老練少年兵と氷川さん   作:ちりめ

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文字通り彼に仕事なんてありませんよ。フラグではないよ?
それとマロク様、ユダキ様、この作品への評価、ありがとうございます!(遅い)

また、お気に入りありがとうございます!こんな内容なのに…お名前の方は敬省略させていただいております、申し訳ありません
takeno、九澄大牙、ヤタガラス、フリーランス、スカイイーグル、ブルーマン、カズーーーー、アイリP、メタナイト、Rw、怪盗N、紅魔、雫、陽奈、フユニャン、Back_ON、ステルス★ちりあん、扇屋、エンジュ、韻雅鷹䨻、N.S.D.Q、はるかずき、ヴェヌス、kokodei、geso、やんとも、マーグナー、ジーク、銅英雄、バーサーカーグーノ、kjunese、ジム009、‪Phalaenopsis‬、Goriyama、ダイスケ37、てぃけし、マロク、ユダキ、天駆けるほっしー、ハヤト.、グレー、シュガーさん、猿もんて 


6月6日からの再開

俺は部屋を見ていた、というよりその中にいた。狭苦しい部屋に4つのベッド、床に散らばるトランプ。無造作に部屋の真ん中におかれたテーブル。蒸し暑さが重くのし掛かってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおいおい、勝負に乗ったのも負けたのもお前だろ。自業自得じゃないか、なぁ、そう思うだろ?自分でもよ?」

 

目の前には兵士がもう一人の兵士に胸ぐらを掴まれ、少し引け腰になりながら詭弁の言い訳を並べていた

 

「うっせぇぞ!ウォーレン!てめぇ、小細工なんかしやがって!」

 

見たところ賭けに下手なイカサマをした挙げ句、バレたようだ

 

ウォーレン「いやいや、そこに俺の罪は言うほどないぜ。なぁ、エドもなんか言ってやってくれよ」

 

なぜ俺に振るんだ。いつも尻拭いだ。

 

「細工にでかいもちっこいもねぇだろ。放してやれ、ジョセフ」

 

ジョセフは融通が通る分、まだ問題を起こすなんて真似はしないが、ウォーレンときたら…

 

ウォーレン「おお!屁理屈!」

 

やっぱやめとこう

 

「ジョセフ、いいぞ?好きにして」

 

ジョセフ「ん?そうか、お前がそう言うならな」

 

ウォーレン「え?え?!悪かった!頼む!許してくれ!サムライだろ!?お前!」

 

「うっわ、子供に助けを求めるとか、またかよウォーレン!」

 

声が無駄にでかいアントン。最初は煩かったが今は慣れた

 

後ろから断末魔じみた悲鳴が聞こえる。そのおぞましい被害者に向けて念を押して告げておく

 

「称えるべきは俺じゃないってことさ」

 

俺たちは今、名前なんて知りもしない軽巡洋艦に乗り、ドイツの数年分の侵攻を巻き返さんと意気揚々、とまではいかないが、それなりに高い士気のもと、反撃にうってでようとしている。

そして、俺と同じ部隊に配属されたウォーレン、ジョセフ、アントン。こいつらは少なくともそれなりの「理由あり」の俺を仲間と認識してくれている。それは喜ぶべきだろう。

 

俺は日本人だったから。といっても、日系じゃない。留学に来たはいいが、中華とおっ始めたお陰で帰れなくなった。一緒に来たガキを本国へ送り返す条件として俺という人員が米陸軍に入っている。勿論、犯罪者として裏社会の人間だった俺を持って受け入れた見返りとして奉仕を要求するのは当然の摂理だ。間違っちゃいない

今はエドワード。こちらでいうとこのギャング共とつるんでるときに得た籍だ。手放すつもりはない。というより、俺は初めから日系人のエドワードなのだ

 

ウォーレン「なぁよぉ、ちょいと理不尽すぎるぜお前ら…」

 

こいつはウォーレン。調子の良い大馬鹿者で、正真正銘の阿呆。だが、空気は読めるし、嫌味な役回りにさらっと回って、フォローをしてくれる、なんやかんやでムードメーカーだ。

 

その隣にいる筋肉質な薄い黒肌がジョセフ。冷静沈着でジョークも通じる。礼儀にも精通があって大学に入れるレベルの頭を持ってる。問題があるとすれば眼鏡をかけても優秀そうには見えないことと、イカサマみたいな卑劣な真似を嫌っていて、俺の人参を代わりに食ってくれないことだ。

 

そしてベッドで間抜けぶりを発揮しているこれまた救いようのない無神論者ごっこをしているのがアントン。シスターは神と結婚していると言っているがなぜあいつは神父と握手したがるのかよくわからん。

まぁ強いて言うならこいつは観察眼がどうにかしてる位に広い

 

そんな俺らを率いるのはジャクソン。首根っこを常に掴む役は大変だろう

 

「…そろそろだ。行くぞ」

 

