正義執行   作:ラキア

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第11話

 

 なのはとの模擬戦から数日が経ち、新人達の訓練もより厳しくなってきた頃。スバル、ティアナと両名はヴィータに個別に指導して貰い、エリオとキャロはフェイトやシグナムが合間を見て訓練に付き合っている。スバルはアタッカーとして防御のし過ぎについて注意を受けて、ティアナは若干無茶しすぎな様子だったので、そこはきっちりとヴィータが鉄槌と怒号で厳しく指導する。一方エリオとキャロはフェイトに回避動作の基本と応用の動きを習い、シグナムには接近戦での立ち回りを教わる。

 そして本日、午前中に行われたのはヴィータとシグナムの両名と、新人達との模擬戦であり、難関だった壁であったが何とか合格を貰うことが出来た。これで訓練第二段階終了となり、デバイスにかけられたリミッターも一段階解除される。

 

 衝撃的だったのは、訓練第二段階終了を告げられた後だった。

 

「───え? 明日から?」

「そう、訓練再開は明日からだ」

 

 訊ねると、ヴィータは腕を頭の後ろで組んで横を向いてから目を瞑り、表情に笑みを浮かべてそう言って来た。同じく微笑むフェイトがその言葉に付け足しで口を開いてくる。

 

「皆この頃、訓練続きだったからね。今日は私たちも個別に仕事があるから、今日はお休みだよ。久しぶりに街に遊びに行って、楽しんで来てもいいよ。……あ、でも寝たいなら隊舎で休んでもいいからね?」

 

 そう言って来るフェイトに、まるで疲れが吹き飛んだように元気よく喜ぶ新人たち。隊舎で休む時間は定期的に取ってくれているが、外出許可を貰えたのは今日が初めてだったのだ。これで遊びに行かない選択肢など、四人には無い。

 その後直ぐに解散と言われて、早速四人は隊舎へと向かって行く。その様子を、ヴィータは笑みを浮かべて腕を組んで見て、

 

「げんきんな奴らだなー……」

「そりゃ、あの子たちもまだまだ遊びたい年頃だろうし、街に行けるとなれば元気にもなるよ」

 

 言って、もう一度笑みを浮かべてから、新人達に続いて訓練シュミレーターから退き、階段を上がる。森に構築されたシュミレーターが元の平らに戻っていく。それを見届けながら、ヴィータはスバルとティアナの訓練のデータを確認し、フェイトもエリオとキャロのデータを見ていく。

 

 

 

 

 

 

 食堂にて昼食を取ってからは私服に着替えて、早速ミッドの街中へと向かう。スバルが着替えるなり準備している間に、さっさと着替えを済ませて先に外に出るティアナ。隊舎の裏にはガレージがある。車両の整備などここで行われているが、今この場所に居るのは一人の男性。ヴァイスだ。彼は赤いカラーの大型のバイクを整備をして、調子が良さそうなのを確認して、よし、と声を漏らす。ガレージに近づいてくるティアナに気付き、ようと腕を上げて、

 

「こっちは準備完了だぜ。燃料も問題なし、エンジンもばっちりだ」

「ありがとうございます、ヴァイス陸曹」

 

 なぁに、と言ってから腕を腰に当ててからティアナの表情を見る。ヴァイスは新人達の事を影から見守っていた人間だ。ティアナが訓練で悩んだ時に、何気ないアドバイスをしたのも彼である。ヴァイスからヘルメットを受け取った際に、表情を若干曇らせて、

 

「……ヴァイス陸曹って、本当は魔導師の経験はあるんじゃないですか?」

「そりゃ、入局するのにある程度魔導師として成績残さないとな」

「でも、あの時のアドバイスは、他人からの言葉よりも、経験から言える言葉だと思うのですが……」

 

 まあ、と言いつつ工具を片付ける。棚に仕舞いつつ、

 

「どっちかって言うと、俺もお前さんと同じで、狙撃するタイプだったからな……。同じタイプだと、何かと見えるものでな。つい気になっただけだよ」

 

