異世界転生した俺が厄神様の厄になっていた件について   作:水無飛沫

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壱、厄神様と厄い厄

「もぅ、なんで落ちてくれないのよぉ」

 

少女が半泣きで水浴びをしている。

彼女の名は鍵山雛。厄を集め厄を流す、厄神様と呼ばれる妖怪だ。

 

通常ならば集めた厄をこの川で注ぎ落すのだが、

その厄がなにをやっても落ちてくれず、禊をしながら途方に暮れている。

 

しかしてその原因は……俺だ。

 

今回は読み切りなので詳しいことは省くが、

不運な事故によって幻想郷の厄に転生した俺は、こうして雛のもとへと導かれてしまったわけである。

 

最初こそ彼女から離れられずに不便したものだが、

共同生活を送っているうちに切っても切れない関係へと(一方的に)成長したのである。

 

言うなればこれは恋。

俺が厄に転生したのは運命。そう、偉大なるガイアがもたらしたディステニー。

 

「はぁ……明日にとりに相談してみよう」

 

夕陽も沈みかけ、既に夜が迫っている。

雛は川から上がると、露出の少ないドレスを身に着ける。

俺は紳士なので着替えをするレディの邪魔をするようなことはせず、少し距離を置いて彼女の様子を眺めている。

そんな俺を見て、彼女がため息を吐く。

(あれ……俺に気づいて……?)

一瞬ドキッとするが、すぐに思いなおす。

幻想郷において、厄の集合体は目に見える黒いモヤのような姿をしている。

透明人間になったのではないのだから、見られるのは当たり前なのだ。

とはいえ、俺という意思がバレてしまうと色々と厄介なことになりかねない。

 

恐る恐る彼女に纏わりつく。

 

「なんか一々いやらしいのよね……」

 

つぶやく彼女に、「ソンナコトナイヨー」と心の声を投げかけておいた。

 

 

さて、夜だ。

そう諸君、夜が来た。

 

毎夜のこととはいえ、ちょっとソワソワしてしまう。

文学的な表現をするならば同衾の時間である。

同衾は「今、同じ衣」と書く。

古来の日本人は衣服を布団代わりにかけていたというので、同じ布団なう……つまるところ添い寝である。

今の俺は雛の厄だから、不可抗力。シカタナイネ!!

 

寝間着に着替えた雛。うん、今日も可愛いね!

薄桃色のネグリジェはどことなく淫靡に俺を誘っているように見えるし、

普段は隠している彼女の人ではない部分を浮き彫りにしている。

 

嬉々として彼女に纏わりつくと

「だんだん重たくなってるのよねぇ、これ」とため息を吐かれてしまった。

 

そう、流されない厄は蓄積する一方なのである。

それに伴って、厄の濃度と危険性は徐々に増えていく。

 

(危険……俺が? 別に俺は雛に悪さしないのに)

 

まぁ、もし何か危険があるようだったら大人しく流されるのもいいかもしれないな。

どうせまた雛に収束していくわけだし。

そう、これは無限に続く約束された恋の歌(アンリミテッドラブソング)!

 

雛に覆いかぶさって彼女の寝息を聞きながら、俺もまた眠りに落ちる。

 

 

俺と雛の厄い生活は、まだ始まったばかりなのである。

 

 

 

 

 

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