正義執行   作:ラキア

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第09話

 

 ホテル・アグスタの会場にはパーティのようにテーブルで食事などを楽しむダンスホール。そしてオークションが開かれるステージホール。オークションが始まるまではダンスホールにて食事や酒などが振舞われるので、出される食事を遠慮なく食べて腹を満たしていく。富裕層の方々が此方を訝しげに見ていたが、今更気にすることでも無い為無視しておく。

 腹も満たされたところで、会場の中をぐるぐる歩いていると見知った人物を見かけた。

 

「───あれ? 何ではやてちゃんとフェイトちゃんがいるの?」

 

 ホールの扉横で周りに聞こえないようにひそひそと会話するはやてとフェイトを見かける。二人とも一目では分からないほど綺麗なドレスに身を包んで、元が綺麗な上にそれを引き立てる化粧をしている。男が見たら放っておかない美人揃いだ。自分もパッと見気付かなかったが、はやての日本人という外見で確定できた。二人も声をかけたことで此方に振り向き、そして驚いたように目を丸くする。それに手を上げて歩み寄った。

 

「なのはちゃん! 何でここにいるん!?」

「いやー、ちょっと用事があってね。はやてちゃんとフェイトちゃんはどうしてここに?」

 

 先ほどの真剣な表情での会話から見るに、単に客として来てはいない事は確かだ。恐らく管理局の仕事でここに居るに違いない。そう思っていると、フェイトが此方の傍によって耳元で話しかけてくる。

 

「……今は任務中で、とある事情からこの会場の警備をしているんだ」

「例のロストロギア関連かな? だとすると、出品に?」

 

 はやてが作った部隊・機動六課はロストロギア・レリックの確保を目的とした部隊だと、フェイトから誘いがあった時に話は聞いている。その六課がここに警備に来ているという事はオークションの出品にロストロギアがある可能性がある。

 小声でフェイトに聞き返すが、その質問にはやてが答えてくれる。

 

「いや、出品自体には許可が取れた物しか出されてへん。けど、私らが戦闘繰り広げている機械・ガジェットドローンが、他のロストロギアに釣られて来る可能性がある。……そして今、まさに襲ってきている最中なんよ」

 

 なるほど、と声を零して腕を組み、状況を理解する。係員には情報は伝わっているが、騒ぎを大きくしてパニックを起こさないように参加者には伝えてはいないと聞き、はやてとフェイトが隠密になっているのも理解出来る。

 

「外の防衛は大丈夫なの?」

「今ヴォルケンリッターと、新人達が頑張ってくれてる。問題は無さそうや。……でも……」

 

 はやては少し眉根を歪めて、言葉を区切る。それにどうしたのか訊ねると、困ったように口を開く。

 

「……どうやら、敵戦力に優秀な召還魔導師がいるみたいでな。そのせいでガジェットドローンも普段とは比べものにならないくらい良い動きしているらしいんよ。しかも転移で防衛ラインまで一気に攻められている状況や。ヴィータが隊長として頑張っているけど、このまま新人達じゃキツイかも……」

「…………」

 

 肩も下げて困惑したように見せている。確かに新人達が守る防衛ラインに届かせないようにヴォルケンリッター・ヴィータ、シグナム、ザフィーラが前線で頑張って戦ったとしても、転移で防衛ラインに直接ガジェットドローンを送り込まれたのでは陣形の意味が無い。しかも前線は前線で苦戦している状況らしく、ヴィータが下がれば事態も悪化するのが分かる。

 しかし、この程度の事ならばはやては困惑するよりも、もっと他にやりようがある筈である。しかしこのように自分の前でこういった態度を取ると言う事は、明らかに協力を求めて来ている。本当に管理局に勤めている友人は性格が歪んでいくなと思いつつ、その言葉を静かに聞いた後に溜息を吐きつつ踵を返す。

 

「……? なのは?」

 

 はやてのわざとらしい誘導に気付いていないフェイトがどうしたのか訊ねて来た為、出入り口の扉を手で押さえつつ言葉を返す。顔だけフェイトに向いて、笑みを浮かべた。

 

「───ちょっと、腹ごなしの運動でもしようと思うの」

 

 言って、扉を開けて廊下へと出る。はやてとフェイトが居るのなら、ユーノの事も心配する事はないだろうし、自分よりも上手くやってくれるに違いない。所詮自分は細かい事を考えて行動するよりも単純に力を振るっていた方が正解なのも分かる。その自分の単純さに溜息を吐きつつ、小走りしながらレイジングハートを取り出して話しかける。スーツを汚す訳にはいかないので、バリアジャケットをセットアップした。

