異世界転生した俺が厄神様の厄になっていた件について   作:水無飛沫

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おまけ:紫苑と爛れた三角関係編 第3話

雨が降る。

蒸したテントの中に、紫苑が眠っている。

まるで死んだような見た目だけれど、浅く息はしている。

 

(けれど、このままではいずれ……)

 

 

彼女をなんとかしようにも、俺がここ(彼女)に縛られてしまっていてはどうにもならない。

――まったく、いつだって肝心なところでは役に立たないな、この体は……。

 

 

この場所を唯一知っているであろう紫苑の妹――女苑――も、しばらく来る気配はなさそうだ。

 

女苑は恐らく、紫苑が一人で生きていける限界を知っている。

当然、俺というイレギュラーに思い至ることはないのだろうから、今回はその目測が裏目に出てしまっているのだ。

 

「君も私を捨ててしまえばいい」

 

力なく、紫苑がつぶやく。

 

「起きてたのか?」

 

紫苑が薄く微笑む。

 

昼夜を問わず、紫苑は眠っていることが増えた。

体力も限界なのか、食料を求め外に出ることも皆無になってしまっている。

 

「このまま終わってしまえば、もう苦しまなくていいのかな」

 

ずっと貧乏暮らしをしていた妖怪がつぶやく。

 

「女苑も悲しむぞ」

 

それと知っていながら、禁忌の言葉を言う。

紫苑にとって生きる価値とは、即ち己を受け入れてくる人間であるのだ。

 

「そうか……そうだね」

 

力ない感じで、床の中で紫苑がつぶやいて、口を閉ざす。

それから、長い沈黙が流れたように思う。

 

 

「君が人と関わろうとしないのは……」

 

思い切って彼女に踏み込もうとしたのだが、その言葉は

 

「違うよ」

 

という言葉に掻き消される。

再び、気まずい沈黙が場を支配する。

 

 

「君に似た女の子を知っているよ」

 

そんな状況に叛逆するように、

気が付くと、俺は彼女に語り掛けていた。

 

「君と同じように、誰かを不幸にすることを怖がって、一人になった」

 

紫苑は何も応えない。ただ、目だけがこちらを向いて「それで?」と問いかけている。

 

「それでも……彼女は自分の力と向き合って、上手くやろうとしてるよ」

 

この言葉に嘘偽りはない。

 

俺たちは、これから始めるのだから……。

 

 

「私にもできるかな……」

 

力なく、紫苑がそう虚空に吐く。

 

「できるさ」

 

俺は彼女を力づけるように、その手を握った。

 

「ふふっ、おじさんの話、初めて聞いた気がするよ」

 

「そうだっけ?」

 

微笑む彼女の、額を撫でてやる。

 

「俺は貧乏も不幸も気にしないぞ。そもそも生き物じゃないしな」

 

言葉の意味を理解しきれていない紫苑。

 

「それに、貧乏には慣れているしな」

 

そんな彼女に、畳みかけるように優しく語り掛ける。

 

「おじさん……」

 

弱々しいながらも、どこか縋るようにこちらを見つめる紫苑。

 

「お兄さんな」

 

額を叩きながら、俺はそう訂正する。

 

 

(立った!! フラグが立った!!)

 

脳内ではク〇ラが自由に空を羽ばたいている。

あれ? あの話ってク〇ラが飛ぶ話だっけ?

まぁ、パトラッシュもその脇で一緒に飛んでいるみたいだし、

そういう話だったのだろう。

 

これからは、君を幸せにしてあげるよ!!

 

口に出さないまでも、そういう愛情を込めて紫苑の額を撫でる。

 

安らかな顔をして瞳を閉ざす紫苑。

 

(やっちゃう? やっちゃう? これ、キス待ちの顔でしょ??)

 

苦節21話!! 俺の努力が報われるぅぅぅ!!!! ひゃっほい!!

 

ゆっくりと紫苑に顔を近づける俺の背後から

 

「何をしているのかしら?」

 

聞きなれた声が聞こえてきた。

 

恐る恐る振り返ると、そこにはゴゴゴゴゴと背後に黒いオーラを纏った雛が立っていた。

 

「えっ、雛……さん?」

 

思わずさん付けで呼んでしまう俺。

 

長いこと彼女のもとに帰らなかった俺。

床に臥す少女にキスしようとしている俺。

 

(完全にアウト案件ですやん!!!!)

 

「なにを、しているのかしら?」

 

その目は冷たく俺に注がれている。

 

(まずい、何か言い訳を……)

 

「ひ、人助け…………だょ」

 

ウソではない。十中八九嘘ではない。残りの一二は邪念かもしれないけど!!

 

「帰ってこないと思ったら、こんなところで……」

 

黒い影(シャドウ)を纏った彼女は、まさに厄神。

俺より厄の纏い方激しいんじゃない!?!?

 

「怒ってる?」

 

と、思わずそんな当たり前の、聞かなくてもわかるようなことを聞いてみる。

 

「別に」

 

ウソですやん!!

初めてみるマジギレですやん!!

 

「ちがっ、違うんだ雛!! 俺は、雛一筋なんだ!!!!」

 

 

そう叫ぶ俺に、

 

――スパァァァァァン!!

 

雛の平手が炸裂した。

 

 

 

 




やっと正妻の登場だよ!
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