正義執行   作:ラキア

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第21話

 

 

 辺りはすっかり夜と化して、辺りで戦闘によって光る魔力光が地上を彩る。地上本部に取り付くガジェットドローンは復帰した管理局員の魔導師によってその数は減っていた。

 そんな中、クアットロは戦闘不能となったディエチを抱えて回収し、適当なビルの屋上に降りる。

 

「……ごめん、クアットロ……」

「世話が焼けるわね。まあ、こっちもこんなに早く事態が変わるとは予想外でしたし。……でも」

 

 一旦ディエチを下ろしてクアットロは顎に指を当てて思考する。いや、思考をするまでも無く状況は此方に不利になりつつあった。一度髪を手で靡かせて立体ディスプレイを確認する。

 ウインドウにはこちらに駆けつけていたゼストとアギトの二人と対面し、戦闘を行っているヴィータの姿だ。普段の赤い騎士甲冑とは違い、その姿が白基調となっているのはリインフォースとユニゾンしているからだ。

 もう一つのウインドウを起動させる。そこにはスカリエッティのアジトと繋がっており、通信の向こうにはウーノの姿がある。

 

「ウーノ姉様。もうそろそろ潮時かと」

『そうね。クアットロはこのままトーレたちと共に作戦エリアを離脱して頂戴』

「了解です」

 

 通信を切る。ディスプレイを起動して別のエリアの状況も確認する。ルーテシアが向かった作戦エリアのほうもどうやら上手くいったようであり、オットーとディードも初陣で良く活躍してくれたようだ。

 チンクのほうも確認するが、どうやらこちらも問題なく目的は完了しそうだ。さらにウェンディとノーヴェも向かった為問題ないだろう。だとすればウーノの指示通りにトーレたちと合流した方がいい。どの道もうAMF拡散機は用済みだ。放置してさっさと撤退しよう。

 そう思い移動しつつ、通信を起動する。

 

「トーレ姉さま、そろそろ撤退ですわ。そちらはどういった状況で───」

 

 言葉の途中、遮るようにトーレから荒々しい声が聞こえた。

 

『クアットロかッ!? こっちは少し不味い状況だ……!』

 

 その言葉にクアットロは目を丸くして驚愕した。いつもならば問題なく冷静に戦闘をこなすトーレがこのように余裕が無いのは彼女の中で初めての事だったからだ。眼鏡を抑えつつ、状況を訊ねようとしたが、途中で切れてしまう。その余裕すら無いという事だろう。

 

「ディエチちゃん、自力で戻れそう?」

「うん、何とか」

 

 言ってディエチは立ち上がる。戦闘は難しいが撤退することには問題無さそうだ。

 クアットロは急いでトーレ達の下へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 トーレとセッテはなのはと交戦中だった。なのははAMF拡散機の破壊を目的としていた為、それを防衛していたトーレとセッテの二人と交戦になるのは必然である。

 セッテが自身のIS───スローターアームズで固有武装であるブーメランブレードを投擲するが、なのははそれを回避し、或いは手で弾き飛ばすという人間離れした技を繰り出した。

 しかもなのはの服装は管理局の制服であり、バリアジャケットをその身に纏っていない。魔力反応も無いことから、彼女が魔法を使っていないことが判明する。此方は戦闘武装を固めているのに関わらず、相手は生身なのだ。それだけで現状の異常性を物語っている。

 

「IS発動! ライドインパルス!!」

 

 丁度セッテに接近しようとしていたなのはに対し、間に入って腕の固有武装インパルスブレードで振り下ろすようにして斬りかかる。それによりなのははインパルスブレードを受け止めるが、跳躍中ともあってその勢いのまま下方へと落ちてしまう。

 

「大丈夫か、セッテ?」

「いや、直撃は避けたが、何発か掠った。内部構造に異常が出ている。このままでは不味い」

 

 セッテの珍しく苦渋な表情を見て、トーレは眉根を寄せた。セッテはトーレに次いで戦闘能力が高い戦闘機人だ。速さ、攻撃において強さを誇る彼女をここまで追い込むのだ。自分でも厳しい状況になるのは目に見えている。

 だとすれば戦闘続行は不可。撤退するしかないのだが、この状況で背を向けたりしたらそれこそ的になる。何か隙を生み出さなければならない。

 そう思っていると───。

 

「IS───シルバーカーテン」

 

 突如声と共に大量のガジェットドローンの幻影が辺りに出現する。ガジェットドローンの幻影と合わせてそこに現れたのはクアットロであった。こちらをみて状況を悟ったのか、不味いと察したのだろう。

