尻ぬぐいのエリダヌス~駆け抜けて聖戦~   作:丸焼きどらごん

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三章 海皇ポセイドン編
33,対海界作戦会議!:序


「お母様ー!」

「あのですね女神(アテナ)! お茶目なのは分かっていますが、出合い頭にその名で呼ぶのはやめてもらえませんか! 誤解が生じます!」

「いいではありませんか。今ここにはわたしとアイオロス、辰巳しかいませんもの。彼らにはすでに会議室で待機してもらっています」

 

 日本の城戸邸に到着するなり沙織ちゃんに勢いよく胸に飛び込まれ、それを受け止めながらも訂正すればウインク付きで微笑まれてしまった。

 …………おかしいな、十三年間見守って限りでも原作を思い返しても、こんな弾けた性格ではなかったはずなのだが。どこでタガが外れたのだ。

 

「ああ、リューゼだけでは不公平でしたね。アイオロスのこともお父様と呼ぶべきかしら?」

「やめてください女神(アテナ)! 頼みますから!」

 

 他人事のように私が困るのを笑って見ていたアイオロスが、今度は逆に狼狽してみせる。フンッ、自分は関係ないみたいな顔をしているから悪いのだ!

 だ、だがここはちょっとしっかり目に訂正しておこうか。

 

「いや、でもですね。名付け親なのはいいとして、私とアイオロスをセットで父、母と呼ぶのは本当にやめていただけますか……? 特に十三年前はまだ私も男でしたし、そのように夫婦のような呼ばれ方をするのはそういう意味でないと分かっていても、ちょっと。私には妻も子も居ますし……」

 

 まだ男だった、という言葉に自分でダメージを受けながらそう言えば、沙織ちゃんはしょんぼり肩を落とす。

 それを見た辰巳殿がささっと背後に回ってきて私を肘でどついてきた。

 

「い、色々問題はあるがここは目をつぶってやる! だから、あまりお嬢様を落ち込ませるな! ここ最近は特に御多忙でお疲れなのだぞ! もう少し思いやりのある言い方は出来んのか!」

「いいのです、辰巳。これはわたしのわがままですから……」

 

 この距離ではいくら小声でも沙織ちゃんに聞こえないはずもなく、辰巳殿の気遣いに沙織ちゃんは諦念をにじませ首を横に振る。…………もしやこれは、連携されているのか……?

 しかしこうまでされて拒むわけにもいかず、"たまに"ならと、心の中でのみの呼び方を解禁することにした。

 

「沙織ちゃんは、よく頑張っているな。総帥としても、女神(アテナ)としても」

 

 少し身をかがめて顔を覗き込みながら言えば、美しい(かんばせ)がぱっと花開くように明るくなった。

 

「…………娘も、いいな」

 

 思わずボソッとこぼせば、ますます沙織ちゃんが上機嫌になる。

 し、しまった。つい……! どうして私の口はこうも自分で墓穴を掘るようなことばかり吐き出すのだ!!

 

「わたしのことは本当の娘と思ってくださって良いのですよ!」

「そ、そういうわけにはいきません!」

 

 どうも女神(アテナ)としてでなく、人間としての"城戸沙織"は肉親の情に飢えている部分が感じられる。その一端を私とアイオロスが担ってしまったのも事実だが、本当に光政翁に大事に育てられてきたのだろう。

 彼も百人の我が子を修羅の道に落としてしまったこともあって、いっそうの愛情を彼女に注いだのかもしれない。

 

 考えてみれば十三歳の少女の肩に大企業総帥と女神というふたつの肩書は重すぎる。

 その本質が神とはいえ、城戸沙織が一人の人間であることもまた、事実なのだ。

 

 …………甘やかす人間が一人くらい居てもいいか。

 まあ、たまにだ。たまに。

 

「…………私と貴女の間に聖闘士と女神という立場がある以上、線引きは必要です。ですが……。貴女の心が健やかであるならば、たまにでよければ実の娘と思って接しましょう。事実生まれた時から貴女を知る身として、子に向ける情に近いものはありますから」

 

 たまに、という部分を特に強調して言ってみたが、沙織ちゃんとしてはその答えで満足したようだ。

 

「本当ですか!? だったらもっと褒めてください、頭も撫でてください!」

(ぐ、ぐいぐい来るなこの子……)

 

 アイオロスが完全に線引きをした分まで私に来ている気がする……! くっ、情に流され最初の対応を間違ったか……!

