正義執行   作:ラキア

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第27話

 

 フェイトはスカリエッティとウーノを拘束後、全体に報告を済ませ、アジトの機能が妙な作動をしないようにチェックを行っていた。スカリエッティ曰く何もしないとの事だが、信用などしない。その言葉どおりに特に何もなかったが。一通りの作業を済ませていると、査察官のヴェロッサもシスターシャッハも無事に合流した。シャッハは意識が無い戦闘機人を抱えていた。それを含め、拘束された四人の戦闘機人がこの場で拘束される事になった。

 ヴェロッサの報告では、過去に被害にあった陸戦魔導師たちの何人かが生体ポッドで管理されていたのを発見したようで、その中にはメガーヌもいたとの事。それを聞いてフェイトは安堵した。

 そうしていると、不意に拘束されているスカリエッティが説明を始めた。その内容は先ほど一旦言葉が切れた最強の力、最高傑作の事についてだった。

 

「古代ベルカ。その戦乱時代には、数多の歴史でも頂点に存在する強者の存在があった。聖王、覇王、冥王、鉄腕の一族。他にも様々な強者の存在が。だから私は思ったんだ。その存在達よりも遥かに凌ぐ強者を生み出してやろうってね。だから全ての強者の遺伝子を詰め込んださ。だがそれだけでは、まだ足りなかった。いくら注ぎ込んでも、交じり合っても、最強の存在は出来なかった。試行錯誤を積み重ね、プロジェクトFや闇の書など、使えるものは全て使った。そして私は見つけたんだ。最強の力を生み出す方法を。それは特殊な技術も、遺伝子操作も関係なかった、最も単純な方法。───リミッターを外すことさ」

 

 リミッターという言葉に首を傾げながら、フェイトはスカリエッティの言葉を聞く。

 

「生命のリミッターを外す。それだけで良かったんだ。いや、それが実現出来ないからこそ最も難しいんだがね。だから私は意図的に、生命のリミッターを外せる状況を作り出した。先ずは基本的な身体能力だ。これはリミッターを外した後では身体が変わるため意味は無いが、下地はとても重要でね。戦闘機人の身体に、身体検査にも引っかからないように古代ベルカの王たちの遺伝子を組み込んだ。リミッターが外れた際にそれが生きるようにね。次に、リミッターが外れるように、その人物がこの現実に絶望するような状況を作り出した。それが今の状況だ」

 

 一呼吸置いて、次いで言葉を吐き、

 

「幼き頃から普通とは違う存在として生き、災害に巻き込まれ、ようやく成長した所でさらに絶望へと叩き落される。そして極め付けに大災害という状況を生み出す事で、その存在は世界に絶望を起こすだろう。───まあ、実際に成功するかなんて、可能性はとてつも無く低かったわけだが」

 

 自傷気味に笑みを浮かべるスカリエッティに対し、どうも信じられなかった。まず生命のリミッターという時点で現実味の無い話である。そんな漫画やアニメのような事が起こるわけがないと否定した。

 しかし、スカリエッティはそんなフェイトに視線を向けて、

 

「だが、君の身近に存在するだろう? リミッターを外し、馬鹿げた力を持つ存在───高町なのはという存在が」

 

 その言葉に、フェイトは衝撃が走った。なのはという名前で、今まで信じられなかったスカリエッティの説明が、一気に現実味のあるものに反転した。確かになのはの力というものは自分がよく知っている。もしそれが生命のリミッターを外したという事が原因なのだとしたら。だからこそ、スカリエッティの今までの説明に妙に納得がいってしまったのだ。

 

 もし、そんな存在を生み出したというなら、前例の無い───災害を生み出すだろう。

 

「……なのはの存在を、どうやって?」

 

 どうやって知ったのかと問う。

 

「あのプレシアの件と闇の書の件に、私が気付かないとでも思っていたのかい? 当時は衝撃的だったよ。まるで神をも殺すようなあの大きな力に。だから私は研究を始めたのだ。あの存在を生み出す為にね」

 

 スカリエッティの言葉にフェイトは恐怖するのを感じた。ヴェロッサとシャッハは困惑しているが、もしそれが現実となってこの世に生まれたとしたら、無類の大災害が発生する。

 フェイトは慌しく口を開き、

 

「その人間は今、どこにいるッ!? 止めさせることは……」

「無理だよ。どこにいるのかも私には分からん。だがリミッターを外し、覚醒したならば恐らく、聖王のゆりかごにでも向かっているのではないかな。あれは力の象徴だからね、彼女にとっても利用価値はあるだろうさ」

 

 その言葉を聞いて、フェイトは通信を繋ぐ。相手ははやてだ。なのはは今ゆりかご内部にいる為、通信は出来ない。はやてにスカリエッティの言葉を説明し、ヴェロッサとシャッハにこの場を任させると伝えた。

