数多の死傷者を出した新人王戦も、こうして終局を迎えた。どんな宴にも訪れるその瞬間を、ギルガメスとブレイカーが最後まで立ち続けて迎えられたのは望外のことだ。
降雪は広大な試合場を純白で埋め尽くそうとしていた。そのまぶしい中を深紅の竜ブレイカーは、駆ける。最後の最後まで止むことのなかった綿雪は花吹雪にも似て、雪原と化した試合場を往く深紅の竜を祝福しているようにも見える。だがその花びらは恐ろしく冷たく、少年主従の肌を容赦なく凍えさせた。暖かく安らげる勝利などというものは、彼らには夢まぼろしなのかもしれない。
それでも、深紅の竜は力強く胸を張って雪原を駆けた。やがて雪かきによって土色がむき出しになった道にたどり着くと、防寒着をまとった者たちが竜の左右に群がりはじめた。マスコミの関係者らしく、いずれもカメラなどの撮影器具を抱えている。そして彼らの間に割り込むように、ゴーレムたちが両腕を広げて彼らが道に乗り込むのを抑え込んでいた。その太い腕の隙間からでも、フラッシュは竜の装甲を照らすほど続けざまに浴びせられた。
深紅の竜はこういった風景の変貌に気付くと、一層胸を張り、首は一心不乱に真っ正面を見定め、何やら上品そうに歩を進めはじめた。……若き主人は、この優しき相棒がこんなとき、どういう態度を取れば良いのか教えてくれているように思え、相棒にならって胸を張るように努めたのである。
舗装された道にまでたどり着いたところで、左方へと延びる分かれ道からぬっと現れたのは、銃器にはさまれたあのビークルだ。屋根はサンドウィッチのパンを被せられたかのように雪がうずたかく積もっている。少々気掛かりなのは銃身に貼り付けられた封印が、降雪の湿り気でめくれかかっていることだ。
早速、全方位スクリーンの左方にウインドウが開き、エステルの涼やかな笑顔が映し出された。しかしながら切れ長の蒼き瞳だけは、依然として鋭利な輝きをそのまま残しているのが油断なき彼女らしい。ハッとなったギルガメスも屈託のない笑顔を浮かべて応える。
ただ、彼女が顔をのぞかせたのには別の理由もあった。
「少し、リラックスして? ブレイカーも、良いわね?」
合点しうなずいた少年は座席にもたれかかり、レバーを離すと両手をだらりと下げた。女教師がウインドウの向こうからスッと右手をかざすと、彼の額から熱が失われていくように感じる。
それを裏付けるかのようにコクピット内部を照らす青い輝きもまた、ぼんやり消失していく。額に輝く刻印が再び封じられたのだ。厄介なもので、少年が疲弊せず、意識がハッキリしているときは刻印もそのまま輝き続ける。得体の知れないものを人前にさらす危険は減らすのが無難だ。
こうして意気揚々とハンガーに凱旋したブレイカーとビークル。そこは既に簡素ながら表彰台の設営が済んでいた。表彰台の外周はコの字に柵で仕切られ、その外側に大勢の観客が取り囲んでいる。各選手のセコンド陣やマスコミ関係者、それにこの演習場に寄宿しているだろう一般兵士たちだ。
柵の切り開かれた側には誘導されたブレイカーが腹ばいとなり、ビークルが左脇に着陸する。キャノピーが開き、颯爽と飛び降りたエステルは腹ばう竜の胸元へと駆け寄っていく。
ギルガメスが胸部コクピット内から姿を現すと、静かなハンガー内にも響き渡るほど歓声が上がった。
少年はあまりの声の大きさに、頭がぐらつくような錯覚を覚えた。……愛弟子の異変に気がついた女教師はすぐかたわらに寄り添って「大丈夫?」と声を掛ける。少年はにっこり微笑んで応えるのみだったが、内心は首をひねっていた。相棒の雄叫びよりはずっと小さいはずなのに、この妙な疲労感は何だろうか、と。激闘は少年の心身を確実に消耗させていた。
ところでここに立てる状態で戻ってこられたのは、今のところ少年主従ただ一組ではある。次の組が戻るまでは相当、時間がかかると思われた。本大会における正確な死傷者のカウントにはもう少し時間がかかるそうだが、上位陣は潰し合いが苛烈を極め、かなりの者が死亡或いは再起に支障をきたす怪我を負ったという。
