを伝える。それを見た幽香は、小さく笑った。

 

「ですってよ?」

 

幽香はそう言った。そんな彼女の目線は正邪の後ろにある。正邪が、振り返るとそこには

 

「こんにちは。正邪さん」

 

紫色の綺麗な女性が立っていた。それは葉の部屋に飾ってあった写真に写っていた少女にそっくりで

 

「ええええええええええ⁉︎」

 

正邪は思わず声をあげた。

 

「な、なんで! 異変の時に死んだんじゃ……まさか幽霊⁉︎」

 

正邪が、慌てふためいたように幽香を見る。すると、幽香が突然吹き出した。

 

「あはは、妖怪がそんな簡単に死ぬわけなじゃない……彼女は一年に一回しか咲かないとある花の妖怪なのよ。あの時は、その時期が去ったから消えただけで別に死んだわけしないわ」

 

相変わらず正邪は、驚きを隠せず口をパクパクしている。

 

「いやだって、葉は完全に死んじゃったみたいな感じで話してたぞ」

 

「それはあの子の、話し方が下手だっただけじゃない? 現に彼女は今ここにいるんだし」

 

「えぇ……ほ、本当に?」

 

正邪が、文花に聞いた。文花は写真に写っていたように綺麗な笑みを浮かべる。

 

「葉が、お世話になってます」

 

「あ、いえこちらこそ」

 

「それで、葉を救うって本当? それは具体的にはどうやるのかな?」

 

突然本題に入ってきた文花。マイペースな人だと正邪は思う。

 

「はい、私の能力。(なんでもひっくり返す程度の能力)を使います。その能力で、私と葉の立場を……ひっくり返したやります」

 

力強くそう言った正邪。その表情は強く硬い意志を物語っている。

そして、その発言に驚いたのは、文花と、そして、同じくそこにいた幽香だった。二人は暫く驚いたように目を見開いていたが、その内、少し攻め立てるような口調で正邪を見た。

 

「そうすると、あなたは毒にやられて死んでしまうけど?」

 

文花が聞いた。

 

「百も承知です」

 

正邪は答える

 

「葉が、今のあなたと同じ天邪鬼の立場になるわよ?」

 

優香が聞いた。

 

「死んじゃうよりはマシです」

 

正邪は答えた

 

「葉が、あなたの死を悲しむわよ」

 

どっちが聞いたのか、その言葉に正邪は一瞬戸惑った。が、直ぐに元に戻る。彼女の頭にはひとりの姫の姿が映っている。

 

「……姫が…………葉と共にいてくれると思います」

 

正邪の真剣な答えに、二人は、諦めたように同時にため息を吐く

 

「意志は固いようね。文花?」

 

「そうね……全くあの子は霊夢さんや魔理沙さん達だけでなく、天邪鬼までも丸め込んでしまうとは……最早それもあの子の能力なんじゃ」

 

文花が苦笑しながら答えた。

そして、正邪は

 

「それが、葉の魅力です……」

 

そう一言答えた。

 

するどく尖った三日月が無情にも少しだけ欠けていく。




一時間足らずで書き上げました。急いでたもので見苦しい文章になっているかもですが、良かったら見てください。

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