 

 たじたじになりながらも要望通りに頭を撫で、過剰な装飾語を無くし子供を褒めるように日々の疲れを労えば、目に見えて上機嫌になる少女。

 ……可愛いが、果たして自分はどんな立ち位置に向かっているのかという疑問に目が遠い場所を見つめる。

 ……ああ、日本は雪が降ったのか……庭木に積もる雪が美しいな……もうクリスマスも通り越して、新年だものな……。雪が降ろうが現実逃避しようが、現状は変わらんのだが。

 

 

 

「ふう、リフレッシュしました。では会議に向かいましょうか。時間を取らせて悪かったですね」

「い、いえ」

 

 満足したのか、沙織ちゃんが女神としての表情に切り替えた。

 ……これから私たちは、対海界および海皇ポセイドンについての対策を話し合う。今日でやっと、会議をひらけるほどの材料がそろったのだ。

 

「では、行きましょう」

 

 対策会議のメンバーが揃う会場へ、私とアイオロス、辰巳殿は沙織ちゃんの背中に付き従って足を踏み入れた。

 

 

「皆さん、お待たせしました。ではこれより、海皇ポセイドンへの対策についての会議を始めます」

 

 

 

 

 

 

 まず初めに集めた情報を提示したのは、先日までアスガルドに赴いていたカミュ殿だ。

 

「アスガルドの民は伝え聞いた噂に違わず、敬虔なるオーディンの信徒として慎ましく祈りを捧げ暮らしていました。暮らしこそ質素ですが、指導者……オーディンの地上代行者である、ヒルダという少女が上手く民を纏めている様子。彼の地に伝わる神闘士(ゴッドウォーリアー)とやらは復活しておらず、特に他者からの介入なども見受けられませんでした」

 

 アスガルドのヒルダ。その名前が挙がるだけで私としては冷や汗ものであるため気は抜けないが、今のところ妙な介入はされていないようだな。

 

「そうですか。ご苦労様でした、カミュ。……ただ申し訳ないのですが、今後もしばらく警戒を続けてください」

「はっ! かしこまりました」

「ですが、気づかれずにずっと見張るのも大変でしょう。記録を見たところアスガルドと聖域は何百年も交流が無かったようですし、これを機に親交を復活させます。後ほど親書を用意するので、それを手に今度はギリシャ聖域からの正式な使者として、アスガルドを訪ねてください。友好を示せば、きっと町の中での滞在を認めてくれるでしょう」

 

 沙織ちゃんのこの提案は、この場にはいないが老師……童虎殿の提案だ。

 前聖戦より聖域の復興に力をかけてきたこともあり、いつの間にか途切れてしまった北欧の神の民たちとつながり。それを取り戻すことはけしてマイナスにはならないだろう、と。

 今現在ポセイドン勢もといカノンの魔の手が伸びていないのなら、それから守り、牽制するためにも聖域の正式な使者としての滞在は有効だ。

 

水瓶座(アクエリアス)のカミュ、確かに拝命いたしました。女神(アテナ)と聖域の名に恥じぬよう努めます」

 

 流麗な動きで礼をしたカミュ殿だったが、ふと思い出したように顔を上げた。

 

「ところで、女神(アテナ)よ。もしよろしければ、氷河をともに連れて行ってよいでしょうか」

「氷河を? 確かに彼らも回復してきてはいますが……」

「私は今後……氷河を正式な次代の水瓶座(アクエリアス)の黄金聖闘士として育てようと思っています。アスガルドは我が修行地シベリアにも似た極寒の大地。ともに任務をこなし、適した場所で再度修行をすることで氷河にその自覚をもたせたいのです」

「まあ! それは、素晴らしい事です。一応健康状態の確認をしてからになりますが、問題なければ許可しましょう」

「! 感謝いたします」

 

