一人のつまらない男の話をしよう。
幼少期から青年期に至るまで、不幸でも幸運でもなく、平坦な人生を送ってきた何処にでもいるような男だった。それなりに幸せな人生なのだろうなと思いながら、何処かで常に不満を抱えているような。しかしその不満を解消するためにわざわざ必要以上の努力をしようとは思わない、つまらない男。
そんな毒にも薬にもならないような男だったが、人生の幕引きは存外早かった。しかし不幸で劇的な死にざまかといえば、そうでもない。いや、不幸ではあったかもしれない。より適切な言葉を探すなら、運が悪かった、と言えるだろう。
一人暮らしだった男は、正月に餅を焼いた。それを喉に詰まらせ、助けを呼ぶ前に呼吸困難になり意識を失いそのまま帰らぬ人となったのである。
聞く者からしたらまぬけだと思うだろうが、餅を馬鹿にしてはいけない。詰まると喉に張り付いて本当に苦しいのだ。あと熱かった。
……まあ、そのつまらない男というのがこの私ことリュサンドロスなのだが。
何故あの時の私は噛む前に喉の奥へと餅を誘ってしまったのか。ケータイ電話の充電が切れていたのは、まあ間抜けというよりこれも運が悪かったとしか……いや、もう考えまい。この事実を知るのは世界中で私一人だけなのだから、私が口を噤めば誰も知らない。
そう、誰も知らないのだ。少なくともこの世界では。
私は餅をのどに詰まらせ死んだあと、あの世と呼ばれる場所にはいかなかった。もしかしたら覚えていないだけかもしれないが、少なくとも私が次に意識を取り戻した場所はあの世ではなく現世だった。……漫画の世界の、という言葉がくっついてしまうが。
何を馬鹿なと一蹴出来ればよかったのだが、成長過程で目にするものは私へ確信しか与えてくれなかった。生まれた星は地球と呼ばれファンタジーチックな異世界では無かったが、まず時代が違った。私にとって、今の私が生まれた世は前世より前の時代だったのだ。2000年代が未だ遠い。
そしてこの世界は、私の常識の範疇外のモノがごろごろと存在する場所だったのである。
その常識の範疇外代表が何かといえば……聖闘士。
女神アテナに仕える闘士達。
私の父は聖闘士だった。そして私もまた、聖闘士である。
聖闘士という名称を聞いた時、嫌な予感と共に私の中でひとつの知識が掘り起こされる。それは「聖闘士星矢」という漫画のもので、前世の私が過去読んでいた作品。聖闘士とはその物語に出てくる、聖衣と呼ばれる鎧を身に纏い悪と戦う超人的な存在なのである。
作品で見知った顔こそ居なかったが、私が生まれた
父は厳しい男で、私に幼いころから聖闘士になるための訓練を受けさせた。同時に礼節も学ばされ、前世で「俺」だった一人称はいつのまにか「私」に変化する。……といっても、聖域がある場所がギリシャのため公用語もギリシャ語。一人称は前世での祖国、日本語ほど多様ではないためニュアンスの問題なのだが。
ともあれ、前世とはずいぶん違った口調になった。もし前世の私がそのまま口にしていればお笑いだが、父の厳しい訓練によって強靭な肉体を手に入れた私にはしっくりくる話し方だ。
しかしいくら変わろうと、人間の根本はそう変わらない。私はやはり、つまらない男だった。
いや、より悪化して可もなく不可も無かった者が、ろくでもない方に傾いてしまった気さえする。
幸いなことに新しい体にはそこそこ才能が備わっていたらしく、聖闘士になることは出来た。しかも聖闘士の位で言えば最高峰たる黄金の次、白銀聖闘士だ。聖闘士になること自体難しい事を考えれば、そこそこどころか前世では取り柄など何も持っていなかった私にしては十分な成果だろう。まあ才能よりも同じく白銀聖闘士であった父の指導のたまものであることは間違いないが。それでも快挙だ。