 だが、これは良い切っ掛けだ。この隙に撤退することを互いにアイコンタクトで疎通し、その場を去る。トーレはクアットロを抱え、セッテも自身の移動速度を高めて、三人はそのまま戦闘エリアを離れる事に成功した。

 

 下方へと飛ばされたなのはは起き上がると、自身の身にバリアジャケットが展開されていることに気付いた。長距離離れたことによって魔法が使えるようになったことを起動したレイジングハートによって伝えられる。

 

「ありがとうレイジングハート。お陰で制服を傷めずに済んだよ」

 

 笑顔でレイジングハートに感謝を言うと、レイジングハートはお気になさらずと答える。優秀なデバイスに感謝しつつ、魔法も使えると分かって早速飛行魔法でビルの屋上へと向かった。

 屋上にはAMF拡散機の最後の一つが見える。辺りを見るが、そこには先ほどの戦闘機人の姿は無い。今の隙に逃げられたのだろう。だが、なのはの目的はあくまで拡散機の破壊だ。

 近づくと魔法無効化を食らってしまうので、近くにあった石を掴む。恐らく先ほどの戦闘によって出来た瓦礫の一部であるが、折角なので利用させて貰う。思い切り投げ、それを拡散機に命中させる。するとおよそ石が当たったようには見えない威力となって拡散機はそのまま爆散する。

 これで一帯のAMFは解けた筈だ。レイジングハートに確認すると、それも確認出来たとの事。

 なら早速ヴィータ達と合流しようと動こうとした時、耳に通信が聞こえた。

 

『なのは! 聞こえる!?』

「フェイトちゃん! どうしたの?」

 

 相手はフェイトであり、焦りを含んだ声色であった為、なのははどうしたのか訊ねると、次いで言葉が発せられ、

 

『今、六課のロングアーチに連絡しようとしたんだけど、六課が───」

 

 そこから発せられた言葉に、なのはは驚愕せざる得なかった。

 

 

 

 

 

 

 スバルは急いでギンガの元へと急いだ。出来るだけ早く、最大スピードでマッハキャリバーを走らせて通路を駆け抜ける。後ろでティアナがこちらに向かって叫んでくるが、気にしている余裕は無い。

 ギンガは現在一人で行動しているのだ。もしそんなギンガに戦闘機人と戦闘となれば不安だ。相手が一人ならばギンガでも対処できるかもしてない。だが複数人が相手ならば不利なのは明らかだ。

 通信が出来ないとあって何かあったのは間違いない。一刻も早く、駆けつけなければならない。

 そして、やがて広い空間へと出る。建物の設計上、管制室の近くで間違いない。

 

 そこで、スバルは見てしまった。

 

 ギンガが、自分の姉が───

 

 ───鮮血に彩られた頭を掴まれ、戦闘機人によって運ばれようとしている所を。

 

「……え?」

 

 一瞬言葉を失う。驚愕で身動きが取れなくなる。だが、目に映るものは間違いなく現実だ。

 

 ギンガの姿は悲惨なものであり、装備も大破し、身体中の至るところから血を流し、目も虚ろになっており、頭から止め処なく血を流している。そしてそれだけでなく、その身体の傷から見えているのは、

 

 自分と同じく身体を司っている───機械の部品が露になってしまっていた。

 

「あ……ああ……あああああああああああああああああああああああああああ」

 

 やがて発狂するようにして声を発する。相手の戦闘機人、チンクとウェンディとノーヴェがスバルを見て警戒態勢を取る。ウェンディは驚いた表情を見せ、

 

「あれって、タイプゼロセカンド!?」

「捕獲対象の一つか。まさか向こうからやってくるとはな。……いいだろう、姉が相手をするから、お前達はタイプゼロファーストを運んで脱出しろ」

「そんな、チンク姉!?」

 

 チンクはギンガを専用ケースへと入れた後、視線をスバルに向けて一歩踏み出す。ノーヴェが慌てて声をかけるが、それを制止した。

 

「いいから、姉なら心配ない。セインと共に脱出する。だから先に脱出しろ。ウェンディ!」

 

 チンクの言葉に、ウェンディが頷く。ノーヴェは未だにチンクを心配してその場を動こうとしなかったが、ウェンディがノーヴェに急かすように声を荒げた。ケースを牽引させたライディングボードに乗り、エリアルレイヴを発動する。

 ノーヴェも頑なに拒んでいたが、仕方ないと判断し、ノーヴェと共にその場から退避した。

 

 しかし、スバルはその様子を見て、発狂するように声を発し、全身からエネルギーを爆発させるように辺りに撒き散らす。それはもはや魔法ではなく、戦闘機人のもつエネルギーであった。

 瞳は変わり、光が一時的に収まると、初速を無視した突進がチンクに襲い掛かる。

 

