正義執行   作:ラキア

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第14話

 

 廃棄都市の中の一角。丁度下水の貯水路の真上に位置する場所が良く見える位置に、ルーテシアとアギトが居る。現在ルーテシアの召還魔法によって呼び出された召還獣により、重力操作によって地面がミシミシと音を立てて崩れようとしている。このまま地下水路を埋めて、まだ地下にいるなのはたちを殺す為だ。

 

「ちょ、ルーやめようぜ! あいつら局員だけど、殺すのは流石に不味いって……。レリックだって、回収できなくなっちまう」

「あれだけの強さなんだから、死にはしないって。それにこうでもしないと足止めできないよ。レリックはセインに任せれば回収できるし」

 

 重力操作をやめるつもりは無いルーテシアに、アギトは横からルーテシアの正面に回り、訴える。

 

「あの変態医師を信用するのはやめろって! 私たちの事なんて、所詮実験動物くらいにしか思って───」

 

 そう言葉をかけていた途中で、凄まじい音が辺りに響いた。アギトは視線を先ほどの召還獣の元へ向けると、そこには地面が沈んだ場所に召還獣が佇む様子がある。

 

「……やっちまった」

 

 そう言葉を零し、アギトは溜息を吐く。今までも人を殺めた事も無いという事は無かったが、それは死んで当然といえる下郎な者たちだ。だが今回は普通に善を通す局員たちであり、殺めれば面倒になることは分かっていた。だが、こうしてしまった後では考えても仕方がない。

 ルーテシアはデバイスの光を一度収めた後、さて、と言葉を零して踵を返し、その場を離れようとする。

 が、ルーテシアの元へ向かう魔力反応があった。アギトも気付き、辺りを見回しながら、

 

「ルー、何か来る! 魔力反応は……でけぇ!!」

 

 数秒後には何処から来るか反応から分かり、そこに視線を向ける。すると、そこには傍らにツヴァイを乗せたヴィータが此方に向かって突撃してきた。手にはグラーフアイゼンを構え、それを振りかぶりながら来る。アギトはそうはさせまいと、炎の玉を形成し、それをヴィータのほうへ投げる。

 だが、横に居るツヴァイが直ぐ様魔力弾【バレットシェル】を作り出し、それを放る事によって相打ちにして相殺する。迎撃が出来ないことが分かったルーテシアは回避することを頭で切り替え、直ぐにその場を跳躍する。

 それと同時に、

 

「なッ!?」

 

 地下を埋める為に召還した召還獣が、突如として内側から破裂するように吹き飛んだ。瓦礫と同時に、辺りに破片と爆煙が舞う。ルーテシアとアギトは空中に居ながらそれを確認し、驚愕の表情を見せた。召還獣はあくまで呼び出すだけの存在故に、召還状態で絶命しても特に問題は起こらないのだが、あれだけの巨体をどんな方法で殺せばあんな状態になるのかが気がかりだ。

 

「一体何が……!?」

 

 様子を見る限り、下から突き上げるように吹き飛ばされている。だとすれば、地下から攻撃を受けたということだ。ルーテシアはハッとして、目を見開いた。地下には、先ほど生き埋めにした筈の局員が居た筈だ。まさかと思いつつ、煙のほうへ視線を集中させる。

 

 ───その煙の中から、跳躍するように出現するなのはの姿があった。右手を突き上げて、先ほどの一撃は自分だと主張するように。

 

【挿絵表示】

 

 同時に、穴から出てくるのは先ほどの局員。スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、そしてギンガだ。次の瞬間には二本のウイングロードが展開され、その道が此方に向けて伸びて来る。それぞれのウイングロードにスバル、ギンガがローラーブーツで此方に接近する。

 このまま着地点に降り立つのは不味い。そう感じたルーテシアは宙の手前、足元に魔方陣を展開して、それを足場にして一度片足をつけると直ぐに跳躍し、距離を取って後方へと着地する。環状道路の上である。

 しかし、

 

「───ッ!!」

 