が、それが幸せかと言えばそうでもない。前世で大きな幸福や財産など無くても、そこそこの幸せを、楽な生活を手にしていた私にとって、価値観がまったく違う聖闘士としての生活はただただ苦痛でしか無かった。電気も通らず自給自足が基本の聖域では前世レベルの文明的な生活にありつこうなどと思っても不可能だし、あくせくと任務と訓練、生活のための雑務に追われる日々は精神に疲労を蓄積させた。
そんな生活は、確実に私の精神を鬱屈させていった。
誰が悪いわけでもない。
アテナの聖闘士として、邪悪と戦い世界の均衡を保つ。確かに崇高な使命なのだろう。しかし私はその崇高さに見合わない、俗物だった。ただ、それだけのこと。
それでも生まれ育った場所というものは、家族というものはやっかいで。どんな場所であろうと、心のよりどころとなるのだ。だから私は聖域から逃げ出して、普通の生活に戻るという選択肢はとれなかった。父と、聖域で女官として勤めていた母は厳しくも確かに優しかったのだから。……それを言い訳にしていただけかもしれない、というのもあるが。
結局、現状に不満を抱きつつも変えようと努力できないのが私だった、ということだろう。聖闘士としての厳しく苦しい訓練よりも、長く続けた生活を変化させる方がきっと私にとって苦労だ。……笑ってしまう。酷い矛盾だ。
とはいえ、逃げる事を選択しないからと言って苦痛と疲労がなくなるわけでは無い。
淡々と戦い方を、仕事のしかたを覚えながらも、心は常に虚空に浮いていた。しっかりと大地に両の足で立てていなかった。そのことについては、父に散々注意されたものだ。「お前は危うい。そのままでは、容易く生きる事を諦めてしまう」と。……図星だ。私は生きることに執着していなかったのである。おそらく自分が敵わない相手とのギリギリの戦いがあれば、容易に生と死の境界線を踏み越えてしまう程度には。
今考えても、そんな中途半端な精神でよくも小宇宙を燃やせたものだ。生まれ変わっても、どこまでもつまらない男だな、私は。ついには生きる事すら面倒くさくなったか。いったい私はこの世界で何をしたい。どうなりたいんだ。……それが分からないから、きっと疲れてしまった。聖闘士を目指しながらも聖闘士になれなかった他の候補生には申し訳ないが、私は本当に、そんなつまらない人間なのだ。
だから母が流行り病で亡くなり、父が任務地で殉職した時。……わずかに私を繋ぎとめてくれていたものがなくなった時期が一番、人として危うかったのだろう。静かな自暴自棄。そんな言葉が似合うような精神状態だった。
そんな時だ。私は運命に出会った。
……任務先で、私の人生を薔薇色に塗り替える太陽のような輝きを持った女性と巡り合ったのである。
そして恋に落ち、互いに愛し合う間柄になれた。今思い出しても奇跡としか思えない。彼女がこんな私を愛してくれただなんて。
当時の仲間には散々ベタだ単純だ心配して損したぞ馬鹿野郎などと言われたが、恋をした私はそれを愛に昇華させ、その時初めてこの世界を踏みしめこの世界の人間となったのだ。その時の感動は今でも鮮明に思い出すことができる。
……彼女のために世界を守ろうと、初めて自分の使命に、生きる事に意味を見いだせた。我ながら現金だが、人間欲あってこそだ。私の欲は自分のためや世界のためという言葉で飾るとお粗末な鍍金になるが、彼女が少しでも健やかであればその欲は黄金の輝きをもって満たされる。