面子がそろわないのであれば致し方ない。少年の表彰は早々に行なわれた。来賓の共和国大統領が現れ、表彰台の前に立つと歓声は一層際立つ。少年は緊張しながらも、ひとり向かった。
大統領からは表彰状とメダル(※ゾイドウォリアーは定住していない者が多いため、記念品はトロフィーのようにかさばるものではなく、勲章やメダルが一般的だ。メダルには過剰な装飾が施され、相応に豪華である)を手渡された。だがこの辺りの記憶は、結果として疲労困憊の少年の脳裏の片隅にも残らなかったのである。
ギルガメスはとにかく一礼し、表彰台を降りるとくるり、後ろを向く。コの字に囲んだ柵の向こうにはブレイカーが腹ばいでかしこまり、そのかたわらにはエステルが他の観客同様、表彰に合わせて拍手している姿が見える。少年は胸を張って早足で戻ろうと試みた。
ところが、そこでおかしなことが起きた。風景が、ちっとも後ろへと流れていかないのだ。とっさに首をもたげた優しき竜。憧れの女性が血相を変えて駆け寄ってきたところで、彼の視界は暗転した。
前のめりに倒れ込んだギルガメスを、エステルは間一髪で受け止めた。淀みない動きで小さな身体を両手で抱え上げる。
一部始終を見ていた大統領は、両脇に立つ側近に声を掛けた。師弟の周囲にすぐさま警備の兵士が集まる。
エステルは心配げにか細く鳴くブレイカーには目配せしてなだめつつ(※封印プログラムの未実装を周囲に気取られてはいけない。それは竜も承知しているから女教師を信じて従うのみだ)、大統領に対して深々と一礼をすると、兵士のあとへ続いた。師弟は医務室へと案内されたのである。……表彰式のあとはマスコミ向けのインタビューをはじめ、様々なイベントが控えていたようだが、ギルガメスたちに関してはことごとく中止となった。
診察に当たった年配の軍医によれば、ギルガメスは過労によって失神したのであり命に別状はないとのことだ。そしてすぐさまストレッチャーが用意された。宿泊所まで搬送させるという。
そこそこ広い医務室の十台ほどあるベッドは、既に負傷したウォリアーで満杯だ。それに壁の向こうからもうめき声が聞こえてくる。軍医によれば、まだまだ患者は増えるそうだ。野戦病棟のようなこの光景には、さしものエステルも搬送の件は同意するよりほかなかった。
天井灯がまばらに点灯する廊下を、ストレッチャーは案外ゆっくりとした速度で搬送される。前後にはこの興行のために駆り出された一般の兵士が一名ずつ。そのあとを追うようにエステルが続く。他の部屋に人の気配はない。どの部屋を借りたゾイドウォリアーも大抵が戻っていないようだ。病院の中を歩くように薄気味悪いと、彼女は少々辟易した。
師弟の借りる部屋の前にストレッチャーが到着した。エステルが早速部屋のカギをふところから取り出そうとしたときのことだ。
このような事態でも表向き平静を装う女教師。そんな彼女の脳裏を、突如かすめた衝撃。
ハッとなってその彼方を振り向く。……廊下には、ついてくる者など誰一人としていない。気のせいかと思ったそのとき、ストレッチャーを搬送する二人の兵士がうめき声を上げた。まるで空気中の酸素が完全に失われてしまったかのような苦悶の表情を浮かべ、ばたりとその場に倒れ込む。
一方ストレッチャーの上で寝込む愛弟子も、深い眠りのまま眉をひそめ、まるで毒気にでも当てられたかのように小さな身体を小刻みに震わせる。息の乱れ、そして額に浮かぶ汗は高熱でも発したかのようだ。
女教師はとっさにストレッチャーに覆い被さり愛弟子の様子を厳しいまなざしで見つめると、すぐさまハンカチで彼の額をぬぐう。どうやらそれ以上のダメージはなさそうだ。
安堵の表情を浮かべつつも、彼女は確信した。尋常ならざる殺気が廊下の向こうから追いかけてきている。それも無防備で浴びてしまえばこの兵士たちのようにいとも簡単に失神してしまうだろう、桁違いの気迫……!
