異世界転生した俺が厄神様の厄になっていた件について 作:水無飛沫
ふふん、と胸の前で腕を組んだにとりが立っていた。
恐らく雛からここに来ることを聞かされていたのだろう。
「に、にとり!!」
「お前もヒロインの座を狙いに……」
だがごめんよ、我々は2人しかいないから、正ヒロインは2人になってしまうんだよ……(悔し涙)
「んなわけないでしょ!!」
『でも大丈夫。ハーレム要因として……』
「死ね!!」
はぁ、とため息を吐いてにとりが外を指さして言う。
「雌雄を決するなら、いい方法があるよ」
そのテントを出てにとりの指し示すものを見ると、そこには2つの大きな球体と、発射装置らしきものが置かれている。
……嫌な予感しかしない。
「チキチキ、巨大な
いつのまに握ったのか、にとりが謎の鳴り物をパフパフと鳴らしている。
随分と楽しそうな顔である。
……変なもの発明しやがって。
ん? 花火? 花火っつったか、こいつ。
「今回の為に、8尺玉厄流し君を2つ用意したよ」
いやいやいや、おかしいだろ。
ツッコミどころが多すぎる!!
「現代日本だって4尺玉までしかないのに、8尺玉とかもはや核弾頭でしょ!!」
「なんで分裂のこと知らないのに、2つ用意してあるんだよ!!」
それぞれ被らないように、1度でツッコミを終わらせる。
さすが俺s。
「君の厄で壊されちゃったときの予備に2つ持って来たんだけど、結果オーライだったね。
まぁ、機材は無事だった代わりに、ここまで来るのに酷いエロトラップの数だったけど……」
ちょっとなにそれ、お兄さん、興味津々なんだけど!!
15話くらいかけてその話やろうぜ!!!!
「最低」
にとりが吐き捨てるように言う。
おっと、心の声が漏れてしまっていたらしい。
「さぁ、好きな方を選んで。チキンレースで自らの勇気を証明せよ!!」
「馬鹿でしょ!!」
「勝ち負けの基準ないやん!!」
これ、絶対チキチキもチキンレースも関係ないやつじゃん。
葛籠って、小さいほうを選んだ方が得をする昔話でしょ??
なんで小さいのが存在しないの? 両方同じ大きさとか、橋の女神がブチギレるぞ!!
「大丈夫大丈夫。どっちも電離層で爆発するように仕組んでるから。
より高く飛んだ方が勝ちでいいんじゃない?」
死ぬ。まじで死ぬって!!
仮に死なないとしても、下手すると成層圏漂うことになるやん。
いや、もしかしてそれが狙いなのか? もう帰ってこれないように??
俺がにとりだけのものにならないなら、いらないって??
このヤンデレちゃんめ!!
「選ばないの?
……じゃあ」
ニヤリとにとりが笑う。
それはそれは、大層邪悪な笑みであった。
「ランダム設定するね。運は神のみぞ知る、ってね」
運命の女神そこにいますけどぉぉぉ!!
「逃げるぞ、兄弟!!」
「おうよ、兄弟!!」
シュダダッと駆け出したものの、身体が前に進まない。
進まないどころか、身体が8尺玉の内部へと吸い寄せられていく……。
「もう設定しちゃったもんねー」
にとりが高笑いをしている。
相変わらず腕を組んでいるにとりを眺めて、あぁ、腕をほどかない理由をなんとなく察してしまった。
「わかった!! わかったから、とりあえずバンザイしてみよ? ね、にとり!!」
「落ちてきちゃうんでしょ? ねぇ、全部落ちてきちゃうんでしょ??」
我々の言葉に、一瞬無表情になるにとり。
そしてペッと凄まじい表情で唾を吐きだした。
本当に吐き捨てやがった!! お行儀悪いのはダメですよ!!!!
「火薬には特別な厄取りホイホイ成分を添付してるから、ぜぇーったいに逃げられないよぉ」
ニタァ、と地獄のヤクザどもですらしないような表情を浮かべて、にとりが発射スイッチに手を伸ばす。
『おに、あくま、てんぐ、ダブルパイスラー!!!!!!』
「うっせぇ、死ね!!!!」
ポチっとな、と奇声を上げながらにとりが発射台のスイッチを押す。
「あ、死ねって言いました? ねぇ、死ねって言いました?」
「チキチキ要素どこ?? 助けて、雛!! ひなけてーーーーーー!!!!」
そうして我々は電離層めがけて打ち上げられたのであった。
「また随分と汚い花火ね……」
巫女が上等な酒を飲みながら、そんなことを呟いたとか呟かなかったとか。