ーユーキスー
道中何事もなく東の塔へ到着、入り口となる巨大な扉の前へと辿り着いた。見た限りは普通の扉のようだが、ヤンガスが開けようとするもビクともしない。…どんな仕掛けなんだ? と思った時、同行してきたポルクが前へと出てきて扉を開けた。…上げ戸かよ! ポルクは得意気だが、俺達はユフィールを除いて仕掛けに呆れた。
ポルクは扉を開けると、後のことは俺達に任せると言って村へと戻っていった。誰かを護衛に…と考えたのだが、風のように走り去っていってね。子供というのは恐れを知らないね、羨ましい限りだ。ポルクが無事に村へと着くよう祈りつつ、俺達は東の塔の最上階を目指しますかね。
火の息を吐く蛙の魔物に冷たい息を吐く小悪魔、全体攻撃を仕掛けてくる魔物が多い。しかも背後にはホイミスライムが控えていて、中途半端な攻撃をしていれば直ぐに回復してしまう。みんな善戦するけども時間がそれなりに掛かってしまう、これでは最上階へ向かうのに時間が……。
ゼシカがいる可能性がある以上、時間を掛けるわけにはいかない。そんなわけで皆に声を掛けて前に出る、今回は俺が先陣を切って無双しよう。討ち洩らしはエイト君達に任せる、…遅れるんじゃないぞ!
相手が息を多用するのであれば、こちらも同じくブレスを多用しよう。MPの消費はないからガンガン吐けるぜ? …とのことで、炎のブレスで魔物を焼き払いながら進む。俺の無双する姿にエイト君達は、ウンウンと頷きながら流石と尊敬の眼差しで見てくる。…その中でもエイト君のポケットから顔を覗かせているトーポからは、尊敬とは違う畏怖の念を感じる。……不思議な鼠よのう。
俺の無双により東の塔を素早く踏破、最上階に辿り着いたわけだがゼシカ…女性の姿はない。ただポツリと一つの石像が佇んでいる、両目が赤い宝石の美しい女神像? それに見惚れていると背後から物音が、振り向いてみれば一人の女性が。…彼女がゼシカなのか?
しかし彼女の様子が変だ、…って俺達のことを敵として見ている!? 兄を殺した盗賊って俺達は違う! 誤解を解こうにも彼女は俺達に向かってメラを放ってきた。それを散開して避けるも彼女は更にマリオを高めて…、これは流石にヤバいんじゃないか? 俺やユフィールはともかくエイト君達が! …そう思った時、
『待て!!』
何処からか青年の声が。
その声は暴走しているゼシカに語り掛ける、青年の声を聞いたゼシカは戸惑う。どうやらその声は亡くなった彼女の兄であるサーベルト、彼女に対して止めろと言うが止まらぬようで…。既に高まった魔法、メラミに近いかそれ以上のモノが俺達に向けて放たれてしまい…。それに目を剥いて怯むエイト君達だが、俺は前に出て素早くひのきの棒を取り出しグランドブラスターの一撃を放つ。俺の強力な棒術スキルで打ち消して事なきを得る、…危なかったな。
冷静になったゼシカへ青年の声は語り掛ける、俺達にも聞いて欲しいそうだ。青年…サーベルトは語る、彼は死の間際にその魂の欠片をリーザス像が預かってくれたと言う。リーザス像の赤い瞳が光り、俺達にとある光景を見せてくる。そこには…、やはりアイツの姿が…。
ドルマゲス、ドルマゲスがサーベルトを殺す様を俺達は見た。殺したサーベルトを見下ろして笑い、そして…消えていく奴の姿を。俺は知らぬ内に拳を握り締めていた、…ドルマゲスに対しての怒りが募る。…ドルマゲス、…相対した時に覚悟するといい!
光景が消え、サーベルトの魂はゼシカに別れを告げて天へと還っていく。自分の信じた道を行け、兄であるサーベルトの最後の言葉。それを聞いたゼシカは泣き崩れる、俺達はそれを見守るしか出来ない。
悲しむ彼女に言葉を掛けたいがね、…それは出来んわけよ。故に俺達はこの場を去ることにした、…今は存分に泣いた方がいい。今はただ、…泣いた方がいいんだ。