 もし、万が一の可能性として、なのはが【負ける】事があるとすれば、それは世界の終焉を意味するだろう。フェイトが駆けつけた所で役に立てないかもしれないが、いても立ってもいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 ヴィヴィオを抱え、後は脱出のみとなった。突入の際は強引に貫通してきたが、ヴィヴィオを抱えている状態ではそれはしたくない。事前に説明を受けた時に、本来の出入り口は上のほうにあると知っていた。そしてそれは船の後方にあるとの事。故に動力源側にあると予想される。だからこそなのはは玉座の間から出て、その人間離れした脚力で通路を進んで行く。

 僅か数分、その間に船の半分を通ったと思う。その時に前方に人影を見つけた。近づいて行くと、それは騎士甲冑に身を包んだはやてだった。はやてはこちらに気付き、手を上げて近寄ってくる。衝撃を与えないようにゆっくりと速度を落としつつ、はやてに向かい合う形となる。

 

「なのはちゃん!」

 

 はやてはリインフォースとユニゾン状態のようで、全身がいつもと違って変色しているのが分かる。

 

「はやてちゃん! 外の方はどんな感じ?」

「こっちも何とかなった。外のガジェットも機能停止して、砲撃も止んだ。アジトは制圧したし、地上の方も何とかなった。なのはちゃんの方も、何とかなったみたいやね」

 

 抱えているヴィヴィオの姿を見て、はやては安堵した表情を見せた。後はここから脱出するだけだが、流石に戦闘機人を置いていく訳には行かない。なのははヴィヴィオをはやてに預ける。

 

「さっき動力源前にいた戦闘機人の子は隊員達に任せてあるから大丈夫や」

「そっか。あれ、そういえばさっき、一人いたんだけど……」

 

 言って先ほどまで玉座の前にいたもう一人の戦闘機人、クアットロの存在を思い出す。さすがに彼女一人でどうにか出来るわけが無い為、さっさと確保して脱出したい所だ。そう思考していると、はやては問いかけて来る。

 

「なあ、なのはちゃん? 何か変な人と遭遇せんかった? さっきなのはちゃんと同じようにゆりかごに突入する人影を見たんよ」

「え? そうなの? 見てないけど?」

 

 と、なのはが目を丸くして答えた瞬間だった。レイジングハートが警告の声を発した。そしてそれははやてにも伝わる。

 

 すると突然、強い何かが身体を伝ったのが分かった。魔力とも違う、圧のようなものだった。

 

「なんや……これ?」

 

 はやては表情を険しくさせ、なのはもまた、眉根を寄せてその圧を感じた方へ視線を向けた。それは、先ほどなのはが居た場所。玉座の間だった。

 

 何かがいる。直感的にそう感じた。そしてそれは、なのはが今までに感じた事の無いものだった。

 

「───はやてちゃん、直ぐに他の隊員と一緒に脱出して。あれは……私が行く」

 

 はやてにそう告げてなのはは踵を返す。はやては静かに頷いて気をつけてとだけ言ってきたので、それに対して振り返りはせずにサムズアップだけを向けた。はやては後ろへと駆けて行き、なのははそのまま地面を蹴って一気に加速して来た道を戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 玉座の間までのは数分は掛からず、僅か一分程度で到着する。自ら空けたデカイ穴から室内へと入ると、視界には先ほどとは違う光景がある。玉座にはいかにも此方を待っていたかのように立つ存在が居た。全身が黒く、その頭部には二本の角が生えており、まるで特撮などの怪人を思わせる存在だった。

 

【挿絵表示】

 

 その怪人の手には何かを持っている。それはクアットロだった。意識がなくボロボロな彼女の頭部を怪人は握っており、なのはに気付くと同時に捨てるように穴から外に投げ、通路へと落ちていく。それを視線だけで確認した後に、怪人へと視線を向けた。

 

「誰なのあなた? 一体何が目的?」

 

 問うと、怪人は静かに玉座へと触れる。こちらの話を聞いていないのかと若干イラつきを覚えたが、次の瞬間にゆりかご内に音声が響き渡る。それは聖王の反応を認識したというものだった。それが示す答えはただ一つ、この怪人がゆりかごの認識によって聖王と判断されたのだ。だが聖王と呼べるかどうかも分からないその容姿に、なのはは首を傾げるのみだ。こんなのが聖王なのかと疑問を浮かべつつ、なのはは口を開いた。

 

「今の状況を見て判断するけど、あなたは聖王なの?」

「聖王……か。そうでもあり、違うとも言える」

 

 はっきりしない物言いに首を傾げると、怪人は手を上げて口を開く。

 