「ギン姉ぇを……返せぇぇえええええええええええええええーーーーーーーーーッッ!!!」

 

 ローラーブーツが悲鳴を上げる。リボルバーナックルでチンクを攻撃するが、彼女が展開した防御壁に阻まれる。が、それを爆発的なエネルギーと限界を超えて回転するローラーによって、徐々に防御壁を貫通し始める。

 だが、チンクとて愚かでは無い。彼女は懐からスローイングナイフを数本取り出しそれをスバルへと投げる。すると彼女のIS───ランブルデトネイターによって爆発を起こし、スバルはその爆発に巻き込まれる。

 

 チンクは寸前の所で後方に跳び、爆風から逃れた。ランブルデトネイターの威力は凄まじく、それを間近で直撃とあっては普通は致命的ダメージとなる。

 だが───。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーッッ!!」

 

 爆風から出てくるのは全身がボロボロな状態になりつつも、それを全く気に留めずにこちらへ突進をしてくるスバルだ。もはやマッハキャリバーは大破寸前であり、亀裂を生み出しながら此方に肉薄せんと接近する。

 しかし、チンクとしてもそれを許すわけにはいかない。次いでスローイングナイフを床に投げて差し込ませ、近づくスバルに対しランブルデトネイターによって次々と爆発を起こす。

 

 スバルの身体にはダメージが蓄積している筈だ。もはや立っていられない程の傷を負っている筈である。だが、それでも勢いが止まることが無い。全身から血を流し、ギンガと同様に機械部が抉れても、止まらない。

 

 叫び、チンクへとリボルバーナックルで攻撃を繰り出す。拳を振り上げ、突き出す。防御壁を出すが、先ほどの勢いとは比べものにならない負荷が掛かり、突き破られてしまう。

 スバルの拳が顔面に炸裂する。その勢いで後方へと吹き飛ばされてしまい、床と当たる衝撃でバウンドする。

 だが、チンクも防御壁が突き破られた瞬間に、その腕にスローイングナイフを突き刺し、吹き飛ばされると同時に爆破させた。流石に致命的なダメージになるだろう。

 

 チンクは起き上がろうとするが、視界がぼやけてしまい、思考も碌に出来ない。これは内部に異常が出たかもしれないと思うが、それにしては不自然だ。いくらダメージを受けたとして、一発食らった程度で破損するだろうか。

 

 ───否だ。そこから考えるに、スバルの固有能力は振動破砕だと推測する。つまり、生物には勿論だが、通常より防御力が高い戦闘機人にとっても最大に厄介な攻撃である。

 身体を起き上がらせようとするが、内部機能が破損したせいで身動きが取れない。これは本当に不味い。これではセインがこちらに来る前に管理局によって拘束されてしまう。そう思い、何とか身体を起こそうとした。

 

 だが次の瞬間、信じられない事が起こる。爆煙の向こうに人影が見える。その姿はスバルだ。スバルはこちらにゆっくりとだが近づいてくる。バリアジャケットは既にマッハキャリバーが大破したことによって解除されており、ボロボロの制服姿である。その身は至るところが大破し、片方の腕なんかはもう肘から下が無い。片足も破損、膝が裂けて機械の部品が抉れている。

 

 通常ならば死んでもおかしく無い状態であるのに関わらず、此方に来るその姿からは、とてつもない執念を感じた。

 

「……返してよ……返してよ……ギン姉ぇを……返してよぉぉぉぉーーーーーーーッッ!!」

 

 血と涙が混ざったものを目から流し、スバルは叫ぶ。

 

 ───その瞬間、スバルの身体から得体の知れない波動を感じた。

 

【挿絵表示】

 

 それはチンクが感じたことの無い、未知の感覚。だが、それがこの状況をもっと悪くさせるものだというのは理解出来る。力が放出されているのは分かるが、それとは別の何かを感じた。

 まるで感情の渦といったものだろうか、強い波動はその正体を不明にしながら、スバルから発せられる。

 

 それでチンクは理解した。

 

「───……そうか、お前が…………」

 

 言葉の途中で、チンクの意識は途切れた。それと同時、スバルの身体から得たいの知れない何かに包まれる。

 

「……ぎ……ん姉ぇ……」

 

 とっくに限界を超えていたスバルは意識が途絶え始める。その際に、感じた事の無い感覚に包まれ、スバルは完全に意識を失った。

 

 やがてティアナ、エリオ、キャロが駆けつける。

 

「……スバル?」

 

 ティアナは辺りを見渡す。至るところが爆発の損傷が激しい中、その場に居たのは倒れるチンクだけであり、スバルの姿は───そこになかった。

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