俺の痴態を見られてから、嫌に無言の時間が流れる。この空気にしたのは俺が原因だと思うと胃が痛み、食道が収縮する感覚が酷くなる。この無言という状態も強く関係してるんだろう。つい自分の内側に意識を傾けてしまう。
野郎の涙だけでこれなんて、俺はどこか知らないところで女の人格でも発揮しているのだろうか。冗談抜きで。
日菜「ねぇ、タカさん?」
「んぁ?」
やべぇ。変な声でた
日菜「あははっ。なにその声!」
乾いた笑いが日菜の口から漏れ出す。場を和ませようと勇気をだしての発言だろう。日菜がここまでしてのっからないのは酷だ
「言いやがったな、こんなろ~。覚えてろよ?」
日菜「へぇ~。タカさん自分で出した声だよ?覚えてろ~なんて、思い出したとき恥ずかしいよ?」
「お前~。屁理屈な」
日菜「正論に言い返せない人の言葉だよ、屁理屈って!」
リサ「そーそー、もう認めちゃいなよ?」
「リサくらいは俺の味方でいてくれると思ってた2日くらい前の俺に言い聞かせてやりたくなった」
リサ「昨日は?」
「直前までわざと水着持っていくこと黙ってたからちょっとな。俺からすれば水着なんて着て泳ぐなんて足の生皮を炙られる気分だ」
リサ「ごめん。その表現、全然ピンとこないのと、怖いんだけど…というか、そんなことする機会なんてないでしょ普通?!」
「いやいや、足が膿んだりしたときはその部分をかっさばいてから、少しず「ストップストップストップ!」…………遮るなよ」
リサ「あからさまにヤバイじゃん、それ以上は!」
「注文の多いやつだな」
日菜「タカさんもねー」
リサもなにかを察してか、積極的に話に乗ってくれるようになってきた。
リサ「いやいや、病院行くべきでしょ?普通なら!」
「高いだろ、病院。ありえん」
リサ「そっちこそありえないでしょ!」
紗夜「多分、今井さんが言いたいことは、衛生面に関してでは?」
日菜「タカさん、やっぱり話の内容わかってないでしょー?」
「失礼だな、お前」
リサ「十分タカさんの方がヒナに対して失礼だよ」
「いいか、金属は錆びる。錆は酸で落ちる。すなわち管理には酸が必須。だが火なら必要ない。It's no probrem. Are you OK?」
リサ・紗夜 「問題しかありません!(ないでしょ!)」
シンクロ率高っ
「お前ら仲良しだな」
日菜「でもさ~。タカさんのそれにも必要でしょ、金属?」
「あっ、そうだったな」
ここまで間抜けな阿呆という矛盾している人間を、俺は自分以外には知らない
「寝ていい?寝るわ、おやすみ」
逃げることにする。そして本当に寝る。自分でもどうかと思うが、寝たいのは寝たい
リサ視点
本当に寝た……寝顔、かわいい……
「いやいや、さすがに…」
日菜「どうしたの、リサちー?」
「えっ、えーっと、なんでも…ないかな?」
日菜「そっかー。ねぇねぇ、タカさんって、体細いよねー。お姉ちゃんもそう思うでしょ?」
紗夜「ええ、確かに、それはわかるわ」
日菜「だよねだよねー!リサちーもそう思うでしょ?」
「え?うん。そうだね…」
ヒナから話を振られて、思わず返事をしてしまう。正直、この話題はかなり恥ずかしい。それでも、つい彼の体つきを見定めでもするかのように視線で撫でてしまう自分がいる。
弓道に剣道、そして、本人は嫌がっているのに、なぜかやってる水泳。
それでも語学や古典文学なんかの、文系にとても強い。ただ、教師専攻では担当に物理と化学と、かわいくないことが多い。それを差し引いても、よくこんなに細いなと、感心を通り越して心配ですらある。男の人って、こう、なんていうのかな、言葉にしにくいけれど、もっと体が大きいものだって、ずっと思ってたし。
それに、覚えてなかったみたいだけど、恩がある。
中学生の時に、地元の高校生に友希那の口が災いして、庇い立てしたアタシも巻き込まれた。別に、友希那を恨んでるってわけじゃないし、それが友希那だったから。それに、アタシもカッとなって、それを助長させてしまった。
アタシ達は路地裏に連れてかれて、せめて友希那だけでもって思ってたときに、彼は騒ぎを起こしたんだ
「お、お願い……この娘だけには…手を、出さ、ないで…」
高校生「なんだよお前、お友達との友情ごっこで俺らにお涙頂戴ってか?馬鹿にしてんだろ?」
この言葉さえもが彼らには反抗だったようだ
友希那「なんのために、わざわざこんな所で話してるの?そんな自分に都合の良い話をするためなのかしら?」
「友、友希那…まずいって……!」
高校生「馬鹿にしてんのはマジだったみてぇだな。そんな立場も分かってないガキにゃ大人ってのを教えてやる必要があるみたいだな。喜べよ、特別に教えてやるよ、特別にな」
こいつらの目つきが何をどういう風に見ているのか、この一言で確信に変わってしまい、友希那を逃がさねばならないという義務感、そして恐怖が同時に襲ってきて、一言話すのも怖い。そんな時だった
「てめぇ、本当に嘗めてんのか!」
突然の怒声に全員がびくっと反応してしまい、その声の先へ目を向ける。逃げれば良かったかもしれない。でも、怖かった、動けなかった。その先の光景も怖かったから
「鷹住、いつになったら立場を理解すんだよ、あぁ?!」
高校生「あー、あー、あの鷹住か。使いもんにすらならねぇパシり以下のクソ野郎か」
その彼は胸ぐらを掴まれ、三人の高校生に睨まれながら、涼しい顔をして、
「ないものはないんです。先輩方に貢ぐ物、貢ぐ金なんて、自分のものでいっぱいいっぱいで」
「ふっざけやがって……!」
そう言うと、彼は高校生に思い切り殴られた。倒れたところをさらに蹴られている。散々罵られた末、ようやく満足した高校生は、悪態をつきながら去っていった。
彼への暴行の終わりは、当然、標的をアタシ達に戻す悪夢の再来を意味するわけで、気付くにはあまりにも遅かった。でも、その時、いつ立ち上がったのか、その蹴られていた彼が、とんでもない発言をした
「中学生は、こんなとこいないで帰れよ」