尻ぬぐいのエリダヌス~駆け抜けて聖戦~   作:丸焼きどらごん

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9,獅子の来襲

 一輝との戦いに敗れたジャミアンを回収した私たちは、その後も怒涛の回収作業に追われていた。何しろ地獄の番犬座(ケルベロス)のダンテ、御者座(アウリガ)のカペラ、ペルセウス座のアルゴルと再び白銀回収三連続である。

先ほどもミスティ、モーゼス、アステリオン、バベルを回収してジャミールに搬送したばかりだから、今日中で考えたら八連続で白銀聖闘士達の命をフィッシングしていることになる。順調なのは良い事なのだが、覚悟はしていたものの息つく間もない。

 ……襲撃を受けている側の青銅は、連戦にもかかわらずよくやっている。

 

 回復作業に至っては特にカペラに関してが骨が折れた。一輝の奴が相手の精神を崩壊させる鳳凰幻魔拳を使ったからな。身体的外傷を回復させるよりも、よほど手間がかかる。とりあえず死なない程度の一時的な回復は望めたが、リハビリが必要だろう。彼らを見てくれているムウ殿には世話をかける。彼に報いるためにも、我々も頑張らねば。

 

 

 それにしても。

 

 

「サガめ、ぽんぽんぽんぽん貴重な白銀を送り込んできよってからに!! いや青銅だったらいいというわけでもないが!! 現在の人数がそろうまで何年かかったと思っている!? 魔鈴とシャイナを含めれば十名? 十名だと!? それも身内相手に! ふざけるな!!」

「ま、まあまあ。落ち着けリュサンドロス」

 

 小宇宙による回復を行い続けた疲労のせいもあって、つい声を荒らげて頭を掻きむしってしまった。アイオロスが背中を叩いて落ち着かせようとしてくれたが、どうにも腹の虫がおさまらない。分かっていた事実とはいえ実際に送り込まれた人数を見ると、どうしてもな……。

 ただでさえハーデスの冥闘士百八人+神@に対して聖闘士は上限八十八人。それも全部の星座が埋まっているわけでもないのに、使い潰しすぎだ。サガとしては青銅ごときに白銀が敗れるはずもないと考えているのだろうが、彼らが対するのは同じ聖闘士。身内内での不毛なつぶし合いで消耗するなど本来あってはならない事である。

 星矢達に成長してもらうための踏み台の役割を白銀達に求めている私たちが何を言えた事か、とも思うがこちらはしっかりアフターケアをしているのだ。……裏人格のサガに振り回されている表のサガには申し訳ないが、もうお前今すぐハゲろ!! と思うくらいは許してほしい。単に禿げただけではただのオシャレ坊主イケメンになるだけだから、もし禿げる場合は頭頂部だけ禿げ散らかってあとはふさふさに残っていたりしたら、ちょっと面白いなと思う程度には不満が溜まっている。

 

 だが文句を言ったところで、私たちに休む暇はない。

 

 ジャミアン戦後、一輝から戦いを引き継いだアンドロメダ瞬、キグナス氷河、ドラゴン紫龍が苦戦しつつも白銀三人を倒す事に成功したわけだが……。計十人もの白銀を退けたとして彼らは聖域に、サガにより脅威として認識されたことだろう。アテナ城戸沙織も未だ健勝であり、射手座の聖衣もアテナサイドにあることが奴に焦燥を覚えさせているはず。

 そうなれば原作知識など覚えていなくとも、順当に考えて次に刺客として送り込まれてくるのは黄金聖闘士の誰かだと分かろうものだ。物語通りなら大丈夫だろうなどと信じて成長を促すばかりに、まかり間違って星矢達の誰かを死なせてしまうわけにはいかない。それほどに、本来青銅と黄金の実力差は天と地の違いなのだ。

 ……戦いを見守る私たちの緊張感も、自然と増してくる。

 

 

 

 とはいえ、流石に連戦はここまでだったらしい。今日からしばらく、私たちは彼らの次なる戦いに備えて張り込みだ。

 

 

 