 

 

 

 

 

 

 ホテルの四方からガジェットドローンの反応が現れたと伝わられてから僅かな間に、事態はかなり進行していた。ティアと合流してバリアジャケットを装備した後に、同じく装備を切り変えたエリオ、キャロと合流する。新人達はホテルの周囲の防衛ラインの死守。ヴィータ、シグナム、ザフィーラのヴォルケンリッターの面々は前線に出てガジェットドローンを近づけないように殲滅する。これにより、前線から零れたガジェットドローンを自分らが撃破するという確実な防衛だったのだが、そうも言っていられない状況になってしまった。

 

 目の前にはガジェットドローンの一型と三型が転移魔法で出現していく様子が分かる。シャマルから聞いた話だと、今回の敵はガジェットドローンだけで無く、キャロと同じく召還魔導師が居るとの事だ。その為ヴィータとシグナム、ザフィーラといった強力な戦力を通り抜けて転移で防衛ラインまで飛んでくる。非常に厄介な状況だ。

 現在ヴィータが前線から戻って来ているらしい。それもその筈、この状況では自分達がいくら尽力したとしても防衛ラインが崩れるのは時間の問題だ。故に召還魔導師を直接潰すことが出来ずに、防戦一方になる。だが、後ろには大勢の人の命があるのだ。他には代えられない。

 

 転移してきたガジェットドローンの対処だが、転移された場所は一まとめになっている為、戦力を分散すること無く殲滅できる。しかし、第二第三波と転移された時は、戦力をスターズとライトニングに分けて行動する。転移魔法の反応はシャマルが監視している為に予め位置を特定することが出来る。故に待ち構えて撃破することが出来る。

 

 先ずは目の前のガジェットドローンの一型複数を殲滅する事にする。ティアがクロスシフトの支持をしてくる。これは言わば自分が囮になって引き付けてティアが横から狙撃するというパターンだ。単純ゆえに確実なコンビネーションである。

 ローラーブーツを全開で走らせてから、ガジェットドローンの間をすり抜けるように移動する。流石に召還魔導師が仕掛けを施してあるだけに動きが鋭い。が、これでも自分らにとってはまだまだ予測できる範囲だ。故に問題ない。十分に引き付けてからマッハキャリバーがウイングロードを展開し、それに飛び乗って森林の上を移動する。それに寄ってくるガジェットドローンを、ティアが一斉射撃で全基撃ち落とした。

 

 それを確認してから、ウイングロードをあえて途中で区切って飛び退く。その下に居たガジェットドローン三型に攻撃する為だ。宙に居る間もガジェットドローンは砲撃を放って来るが、自分の視界にはその弾道が見え、それに当たらないように身体を反らしていく。同時、リボルバーナックルを回転させて拳の威力を溜めつつ、落下する。

 真下、ガジェットドローン三型の上部にリボルバーナックルを叩き込む。機体に拳が減り込み、内側から破壊するように衝撃を与える。それが仕留めたと分かれば直ぐ様飛び退いて着地すると、ガジェットドローンは背後で爆散した。これで一帯のガジェットドローンは全て撃墜した。

 

 着地と同時にローラーブーツを走らせてティアと合流しようとする。だが、その時───。

 

『防衛ライン東の方向! 転移反応来るわ!』

「東!?」

 

 シャマルから通信で報告が来るが、東は現在丁度空いている箇所であり、全速力で向かわないといけない場所であった。四人という少人数である故に仕方無い事態だが、自分のローラーブーツを全開で走らせればまだ間に合う地点だ。

 

『───大丈夫、既に予測して待機してあるから、焦らず急いで来て頂戴!』

「流石ティア愛してる!!」

 

 優秀なパートナーに感謝しつつ、殲滅パターンを考えながら出現方向へと向かう。だが、嫌な音が背後から響いた。

 

「……え?」

 

 丁度自分が通り過ぎた林の中から、ガジェットドローンが三体ほど飛び出して来たのだ。その三体はそのまま正面にあるホテルの裏口へと向かって行く。

 

 なぜ気付かなかったのだろうか。ヴォルケンリッターの戦力から逃れたガジェットドローンが、ジャミングを放ってここまで来る事に。慌ててローラーブーツを無理やり横に倒して急ブレーキをかけるが、直ぐには方向展開出来ないの自分の弱点である。

 更に最悪な事態が発生する。裏口の扉から一人の女性が出てきたのだ。恐らくホテルの人間か会場の客かだろうが、このままではガジェットドローンの攻撃に巻き込まれてしまう。攻撃も間に合わず、間違いなくガジェットドローンと出てきた人間は接触してしまう。となれば、もう叫んでその人に危険を知らせるしか方法は無い。