 カミュ殿の言葉に沙織ちゃんを始め、この場に集まった黄金聖闘士達が反応する。

 アイオロスは星矢が居るからか余裕顔だが、早々に自分の後継者を定めたカミュ殿が気になるのか羨ましいのか……そんなところか。

 

 現在この場に居るのは女神(アテナ)である沙織ちゃんに、この私リュサンドロス、アイオロス、辰巳殿。それとムウ殿、シャカ殿、カミュ殿、ミロ殿……そしてサガの九名だ。

 黄金聖闘士が全員聖域を離れるわけにもいかないということで、残りのアルデバラン殿、アイオリア殿、デスマスク、シュラ、アフロディーテ殿は聖域で待機している。……まあ沙織ちゃんが聖域に帰って全員そろって会議すればいいだけの事なのだが、今回の会議では約一名にとってデリケートな話題も出るからな。それもあって、日本での対策会議となったのだ。内容はあとから聖域に残った者に伝えられる……というか、多分伝えるのは私か。

 

 ちなみにデリケートな話題というのは、もちろん海界編の元凶たるカノンのことである。

 あいつがポセイドンを復活させなければ、確かあの神はもう何百年か寝こけているはずだったからな。

 

 根気よくサガの愚痴を引き出しつつ聞いては仕事を手伝い、ある程度落ち着いたところを見計らってサガにはカノンの事を先に説明しておいた。そのためサガは会議が始まる前から顔面蒼白。見てて可哀そうになるくらいだが……実の弟の不始末だ。これも償いと思って頑張ってもらわねば。

 いや、それにしても本当に顔色悪いな……。一応胃に効く薬は渡しておいたのだが、効果は薄かったか。

 

 

 サガの様子が気になりつつも、会議の次の進行に集中する。

 カミュ殿の次に発言を求められたのは、ジュリアン・ソロの監視兼護衛に派遣されていたシャカ殿とミロ殿だった。

 ……最初はその役にアルデバラン殿が推されたのだが……。彼は強いのだが、どうも原作的に不吉な予感がしたので今回は聖域の守護の方をしていただくことになった。監視という面でも、あの巨体は目立つしな。

 ともかく、彼らの報告だ。

 

「海皇ポセイドンの依り代と目されるジュリアン・ソロについてですが、聡明ではありますが今のところはただの子供。私の目から見ても、特に目立った変化は見受けられません。……ただ注意深く探ったところ、彼の奥底に底知れない小宇宙を感じました。目覚めてはいないようですが、彼にポセイドンの魂がすでに憑依していることは確かかと」

 

 流石というか、こういう魂だのなんだのを察知するのにシャカ殿は優れているようだな。おかげで憶測が今この場で確信に変わった。自然と集まった面々の気配が引きしまる。

 

「それと周囲……ソロ家所有の屋敷近くの海にて、時折ジュリアンを様子を窺うような影を見かけます。そう大きな小宇宙ではありませんでしたが」

「そうですか……。もしかすると、戦闘能力の低い兵で監視しているのかもしれません。二人は引き続き、ジュリアン・ソロの監視を続けてください」

「は!」

「……ところで、女神(アテナ)よ。カミュではありませんが、私もひとつ窺いたい」

「なんでしょうか、シャカ」

 

 ふいに、シャカ殿の閉ざされているはずの目がこちらを向いた気がした。

 

「此度の会議ですが……。海皇ポセイドン。これほどの強敵との戦いの予兆は、いったいどのようにして知られたのですか?」

「なにを言うのだ、シャカよ。女神(アテナ)は神であらせられる。事前に戦いを察知してもおかしくあるまい。それにソロ家が代々ポセイドンの依り代とされてきたことは、文献を調べた文官から裏付けがとれているではないか」

 

 ミロ殿が「なにを当然のことを」とでも言うようにシャカ殿を見た。

 

 …………一応先日の女神(アテナ)の聖衣や、今回のポセイドンの件やアスガルド、今後の事。これら全て"神である女神(アテナ)が予見した未来の可能性"として扱い、情報を共有する事は事前に決まっていた。決めたのは沙織ちゃん、アイオロス、老師、ムウ殿、私である。……未だ真の意味で私と私の前世を知る者は増えていない。魔鈴やシャイナをごまかすのは大変だったな……。

