老練少年兵と氷川さん   作:ちりめ

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待たせたな。はい、ごめんなさい。遅かったです。素直に許して。


今日は晴れ

今回の氷川一行旅行団は、人数の問題で電車になっているので、駅まで行って合流すれば良いのだが、わざわざ集合時刻の一時間も前に燐子が家に来たのが驚かされる。とりあえず、燐子を中に入れ、荷物確認をすることにした。

 

「わざわざ来たのかよ。準備は万全だから心配いらないって言ったろ」

 

燐子「は、はい…。すみません」

 

「あーすまん。キレてるつもりはないんだが、なにせこういう性分なんだ。そう落ち込むな」

 

燐子「は、はい…」

 

見るからに気落ちしている。悪いことしたなこれ。

しばらく、といっても、ものの数分だが、かなり気不味い。リンがすり寄ってくるのがせめてもの救いだ。

 

「結局、俺が足を用意する必要もなくなったし、いよいよ俺も御荷物だな、こりゃぁ」

 

そんな風に減らない口を利きながらとりあえず茶を二人分用意する。ついでに軽い菓子も持って戻ると、俺の部屋にあるゲームソフトに燐子が目を輝かせていた

 

燐子「これって、初回限定版の…」

 

「あの~、白金さん?」

 

へんじがない。ただのゲーマーのようだ。

マジでゲームの話になると面倒だな燐子。俺は聞こえてるかはともかく、てか、多分聞こえてないけどテーブルに茶と菓子を置いてから接近、肩を叩く

 

燐子「ひゃあ!?」

 

凄い声でたな、今。

 

「…茶、飲んだら行こうか」

 

燐子「はい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?俺が悪いのか?

 

まあ特にやらしいこともなく俺らは駅に着いた。

あ?ねぇもんはねぇよ。移動中?服とゲーム積んだバッグ担いでボロアパートから歩く。なにを細かく記す必要があるのかね?

 

 

あこ「あっ、きたきた!りんりん!タカ兄!」

 

日菜「おー!みんな揃ったねー!というわけで、とりゃーーーーー!」

 

いち早く俺らの到着に気付いた二人が駆け寄ってくる。そのままの勢いで俺の腹にクリーンヒットする以外は素直に嬉しい反応だった。二人だ、痛い

 

とりあえず二人を引き剥がし、今回お世話になる氷川さん家の御両親に挨拶をする。

 

「お初にお目にかかります。鷹住といいます。お嬢様方にはいつも要所で助けられて、とても助かっています。」

 

氷川母「ご丁寧にどうも。いつも娘たちから話を聞くんですよ。今回のことも企画してくださって、こちらも感謝しきれません。」

 

「いえ、これは自分の独断です。ましてや人数増しもかなりしていますし」

 

氷川父「いや、そんなに気にしないでください。折角ですから、楽しい方が良いんですし」

 

「そう言ってもらえると、とても嬉しい話です」

 

二人はかなり若く見える。見たところ、かなり健康的だ。まさしく、理想的な平穏といったところか。紗夜と日菜の齢からして、それなりではあろうが、それを認識させないほどに見た目も雰囲気も、揃って若々しい。ベトナムのときに少し老けて見られたのが虚しく思える。だが、氷川夫妻の笑顔は、仲間が多い証拠のそれだ。それも良い仲間だ。

 

挨拶もそこそこに電車に乗り込む。俺と日菜、紗夜で右側を占拠し、その後ろに並ぶ形の席だ。離れないようにしっかり席も確保してある。かなり見通しは悪いが。とりあえず窓際を確保できた俺は、次々と入場と退場を繰り返す景色を、色のない感覚で流し見ていて、氷川夫妻の顔を思い浮かべていた

 

あんな笑顔。できただろうか?60年前に。俺も大人しくあの時、留学せずに家督を継いでいれば、あんな風に本当に芯から心を許せる相手を多く持てたかもしれんが、俺は、そんなことを、いや、自らの祖国を売り、売国奴として勝利の凱旋を果たした。真に俺は敗北していたのに。首を吊るなり、船を焼くなり友軍を道連れなりなんなりしての、戦犯としての死こそが求める凱旋だったのかもしれない。

 

引きずらずにはいられない現実。

消えてしまいそうでけして消えず、突き刺さったままの朧気な血の槍は、今もドス黒いままべちゃべちゃと俺の記憶、心に滴り続けている。消して跳ねない程濃い血は、間違いなく、休まずに俺の精神をも犯していた。でも、知っていて見逃していた。

 

それが罰だと、侵した罪を忘れずに生きることが弔いだと信じていた。

 

だって、本能で生きるにはあまりに不自由で、理性で生きるにはあまりにも残酷で、狂って生きても冷淡なこの世界で、ヒトという生き物の支配する世界で、忘れて生きるなんて。罪を縛る見えない枷、感じることすらない、認知しない枷なんて、あまりに、滑稽で、愉快で、温かくて、そして、優しいままだ。

だから枷を首にかけた。ドッグタグという名で、生涯を嗤われるために。

 

 

 

紗夜「なにか、あったんですか?」

 

「え?なんで?」

 

 

紗夜からの声かけで現実へ引き戻される。なぜ、そんなことを紗夜は聞くのだろうか?

 

日菜「だって、タカさん…」

 

ああ、そうか。窓にうっすらと写る間抜け面をみてわかった。言わないでくれ。頼むから

 

紗夜「なぜ、泣いて?」

 

ああ、言うなよ。情けないだろ、いい歳こいて

 

「ちょっと、やなこと思い出しただけだ。泣かされたやな思い出。良いもの…とは、言いたくないが」

 

紗夜「そうなんですか」

 

 

 

 

 

日菜視点

 

やっぱり、今日のタカさん、おかしい。前から感じてたけど、たまにタカさんなのにタカさんみたいに感じないの。千聖ちゃんの演技とは違うの。全然るんってしない。

 

タカさんは、あたしなんかに頼りたくないのかな?

あたしはタカさんに頼ってほしいし、きっと気の迷いだって言われるのはわかってるけど、そういった気もある。だから、振り向いて貰えなくても、役に立ちたいな。




彼の考え方、多分普通に考えるとヤバイ奴です。こんな内容で学ぶこと絶対にないからな!いいか、絶対だぞ!
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