 言ってヴァイスが粗方の物を片付け終わり、手袋を外したタイミングでスバルが駆けつけてくる。ヴァイスはティアナと同じヘルメットを彼女に投げ渡すと、

 

「ありがとうございます!」

「おう、日が暮れる前に、休日楽しんで来い!」

 

 これ以上は時間の無駄にするだけだという意味も込められているのだろう。それを察したティアナもシートに跨り、エンジンの動作を確かめる。スバルもティアナの後ろに座って準備を済ませる。最後にヴァイスの方へ向いて、行って来ますと言ってバイクを走らせた。

 

 街中へ向かうにはそれなりに山道もある為、ティアナは自分の経験を生かしてドライビングテクニックを披露する。後ろでスバルが楽しそうに声をあげる。

 

「気持ち良いね!」

「しっかり掴まってなさいよ!」

 

 言うと、ティアナは急なコーナリングに向けてスピードを上げていく。重心を傾けて、コーナーを曲がって行く。抜けてから、スバルが口を開き、

 

「街に着いたら、何する?」

「そうねぇ。あんたは何かしたいことある?」

「んんー……とりあえず、アイス食べてから考える!」

 

 了解、と言葉を返してから、ティアナは更にスピードを上げて走り出す。

 

 程なくして、街中へと到着する二人。スバルとティアナは早速街にある駐車場にバイクを停めてから、以前から大好きだったアイス屋にてアイスを注文する。

 ティアナが頼むのはコーンにアイスが二つ乗った普通のものであるが、スバルの頼んだアイスはかなり多きなワッフルコーンにアイスが五つも乗った大盛りなものである。常人であればアイスを食べる前に解け始めて悲惨な事になる代物だが、スバルはそのアイスを一口で一玉食べるという恐ろしいスピードで平らげる。流石にスバルが大食いだと知るティアナもこれには苦笑いをせざるえない。近くにあるベンチに腰掛けてアイスを食べていると、スバルがティアナの方に顔を向けて口を開く。

 

「食べ終わったらさ、ゲーセン行こう!」

「いいわねー」

 

 横を向いて、言葉を返す。訓練校の時によく二人で遊んだのは主にゲームセンターだ。陸士部隊に入ってからは仕事の関係でこういった外出も無く、行く機会も無かった為、本当に久しぶりに遊びに行く事になる。今日は特に目的も無く街で遊ぶというアバウトな予定の為、思いついたらそれを行動していく。

 ティアナがアイスを食べると、同じタイミングでスバルも食べ終わる。よくアイスを早食いできるなと思いつつ、二人はゲームセンターへと向かう。

 

 

 

 

 

 エリオとキャロは基本徒歩で、公共交通手段などを利用して街中へと向かう。エリオとキャロはフェイトから凄い心配をされていたが、二人も局で働く人間であり、殆どの事は問題無い。

 駐屯地前にあるバス停からバスに乗って利用し、駐屯地エリアから駅まで移動してから、街中に向かう電車に乗って数十分でミッドの街中へ到着する。人が賑わう駅である為、改札口はかなり混雑している。エリオは元々本局育ちである為、こういった場所の利用も珍しくは無かったので平気なのだが、キャロは街の中心に来たことが殆ど無いので、人の勢いに呑まれつつあった。

 

「ほら」

「あ、ありがとう」

 

 安心させる為に手を握ってから、何処に行けば良いのかを案内する。いくら親切心とは言っても、エリオも年頃の為に女の子と手を握るのは気恥ずかしい為、若干顔を赤らめて改札口を潜る。一方キャロも同様で、顔を下に俯かせて転ばないように改札を通った。駅構内は基本的に人が沢山いる為、一旦外に出て落ち着くとする。

 

 駅から数分歩いた所に広場があり、そこにあるベンチに腰掛けて休むとする。エリオは飲み物を買いに、近くの自動販売機に向かってジュースを二つ買ってベンチに戻る。そこで待たせたキャロにジュースを渡してから、隣に座る。