やがてカツン、カツンと靴音が、向こうから響いてきた。まばらな灯りが作る影は、靴音の主の姿を良い具合に隠してしまう。だから美貌の女教師はサングラスをすぐさまコートの胸ポケットにしまうと、斬りつけるような眼光を廊下の向こうにまで投げかける。
眼光で暗闇が切り刻まれる間に、彼女はコートを脱ぎストレッチャーの方を一瞥、「ごめんね」とささやきつつ横たわる愛弟子の身体に覆いかぶせた。
そんな彼女の行為全般をあざ笑うかのような高笑いが、廊下の向こうから聞こえてくる。
エステルの背筋を、電気のように走る悪寒。ハッと切れ長の瞳を見開く。吐き気をもよおすほどの悪意は、彼女の胸の奥底に眠るものを否応なしに掘り起こすものだ。
高笑いはそんな彼女の胸中をも見透かすように、廊下一帯に響き渡る。
「アッハハハ、千年前もギルガメス、千年後もギルガメス、か」
影の中からぬっと現れた、金髪銀瞳の美少女。彼女の眼光もまた鋭く闇を切り裂き、空気まで震わせる。
エステルは息を呑んだ。きっとその瞬間の表情を今は眠っている愛弟子が目の当たりにしたら、彼女はこんな表情をするのかと絶句するほど、この美貌の女教師は信じがたい事態に慄然としていた。
だが彼女はその性分ゆえに、大きく息を吐いて半ば強引に平静を取り戻すと、努めて抑えた口調で切り返した。
「『ブライド』、今になって目覚めるとはどういうつもり?」
その名を呼ばれた美少女は銀色の瞳をカッと見開き、憎悪でぎらつかせる。
「ほざけ、この裏切り者が!
我らが悲願のために貴様は必ず葬ってやる! そして……」
『ブライド』と呼ばれる美少女が何か言いかけたとき、エステルはこの廊下を怒涛の勢いで駆けめぐるもう一つの殺気を直感した。……言い放つよりも早く、彼女の長い足が天井めがけて右、左と蹴り上げられる。
エステルの足元に落ちたのは、銀色のかたまり。三発目の左足の蹴り上げにはさすがに反応し、ゴムまりのように廊下の向こうへと飛び跳ねる。
かたまりは美少女の足元まで逃げおおせると、人の大きさほどもある獅子の姿に変貌して低く吠え立てた。その様子に『ブライド』は鼻で笑う。
「カエサル、貴様もなまったな」
半身で構え直したエステルは、暗がりにきらめく銀色の獅子をにらみつけた。
「オーガノイドユニット! そんなものまで……」
「そうだ。裏切り者の貴様は持たぬ、ユニットだ。
なまっていても、二対一だ」
廊下の向こうから、一歩一歩、ゆっくりした足取りで美少女が、獅子が近付いてくる。
エステルは息を整えつつ、両者に眼光を浴びせかける。その間にも、どうすれば最悪の事態を回避できるか思案を重ねるが、一向に名案は浮かばない。
徐々に間合いが詰まりはじめたそのときのことだ。
「お待ち下さい!」
美少女らのずっと背後の方から、思わぬ助け舟がよこされた。
無骨な鎧をまとった兵士の集団が闇の中から押し出されるように現れた。そのひしめきぶりから、二十名以上は確実にいるだろう。最前列の者は小銃を構え、銃口を美少女の方へと向けている。
美少女は忌々しげに舌打ちした。
「どういうつもりだ?
