異世界転生した俺が厄神様の厄になっていた件について   作:水無飛沫

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拾参、ドキドキ☆お風呂はぷにんぐ(にゅるりもあるよ)

「で、いつスプレーの効果切れるんだ?」

 

昼下がりのお茶会も、既に夕暮れに差し掛かっている。

だというのに、一向に雛に近づくことが出来ない。

 

おかしいやん。おかしいやん。

なんで雛の厄たる俺が、雛に触れないんだ!!

こんなの絶対間違ってるよ。

 

「いいざまだね」

忌まわしいスプレーの開発者が絶望に打ちひしがれる俺を鼻で笑う。

 

(覚えてろよ……俺はこの愛の試練を乗り越えて、かならず雛に纏わりついてみせる!!)

 

思えば実体化する前の、彼女に絡みついていた時期が懐かしい。

随分と遠くへ来たものだ。いや、近づきたいんだけど……。

 

地団駄を踏む俺と、それを眺めるガールズふたり。

そうこうしているうちに、陽も完全に暮れてしまったようだ。

雛が心配そうににとりに声をかける。

 

「あちゃー、こいつの無念そうな顔見てたら、時間が経つの早すぎて気づかなかったよ」

にとりが笑いながら言う。こいつ性格悪すぎだろ。

「なんでそうなったか自分の胸に手を当てて、よーく考えてみなさい。このセクハラ魔人」

「セクハラ? なんのこと?」純真無垢な眼差しで首をかしげる俺。

「ひなー、追加でスプレーかけてあげるねー」

「おい、こら、やめてください。後生ですから」

土下座して己の非を詫びる。

ぐひひ、と陰険な顔をして勝ち誇るにとりに、雛が優しく語り掛ける。

「今日は泊っていく?」

「いいの?」それを聞いたにとりの顔が輝く。

「大歓迎よ」厄を纏っていないからこその発言なのだろう。

にとりに気を遣う必要もない雛は心底嬉しそうだ。

 

「ひゃっほい!! パジャマパーティーだ!!!!

みんなで夕飯、みんなでお風呂、最後は川の字になって就寝だぁ!!!!」

 

「近寄れると思ってるの?」

低い声でつぶやくにとり。ちょっと声が怖いんですけど……。

困ったように笑う雛も、断固拒否の空気を纏っていた。

 

ぐぬぬ。

しかし、俺は紳士だからな。ここは素直に引き下がってやろう。

 

 

*****

 

なんてな!!

 

ふたりしてお風呂に入っている時、そう、それはスプレーの効力が流される刻限(とき)!!

影から覗くのも悪くはないが、散々お預け喰らわされていたのだ。

もう我慢できないっ!! とケロ〇グの虎ばりに勢いよく脱衣所の扉を開け、脱ぎ畳まれた衣服に目もくれず、神秘と魅惑を兼ね備えたその先の空間へ!!

やったね、厄ちゃん大勝利!! 家族が増え……

 

「そう来ると思ってたよ!!」

迎えうつは水着を身につけ、水鉄砲を握りしめるにとり。

 

「ちくしょぉぉぉぉお!!!!」

お風呂で水着はマナー違反だ!! 訴えてやる!!

いや、待て。雛の赤くてフリフリの付いたビキニ姿、超セクシーでぐっじょぶ!!

にとりも機能性を重視した紺の競泳水着に、鞄を背負ったダブルパイスラースタイル。

これはちょっと……

 

「マニアックすぎやしないか?」

 

「うるさいっ」

くくっ、そんなに俺と水遊びがしたいのかなっ!!

俺はアワアワで石鹸な遊びでも一向にかまわないんだぜっ!!

 

「それっ!!」

にとりは手に持った水鉄砲から勢いよく水を打ち出すと、俺の顔に直撃させる。

 

「ふふっ、それくらいで……んがっ!!」

にとりの放った水が、俺の顔に痛みをもたらしたかと思うと、顔の一部を溶解させた。

なんだ、この水は……。

 

「対厄超濃度光化学水照射機、名付けて『みずてっぽうくん』だよ」

 

いや、確かに合理的ではある。

俺は水に流される性質を持っているのだから、そこに対厄属性を付与されてしまっては為す術がない。

 

「俺が悪かった!!」

ここまで来て流されるわけにはいかない。

なんとかしてあの銃を無力化しなければ……。

 

「早く出て行きなさいよね」

 

土下座スタイルで周囲を探る。

と、俺の視界の端にある黄色い物体が目に留まった。

 

「出て行かないなら……」

 

せやっ!! これだ!!

 

「もういっちょ!!」

 

「バリアーシールドっ!!」

 

風呂桶を手に持ち、水鉄砲を防ぐ。

 

「ぐぬぬ、そんなんで防がれるとは……改良の余地がありそうね」

 

くはははっ、この勝負、我の勝ちなり!!

さすがはケロ〇ン!! お風呂の神さま!!

 

勝ち誇りながら、遠慮のない視線で敗者の姿を目に焼き付けようと、にとりの攻撃を防ぎながら身を乗り出す。

(いや……もうちょっと、光の加減で、大事な部分が……くそっ、見えない……だとっ!?)

 

光の乱反射によって顔を真っ赤にしてお風呂に沈んでいる雛の水着がよく見えない。

(まさか、これも河童の科学力なのか?)

ハッとしてにとりを見ると、やはり偉そうに胸を張っている。

ガッテム!!

「早く出てけ」という罵声を浴びながら、お風呂に浮かんでいる雛の前髪を未練がましく眺める。

 

そう言えば髪を洗う時はどうするのだろう。いや、髪を解いても後ろに流さなければいいのか。

それとも……その時ばかりは運命の女神にも後ろ髪が発生するのだろうか。

豪将アキレウスのアキレス腱みたいな?

 

「ふむ、これは興味深いですねぇ」

「あの……恥ずかしいから、もう出て行って」

 

か細い声で恥ずかしがる雛。

その前髪を洗ってあげようかとも思ったけど、流石に嫌われそうな空気になったので外に出ることにした。

このあとパジャマを着たふたりとのイベントも待っていることだしな!!

 

なお、その後マジ切れしたにとりに「バッチ来い」されるし、雛は数日間口をきいてくれませんでした。

 

 

うーん、めでたしめでたし!!

 

 

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