 

「キャロは、街に来るのは初めてだったり?」

「ううん、フェイトさんに連れられて何度か。……でも私、田舎育ちだから、どうも慣れなくて……」

 

 苦笑いを浮かべるキャロに、エリオも笑みを返しながら口を開く。

 

「キャロの育ちって、竜召還の……?」

「うん、代々継承する村なんだけど、私の場合はこの歳でフリードを従える力を持っていたから、追い出される形になっちゃって……。そこからは嘱託魔導師として管理局で働いて、フェイトさんに保護されたから」

 

 キャロの育ちや召還魔導師としてどう触れていったかを、以前に四人で話した事がある。最初聞いた時は重い内容故に皆沈んだ様子だったのだが、キャロ当人が余り気にした様子ではなかったので、此方も気にしないようにしていた。

 

「でも本当に、フリードを従えるって凄いと思うよ」

「まあ、フリードはずっと私と一緒にいたから、家族のような部分もあるしね。……でも、問題は」

「───ヴォルテール、だっけ?」

 

 訊くと、キャロはこくりと頷いた。

 ヴォルテール───キャロが受け継ぐ竜召還の一番の強さを誇る竜である。しかし、キャロはこれをまだ上手く召還できていない。フリードはそれこそ生まれからずっと一緒にいたからだが、ヴォルテールは代々受け継ぐ伝説の竜である。召還師が未熟では到底従ってなどくれない。キャロが村から追い出された二つ目の理由である。

 

「……けど大丈夫だよ。僕達は今、確実に強くなっていっていると思うし、まだまだ色んな事を経験して、成長出来るんだからさ!」

 

 励ますように言うと、キャロも元気よく頷く。考えてみればエリオとキャロはまだ一〇にも満たない子供なのだ。普通に考えれば、彼等の年齢でここまでの実力があるほうが珍しく、才能があると言わざるえないだろう。故に焦ったり、落ち込む必要など無い。今後、しっかりと経験を重ねて強くなればいいのだ。

 

 が、それはそうと、今日は折角の休日だ。エリオはベンチから腰を上げて立ち上がり、そのままキャロに向けて手を差し伸べる。

 

「その為にも、今日は息抜きしようか!」

「うん!」

 

 手を握るのも、慣れてしまえば結構簡単なものだと気付き、エスコートするようにしてキャロと歩き出す。とは言っても、デートの予定は参考にシャーリーから聞いているのだが。

 

 

 

 

 

 

 ゲームセンターで気持ちよく遊んだ後に、小腹を満たすために近くの店でたこ焼きを買い、それを適当に橋の上に来て食べる。たこ焼きというものは元々管理外世界の地球から取り入れた料理の一つであり、俗に言う地球ブームのものの一つだ。

 ミッドチルダは確かにどの世界よりも最も技術が優れている世界だが、その反面に文化というものが乏しく、今のミッドチルダの殆どの文化は他世界から取り入れたものが殆どである。中でも地球の文化はとても好評であり、今ではミッドの文化にすっかり馴染んでいる為、今の世代の子供はこれが地球のものだとは分からないだろう。

 ジュースもそれぞれ買っている為、二人はそれぞれ手に缶を持って、たこ焼きが詰まった箱は適当な場所に置いて、それを爪楊枝で指して口に運ぶ。手すりに寄りかかり、後ろを向くティアナに、スバルがたこ焼きの一つを口に運ぶと、彼女はそれを素直に口に入れる。旗から見れば、二人の姿は何処にでもいる学生そのものである。

 

「それにしても、本当にこんなのんびりするの久しぶりねー……」

「そうだねー……六課に居る時は本当に大変な毎日だから」

 

 言って、たこ焼きを口に運んでその味を楽しむ。するとティアナが眉根を八の字に曲げて、心配そうに訊ねて来る。

 

