異世界転生した俺が厄神様の厄になっていた件について 作:水無飛沫
いっけなーい。私、厄神様の厄に転生した厄。
雛と紫苑の愛のパゥワーによって、自我が分裂しちゃった!!
一体私、これからどうなっちゃうのぉぉぉ~><
「これは一体どういうことだと思うかね、ワトソン君」
と、俺は俺に語り掛ける。
「勝手に主役にならないでくれたまえ、ワトソン君」
対して、俺も俺に語り掛けてきた。
「いやいやいや、主役は俺だから、俺がホームズ」
「ばっ、おまっ!! 俺こそが主役だっての!! ホームズだっての!!」
「なにおぉぉ!! お前なんて、俺から分離して生まれたくせに!!」
「そのセリフ、そっくりそのまま返してやるわっ!!」
わー、と叫びながら二人してポコポコと殴り合いを始める俺たち厄2つ。
我々、仲が悪く見えるだろう?
だがしかし、この殴り合いの最中にも身振り手振りアイコンタクトを使用してコミュニケーションを取っているのである。
この後どうするか……せっかく2つの身体を得たのだ。
2兎追えて2兎得られるのだから俄然お得じゃあありませんか!!
じゃあ、雛と紫苑片方ずつ分け合おうぜ。
で、
((ハーレムルート、ここに完成!!!!))
ニンマリ、と思わず笑みが漏れる。
さすがは俺、どうやら考えることは全く同じようだ。
ここまでコンマ5秒のやり取りである。
我々ながら完璧な意思疎通、己の才能が恐ろしい……。
とはいえ、表向きは両手を振り回し、ポコポコと優しく殴り合いをしている構図である。
紫苑は泣きそうな顔をして、オロオロと我々を眺めている。
雛はというと、心底困ったような笑みを浮かべて
「仲がいいのね……」と言った。
くっ、俺たちが本気でケンカしてるわけじゃないことを察しているだと!?
『さすが雛、俺の嫁!!』
『誰がお前の嫁じゃー!!』
二人そろって声を上げて、お互いにツッコミを入れる。
(いやいや、俺が雛と結婚して、お前は紫苑だろう?)
(俺は雛を選ぶ。お前は紫苑を選べよ)
俺は相棒に目で語り掛ける。
相棒は指さしジェスチャーで同じことを伝えてくる。
バッコニュニケーション!!
(くくく……どうやらやはり我々は
(ここからは拳で語り合う時間だ)
(勝った方が雛と添い遂げる!!)
(見せてやるよ、この俺の、本気ってやつをなぁ!!)
目配せが空中でぶつかり合い、ジュッと黒い火花が散る。
『シュッシュ。シュッシュ』
掛け声に合わせて拳を振る。
が、思考回路が同じせいか、相手の動きが手に取るようにわかってしまう。
結果、我々は空中を殴り合うだけの高度な駆け引きをすることになってしまった。
(痛いのが嫌なわけじゃないよ!! ホントだよ!!)
さながらシャドーボクシング。
はた目にはそういう遊びにしか見えないだろう。
『ぜーはー、ぜーはー』
足腰の疲労が限界に達したころに我々は気づく。
いや、最初から気づいていたのだ。
これは雛を得るためだけの勝負であってはいけない。
俺たち二人の本命が雛であるならば、紫苑のことはどうする?
「こうしよう兄弟、俺たち二人で雛と紫苑を幸せにしよう!!」
「四人で幸せになろう!!」
これが俺たちの結論。
誰かを奪うための闘いなんて意味がない。俺たちは、俺たちの幸せにしたい人を協力して幸せにする。
相棒と肩を組んで、空いた方の手でそれぞれが手を差し出す。
「え、やだ」
うへぇ、と紫苑が吐き捨てる。
『ちょ、なんで……さっきまで俺を奪い合ってたやん!!』
綺麗にハモる厄2兄弟(この際どっちが兄か弟かは議論しない)。
「いや、なんかキモいし……」
「じゃ、じゃあ俺一人だと?」
ギロリ、と鋭い視線を感じる。
やばい、厄神様がマジでご立腹の時の表情をしているぞぉ。
……嫉妬かな?
大丈夫、これは仮定の話さっ!!
「うん……まぁ、その……いいかな、って……」
頬を染めながら頷く紫苑。
やだぁ、なにこの子。ちょっと可愛くない????
「わかった。じゃあ俺が一人で雛と紫苑を幸せにする!!」
これなら浮気じゃないよね? どっちも本気だから!!
雛に語り掛けようとしたら、
「おい、兄弟。早速裏切りやがったな!!」
アミーゴから右ストレートが飛んできた。
「痛ぇな!! お前はもういらない子なんだよ!!」
「ふっざけんな!! 二人を幸せにするのは俺だ!!」
『おのれ、かくなる上は……!!』
お互い、自我と女を賭けての勝負になる。
絶対に負けられない戦いが……始まるっ!!
「ふふっ、この勝負、私に任せてもらうよ」
突然テント内に闖入者の声が響き渡る。
『な、なにやつぅぅぅぅ!!!!』
ジャっとテントの入口が開けられると、そこに立っていたのは……(次回に続く