 

 そうなると前々から情報を共有していたアイオロス等はともかく、突然私のような白銀聖闘士が未来を知っているなどと言っても不審がられることは明白。それはおそらくリューゼでなく、リュサンドロスであったとしても同じことだ。

 仕えるべき女神(アテナ)がいち聖闘士の信憑性に欠ける未来予知に動かされているとなっては、沙織ちゃんの信用までも落としかねない。

 かといって情報を秘匿しても、今後の動きに疑問が生じ連携に支障をきたす可能性がある。ならば情報をもたらす相手を信じやすい者に変えてしまえ、というわけだ。

 

 …………これについては最高権力者である沙織ちゃんが私の話を信じてくれたのが本当にありがたい。ありがたいのだが……どうもシャカ殿は勘が鋭いのか、こちらの嘘に気付いているようなそぶりだな。

 ややこしくなっても困るし、勘が鋭い彼にはあとで説明するべきだろうか。

 

「……シャカ。わたしは十二宮の戦いを経て、女神(アテナ)としての力が覚醒しつつあります。その力がわたしに様々な未来の可能性を見せている。不思議に思う事も多いでしょうが、一つずつ説明していきますわ」

「……そうですか。不躾なことを申しました」

「いえ、よいのです」

 

 沙織ちゃんの言葉に、とりあえず引き下がってくれたか……。

 

 それにしても今さらながら、十二宮では先代の意志を継いで女神(アテナ)に加勢した的な立ち位置の私だったが、会議でこの面子の中に白銀聖闘士の私が混じっているのは場違いではあるな。不審がられても仕方がないか。本当に今さらだったが。

 

「…………さて。現状の報告を聞く限り、どうやら海界はまだ表立って動く気はないようです。わたしたちが彼らの存在に気付いていることすら、向こうは知りえないでしょう」

「先手を取れる、というわけですね。ですが向こうが手を出してきていない以上、迂闊にこちらから攻撃も出来ないと」

 

 こういう時に打てば響くように物おじせず意見を飛ばすのはミロ殿だな。進行が早くなって助かる。

 

「攻撃を先に仕掛けたら、むこうに進軍の大義名分を与えてしまいますからね」

「ムウの言う通りです。……ですが放っておけば……。世界中が津波に襲われ、水没の危機となりましょう」

 

 沙織ちゃんの言葉に場の全員が息をのむ。そして各自に順々と視線を送った沙織ちゃんが、ぱちんとひとつ指を鳴らした。すると隣にいた辰巳殿がすぐに大きなホワイトボードをガラガラと押してくる。

 沙織ちゃんは辰巳殿からさっとペンを受け取ると、キュキュッと手早くホワイトボードに書き込んだ。

 

 

「さて、本題です!」

 

 

 沙織ちゃんが今までの女神としての高貴さや威厳でなく、指令官のようなきびきびとした動作でもってホワイトボードを示す。張りのある声に、一瞬で会場内の空気が変わった。この緩急の付け方というか、メリハリの付け方は凄いな。流石は総帥。

 

 沙織ちゃんの目くばせにより、今度は私が動いて各自に資料を配布していく。

 

「今回は対海界として……最終目標を、海界との平和協定に見据えて話し合っていこうと思います!」

 

 場がざわついた。が、ここは沙織ちゃんの弁舌に任せよう。

 ちなみにホワイトボードにでかでかと書かれていた議題は「海界篭絡! 論破! 巻き込み大作戦!」だ。……あれ、この子どこでそのネーミングセンス身につけた? 光政翁?? ちゃんと教育してくれてました???