「───そういえば、あんた自分の身体、無茶させ過ぎていない?」

「え? ……ああ、うん、大丈夫」

「……それなら、いいんだけど」

 

 新人の中でも、スバルは特に身体張っているポジションに居る。故にスバルの身体に一番負荷が掛かっているのは明らかだ。もしいざという時に問題が出れば大変な事になる為、少しでも不調があるならばきちんと診察を受けるべきだ。まあ、本人が平気だと言っているし、ちゃんと診察を受ける予定があるのならば、問題は無いだろうが。

 

 そんな風に、六課での自分達の生活を振り返っていると、やはり色々と思うところはある。

 最初の頃の自分達は、はっきり言って現場で何の役にも立てない人間だったに違い無い。予めの目標やするべき事が分かり、そして情報があるのが前提にした動き。模擬戦だったら優秀だろう。しかし実戦というのは現場の緊張は勿論、目的やするべき事など直ぐに変化していく。そうなればパニックになるのは当然だ。だから六課での訓練で、その自分達のスタイルが一蹴された。

 目標は常に変わり、尚且つ自分達に任せられる。どれが正解かも判断し、そして常に最悪の事態を想定された内容の訓練。そして極めつけは実戦よりもキツイ模擬戦。常に痛めつけられるのは本当に心が折れたが、それが経験となって実戦では恐ろしいほど冷静に行動する事が出来た。自分達は確実に強くなってきている。

 

 だが、そこで先日あったなのはとの模擬戦を思い出すと、一気に表情を苦笑いせざるえない。

 

「……高町なのはさん。本当にあの人何者なのよ……」

「管理局員では無くて、趣味で魔導師をしている。って事くらいしか分かってないけどねー」

 

 最後のたこ焼きを食べ終わり、ジュースも飲み干したところでそのゴミを捨てる為にゴミ箱へと近寄ってから、分別して捨てる。次は何処に行って遊ぼうかと考えて居る時に、ふとティアナの身体を通り越して向こう側に、見覚えのある人物を見かける。

 

「あれ? 噂をすれば、なのはさんがいたよ!」

「ええ!?」

 

 スバルが指を指しながら言うと、ティアナも慌てたように振り替える。するとそこには確かに人混みの中を歩くなのはの姿があった。シャツにジーンズとラフな格好をしているが、本人で間違いない。するとなのはも二人の視線に気付いて、視線が合う。なのはは二人に駆け寄った。

 

【挿絵表示】

 

「スバルとティアナ、偶然だねー。今日はお休み?」

「はい」

「なのはさんは、今日はどういった用事でここに?」

 

 フレンドリーに話しかけてくるなのはに、二人も気楽に話せる。なのはは局員では無いので、遠慮することがあるとすれば歳の差くらいだが、彼女達の年齢差はたったの三つである為、そこまで畏まる必要も無い。ティアナがなのはがどういった用で街にいるかと尋ねると、いたって普通に買い物がてらに散歩と答える。一体どうやって生活費を稼いでいるのか気になるところだが、それを訊ねる前になのはが尋ねてくる。

 

「エリオとキャロもお休みなのかな?」

「あ、はい。今日は新人達皆休みを貰っています。……と」

 

 丁度その時に、ティアナのデバイスとスバルのデバイスに、キャロから連絡が来る。こちらもそろそろ二人が順調に街で遊んでいるかどうかを訊ねたいと思っていた所だった。

 だが───。

 

「え? 緊急通信?」

 

 緊急の全体への通信。それは六課で待機している司令室にも繋がる文字通りの緊急通信だ。これを繋いだという事は非常時なのは間違いない。恐らく街中で通信を行っているために、映像は繋げずに音声だけの通信を行っている。通信情報を見ると、二人が現在ここからそう遠くない路地裏に居るのが分かる。通信を繋げ、集中する。

 

『ライトニングから司令室へ! 今、送った情報の路地裏にてロストロギア・レリックを確認しました! そして、レリックと一緒に、鎖で繋がれた女の子も発見! 指示をお願いします!』

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