正義執行   作:ラキア

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第13話

 

 何回目かのガジェットドローンとの戦闘。新人たちはそれぞれ役割を果たして、順調に撃破していく。

 ティアナが援護射撃をしつつ、スバルとティアナが前に突っ込む。もとより狭い水路だということもあって、囲まれる心配は無い。故にスバルの中距離砲撃は確実に一型数基に被弾し、エリオのストラーダも三型の躯体の中心を貫く。爆散と共に後方へと跳び退いて、キャロがタイミングを合わせてフリードに炎を吐かせる。それにより残りのガジェットドローンも消滅していく。

 炎といっても、水路は密閉ではないので窒息する心配は無い。故に焦げ臭くなるだけだ。元からひどい悪臭がしているので今更である。

 

 先に進んでギンガとの合流ポイント着くと、そこには丁度ガジェットドローンを始末したギンガの姿があった。スバルと同様で左手にリボルバーナックルを装備し、マッハキャリバーと同型のデバイスの為、その足にはローラーブーツが装着されている。初見の印象としてはスバルが男勝りなら、ギンガはきれいな女性である。

 

「ギンガさん!」

「ティアナ、それにスバルも」

 

 笑みを浮かべ、スバルとティアナはギンガに駆け寄って話しかける。エリオとキャロ、なのはも後に続いて歩み寄った。三人に向かい、ギンガは自己紹介をする。

 

「陸士一○八部隊捜査官、ギンガ・ナカジマ陸曹です」

 

 言うと、エリオとキャロが慌てて背筋を伸ばし、敬礼しながら、

 

「ライトニング分隊、エリオ・モンディアル三等陸士!」

「同じく、キャロ・ル・ルシエ三等陸士です!」

 

 丁寧に挨拶を済ませると、ギンガも軽く敬礼を返す。すると奥に居たなのはと視線が合った為、疑問に思ったギンガは口を開き、

 

「それで、あなたは?」

 

 その問いに、スバルが代わりに答える。スバルはなのはの方へ手を向けてから、

 

「高町なのはさん。はやて部隊長とフェイト執務官とは幼馴染で、昔私を助けてくれた人!」

「ああ、あなたが……! その節はとてもお世話になりました! スバルの姉の、ギンガ・ナカジマ陸曹です」

 

 どうやらスバルから話は聞いていたのだろう。目を丸くして驚いたような表情を作りながらも、直ぐに切り替えて名前を名乗るギンガに、なのはは手を差し伸べて握手を促しながら、

 

「どうも、高町なのはです。趣味で魔導師やってるの。改めて宜しくね、ギンガさん」

「はい! えと……趣味?」

 

 自己紹介と共に握手を交わす。ギンガは趣味という単語に疑問を感じたが、ともあれはやてとフェイトの親友、そして過去に助けて貰った命の恩人なのだから、これ以上にないくらい頼もしいのは確かである。

 ギンガはさて、と辺りを見渡したところで皆を見た後、

 

「それで、現場の指揮は?」

「あ、私です」

 

 ティアナが手を上げて答える。なのはは先ほどと同じ言葉をギンガに言って、今までの状況をティアナが説明する。ギンガはそれを全て聞いた後に、了解、と言葉を漏らしてから腰に手を当てて、

 

「なら私もティアナの指揮下に入るわ。宜しくね」

「はい!」

 

 敬礼し、了解する。

 

 

 

 

 

 

 程なくして、ギンガを加えてからはさらにスムーズにガジェットドローンを撃破していく。姉妹とあってかギンガとスバルのコンビネーションはとても良い。ガジェットドローン一型は問題ないのは当然として、三型もギンガがアームを押さえている間にスバルが一撃で仕留める。その為、他の三人がフルでサポートに回る形となった。

 だが、ギンガが強いといっても、さすがにガジェットドローンが弱いと感じてしまう。今回はレリックが二つも現場にあった状況なのだ。もう少し大変な状況になっても不思議ではない。現に空のほうでは隊長たちが苦戦している状況である。

 

 嫌な予感がすると感じたティアナ、そしてギンガは意見を合わせて、早々にレリックを見つけて確保する必要があると考え、向かうペースを早めていく。地下水路の壁に書かれた都市部の区域を示す表示を見て、なのはが、あ、と声を漏らし、

 

「ここ、私の家がある丁度真下辺りかな?」

 

 その言葉にスバルが意外そうな表情を作り、

 

「なのはさんって、廃棄都市区画に住んでいるんですか?」

「うん。生活費安いし、静かだからねー」

 

 その言葉に皆苦笑いしか出てこない。好き好んで廃棄都市に住む人間はほとんど居ない。それこそ金に困ったホームレスや、情報屋のいい隠れ家など悪いイメージしかないからだ。

 

 しばらくすると、広い空間にたどり着いた。各水路から来た水と、豪雨の時に逆流しないために作られた貯水空間だ。キャロの反応ではここにレリックがあるらしい。だが、この暗闇と広さだ。いくら目を凝らしていても見つけるのは困難だ。