もう数分、我慢すれば、貴様らの野心が満たされるまでの時間は大幅に短縮されるのだぞ……ドクタービヨー、それにジジイ」
鎧の兵士たちは二手に分かれた。その間から現れたのは血相を変え息も絶え絶えの白衣の男性と、勲章だらけの軍服をまとった初老の男性だ。
エステルは白衣の方には心当たりなど当然ないが、初老の方はついさっき、遠目に見かけたことをすぐに思い出した。……その男性の方が口を開く。この緊迫した場面でさえ微笑みを絶やさぬ表情は不気味ですらある。
「古代の姫君よ、おやめ下さい。
いかにあなたが最強にしてもっとも麗しかろうとも、不意打ちでは少年もなびきませぬぞ?」
男性の言葉を聞いた美少女は、実に不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。ため息をつくと、軽く右手を振って銀色の獅子に合図をする。
「カエサル、行くぞ。
裏切り者エステルよ。貴様の命も愛する者も、しばらく預けておく」
そう告げると、銀色の獅子を従えつつ二手に分かれた鎧の兵士たちの中に入っていく。
そのすぐあとを白衣の男がついていき、初老の男性は深々と一礼をしてその場を去った。小銃を構えていた鎧の兵士たちは、数名がストレッチャーを搬送していた失神中の兵士二人を抱えると、最後までエステルの方に銃口を向けたまま後に続いた。こうして再びこの廊下にも、もとの静寂が取り戻されたのである。
そこまでの一部始終をエステルは身構えながら見つめ続けていた。連中の気配がこの寄宿舎から消えるまで注視をやめず、ようやくその気配が完全に失われたところで、彼女もまた特大のため息をついた。物凄く憂うつそうなため息だ。
ギルガメスが起きたとき、狭く細長い室内は薄暗かった。
すぐにゾクゾクと、寒気を感じる。寝汗でTシャツがびしょ濡れだ。それ以前の問題として、身体中が妙にべたつく。
しばらく上半身を起こしたままの姿勢でボオッとしていたが、そのうちにこの細長い部屋のずっと向こうが青白くまたたいていることに気がついた。それとともに、ささやきが聞こえる。品のある女声は聞き慣れたもの。
「……ちょっと待ってね、起きたみたいだから」
床を踏む音とともに、近付くまたたき。エステルは寝ぼけまなこのギルガメスの前に膝をつくと切れ長の瞳を細めた。黒のタンクトップに白のパンティーという出で立ち、黒髪は乾かしたばかりのようで何とも艶やか。つい先ほど、身体を洗ったばかりなのだろう……と、ぼんやり考える程度に少年は寝ぼけている。いつもならそこでどぎまぎするはずなのだが。
「おはよう。今ね、ブレイカーと連絡を取ってたところよ。目を閉じて」
うながされた少年は言われるまま、正座でかしこまると両手で膝をつかみ、円らな瞳を閉じてみる。
するとどうしたことだろう。額がふわりと、毛布でもかぶったかのように少し暖かくなってきた。
何が起きているのだろうか。恐る恐る薄目を開けてみた少年は、のどから心臓が飛び出るのではないかと思うくらい驚き、全身を強張らせた。眠気など一気に吹き飛んでしまったのだ。
憧れる女性の端正な顔が、文字通り目と鼻の先にあるではないか。刻印の青白い輝きに淡く照らされ、一層彫り深く見える。……彼女もまた正座し、身を乗り出して少年の額に自らのそれを重ね合わせていた。切れ長の瞳は閉じたまま、若干眉間にしわを寄せている。
「ギル、集中して?」
