異世界転生した俺が厄神様の厄になっていた件について 作:水無飛沫
「というわけで、あんたを消しに来たわ」
巫女がお祓い棒を肩にかけて、高圧的に宣言する。
「言うても巫女はん、あんたはん前に失敗してますやん」
「あぁん? 誰がなんだって?」
腕を組んでギョロリと斜め四十五度からの威圧的流し目(通称シャフ怒)
「いえ、なんでもないです」
つい委縮してしまう。
くそぅ、今度隙を見てあの脇に厄を挟んでやろう。
え……、厄を挟む?? 俺が挟まる……。
ちょっとイケない香りがプンプンするんだけど、描写的に大丈夫だろうか。
いや、やってやれないことはない。頑張れ、俺!!!!
バレないように、薄く伸ばした自分の一部を一路ユートピアへと……。
ゴォォォォ。
にとりの操作する扇風機(旋風くん)が俺の触手をダイレクトアタック!!
巫女の脇に到達する前に霧散してしまった。がってむ!!
「今日は助っ人が居るから、楽勝よ。楽勝」
自分の脇を賭けた高度な戦いに気づかなかった霊夢が、自らが入ってきた入り口を示すと、
そこには青い袴に緑色の髪をした巫女いた。
緊張した面持ちで中の様子をうかがっている姿が、なんだか小動物みたいで可愛い。
「あ……あの……よろしくおねがいしますっ」
霊夢と同じように脇を解放した巫女姿ではあるが、どちらかというと清楚な印象を受ける。
「厄さんには特に恨みはありませんが、消えてもらいます」
ぎこちない笑顔で宣言する緑の巫女は、名を東風谷早苗と名乗った。
その宣告だけで萌え死ぬに値するのだが、俺とて厄神さまの厄。
簡単に消えるわけにはいかない。
具体的には……
「ぷるぷる。ボクはいい厄だよぉ><」
演技力で乗り切るしかない。
さすがに巫女ふたりは分が悪い。
「え? あ、そうなんですか」
ほら見ろ。俺の完ぺきな演技力の前に、緑の巫女はたじろいでいるぞ。
「騙されないで、早苗。そいつは厄の風上にもおけない男よ!!」
赤い巫女が即座にフォローに入る。
……厄の風上ってなんだ?
「あと、どうしようもないスケベだね」
にとりによる援護射撃が俺に炸裂。
イラっとしたので、ホックを外しておこう。
「あらら、本当にどうしようもない人みたいですね。
では慈悲は不要ですね。
神の名のもとに消えてもらいましょうね。あぁ、久々に合法的に人……げふんげふん、厄を払えます」
うん? 最後の文は聞き間違えかな? なんか物騒な言葉が聞こえた気がする……。
「信じれば救われる……信仰は人のためにあるんだよね」
なんだか神に祈りたい気分だなー。
「人を不幸にする厄に、人権……厄権はありません」
それはあれだ。俺だけじゃなくてすべての厄に対する侵害じゃないのか?
(いや、今この世界において、全ての厄は俺なんだけれども!!)
とはいえここまで貶められてしまっては俺も黙ってはいられない。
今こそ、真の厄の力を使うべき時っ!!
さぁ、混沌(ケイオス)の滾々たる力よ、今こそ我より解き放たれんっ!!!!
「ひゃぁ!!」
早苗が素っ頓狂な声を上げてしゃがみ込む。
……さすがにやりすぎたか?
「何したのよ、あんた」
霊夢が訝しげな眼でこちらを睨んでいる。
「流石にブラのホックを外すだけだと芸がないと思ったので……」
「で?」
「パンツの紐をゆるめました」
一瞬時が止まったような沈黙ののち
「最低だな」
「最低」
「それは流石に……」
「うわぁぁぁぁぁぁ」
三者三様の声が発せられた。
「悪かった。俺が悪かったよ」
退治されそうだから自己防衛したのに、酷い言い草だ。
まぢゃみ。
仕方がないので元に戻してやる。
「絶対ゆるさなえ!!!!」
紐の強度が戻り気力も戻ってきたのか、守矢神社の巫女がメラメラとやる気を燃やしている。
現神人と謳われる巫女の実力は、霊夢とは違った方向に秀でている。
本気でヤバいかもしれない。
誰かに助けを求めようにも、ここに味方はいない。
にとりと霊夢はお茶を飲みながら「やっちゃえー」などと勝手な野次を飛ばしていて、
雛はハラハラした様子で成り行きを眺めている。
あまりのピンチさ加減に、俺は……
俺は自然と笑っていた。