 しょうがない為、ティアナは手分けして探すことを指示する。もちろん何か以上があれば直ぐに集合することと添えて。

 

 そして数分経つと、ようやくキャロがレリックのケースらしきものを肉眼で確認し、それを手にとって確かめて発見する。

 

「ありました!」

 

 言うと、早速皆キャロの元へ駆け寄る。だが、その途中で妙な音が鳴るのに気づき、一旦歩みを止めて警戒する。空間の支えになっている各柱の上部に、叩くような音が響く。それが徐々にキャロの方へ向かっているのに気づいた時には、遅かった。

 

「きゃあ!!」

 

 見えない何かがキャロに打撃を加えて、キャロの身体は吹き飛ばされる。それを直ぐにエリオがカバーするが、その衝撃でキャロの背後に回って衝撃を和らげる役割をすることしか出来ず、柱へとぶち当たる。

 

 微かな魔力反応から察し、その何かに向かってギンガがリボルバーナックルを振るう。が、何かはそれを瞬時に避けて見せる。その衝撃で不可視効果が切れたのか、姿は肉眼で確認できる。人型であるが、人間では無い。まるで甲殻類の何かが人の形をしているようなものだった。

 襲撃者が着地すると同時に、スバルが突っ込んで蹴りを食らわせようとするが、その攻撃は安易に回避されて互いににらみ合う形となる。

 

 エリオが身を挺してくれた為、直ぐに立ち上がったキャロは慌てて落としたレリックの元へ駆け寄るが、そのレリックも新たに現れた人物によって拾われる。視線を上に向けて人物を見ると、自分とそう歳も離れていない少女だ。黒いドレスのようなバリアジャケットに身を包ませ、自分と同じ召還用のデバイスを手に装備している。少女は一歩遅れたキャロに手をかざし、掌から魔力光を放ってキャロを吹き飛ばす。

 

「───悪いねー、レリック(これ)はうちらが貰うから」

 

 言って、少女はケースを懐に抱えてそのまま立ち去ろうとする。駆けつけようとしたスバルも襲撃者に蹴り飛ばされる。だが、不可視魔法を使えるティアナが少女の背後に回ってから、クロスミラージュを短剣にして少女の首筋に当てる。

 

「悪いわね。レリック(それ)はこちらが預かるし、貴女の身柄も拘束させて貰うわ」

 

 少女は横目でティアナの顔を見る。少女は今完全に拘束されている状況だ。襲撃者が少女を助けようと意識した隙を狙って、ギンガが一瞬で肉薄して壁へと吹き飛ばす。下手な動きは出来ない。

 なのはから見ても、一変した状況はこれで方がついた。

 

 だが、次の瞬間に魔力で構成された閃光弾が炸裂する。それにより視界が潰れ、あらかじめタイミングを見計らっていた少女は視覚、聴覚を魔力でシャットアウトさせていた為、直ぐに拘束から抜けてその場から離れる。

 まだダメージが抜け切っていないティアナが少女にクロスミラージュの銃口を向けるが、そうはさせまいと襲撃者が跳び蹴りを放ってティアナを壁に向かって吹き飛ばす。直ぐにスバルがティアナの援護に入り、エリオ、キャロ、ギンガも態勢を立て直す。

 

 正面には先ほどの少女、そして黒い人型の甲殻類。さらにそこに小さな影が追加されていた。

 

「───もう、ルーもガリューも、あたしや旦那を無視して行動するからピンチになるんだぞー」

 

 閉鎖的な空間の為、その小さな影が放った声が聞こえる。目を凝らせば、その影はツヴァイと同様の大きさであり、おそらくユニゾンデバイスだと思われる。ルーテシアは目を半眼にして、

 

「だって、アギトもゼストも別行動だったし、私が現場にいたんだから行くしかないでしょ?」

「だからって、連絡くらい寄越せよなー。……まあいいや、何とかなったし」

 

 ユニゾンデバイス───アギト。赤い髪が特徴の少女はそう言ってから、こちらに視線を向けて、挑発するように手招きする。

 

【挿絵表示】

 

「何はともあれ、このアギト様が来たんだ。───おらおら、お前ら全員かかって来いやぁぁーーーッッ!!」

 

 その言葉に、なのはが反応して前に出そうになるが、それをティアナが止める。するとアギトは炎に変換した魔力弾【バレットシェル】を複数展開して、それを此方へ向けて放ってくる。炎の魔力弾【バレットシェル】は放物線を描いて地面に着弾すると、そこから爆発を巻き起こす。それを柱の影に隠れてやり過ごしていると、なのはに向けてティアナが口を開いた。

 

「なのはさん、あの子達何とか出来そうですか?」

「ん、たぶん普通にいけると思うの」

 

 なら、とティアナは言葉を零してから、他の四人にアイコンタクトで合図する。まずはアギトの攻撃をどうにかして隙を生み出し、此方が仕掛けるタイミングを作らなければならない。

 

「私たちが何とか道を作ります。その隙に───」

「───いや、大丈夫なの」

 

 指示を出すが、なのははティアナの肩を掴み、柱から前に出る。当然それはアギトの視覚に映り、にやりと笑みを浮かんで魔力弾【バレットシェル】を展開する。

 