少年はあわてて円らな瞳を閉じる。数秒もすると、まぶたのすぐ上を幾条もの閃光が駆けめぐるような感触を覚えた。……そして不意に広がった光景はやけに懐かしく、ギルガメスは胸をなで下ろす。
だだっ広い風景は真っ暗闇、点在する非常灯の白い輝きが鋼鉄の壁と舗装された床、それに至るところに横たわるゾイドをぼんやり浮かび上がらせることで、ようやくそこがハンガーの中だということがわかった。だが肝心なのは、この光景が日頃よく目にする全方位スクリーンから見たそれに酷似していることだ。少年が視線を移すと暗視機能が働いて、その向こうがより鮮明に見える。
少年は、憧れの女性が何を見せてくれているのか何となく理解できた。だからこの光景を見せる大元に声を掛けてみる。
「ブレイカー?」
胸元がくすぐられるような感触とともに、耳元に歓喜の鳴き声が聞こえてきた。思わず口元が緩む少年。
「昼間は、お疲れさま」
少年の語りかけに応えるかのように、胸元に伝わる優しい感触。きっと彼の相棒は、己が胸に被さるコクピットハッチの辺りを鼻先や両手でなでさすっているに違いない。もしそこに少年自身がいたら、めちゃくちゃに愛撫されていることだろう。
「……ブレイカーのおかげで、生き残れたし、勝ち残れた。本当に、ありがとう。
あと、最後の最後まで立っていられなくて、それだけは本当にごめん」
左右に動く視界。気にするな、とでも言いたげに、柔らかな鳴き声が聞こえた。少年は胸が一杯だ。
それきり、互いは無言となった。……それで十分だった。今の状態でも互いの息づかいさえしっかりと伝わっている。この静寂を主従はひとしきり楽しみ、そして。
「また、明日ね。
今は休んで、明日は一緒に朝陽を見よう。疲れが抜けたら、一緒に走ろう。じゃあ、お休みなさい」
耳元に甲高い鳴き声が聞こえ、そしてまぶたの下に広がる光景は暗転した。額の暖かさがスッと抜けていく。
もう良いのではないか。少年は薄目を開けてみる。
少年の額から離れた女教師エステルの端正な顔立ちが依然、目の前だ。瞳は閉じたまま、刻印は青白い輝きが徐々に消失していく。それとともに少年の視界に飛び込んできたのは、彼女のきりりと締まった唇のふくらみや黒のタンクトップの胸元からチラチラのぞく豊満な谷間だ。少年はあわてて円らな瞳を伏せると、両膝を強く鷲掴みする。
姿勢を正し、ゆっくり切れ長の瞳を開けたエステルは恐縮する愛弟子の姿に苦笑した。……ただ、細めた瞳の奥底には行き先の定まらない奇妙な輝きがにじんだのは事実だ。愛弟子はそれが何を意味するのか、まだわからない。
彼女は苦笑を微笑に変えてささやいた。
「お疲れさま。あの子、すごく心配してたから、これで安心するでしょうね。
シャワーを浴びてきなさい。食材は残りものばかりだけど、ささやかながらパーティーといきましょう」
見れば向こうには、試合前日と同様に床にテーブルと座布団が設置されている。テーブルの上にはバゲットと食材が並んでいるのも同じだ。腹が鳴り、唾液がにじんでくるにつれ、ギルガメスは試合が本当に終わったのだとようやく実感できた。
一転、晴れ渡った翌朝の夜明け前。一行は定期便に乗り込んでそっと演習場を離れた。
深紅の竜ブレイカーは昇る朝陽に追われ消え入りそうな星くずをちらりと見上げたが、すぐにグスタフの平台車の上にうずくまった。その胸部ハッチ内には行きと同じように、この優しき竜が愛する師弟がすやすやと寝入っている。彼らをその胸に抱き、自らもしばしの眠りにつくことで、ようやくあの激闘からの生還を噛みしめることができるのだ。もうすぐ、夜が明ける。