 電光のようなものに気付いた次の瞬間には、エリオがストラーダの先端を此方に構えていた。距離は零。動けず、ルーテシアは拘束された。直ぐに助けようと慌てたアギトだが、そんなアギトも既に接近していたツヴァイによって拘束魔法【バインド】を展開されて、それに拘束され、宙に浮くことも出来なくなり、ルーテシアから数歩ほど距離が空いたところに落ちる。

 続いてルーテシアもツヴァイによって拘束魔法【バインド】を展開され、身動きが取れない状態になる。眉根を歪ませて、悔しそうな表情を見せる。

 直ぐにヴィータと新人たち、ギンガとなのはも集まる。ヴィータがホロウインドウで現行犯の逮捕状を提示する。

 

「なんか、子供を苛めてるみてぇで気は進まないが……。市街地での無断魔法使用、そして殺人未遂。施設破壊や公務執行妨害もろもろで逮捕する」

 

 

 

 

 

 

 海上から来るガジェットドローンの二型と幻影の混合部隊は、はやての超広域砲撃魔法により順調に撃破され、ヘリの防衛もフェイトが付近で防衛線を張っていた為、これといった被害は出ずに済んだ。はやてが街に近づけさせないように全て撃破したのが決めてである。

 その様子を、廃棄都市のビルの一角の屋上で窺う二つの影があった。一人は長い砲筒を片手にして、茶髪で襟足が長い女性。もう一人は長髪を三つ編みにして二つに結っている眼鏡をかけた女性だ。二人とも密着型のスーツを着込んでおり、眼鏡の女性はコートを、もう一人は毛布を肩から羽織っている。

 

「───クアットロ、どう状況は?」

「ダメねぇ……。ガジェットもシルバーカーテンで作った幻影も、皆纏めて撃破されて全滅。───ディエチちゃんの方はどう?」

「こっちも駄目。さっきからヘリの周りに例のS級が居る。エースオブエースが居るから、とても上手く狙撃できる自信は無いよ」

 

 ディエチは嘆息気味に溜息を吐いて、視線を下に向けながら言葉を述べた。ディエチの目は特殊であり、カメラのピントのように視界を合わせることによって遠くの様子を視認できる。彼女の能力の一端でもあるそれは、砲撃という主武器を使う為だ。体内の魔力を直接砲撃のエネルギーに変換し、放つ。それがディエチの能力だ。

 一方クアットロはシルバーカーテンと呼ばれる能力で、幻影を作り出したり、あらゆる端末に干渉して操作したりなど、かく乱や情報操作などを行うのに優れている。

 

 人間とも魔導師とも一線を置く彼女らだが、その二人は現在任務が実行できない状態にある。クアットロがディエチの溜息に釣られるように溜息を吐くが、こちらはどうも作ったような態度のものである。

 

「はぁ……。ルーお嬢様も捕まったみたいですしー、管理局にバレる前に撤収といきますか」

「お嬢は?」

 

 立ち上がりながら背伸びをして言うクアットロに、ディエチが振り向きながらクアットロに訊ねる。すると背伸びを終えたクアットロが脱力と共にそれに答えた。

 

「今セインちゃんが助けに行ってるわー。流石にマテリアルとレリックを局に奪われた挙句に、ルーお嬢様まで局に渡す訳にはいきませんもの」

「ん、なら心配は無いかな」

 

 一先ず撤退を優先として、二人はそのままビルの屋上から去ろうと踵を返す。だが、

 

「───もう少し、詳しい話を聞かせて貰います」

 

「「───ッ!?」」

 

 急に背後に感じた気配と言葉に、クアットロとディエチの二人は同時に振り向くと、そこには一瞬でここに姿を現したフェイトの姿があった。二人は驚愕した表情を浮かべる。

 

「そんな、いつの間に!!」

「さっきまで、ヘリの所に居たんじゃ!?」

 

 狼狽した声を漏らすが、フェイトはそれを鼻を鳴らして答える。

 

「ここまでの距離なら、私にとって零距離と相違無い」

「化け物め!!」

 