作戦説明、並びに戦闘準備等を行うために召集が入る時間が迫っており、そろそろ移動せねばならない。一言皆に伝え、甲板まであがる

 

移動中に、ヘルメットを着用し、甲板前で立て掛けられたライフルを自分の分だけ取ってから甲板に出る。

これだけなら簡単だが、これがこの船全体の動きである以上、かなりの人数がこの一連の行動を行うとなると、まぁ混雑する。そのため、全員が動き出すより少し早めに俺らは動いた。勿論、そんな考えの奴はそれなりにいる。まぁ長い時間かけての移動になってしまった。

 

それからは全員が集まり、指揮官様から指示、それとまぁ御立派な英雄論と凱旋についてのご講話を頂いた後に、出撃となった。ビーチへは小さなボートに乗っての移動になっていて、意外にも俺らは同じ班でありながら離される結果となった。

 

兵士「ああ、クソ。ライターつかねぇ。エドワード、お前、火あるか?」

 

馬鹿か。吸える年じゃねぇよ

 

「ああ、ほらよ」

 

と言いながらライターを投げ渡す俺も大概だ

こんな風にまぁ緊張感のない中、ボートは進む。そしてビーチが見えてきた時

 

バシャッ

 

え?

 

何が起きたか一瞬理解できずに体が軽く身を引く。

 

「あ……」

 

撃たれた。目の前の奴が。ドイツ兵がビーチのバンカーの向こうからマシンガンをぶっぱなしていて、それが当たったようだ

 

兵士「クソッ!伏せろ伏せろ!いいか!ビーチについたら逃げ場も遮蔽物もなにもない!突っ切れ!」

 

「嘘だろ!?戦車隊は!?なんであんな後方に…清々しいミスだな…クソったれめ」

 

俺たちの乗ったボートはドイツ兵のマシンガンを受けながらビーチへ乗り上げ、ボートの扉を開く。飛び出した所を撃たれる。当たり前だ。がむしゃらだったが、俺は舷側から身を乗り出して降りたお陰で俺は撃たれる奴らを見殺しにしながらとりあえずは生き延びた。

 

そのまま立ちあがり、目の前の早めに到着した戦車隊の放棄された車輌を盾にしながら回りを見渡した

 

 

地獄だ

 

 

 

兵士「おい!しっかりしろ!おい!」

 

なにやってんだ?なにしてんだ?どうしたんだ?死んでるんだぞ?そいつ。下半身、迫撃砲で吹っ飛んでグチャグチャのスクランブルエッグじゃねぇか。なに自分を射線に晒しながら叫んでんだ。でも、どうでもいい。ヤバい、こんなの、どうしろってんだ

 

 

 

 

 

 

そこまで感覚が強い焦りを訴えるなかで俺はいつもの部屋の天井を見上げていた

 

「あ~、クソ。夢…か…」

 

しばらく物思いに耽っていると、布団の上にいたうちの子がもぞもぞと動き出した。

 

「ん?起きたか、リン」

 

リンは俺に返事をするようにミャーミャー鳴きながらすり寄ってくる。このメスの黒猫は、昔、つっても2年くらい前だが、どっかのでかい家のお嬢様が誘拐されたーって騒ぎの時に適当にお嬢様を取り返して逃がした後、弱ってたのを拉致ってきたのが始まりだ。

最初こそ酷かったが、今になっては俺の隣気取りだ。

 

それと、こころみてぇなレベルの金持ちなのかは知らんが、そのお嬢様引っ張り返した時に報酬を要求すれば良かったと思う。でも、あの時は顔を見られないようにパーカーのフードを被ってたし、お嬢様の顔なんてろくに見てないし、どうしようもない

 

まぁ、まずは起きるべきだ。今日はあいつに会いに行く日だ、しっかりせねば

とりあえず準備は昨日したし、顔は洗った。歯も磨いた。着替えた。完璧だ。

ここまで準備万端だと、それなりの余裕が生まれる。ふと、奴らの言う前の俺の遺品と渡された箱を開けてみることにする。

 

「なんだよ、こりゃ」

 

懐中時計だった。

 

「何気ないよ……な…あれ?」

 

誰から貰ったんだ、これ。待て、これをくれたのは、あのビーチで死んだポールの物だった。トランプで勝った俺が貰ったものだ。下半身吹き飛ばされてトールを道連れに死んでったあいつの

 

 

俺が凍ったように動けなくなっていたとき、玄関先のインターフォンが鳴る。一気に引き戻された現実に少々苛立ちを覚えてしまうが、そこは愛嬌だと気付け直し、玄関へ向かう

 

「はいはいっと、お、燐子」

 

そこには、おそらくあこと選んだ、もとい、掴まされたのだろう白いワンピースに身を包んだ燐子の姿があった。




さ~て、バイト君はどの戦線を思い出したのかな?みんなも予想してみよう!(激寒)

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