 大声で、その人に逃げるように言おうとした、その時───。

 

【挿絵表示】

 

 ───ガジェットドローン三体が、次の瞬間に粉々に砕け散った。

 

 

「…………え?」

 

 思わず呆気に取られてしまった。自分の見たものが確かなら、今ガジェットドローンは、裏口から出てきた人間が放った───素手の拳で砕け散ったことになる。

 

 その女性は、良く見れば白を基調としたバリアジャケットを身につけていた。一体何者なのかと思ったが、女性は頬を人差し指でかきながら此方に近寄ってくる。

 

「……今の敵って、まだ残ってる?」

「……え? は、はい! ホテルの周辺、東の方向に……」

 

 急に訊かれたのもあり、思わず答えてしまう。いや、この人間が魔導師だと分かっていたのもあったからだろう。だが直ぐに報告してからにすればと後悔し、女性に待つように声をかけようとするが───。

 

「……さて、行くか」

 

 ボソッと呟いて、女性は次の瞬間には消え去って行った。

 

 

 

 

 

 

 扉から出れば、話には聞いていたガジェットドローンが襲ってきたので、とりあえずそれらを拳で粉砕しておく。丁度魔導師が立っていたので、その女性にガジェットドローンの残りの数を聞くと、どうやらホテルの東側に居るとの事だ。東側といえば、確かオープンカフェなどが合った場所だと思い出す。丁度空き時間に施設内をぶらついてよかったと思いつつ、早速その場所に向けて駆け出す。

 

 着いてみれば、その場所には先ほどのガジェットドローンとは違った大型のものが多数存在していた。一人の魔導師が銃で対応していたが、中々通らずに苦戦しているように見える。既に多きなアームパーツを展開していて、暴れると面倒だと分かっている為に、さっさとワンパンで撃墜しておくとする。肉薄し、拳を叩き込む。それだけで大型ガジェットドローンは爆発を起こす。本来は爆発に巻き込まれると服が燃えるといった被害が出るが、レイジングハートが優秀なのでその必要は無く、被害を考察外にして次の行動に移る。

 

 既に卵型のガジェットドローンが何体か接近してきているので、それらを一気に片付けるとする。

 

「───連続普通のパンチ」

 

 単に高速に繰り出される普通のパンチ。それを食らったガジェットドローンは破片すら残すこと無く消え去る。他から見れば一瞬で粉上にされたと思っているだろう。事実先ほどの銃を持つ魔導師が口を空けて此方を見ている。

 

「……これで終わりなの?」

 

 その魔導師に訊ねると、はっと気付いた魔導師は答える。

 

「は、はい! 接近しているのはこれで全部です!」

 

 自分がバリアジャケットを装着しているからなのか、自分を管理局の人間か何かと勘違いしているらしい。恐らくさっきの子とこの子が六課の新人の人たちなのだろうと考える。と、森の方から見慣れた姿が飛んでくる。

 

「───新人共にしては、一瞬でガジェットの反応が無くなったと思えば……。なんでここにいるんだ、なのは?」

「あ、やっぱりヴィータちゃんだ。久しぶりだね」

 

 片手を上げて挨拶する。それに呆れながら笑みを浮かべて飛んで来るのは、赤い戦闘衣服に身を包んだヴィータだった。

 

 

 

 

 

 

「……ありゃ? ガジェットドローンの反応が一気に消えちゃった」

「どうやら向こうの部隊には、優秀な騎士が居るらしい」

 

 転移したばかりのガジェットドローンの反応が一瞬で消えた為、軽く目を丸くして驚く。ゼストが何処か嬉しそうにそう言葉を放ったのを見て、やはりこの男は管理局の人間だなと確認しつつ、術式を止めて魔法を止める。ガジェットドローンの数も減った為、これ以上の戦闘は無意味だからだ。

 目的の品は先ほど、自分の相棒である召還獣であるガリューに確保して貰った。これでスカリエッティに貸しを作ることが出来る。とりあえず品はガリューにそのままスカリエッティにまで届けるように命令して、自分達は早々にこの場を後にする事にした。

 流石にこの開けた場所では、自分も多勢を相手にはしたくない。相手をするのであれば、数が関係しない狭い場所、かつ召還が行える場所が望ましい。

 

「……ま、何にしても連中と相手するのはまた次の機会かしらね」

 

 フードを被り、ぼやくように言葉を零す。一応ジャミングを施しつつ、ゼストと共にこの場を離れた。

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