異世界転生した俺が厄神様の厄になっていた件について   作:水無飛沫

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おまけ:紫苑と爛れた三角関係編 第11話

夏も終わりに差し掛かろうかという頃、俺はにとりの下を訪れていた。

 

「……なにさ」

 

怪訝そうな表情のにとりが俺を迎える。

少し逃げ腰なのは、家の中にある機材を壊されることを警戒してなのか、

はたまたエチズラ(エッチなイタズラ)を警戒してのことなのか。

 

「頼みがある」

 

「それは雛には言えないこと?」

 

挑発するような上目遣いが俺を睨みつける。

 

「別にそういうわけじゃない。ただ、これはにとりにしか出来ないことなんだ」

 

正直に言えばにとりにも出来ることなのかは俺には判断しかねる。

けれど、俺にはもう他に頼れる誰かはいなかった。

 

(まぁ、それも自業自得か)

 

散々好き放題やって来たのだ。

ツケが回ってきてもおかしくはない。……だとしても、そのツケを踏み倒してでも俺は俺のエゴを貫く。

それが俺が此処(幻想郷)にいる意味なのだ。

 

「嫌だ、と言ったら?」

 

「お前を殺して俺も死ぬ」

 

精一杯の愛情を込めてそう告げると、にとりは心底嫌そうな顔をした。

 

「愛してるよ、にとり」

 

にとりの手に持ったモーニングスター(一体どこから取り出したんだ)が俺の頭を直撃する。

衝撃でうずくまり、土下座のような姿勢になった俺は、そのままにとりに「頼む」と願い出る。

 

「なんだってんだい、まったく」

 

話だけは聞いてあげるよ。諦めたようにつぶやいたにとりに、俺は全力で抱き着いた。

(その後もう一発喰らったのは言うまでもない)

 

 

 

…………

 

 

それから俺は町へと行き、紫苑のテントを訪れる。

最後に見た時よりもボロボロになっていて、今じゃ風雨をしのげているかすら怪しく見える。

 

「おじさん」

 

紫苑が俺に気づいて出迎えてくれる。

厄が周囲から消えてすっかり元気になったのか、多少は顔色もよさそうだ。

 

「てっきりもう会えないのかと思ったよ」

 

無邪気な笑顔を見せる紫苑に

 

「最後に、君にプレゼントを渡そうと思ってね」

 

俺は残酷な言葉を告げなければならなかった。

 

「最後、ね」

 

そう言って紫苑は寂しそうに笑ってみせた。

 

「俺は……君の傍には居られないんだ」

 

それは彼女も重々わかっているだろう。

けれど、だからなんだというのだ。

彼女にとっては、俺に見捨てられたも同然に思っているだろう。

 

「だからさ、これを……」

 

そう言って俺は彼女にプレゼントを差し出す。

とても愛らしいとは言えないような、いびつな形をしたぬいぐるみである。

それはにとりの科学力によって一つの封印がなされている。

 

「なんだい、これは」

 

出来の悪い黒猫の形を模したぬいぐるみを紫苑が不思議そうに眺めている。

 

「この中には俺の一部を封印してある」

 

受け取ろうと手を伸ばしていた紫苑が、咄嗟にその手を引っ込めた。

 

「安心してくれ。にとりのお陰で、この人形から厄が漏れることはない」

 

流すことができるのなら、封印を施せるんじゃないのか。

俺はそれをにとりにお願いしたのだった。

 

「君が寂しくならないように、このぬいぐるみの中からずっと君を見守っているよ」

 

「おじさん……」

 

紫苑は受け取ったぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。

それから

「でもちょっと、ぶさいくだね」

と、くすりと笑った。

 

「ぬいぐるみなんて初めて作ったんだ。出来の悪さは勘弁してくれ」

 

人形であれば多少自信はあったのだが、彼女にはこういった可愛らしいものの方が似合っているような気がした。

 

「きっと君には俺以上の人がいる。

君の不幸なんて笑って吹き飛ばしてしまうくらいの明るい人が、きっといつか現れる。

その時まで……ちょっとしたお守りだとでも思ってくれ」

 

きっとそんな人こそ、君の隣にいるにふさわしい。

残念ながら、性質的にもそれは俺ではなかった。

 

そう告げると、紫苑は捨てられた猫のような表情を浮かべた。

 

「やっぱり、君も……私から離れて行っちゃうんだね……。

私が貧乏神だから……」

 

「違うぞ、紫苑。

俺はお前を大切に思っている。だから離れるんだ」

 

そのことに一切の偽りはない。

叶うなら、君を幸せにするのも俺で在りたかった。

 

「うん……わかってる」

 

「俺は本心では今だってお前と一緒に居たいと思ってる」

 

「……本当?」

 

「なぜなら俺は今だってお前をいやらしい目で見ているからな。

そのTシャツから覗く貧相な胸元とか!!」

 

「……それもどうかと思うよ」

 

両手で胸元を押さえるようにして紫苑がわめく。

それから……寂しそうに、どこか諦めたように紫苑が口を開く。

 

「いや、わかったよ。さよならなんだね」

 

「紫苑……」

 

俺は…………

 

悔しことに、そんな表情を見せる少女にかける言葉を持っていなかった。

 

 

「なぁに?」

 

「……

 

……サヨウナラ」

 

「うん。またいつか!!」

 

笑顔の少女と別れの挨拶を交わす。

渡したばかりのぬいぐるみの手をぶんぶん振り回して、少女がテントから俺を見送った。

 

 

こんなこと幻想郷の現象でしかない俺が祈れた義理はないけど、

どうか、彼女に幸せな未来が訪れますように。

 

 

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