 

「なにも戦いが全てではありません。そもそも今回の海皇復活は、わたし……女神(アテナ)の封印が作為的に解かれたことが原因。本来、二百五十年の時を経て復活するハーデスとの戦いに近いこのややこしい時期に戦う相手ではなかったはずなのです。いちいち真正面から相手になんかしていられませんわ!」

 

「おい、アイオロス。これは我々の責任か……?」

「むう……。ま、まあ無関係とは言えないだろうな……多分……」

 

 資料を渡しながらこそこそアイオロスに話しかければ、彼も今の私と同じような曖昧な顔で頷く。

 ……こう、沙織ちゃんの話し方というかもろもろが、あけすけな物言いになってきていることなのだがな。もしかすると事前に話し合った時に、ちょいちょい「面倒な時期に」「そう短期間に幾柱もの神なぞ相手にしていられるか」的な発言をこぼしていた私達に影響されている疑惑が出てきた。

 もっとオブラートに包んで話していたとは思うのだが、滝の前から動けない老師に合わせて五老峰の屋外で事前打ち合わせをしたからな。大自然の解放感に、ついつい口が軽くなってしまった感が否めない。

 

 先ほどまで女神としての気高さを纏っていた少女の別の意味での圧の強さに、黄金の面々も大なり小なり圧倒されているようだ。

 …………なんというか、すまない。

 

「そういうわけで、海界とは出来るだけ戦わないつもりです。ポセイドンとしてもハーデスと魔星の復活、地上進行が近いとなればわたしと争う事を躊躇するでしょう。もしわたしを倒し世界を手に入れても、消耗したところでハーデスと戦う事は不利と分かるでしょうから。さすがにそこまでボケてはいないはず」

「ボケ……ごほんっ。では、海皇ポセイドンと交渉を……?」

「ええ」

「ですが……たとえ海皇が引いたとして、ハーデスとの戦いで漁夫の利を狙ってくる可能性は? 彼の大神に戦力を温存させたままハーデスとの戦いに臨むのは、あまりにも危険かと」

 

 カミュ殿の冷静な分析にも沙織ちゃんは動じない。ここまでの質問は想定済みだ。

 ちなみにハーデスとの聖戦がもうすぐ始まるという情報は、すでに聖域全部で共有されている。その戦いを見据え、聖闘士だけにとどまえらず雑兵までもが一丸となって自身を鍛えなおしているところだ。人間、具体的に期限や目的が分かっていた方が何をやるにしても身が入るからな。

 

 ……にしても、原作から離れていくことは覚悟していたが、まさかこのような方向性に進むとは思わなんだ。

 すでにこの後告げられる内容も、打ち合わせをしたメンバーとして知ってはいるが……。むしろ提案者の一人でもあるんだが……こうもぽんぽん決定されるとは思わなくてだな……。

 

 

 沙織ちゃんはカミュ殿に「良い質問ですよ、カミュ」と、早く言いたくて仕方がないと言わんばかりのどや顔で胸を張る。

 

 

「問題ありません。何故なら今回の聖戦……海界にも、冥界との戦いに参加してもらうからです! 海界とはいえ同じ地球上の世界! むしろ陸地よりも面積が広いんです! 都合よくハーデスの地上進行を姪に任せてしらんぷり決めこもうだなんて、ムシのいいことはさせませんわ!」

 

「な!?」

「か、海界を!?」

「そんなことが可能なのか……?」

 

 沙織ちゃんの言葉に流石に動揺を隠せない者が多いようだ。……あとで聖域に残っている面々に伝えるの地味にきついな……。女神(アテナ)の言葉でもざわつくのに、私なんかから説明したらどういうことだと激しく問い詰められんか、これ。

 

「ちなみに手始めとしてそのダシに、今回のポセイドン復活の黒幕と、ポセイドンの依り代であるジュリアンを使わせていただきます」

 

 そしてその言葉にサガが死んだ。いや死んでないが、胃の当たりを抑えて机に突っ伏した。……全体に配布した資料の中には、そのダシこと彼の弟の名がでかでかと書かれている。

 

 

 沙織ちゃんは椅子に座りなおすと、組んだ両手の上に顎をのせ堂々とした笑みで宣言する。

 

「今回はポセイドンに対してもハーデスに対しても、全てにおいて先手を取り、長く地上の平和をつかみ取るつもりです。各員、それを肝に銘じて行動してください」

 

 

 

 十二宮ではハーデスを倒す可能性を秘めた星矢達の成長を促した。

 そして海界編では戦いそのものでの消耗を避け、逆にハーデス、アテナと同格の神ポセイドンを巻き込む形で聖戦を万全の物とするべく。

 

 

 

 わりと無茶ながらも、平和に向けてのストロングスタイルの舵取りはこうして始動するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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