恋とは、愛とは素晴らしい。そんな陳腐な言葉を本気で言えるくらいには、私の心は彼女によって満たされていた。
だが使命に意味を見いだせたとはいえ、聖闘士は危険な仕事。愛した相手であるその女性……アナスタシアは強い女であったが、いつ死んでもおかしくない私に縛られて彼女が不幸になることなど考えたくも無かった。
彼女が生きる世界を守りたいとは思ったが、現実的な生活という生々しいものが私にのしかかる。
だから物理的に距離をおいたのだ。
……教皇に歎願し我が妻だと言って聖域に迎え入れれば、私の母のように女官として働く道もあったかもしれない。しかしもし、私が死んだらその後は? ……天真爛漫で自由な彼女を、聖域に縛ってしまうような真似はしたくない。そんな私のわがままだ。
本当はキッパリ彼女を諦めればよかったのだが、それが出来るほど私の執着は弱くなく。……遠距離恋愛をするうちに、子供まで出来てしまった。必死に念力が得意なものにテレポーテーションを習い、白銀聖闘士としての活動と彼女と子供のための生活費を稼ぐアルバイトの二重生活の始まりである。
が、世界はそう優しくない。
母と同じくはやり病で、あっけなく彼女はこの世を去ってしまった。そして今までそばに居てやれなかった不甲斐ない父だったが、それでも父として。息子をひきとった。本当なら聖闘士としての生活に巻き込まないために今までのように距離をおいたまま過ごせればよかったのだが……。
『父さんが世界のために戦っていることは、俺はとっくに知ってる! 母さんに聞いたんだ! 父さんが戦っていると知って、このままあんぜんなところで過ごすなんて嫌だ! 俺もいっしょにたたかう!』
こんなことを息子に言われてしまっては、距離を置くことなど不可能だった。ああ、所詮私は俗物で甘ったれだとも。父だからひきとったなんて綺麗ごとだ。ただ、愛しい妻を失った心を癒すために、愛しい我が子とそばに居たかった。……そんなことで、あの子の主張だからと言い訳して、強く拒否すればすんだものを結局はあの子を戦いの世界に引きずりこんでしまったのだ。まったくお笑いだ。反吐が出る。
しかし、丁度この時期だ。ようやく。……ようやく私は、この頃からのろまで間抜けな自分を自覚し焦る羽目になる。
あれ、これまで原作知識だなんだと考えてこなかったけど、やっぱりここ聖闘士星矢の世界じゃね? いやいや、そう思って生きては来たけどストーリーこのまま進んじゃう? なんか見覚えある面々がそろってきたんだけど。任務であんま聖域帰れないうちに実写になっても分かるレベルに見たことあるような特徴の奴ら揃ってきてんだけど。
え、ちょ、待っ! 待ってくれ! このままだと、たとえ最終的に色々な敵に勝つにしても、ルートによっちゃ、世界やばくないか?
高い確率で私も息子も、死ぬくね? ばったばったと、色々死んでたよね?
というかこの世界の死後の世界じゃ、今のままだと俺の愛しのマイハニーが健やかに過ごせなくね?
すでに遠く、忘れていたはずの前世の私の口調で思考がぎゅるっとフル回転した。
結果、私は心の底から大絶叫することになる。
「もっと早く動いてろよ俺ぇぇぇぇぇぇ!!!!」
以上が、聖域に降臨したアテナを偽教皇ことジェミニのサガが暗殺しようとする前夜の私の叫びだ。
遅いわ! 前教皇もう殺されとるわ! 某海神を目覚めさせちゃう男すでに消えとるわ!! 色々思い出そうとしてる間に完璧にタイミング流れたわ!!