 フェイトの人外な能力に、ディエチは眉根を寄せて声をあげる。一瞬後に二人はビルから飛び降りて、途中でクアットロがシルバーカーテンと呼ばれる能力で不可視の効果をディエチと共に展開して隠す。二人は魔法ではない仕組みで能力を使っている為、こちらの魔力を察知することは出来ない。

 ビルから降りて地面に着地すると同時に、跳躍する。この場から脱出する為に、ひたすら街の外へと向かって飛ぶ。一方フェイトは一歩も動かずに先ほどの屋上に立っている。

 が、ゆっくりと息を吐くと、フェイトの姿は瞬く間に電光の光となって消え去り、その電光は逃走するクアットロとディエチの周囲に現れる。

 

「───はぁ!!」

 

 叫ぶと同時、フェイトはザンバーを展開して振り抜き、横に一閃する。それだけでクアットロとディエチを狙った斬撃が繰り出された。鋭い正確な斬撃に驚きながらも、何とか跳躍のタイミングをずらすことによって回避する。その後に背後の建物が斜めに一閃されて、ブロックがスライスされたように建物がずれ落ちる。

 

「なんて馬鹿な!!」

 

 もう声を出さずには居られない。仮にも管理局なのだから、周囲への被害を出すようなことは止めて欲しいと考える。しかしフェイトは構わず斬撃を次々と繰り出していく。クアットロが跳躍しつつ、必死にシルバーカーテンで自分達の幻影と、周囲に音を反響させる事によって狙いを拡散させて何とか命中せずに済む。

 しかし、フェイトの斬撃の嵐は直ぐにやむ事になった。最後の一振りを繰り出した後に、何か意図したようにしてその場から離れていく。一体どうしたのかと疑問に思ったが、その理由が次の瞬間判明する。

 

 現在自分たちが居る廃棄都市区画の空に、一つの影があった。八神はやてだ。夜天の書を展開し、杖を天に掲げて詠唱を唱えている。

 

 

「……まさか!?」

 

 クアットロが何か察したように目を丸くした。ディエチもはやてが何を考えているのか理解が追いつく。わざわざフェイトを撤退させて、はやてが現れたという事はつまり、広域魔法を仕掛けて此方を確実に仕留める為だ。

 杖を上げ、はやてが魔力を集中させると、周囲に黒い魔力光が浮かんで出現していくのが分かる。それが杖の先端の先に収束されていき、一メートルほどまで形成された魔力が球体となる。

 

「遠き地にて、闇に沈め───デアボリック・エミッション!!」

 

 詠唱を唱えると、はやては球体を下に向けて放り投げた。はやてから放られた球体は膨らみ、中心から広域殲滅魔法が展開され、魔力の爆発に廃棄都市は飲み込まれるように破壊されていく。クアットロとディエチは慌ててその場から離れようとするが、周囲の魔力に少し巻き込まれる。

 デアボリック・エミッションは中心につれて破壊の衝撃が増す為、外側の衝撃はまだ軽い。だがそれでも身体を蝕むことには変わりなく、苦虫を噛んだ様に辛い表情を浮かべて何とかギリギリで回避することに成功した。

 跳躍する事を続けながら、背後を見る。すると先ほどまであった都市の姿が、まるで隕石でも衝突したように丸く削られていた。それを見てぞっとする。仮にも管理局なのだから、こういう事は自重して欲しいと、犯罪者二人は思いながら全力で逃げる。

 

 しかし、二人の軌道を狙って再びフェイトが斬撃を繰り出した。初撃は何とか回避する。だが次の跳躍と同時に二撃目が繰り出され、狙いも修正された為か、ディエチに斬撃がかすってしまった。

 

 

「───痛ッ!!」

 

 悲痛に顔を歪ませて明らかに動きが悪くなる。直ぐに飛行能力を持つクアットロがディエチの身体を抱えて飛ぶが、抱えた状態でとてもフェイトの速さから逃げ切れる筈も無く、正面に回りこまれてしまう。

 

「……罪状は沢山ある。逃亡の危険がある為、とりあえず貴女たちをこのまま昏倒させて連行します」

 