 度重なる戦いに加え、崖の上から飛び降りたことで重症を負った星矢は入院。

 ペルセウス座アルゴルとの戦いのさい、奴の石化の呪いを発するゴルゴンの盾を防ぐために自ら両目を潰した紫龍は療養のため五老鋒へ帰還。

 一輝は星矢達との戦いで受けた傷の後遺症を癒すためにカノン島へ。

 氷河は東シベリアに。

 瞬は星矢を心配し残ったが、いずれ彼も兄を探して旅立とうと考えている。

 

 ……とまあ、彼らとしてはこれ以上城戸沙織に関わる気はなく、現在は解散ムードの中つかのまの休養、療養期間となっている。

 いつ次なる襲撃があるか分からないため私たちは相変わらずストーカーよろしく陰から見守っているが、少しでも彼らが休めたらいいと、身勝手ながら願ってしまう。

 

 ちなみにその見守り体制だが、現在アイオロスと私は二手に分かれてる。というのも、おそらく次に襲撃があるとすればアテナか黄金聖衣のどちらかだと思われるからだ。

 聖域もこれ以上無駄な人員を割けないだろうし……割けないよな? ま、まあ普通に考えたら割けないだろうから、次の刺客は黄金一人か、多くても二人だと思われる。そうなれば旅立った他の青銅を狙う余裕はなく、アテナ抹殺か黄金聖衣奪還に目的は絞られるだろう。

 その予想を元に私はアテナ城戸沙織に。アイオロスは入院中にも関わらず城戸沙織に一時的に黄金聖衣を預けられた星矢についているのが現状だ。

 

 さて、襲撃はいつになる事やら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちら城戸邸。変化なし』

『こちら病院。こちらも今のところ変化なしだ』

 

 ケータイ、スマホは無くとも我々にはテレパシーがある! とばかりに、互いの状況を小宇宙を用いた通信で連絡をとる私たち。先の世の文明の利器を知る私としてはこの時代を不便に思う事が多々あるが、訓練された聖闘士において連絡手段はスマホに勝るのだ。

 

 ちなみに白銀をあずけたムウ殿とも連絡はとっているが、どうやら目を覚ました白銀達はもれなくムウ殿の説得に応じたらしい。「みな聞き分けの良い方たちで助かりました」などとムウ殿は言っていたが……。その説明および説得に多少の物理が交えられただろうことは、一度様子を見に行った時の白銀達の様子で何となく察した。というか貴鬼からちょっと聞いた。

 どうやら彼らの間では共通して「うろたえない」「逆らわない」「理解に努める」がジャミールで過ごす三原則として根付いているようだ。

 

 ……現場は見ていないが、ムウ殿の師匠の事を考えるになんとなく想像がつかなくもない。あれか。話を聞くようになるまで、理解するまで延々とサイコキネシスでぶっ飛ばされてもしたか……? ちゃぶ台返しのような勢いで。

 

 

 ムウ殿はやはり味方だと頼もしいが、敵には回したくないお方だ。

 

 

 

 

 そして見守る事、数日。

 

 

 

 

『リュサンドロス、リュサンドロス! 来た! 来たぞ! しかもアイオリアだ! 大きくなったなぁ……。あんなに小さかったのに。うむ、よく鍛えている。洗練された小宇宙、鍛錬を怠っていない屈強な肉体! 立派だ! 我が弟は苦境にも負けず、いい男に成長したようだな!』

 

 興奮した様子がテレパシー越しでも丸わかりなアイオロスの通信に、いよいよかと私も身構えた。丁度黄金聖闘士の小宇宙を察したのか城戸沙織も星矢が入院している病院に向かうようだし、私も彼女を陰から護衛しつつ行くとしよう。

 

 …………それにしても、実際に目にするのが十三年ぶりとなれば気持ちも分かるがアイオロスよ。兄馬鹿に過ぎるのではないか? 軽率に身内を褒めるような奴でなく、もっと厳しい硬派な男だったはずだが。べた褒めではないか。

 しかしその嬉しそうな様子に、少々ほだされるのも事実。私だって十三年も息子に会わず久しぶりの再会をしたら、こんな反応になるだろうからな。…………私にとってもアイオロスにとっても、彼らはたった一人の血のつながった家族。大切な存在だ。

 

 が、その微笑ましい気分も病院に向かう途中で耳にしたアイオロスの実況を聞いて吹き飛んだ。主にサガに対する怒りによって。

 

 

『リュサンドロス、アイオリアの監視だと言って白銀が三名追加で現れたぞ! ヘラクレス座のアルゲティと銀蠅座(ムスカ)のディオと巨犬座(カニスマヨル)のシリウスだ!』

 

(サガ!!!! 貴っ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!)