私はせっかく未来の知識を多少なりとも握っていたというのに、スタートラインでおもいっきりコケていたのである。
明日は何処だ。
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「リュサンドロス殿、終わりましたよ」
「! 申し訳ない、少し呆けていた。……おお、流石ですな。素晴らしい」
ふと過去に想いを馳せこれまでの出来事を振り返って追想していると、作業が終わったらしいムウ殿に声をかけられた。見れば私の聖衣であるエリダヌス星座の白銀聖衣が彼の前に鎮座している。
この聖衣の守護星座であるエリダヌスは"河"の星座だ。そのため蛇行する河をイメージしているのか、他の聖衣より曲線が意識されたようなデザインとなっている。
このエリダヌス星座だが、太陽神アポロンの息子が憧れの親父の馬車を貸してもらった結果、御しきれず結果周りに被害が出て大騒ぎ、最終的に雷で撃ち落とされて彼が落ちたエリダヌス河が彼ごと天に昇って星座になった……というのが、星座にまつわる神話だ。いちいち突っ込んでいたらきりは無いが、ギリシャ神話のとりあえず何かあったら天に上げて星座にしとけ感は何なのだろうな。この世界ではその当事者たちである神々が居る事は確定しているため、前世でぼんやり「ギリシャ神話ぶっとんでんな」とか考えていた時とは違った妙な気分になる。……我々がお仕えするアテナも、生まれる前に母親ごと自分を飲み込んだゼウスの頭部から全身武装で誕生! とかしてるしな……。…………ギリシャ神話、凄い。
聖衣はついでに小さな傷も直してもらえたのか、心なしか先ほどより輝いて見えた。試しに身に着けてみると、今の私にピッタリのサイズだ。うむ、これなら問題なく装着できるな。
聖衣という物は、修復師を頼らずともある程度ならば自分で状態を回復させることが可能だ。それは聖衣のサイズにおいても同じことであり、装着者にあわせた大きさに変化する。聖衣は今まで体験した戦いの記憶、装着者の記憶をその身に蓄積し、進化するいわば生きているとさえいえる特殊な防具だ。本来なら……そう、本来なら、ムウ殿を頼らずともよかったはず。しかし私の急激な体の変化に驚いたのか、どうも聖衣から怯えているような気配を感じ……待っていても変化してくれそうになかったのである。いつ変化してくれるかもわからないまま待つのも間抜けであるし、聖衣を着られねばいざという時に支障が出るためジャミールまで足を延ばしたわけだ。
だが聖衣よ! なぜ怯える!
堂々と言う事ではないが、一番自分の体の変化に怯えているのは私だぞ! お前が密着していた最高の筋肉がなくなって寂しい気持ちは分かるが、一番寂しいのも私だ! この細っこい体になってしまった時の虚無感を一番味わっているのも私だ!
背も縮み、視界すらも変わってしまった。女にしては高身長だろうが、もとの自分からすればずいぶん違う。……ああああああ、虚しい、虚しいぞ! 私には力が必要だというのに! なぜこのタイミングで呪われるのだ!
……ムウ殿に調整してもらって着た結果、問題なく装着できたので聖衣も私がリュサンドロスだということは分かっているのだろう。しかし相変わらず何か怯えるような気配は消えない。…………私は自分で受け入れるのと同時に、聖衣にもこの変化を慣れさせなければならんのか。流石に頭が痛いぞ。
まあ、ともあれ第一の目的は達した。
次はこの目の前の聡い少年に、ひとつ提案しようではないか。先ほど思いついたばかりの事ではあるが、もとよりいくら鍛えても私ごときが一人でどうあがいても世界など救えない。ならば世界を救ってくれそうな優秀な人間は積極的に巻き込んでいくべきではないか? ……うむ、性別が変わったせいか新たな視点を得た気分だ。よし、後で"彼"には一言くらい相談しろと怒られそうだが今言ってしまおう。
「ところでムウ殿。教皇とアテナ……それと今後の聖闘士の未来について、少々お話があるのですが」
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私が非常に遅いスタートダッシュをきってから数年が過ぎた。現在私は日本に居る。そして現在
現在丁度試合が開催されており、生中継のそれに店内の客の視線もそちらに釘付けになっていた。今は
「ふむ、まだ未熟だが双方ともにいい拳を持っている。互いに聖衣を脱ぎ捨てて戦う潔さも、なかなか好ましい」
