異世界転生した俺が厄神様の厄になっていた件について   作:水無飛沫

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前書き、後書きの使い方に困る


陸、異変解決☆巫女²霊夢 ~後編~

 

「危うく天に召されるところだったぜぇぇぇ」

 

寸前のところで踏みとどまれた。

これはまさしく愛の力!! 雛、愛してる!!

 

戻ってきた視力で周囲を見回してみると、全員の視点が俺に注がれていた。

……ん?

 

「今、喋った……よね……」

 

にとりが俺を指さして唖然としている。

……人を指さすだなんて失礼な娘さんだな。

(主に痺れている足に)一撫で加えてやろうと彼女に一歩踏み出す。

 

「うひぃ、こっち来るな」

 

恐怖の表情を浮かべるにとりが雛の後ろへと隠れる。

(……うん?)

今までになかった反応だ。雛でさえ怯えたように、にとりを庇いながら一歩下がった。

霊夢はというと、お祓い棒(御幣)を握った反対の手にお札を携え、きつい表情で構えている。

 

「あんた……悪霊なの? 自然現象にしては随分と人間じみているけど」

 

(人間じみる……?)

 

改めて自分の体を眺めてみると、黒いモヤであることには違いないのだが、人の形をしていることに気づく。

これは……そう。

 

「パワーアップ!!」

 

「は?」

 

「数多の試練を乗り越えて、俺はついに喋れるようになった。人の形をとることができた」

 

「なんだっていいわ。退治するだけよ」

 

そう言って巫女が手に持ったお札を投げつけてきたが、それは俺の体をすり抜ける。

続いて発生した結界でさえ、俺を閉じ込めるには至らない。

 

「な、なんでよ。悪霊のくせに!!」

 

俺の本質は厄。そう、自然現象だ。

厄払いはできても、悪霊や妖怪退治のようにはいかない。

 

だからそう。博麗霊夢には俺を滅することは不可能なのだ。

 

「俺のターン!! パワーアップした俺の力を見せてやるぜ!!」

 

ニヤリと唇を吊り上げ、パチンと指を鳴らす。

すると戦闘態勢を取る巫女の後ろで、にとりが胸を押さえた。

 

「んっ、こいつまた……」

 

「いつまでも同じだと思うなよ? ダブルパイスラー!!」

 

「なんだって……まさか……お前……」

 

慌ててにとりが背中に手を持っていき、苦悩の表情をした。

 

「なんで……うまく、くっついてくれない」

 

「もうホックを外すなんて面倒なことはしない。切った、のさ。

今の俺にはそんなことだってできてしまう」

 

「いやぁぁぁぁぁぁ、気持ち悪いぃぃぃぃ」

 

室内ににとりの悲鳴が響く。

悲哀と恐怖と憎悪の入り乱れた声だ。

あぁ……この声を肴にさっきの酒を飲みたい。

 

「結構貴重品なんだからね!! そもそもなんであたしなのさ!!

今の流れだと巫女の……を切るところでしょ」

 

「いや、サラシを切るのは……申し訳ないしな」

 

紳士はそんなことしません。

 

「なんでよ!! ブラの方が申し訳ないと思いなさいよ!!」

 

そもそも腋からチラチラ見えているサラシを切ったら、腋から覗く小宇宙(コスモ)が大変なことになってしまいそうだという配慮もある。

この作品はR指定のない健全な作品なのです。

 

「この変態!」

 

にとりが鞄から小瓶を取り出し、中に入っている妙な液体を俺に向かって振りかけた。

 

「こ……これは……」

 

「あんたの大好きな、厄取りホイホイ携帯版よ」

 

「好きじゃない!! むしろ嫌いな部類だ」

 

「これで身動き取れないわね。さぁ出番よ、巫女さん!」

 

巫女がお祓い棒片手に仁王立ちしている。

満を持しての登場です。にとりに変わりまして、代打、博麗霊夢。

 

「バッチ来いやぁぁぁぁ!!!!」

 

巫女が俺の頭に狙いを定めて、フルスイング。

 

(それはピッチャーのセリフぅぅぅぅ!!)

 

粉々に砕かれ、幻想郷中へと俺という厄が霧散していく。

 

めでたしめでたし……なんだが、俺は別のことが気になってしかたがない。

 

(もしかして、幻想郷はピッチャーがバットを振る文化なの??

じゃあバッターは??)

 

あ、幻想郷で野球をする伏線ではありませんので、悪しからず。

 

 

 


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