異世界転生した俺が厄神様の厄になっていた件について   作:水無飛沫

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前回までのあらすじ。
The☆修羅場。


おまけ:紫苑と爛れた三角関係編 第4話

 

SPAAAAAAAAAAAAAAAAAN!!

 

 

雛の手と俺の頬が心地よいまでのシンフォニーを奏でた。

 

くくく……さすが雛だ。

俺の厄が1/3は虚空に持ってかれたぜ……。

 

 

「……いつまで経っても帰ってこないから、心配したじゃない」

 

そう言うと、雛は目を伏せて拳を握る。

 

「すまなかった……何か連絡手段があればよかったんだが……」

 

「いいのよ、別に……。

なんとなく、どうなっているかは察したし」

 

はぁ、と大きく雛が溜息を吐く。

 

「お食事にしましょうか」

 

雛が脇に抱えていたバスケットの中から、水筒、サンドイッチ、果物を広げていく。

そして彼女は伏している紫苑の口の中に、大ぶりのブドウを一粒入れた。

 

「穣子ちゃんに貰った果物だから、栄養満点で美味しいわよ」

 

紫苑が咀嚼して喉が動くのを確認すると、雛は次の粒を入れてやる。

何度かそれを繰り返すと、紫苑の手がブドウや他の果物を掴み、自らのペースで食べ始めた。

 

「はぁー、幸せだよ」

 

やがて固形物も食べる元気が出てきたのか、彼女はサンドイッチに手を伸ばす。

その頃には上体を起こして、両手でガツガツと食べるようになっていた。

さすがの回復力だ。

仮にも名前に『神』がつくだけのことはある。

 

紫苑の元気になっていく様子を眺めながら、どこか腑に落ちないものを感じる。

 

……彼女は『幸せ』だと言った。

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「おそまつさまです」

 

 

穏やかな顔で微笑む紫苑と、まるで親鳥のような表情を見せる雛。

ふたりで水筒のお茶を啜る様は、一見すると和やかな食後の風景である。

 

だが俺の目には、真っ黒で不穏な空気が流れているように見えるのだ!!

 

(逃げたい……。

いや、別にやましいことはしてないんだけど……とりあえず逃げたい)

 

……もしかして、気のせい?

自意識過剰な俺が抱いた幻想風景?

 

俺が抱く幻想郷は、皆が仲良くハーレムライフだから!

これは錯覚なんだよね。うん。

 

本当はみんな仲良しだもんね!! らぶあんどぴーすっ!!

 

「お姉さん」

 

栄養のあるものをたくさん食べて、目に見えて血色のよくなった紫苑が呼びかける。

そう呼ばれることに嬉しさを感じるのか、「なぁに?」と雛が続きを促す。

 

「その人と、どういう関係なの?」

 

はわわ///

やっぱり不穏な雲行きだったんじゃないですかぁ!!

 

 

「どうって……彼は……私の厄……よ……」

 

答える雛の歯切れは悪い。

 

「雛ぁ……」縋るような俺の視線を受けて、

 

「別に、特別な関係じゃないわよ」と、そっぽを向いてしまう。

 

あー、さっきまでのこと、めっちゃ怒ってますやん。

 

「じゃあ、お姉さんの恋人じゃないんだよね?」

 

ニヤリと笑う紫苑は、もうこれ少女のしていい表情じゃない。

部長と不倫した挙句、奥さんと直接対決しちゃう系のOLがする表情じゃないですかあ!!

 

「ええ、まぁ……そういうことに……」

 

雛が答え終わる前に、紫苑が俺の右腕に抱き着いてくる。

トレーナー越しに、痩せてはいるが確かなふくらみの感触が……っ!!

 

全集中!! 厄の呼吸!!

今は、この腕だけに神経を集中させるぞ!!

 

「ちょっと、離れなさいよ」

 

焦る雛が、俺から紫苑を引き離そうとするが、

 

「なんでさ。

やっと会えたんだ。

私が一緒にいても、大丈夫な人が」

 

涙ながらに紫苑が訴える。

 

「それは……」

 

雛にも思い当たるところがあるのだろう。

お互い、一緒に居られる人がいないから、誰からも距離を取る。

 

この二人は、そんな強情なところまで似通っている。

 

「それでも、ダメ」

 

雛が空いてる方の俺の腕を掴む。

 

あっ……あっ///(声にならない悦び

 

「彼は、私の(厄)なんだから!!」

 

雛が叫ぶ。

括弧内の都合の悪い言葉は、腕に意識を集中させているので聞こえなかったことにしよう。

 

「いいじゃん。減るもんじゃないし!!

むしろ減ったほうがいいでしょ!!」

 

「良くないわよ!!」

 

 

念願のハーレムルート到来っ!!

 

俺の頭の中で天使たちがラッパを吹き鳴らしている。

 

「おいおい、やめるんだ君たち」(イケボ)

 

「ほら、放しなよ」

 

「なに言ってるの、あなたが放しなさい」

 

ん。徐々に力が強くなってない?

 

はわわ/// 

痛い。腕の付け根がめっちゃ痛い。

 

「やめるんだ、お前らぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」(必死)

 

――メリメリッ

 

俺の身体から変な音が聞こえてるのは気のせいであって欲しい。

 

 

裂けちゃう/// 裂けちゃうぅぅぅぅ!!

 

 

――メリメリッ

 

 

 

 

 

――ベリッ!!

 

 

 

 

 

 

『あっ……』

 

雛と紫苑が同時に声を上げ、尻もちをつく。

 

 

『あーーー!!!!』

 

ふたりが目を丸くしてこちらを指さす。

 

 

 

 

 

『分裂しちゃった///』

 

 

ふたりになった俺が、雛と紫苑の前で恥ずかしそうに頭を掻くのであった。

 

 

 

 

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