 フェイトがザンバーを構えながら言葉を述べる。ディエチは怪我していることもあって悲痛な表情。クアットロも苦い表情を見せながら、

 

「……きょ、今日は遠慮しておきまーす……」

 

 当然その言葉に了承する訳もなく、聞く耳持たないようにフェイトは黙ってザンバーを構え、一閃を繰り出した。その空間ごと切り裂く勢いで繰り出された斬撃はそのまま二人に向けて振り下ろされる。

 だが、

 

「IS発動───ライドインパルス!!」

 

 言葉が響くと同時に、何かが二人の下へ来ると同時に、その一瞬で二人の姿は虚空へと消えた。ザンバーの斬撃はそのまま背後の建物を切り裂くのみだ。フェイトは直ぐ様反応を検索するが、自分で検索した結果反応はロストしている。ロングアーチに通信するが、ロングアーチの方でも反応はロストしたようだった。

 上空で様子を窺ったはやてもその事を知り、顎に指を当てて眉根を寄せながら、

 

「……逃がしたか」

 

 悔しそうな表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 捕まったルーテシアとアギトは、ヴィータがロングアーチと連絡を取っている隙を狙って現れたセインによって連れ出され、彼女の能力であるディープダイバーによって地面の中に潜られて追跡不能となってしまった。なのはは咄嗟に自力で地面に潜ろうかと考えたが、相手の能力が水のように地面を潜っていたことから、速度の差もあって間に合わないと判断し、追うことは出来なかった。

 ヴィータもはやてから容疑者を逃したことを聞いて、目を細めながら、

 

「……悪い、こっちも最悪だ。容疑者は逃しちまった挙句、レリックも持っていかれた」

 

 ヴィータの報告に、横にいたツヴァイも落ち込んだ様子で浮遊している。

 そんなヴィータに恐る恐るといった様子で話しかけようとするティアナとスバルの姿があった。しかし邪魔するなと言うように二人に向けてグラーフアイゼンの先端を向ける。直ぐに背を向けて再び報告の続きを話す。しかし、どうもヴィータに何か言いたい様子の二人の様子を見て、なのはがどうしたの、と声をかけた。

 

「実は───」

「───……え?」

 

 スバルがなのはに耳打ちするように言うと、なのはは意外そうに目を丸くした。話を全て聞き終わると、なのははヴィータの元に向かって肩をとんとんと叩く。それにヴィータはイラついた様子で振り向き、

 

「何だ、今報告中だぞ!!」

「まあまあカリカリしないで、牛乳飲んでないから怒りっぽくなるんだよ?」

「別にカルシウム足りないからイライラしてんじゃねーよ! それに牛乳は毎朝飲んでる!!」

 

 なのはの冗談にもしっかりと答えるヴィータに少しだけ微笑ましく思いつつも、なのはは要件を話す。

 

「ヴィータちゃん、レリックは無事だよ?」

「───……へ?」

 

 その淡々とした言葉に、ヴィータとツヴァイは揃って目を丸くして言葉を零した。なのははそれを見せるために身体を引いて、背後にいた新人達をヴィータに視界に移す。するとティアナは説明を開始する。

 

「実は、レリックには少し特殊な封印をしまして……。えっと」

 

 言うと、ティアナはキャロに視線を向けて、

 

「水路でキャロにレリックを封印処理して貰ったんですが、その際にレリック本体はケースとは別に隠しておいたんです。それが、ここにあります」

 

 ティアナはキャロの帽子を取ってあげると、そこにはキャロの頭部に花が乗せられていた。次にティアナが指を鳴らして合図を送ると、花は姿を変えて、レリックのいつもの宝石のような姿に戻る。その光景に思わずヴィータも目を丸くする。

 

「本当はケースごと偽装しようとしたんですが、流石にケースを偽装すると反応でばれてしまうので、本体だけをここに隠したということです。一番敵との接触が少ない、キャロに持って貰う形で」

「なるほどー!」

 

 ティアナの説明に、ツヴァイは納得したようにレリックの元へ近寄った。その様子に、ヴィータはもう苦笑いしか出来なかったが、何はともあれ、レリックを守れたのだから良しとした。

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