「聖王と覇王、そして冥王。それ以外にも鉄腕の一族など幾つもの強者の遺伝子が私にはあり、そしてそれらを凌駕した力を得ている。まあ、今の私にすればどうでもいい話だが」

 

 言って、上を見上げて続ける。

 

「この聖王のゆりかごは私の目的に役立つ代物だ。故にこのまま使わせてもらう。管理局の砲撃が迫るだろうが、私にかかればそんなもの無力に等しい」

「目的って何? もしかしてこのまま世界征服とでも言うつもりなの?」

「世界征服か……あながち間違いではないかな」

 

 不敵に笑う仕草を見せる怪人に対し、なのははいたって表情を変えなかった。それもそうだろう。この怪人は見た目といい目的といい、本当に特撮の怪人そのものだったからだ。さらに言ってしまえば、その格好もどうも安っぽい怪人のコスプレにしか見えない。もはや呆れた感情を見せるなのはだが、怪人は気にせず言葉を続ける。

 

「私はこのまま世界を恐怖に陥れ、恐怖によって支配する。大きな悪で世界を変える。だが、別に人類を抹殺しようとは思わない。故に、あんたを殺す気など無い。そこの戦闘機人のようになりたくなければさっさと逃げ出せ」

「いや、何言ってんの? 逃げるわけ無いじゃん。このままゆりかごが消滅しないなら、それを止めるのが今の私の役目だし」

 

 当然の事のようになのはが言うと、怪人は首を傾げる。

 

「……なんだ? 折角見逃してやるっていうのに、そのチャンスを無駄にするつもりか? 正常な判断が出来ないのか?」

「正常な判断が出来てないのはどっちなのかな? 悪いけど怪人ごっこに付き合うつもりはないの。あなたこそさっさとそこを退いて欲しいの。その玉座ぶっ壊すから」

 

 指を指してさっさと退けるように言う。だが、怪人は退ける気が無く、依然としてそこに立つばかりだ。溜息を吐き、

 

「何か今までに感じたことの無い気配だったから、何だったのか気になって来てみれば、とんだ期待外れ。やんちゃな趣味でも節度を持ってやって欲しいの。突然現れて演技かかった事されても現場としては迷惑でしかないの。分かる?」

 

 説教するように腕を組んで言うと、怪人は理解が出来ずに首を傾げるだけだ。

 

「もしかして、今の状況を理解していないのか? 私が趣味でこんな事をしていると思うか? ごっこ遊びでも演技でも無いんだぞ?」

 

 その言葉の途中で何かに気付いたのか、ハッとしたように顎を動かすと、怪人はまた不敵に笑う。

 

「そうか、もしかしてあれか? 私の心にまだ人間の心がーとでも、残っているのなら届いて私の言葉ーとでも、そう思っているのか? そうだったなら無駄な努力だ。生憎私は本来こういう存在であり、故に戻ることなんて無いんだ」

 

 まるで確信を突いたかの自信に溢れてなのはへと指を指した。何言ってんだこいつはとしか思えない。此方はいたって真面目に注意しているだけだが、この存在はそれを演技へと組み込むことで脳内で補完した。

 面倒と思いつつ、なのはは眉根を寄せて、

 

「何なの、あなた? ていうかそもそも誰?」

「ん? もうとっくに気付いているかと思ったが───私だよ、スバル・ナカジマ」

 

「……え?」

 

 その言葉に、なのははここに来て初めて驚愕し、目を丸くした。

 

「え? あなたがスバル?」

 

 困惑するが、スバルはそれに頷いて肯定した。正直、スバルとは認識出来ないほど面影が無いし、声も変わっている。キグルミ効果でここまで印象が違うのかなと思ったが、それにしたって変わり過ぎている。なのはの印象からでもそれは明らかで、そもそもスバルであったならば、その性格が全然違う。少なくともこんな事をする人間とは思えないからだ。

 スバルはまた笑みを浮かべて口を開く、

 

「そうだ。言っただろう、これが本来の私であり、真の姿だって。それでどうする? これでお互いに他人同士でしたという言い訳は出来なくなったぞ? お前もさっきの戦闘機人のようになりたくなければ、さっさと───」

 

「あのさ、一つ言うけど、さっきの戦闘機人。大怪我のように見えるけど全然息があったよね? 本当に悪の親玉目指すんだったら容赦なく殺すのが普通じゃないの? 私を見逃すような事もしないんじゃないの? そういう所が中途半端に見えて安っぽい怪人にしか思えないんだけど」

 

 そう言うと、スバルはどこか気付いたように肩を微かに振るわせた。それが気に障ったのかどうかは知らないが、もうこれ以上会話しても拉致があかないと判断する。

 

「まあいいや……───とりあえず、ぶっとばすの」

 

 

 

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