「は! 堂々と出てきたのは馬鹿すぎやしねーか!!」

 

 叫び、なのはへ向かって魔力弾【バレットシェル】を放る。避けようと思えば何とか避けられるかもしれない。だがなのははそれを一歩も動かずに、ただ腕を引いて拳を作るだけだ。一体何をするつもりなのかとティアナは思ったが、直ぐにそれが拳で弾こうと馬鹿な行動するものだとギンガは気づく。

 無茶です、と口を開こうとした。

 が、

 

 ───迫り来る炎の弾を、本当に拳で霧散させた光景が、目の前に映される。

 

 

「…………は?」

 

 アギト、ルーテシアも含め、全員が信じられないものを見たかのように絶句する。だが、なのははいたって平然とした様子で前に歩き出すため、アギトははっと意識を切り替えて、もう一度炎の魔力弾【バレットシェル】を展開する。

 まぐれだ。何かの間違いだ。そうだ、炎を集中したから手前で相殺されたか何かだと、自身に納得させて、もう一度攻撃を仕掛ける。

 

 しかし、今度は分かりやすく、弾を横へと弾き飛ばした。壁にぶつかった炎はそこで爆発を生み出す。これで二度、驚愕せざるえない。なんなんだあいつと、混乱する。だが、悠々となのはは此方に迫って来る。

 ガリューが直ぐに近距離まで肉薄し、拳を叩き込もうとするが、そのガリューの拳は空を切るだけで、そこに居たなのはは一瞬にしてガリューの横へと回り込む。直ぐに身体を捻らせて拳を繰り出すが、その前になのはの拳がガリューの胴に叩き込まれる。

 

 容疑者を殺すわけには行かない。故に手加減した。だがそれでもガリューの身体は壁に叩き込まれて、そのまま動かなくなる。

 次の瞬間、ルーテシアはなのはの前に跳躍し、肉薄して掌を向ける。すると先ほどキャロに放ったものとは比べ物にならない砲撃が放たれる。完全に相手を滅する為に繰り出した砲撃。インファイトから相手の懐に放つ制圧形の攻撃だ。常人ならばこれをまともに食らえば動けなくなる。

 しかし、

 

「ん?」

 

 確かに砲撃を当てた。胴から全体を包むようにして光に飲まれた筈だ。手ごたえもあった。だが、霧散するとそこには目の前、微動だにせず立っているなのはの姿があり、まったくの無傷だった。

 ありえない。そう思った次の瞬間には、ルーテシアは保険に用意していた転移魔法を即座に発動させて、アギトと共にこの場から消えた。不利を悟って、逃げたのだ。

 

「あ、逃げた」

 

 なのはは相変わらずの無気力な表情でそれを確認する。追撃を考えたが、肝心のレリックはここに落としている。まずはこれの回収が先と判断し、近づいてケースを拾う。

 やけに静かだなと後ろを振り向くと、そこには呆然としている皆の姿があった。口を開けて、呆けている。なのははケースを皆に向けて、

 

「回収したよー」

 

 そんななのはに、スバルは恐る恐るといった様子で口を開き、

 

「……な、なのはさん。やっぱり強い……!」

「……いや、強いとかのレベル?」

 

 スバルの言葉に続き、つっこむようにティアナが口を開く。だんだんと理解が追いつき、皆なのはの方へ集まる。何はともあれ、これでレリックの確保は出来た。直ぐにキャロに封印処理を頼む。

 辺りの状況を確認する。壁に衝突したガリューも隙をついて逃げたようで、そこにはくぼみしか残っていなかった。他に危険は無いかを確かめてから、ギンガは、さて、と声を上げて、

 

「あまり長居しないほうがいいわね。あの子たちも、まだ遠くには行っていないようだし、追撃の許可を───」

 

 と、言った瞬間である。突如、足がぐらついた為、慌てて地面に伏せてバランスを整える。地面が揺れている。周りの破損した壁も柱もみしみしと崩れ始め、それに加えて重力の負荷の異常にも気づいた。

 キャロが驚いた様子で口を開く。

 

「これは……召還術の反応です!」

「……どうやらあの子達、私たちをこのまま生き埋めにするつもりね」

 

 確実にこちらを仕留めようとしているのが伺える。確かになのはのあの強さを知れば、こういった手段に出てもおかしく無い。ティアナは眉を立てて皆に指示する。

 

「とにかく脱出よ! スバル!!」

「了解!」

 

 リボルバーナックルを地面に当てると、そこから術式が展開され、ウイングロードが上に向かって伸びていく。動きが遅いキャロはギンガが抱え、スバルが先行して天井を破壊して道を作る。なのはもスバルに続いて駆け上がっていく。

 ティアナは抱えられるキャロの帽子が落ちていることに気づき、それを拾って汚れを叩いて落としてから、それを手渡す。

 

「ありがとうございます」

 

 礼を言うと、ティアナはいいえと言葉を挟んでから、続けて、

 

「それとレリックの封印処理についてなんだけど、ちょっと考えがあるんだ」

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