 

 

 

 十人でも多いというに、更に三人追加とか本当に貴様ふざけるなよ!! お前が一番人材確保の難しさを痛感しているだろう!? これ以上白銀を主人公たちにベットするのはやめろ!! リターンゼロの負の実績から目をそらすな!!

 

『それと、リュサンドロスよ。シャイナが負傷している。早く診てやった方がいい』

『! シャイナが?』

『ああ。すまん、アイオリアがな……。シャイナは星矢を庇おうとしたようなのだが、飛び出してきた彼女に気づかず攻撃をしたアイオリアの拳を受けたのだ。あいつは立派になったが、目の前の事に集中しすぎると周囲へ向ける意識がおろそかになるところは、まだ直っていないようだ』

『そうか……』

 

 城戸沙織が乗った高級車を走って追いかけながらアイオロスとのやりとりを続けていると、友人の負傷を知らされる。友人……友人と言ってもよいのだろうか? 現在の私が聖域で最も親しい相手といえば魔鈴とシャイナだから、まあ間違いではないだろう多分。彼女たちは私をあくせく働く雑用係、というようには扱わなかったからな。他のクソガ……ごほんっ、奴らと違ってよい子たちである。

 ともかく、そうなれば治療相手は少なくとも四人。シャイナは途中で何処に行ってしまったのか分からなかったから遅れたが、このあたりで彼女にも協力を求めるべきかもしれない。

 

 

 しかしシャイナ負傷の連絡があってから、何故かアイオロスのテレパシーによる実況が途切れた。何か不測の事態でもあったのかと、焦燥にかられる。

 焦る心を抱いたまま走っていると、ようやく城戸沙織の乗った車が病院へと到着した。そして今まさに星矢に止めを刺さんとしていたアイオリアに、城戸沙織がアテナとして制止の声をかける。

 

 …………それを陰から見守っていた私は、同じく陰に潜んでいた一人の男の奮闘を見た。

 

「くっ、射手座聖衣(サジタリウスクロス)よ、我儘を言うな! 確かに一三年お前を放置していたことは悪いと思っている。すまなかった! だが、やむを得ない事情があったのだ! その星矢は、この先お前を継ぐかもしれない男! そのまま力を貸してやれ!! 一輝の時は守ってやったのだろう!? ……ええい、拗ねるな! それでもこのアイオロスの聖衣か!! いずれ私が再びお前を纏う事もあるだろう。だが! 今は! 星矢に力を貸してやらんか!!」

 

 なんとか真央点だけは突いて応急処置をしたらしい、すでに倒された様子の白銀三人(何故か工事現場などで見る一輪車に積まれている)を傍らに、アイオロス(何故か白衣を羽織っている)が何やら必死に聖衣に話しかけていた。ちなみにその話しかけているであろう聖衣は、今現在星矢が身に纏っている射手座の聖衣。アイオロスの聖衣だ。

 なんとなくアイオロスの言葉の内容で彼と聖衣の間で揉めている内容は察したが……いや聖衣と揉めるってなんだ。分かる感覚なんだが、言葉にしてみると奇妙極まりない。

 

 現在アテナ沙織がアイオリアに十三年前の真実を語っている、重要なシーンのはずなのだが……。アイオロスと聖衣との葛藤が気になってしまいどうも集中できん。

 私は少々の頭痛を覚えながらも、アイオロスの隣に移動した。

 

「…………遅くなってすまない」

「いや、いい! とりあえずこいつらの回復を頼む! すまんが私は今忙しいからこの間のような協力が出来ん! それとシャイナだが、アイオリアの真横だったから流石に連れてこられなかった。すまん! だが見た目ほど重症ではなさそうだ!」

「あ、ああ。察する。シャイナも……うむ。小宇宙を感じる分には、こいつらほど早急な措置は必要なさそうだ。悪いが今は様子見させてもらおう。……なんというか、魔鈴といい白銀は女性陣のほうが強いな」

「ああ! アイオリアの拳を無防備な背中で受けて無事とは、感服する! 他の奴らはほぼ一撃で致命傷を負っているというのに」

 