「ああ。しかし本当にテレビ中継されているとはな……。東京のど真ん中にコロッセオがあるなんていうのも冗談みたいな光景だが、それが許される財力とコネクションが私は恐ろしいぞ。まったく、どれだけ金がかかっているのやら。…………おお! このチャーシューは絶品だぞ! お前も麺ばかり突いていないで具も一緒に食べてみろ!」
「いや、私は麺は麺とスープのみで味わいたいのだ! そして存分に堪能してから、肉と煮卵に噛り付く。それこそが至福の瞬間たりえる。……それにしてもここまで堂々と今まで秘匿されてきた聖闘士という存在を晒されると、こう、成している相手がアテナご本人といえど複雑だな……」
「発案は城戸光正翁らしいがな」
ずるずると麺をすする私の横には、人相が分からなくなるくらい大きなサングラスをかけた男が同じくラーメンをすすっている。控えめに言って怪しいが、私も口元以外を仮面で覆い隠しているので人のことは言えない。むしろ私の方が怪しいだろうというのは分かっているが……この男、一応聖闘士の前では仮面をつけろと煩いのだ。他と違ってこいつは私が本来男であるという事情を知っているのだから、別にいいだろうに。柔軟な思考を持っているくせに、妙なところで頭が固い。
そして試合をだらだらとテレビ越しに観戦しつつ、私は今までの事とこれからの予定を改めて考えてみた。
とりあえず私の目的は、最終的に黄金聖闘士が全員生存した状態でのハーデス戦、からの平和な世界だ。
もし運命というものが決まっているのなら、私の行為はそれを捻じ曲げるものだろう。しかし、知った事ではない。私は私が愛する者のために、全力を尽くすまで。それが私が自分に課した私の存在理由。
途中呪いで女になるなどというふざけたアクシデントがあったが、それさえ些末な事だ。それのせいで鍛え上げた肉体は失われてしまったが、一応この呪いについても後々なんとか出来る可能性は残されている。そのため今はこの体のまま自分にできる事をするつもりだ。
しかし。
「まだ動くまでに時間があるな……。次は味を変えてさっぱり魚介出汁が売りの店に行くか」
「おお、それはいい! 白銀聖闘士達が来てからが本番だからな。それまでは日本の食事を堪能させてもらうとしよう。ムウのところの食事は、健康的なのだが少々薄味でな……。こう、ガツンとしたものが食べたくなるのだ」
「ムウ殿に怒られるぞ」
「何、お前が言わなければバレないさ」
そう言ってからっと笑う男の手にはすでにグルメガイドが握られている。付箋がびっしり貼られているあたり、どうもこの男相当日本の食事に興味があるらしい。まあ私もこの日まであくせく働いてきたのだ。仕事をバックレた解放感と共に、もうしばらく楽しむとしよう。
私がそう言うと、男はカラカラと笑った。
「そうだそうだ! どうせこれから嫌でも忙しくなる。…………互いに、向き合うべき者もいるしな」
向き合うべき者。その言葉に、一瞬互いの顔に影がさした。しかしそれもほんの一瞬。すぐに男の太陽の笑顔が返り咲く。
「だからせめて、今この瞬間くらいは楽にしていても構うまい! きっとアテナも許してくださる!」
この自信はどこからやってくるのかと思いつつも、私も拳を強く握って頷く。
「そ、そうだな! ふ、ふふ……。それに正体を偽ったとはいえ、今まで散々尻ぬぐいのエリダヌスなどと不名誉な二つ名で呼ばれてきたのだ。多少羽目を外したところで罰はあたるまい。奴らも少しは私が居なくなった不便さを思い知ればいいさ……!」
今まで地味に溜まっていた鬱憤が漏れ出ている私に、男はまあまあとばかりに声をかける。
「ま、まあ落ち着け。それだけお前がフォロー上手ってことだ。尻ぬぐいってのは、あれだ、人の不始末を後始末してやる事だろう?」
「日本語の字面で面白がってそう呼ばれてるだけで実質その意味は雑用係だ。クソッ、屈辱だ! 前は便利扱いはされた事があった気もするが見下されることなどなかったのに……! なんだ、やはり見た目か? 見た目なのか!?」
「いや、それだけじゃないと思うが……。まだ時間はあるし、愚痴なら聞くぞ」
「……いや、すまん。大丈夫だ」
肩を叩かれ、つい零れ落ちた愚痴を反省する。いかん、気を遣わせてしまった。
しかし残り少ない自由時間、愚痴で使うには惜しい。気を取り直して、無駄なく楽しむために行くか!
「では気を取り直して、次はこの店に行ってみるか! アイオロス!」
私が望む未来のために巻き込んだのは、射手に選ばれし黄金の一角だった。