 あ、ああ。尤もだ。状況もろもろ違うとはいえ、多分アイオリアの拳を受けたのが他の白銀だったら死んでいただろうという妙な確信がある。……白銀は戦闘能力よりも、防御力の向上を今後課題とすべきなのだろうか。

 

「それにしても、よく気づかれずにこいつらを回収できたな」

「問題ない! 病院から白衣を拝借して「大変だ怪我人が! 私は医者だ任せろ!」と言って運んできた。ああ、もちろん顔はこのサングラスで隠していたから大丈夫だ」

「正面から行ったのか!? よくそれで怪しまれなかったな!」

「あちらはあちらで立て込んでいるからな。気にする余裕など無かったのだろう」

「だとしてもあまりに……いや、いい」

 

 話し込んでいる場合でもないかと、そこで言葉を切って私は白銀達の回復作業に入る。……本来命を失ってもおかしくない重傷だというのに、真央点を突いたからといって一輪車に雑に積み上げられた白銀達が少々憐れだった。

 ………………? いや待てこの一輪車はいったい何処から持ってきたのだアイオロスよ!

 

 なかなかにツッコミどころの多い状況だったが、私は心を無にして回復作業にあたった。一応耳だけは、アテナ沙織とアイオリアに傾けておく。

 

「証明できますか?」

「え?」

「今あなたが話したことを信じるには、あなたがアテナだという事を証明しなければならない。あなたが真の女神ならば私の拳すら封じることが出来るはずだが……」

 

「いいでしょう、撃ってみなさい」

 

「な……ッ」

「え」

「え?」

 

 アイオリアの驚愕の声に、耳を傾けていた私たち二人の声が重なった。

 

「お、大怪我をするか、下手をすれば死ぬことになるのですよ……。それでも……」

「かまいません。この戦いを始めた時から、私自身死は覚悟しています。さあ、アイオリア! お前の光速の拳で、見事私の胸を貫いてみなさい!」

 

 我らが女神の思い切りが良すぎるのだが!? 勇ましいにもほどがある!!

 

「ちょ、待っ」

「あ、アテナ!?」

 

 うろたえる私たちの前で、どこか追い詰められた様子のアイオリアが構えた。おいおい、まさか。

 

「う……うう……! 死んでも、後悔なさるな……」

「ま、待てアイオリ……」

 

 流石にいけないと、思わず体が飛び出しそうになる。しかしそんな私の肩をぐっと押さえる手が一つ。アイオロスだ。

 

「なにを……」

「ここは私に任せてくれ」

 

 覚悟を決めたような凛々しい顔で、アイオロスは真っすぐ前を見つめていた。そして彼は息を大きく吸い込む。

 

 アイオリアの光速の拳が解き放たれた。

 

 

 

 

 

『ライトニングボルト!!』

 

 

 

「後で誠心誠意もって磨いてやるから頑張れ!!」

 

 

 

 

 

 

 アイオリアの必殺技と、アイオロスの聖衣へのご褒美提示の声が重なった。

 

 …………ん?

 

 

 

 

 

 

 

「…………………」

 

 固唾をのむ私の前には、アイオリアのライトニングボルトを光球のような形で押しとどめた星矢の姿があった。……あれは、可視化されたアイオリアの小宇宙か。

 

(聖衣にも意志のようなものがあるのは知っていたが……。褒美で釣れるものなのか……)

 

 心なしか、星矢が纏う射手座の聖衣の輝きが増しているように見える。……もとの持ち主に磨いてもらえると知って、喜んでいるのだろうか。……今この場には無いが、私も今度エリダヌス聖衣を磨いてやろう。

 

「星矢!」

「くううっ、いて~! こ、このわからず屋め! いくら衝撃の事実を聞いたからって、女にライトニングボルトはねぇだろ」

 

 そう言いながら、星矢はアイオリアの小宇宙に負けずその場に留め続ける。

 ふと横を見れば、何やらアイオロスが拳を握って踏ん張っていた。どうやら間接的に星矢と射手座聖衣のバックアップを行っているようだ。……器用な事を覚えたな、こいつ。

 なんとも言えない気持ちでそれを見ていると、アイオロスが「よし、今なら不自然ではないはず……」とかなんとか呟いていた。その理由は、直後に知る事となる。

 

 

 

『アイオリア……。まだ分からんのか』

「うっ、な、なんだ!?」

 

 こっちの台詞だ。

 

『アイオリアよ……。お前にはどちらが正義で、どちらが邪かの区別もつかないのか。それでも真の女神の聖闘士か! この私の弟か!』

「に、にいさん……」

 

 兄さん、と呟くアイオリアだったが別にこちらに隠れている私たちに気づいた様子はない。おそらく彼は現在、星矢が纏う射手座聖衣の背後に兄の幻影を見ているのだ。……彼に語り掛ける(テレパシー)は、まんま本人の肉声だったりするが。

 

「おい、何やってるんだアイオロス」

「見てのとおりよ。この射手座聖衣が本気を出したシチュエーションならば、聖衣に宿った私の魂が力を貸しているように見えるだろう」

「……だから?」

「こうして語り掛けても違和感がないはずだ」

「……そうか」

 

 ……アイオリアがアテナに拳を向けた事、よほど腹に据えかねたか。どうしても、直接話し掛けたかったんだな。

 先ほどは流石は我が弟だ! 立派になって! とべた褒めだった男の顔は現在とても険しい。……うむ。バレていないようだし、ここは何も言うまい。

 

 言うまいと、思っていたが。

 

『しかもアテナに拳をむけるとは、お前の方こそ死をもってあがなえ! バカ者め!』

「な、なにぃ!? 俺の小宇宙が何か別の力によってさらに大きくなっていくのを感じる!」

「ば、馬鹿な! 星矢がライトニングボルトの威力を押し戻している!?」

「うっ、うおぉぉぉぉーーーーーー!」

「いけない星矢! アイオリアを殺しては!」

 

 本当にな!!

 

「アイオロス、もう少し押さえろ! 小宇宙を高め過ぎだ! アイオリアが死んでしまうぞ!」

「む!? そ、そうか。よし、もう少し手加減だ射手座聖衣よ!」

「そんな感じでいいのか!?」

「ああ!」

「そうか!」

 

 

 

 

 …………とまあ、先ほどまでこのような怒涛の展開があったわけだが。いや、なんかもうな。裏舞台でこんなバタバタしていて、恥ずかしいというかなんというか。

 現在、空を見上げて迷いの晴れた顔で涙を流しているアイオリアにとても申し訳ない気分を味わっている。

 

 

 

 

「…………なあ、アイオロスよ」

「…………なんだ」

「おそらくアイオリアは今、「兄さん、あなたは逆賊などでは無く、死んだ後も正義のために戦ってこられたのですね……」みたいな事を考えているわけだが」

「………………」

 

 アイオロスの沈黙が段々と重くなっていく。

 

「気まずくないか? 再会する時」

 

 アイオロスが腰に手を当てて仁王立ちし、天を仰いだ。

 

「そんなことは、ない!!」

「開き直ったな!?」

「な、何が問題だというのだ! もとより再会の時に気まずいことなど承知の上だ。この十三年間、逆賊の弟という汚名で苦労させたのだからな!」

「でも今回お前がテレパシーなど使うから、あとできっとばれるぞ!? あの時の声は聖衣に宿った魂の物ではなく、コソコソ聖衣腹話術していた兄のものだったと! あんなに感傷に浸っているのに、当の本人はぴんぴんしていて腹話術だぞ!! なんかこう、別の意味で気まずかろう!」

「く……!? そ、その時はその時だ。私は男として逃げん! アイオリアからどんな目で見られようと、正面から受け止めてみせる!!」

 

 な、なんて真っすぐな目をして言う男なんだ……。

 

「潔さは尊敬するが……! いや、もう何も言うまい」

 

 この力強さは、私には無いものだ。少々振り回される事もあるが、この男の存在は何よりも心強い。

 

 ……いよいよ十二宮の戦いも迫ってきているが、思っていたより不安は小さくなっていた。

 

「さあ、気を取り直してこいつらをムウ殿の所へ運ぶぞ。アテナはこの後、ついに聖域に乗り込むご様子だ。我らも準備を進めねばならん」

 

 

 

 

 

 十二宮の戦いは、近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




白銀達とのバトルは聖闘士星矢原作漫画をチェックだ!(ダイマ
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