魔装竜外伝 完全版   作:◆.X9.4WzziA

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4. 紅蓮の章(4)

 竜と獅子とが死闘を演じる間、女教師エステルの命運はいかなる決着を見たのか。

 骨鎧の獅子ライガーゼロ三匹が、飛び掛かり、滑り込み、腹部の大砲を発射する。その間を、ビークルは際どくかわし抜けていく。

 コクピット内のエステルは汗をかきこそすれ、表情は冷静そのものであった。眉間に若干、しわを寄せてはいるものの、これはきっと自分自身の安否とは別の要素に対して生じたものに違いあるまい。……何しろ、先ほどからのノイズはますます音量を増し、もはやまともに愛弟子と連絡できない状態にある。

 キャノピー越しに三匹の獅子の動きをにらみながら、コントロールパネルのモニターに何度も視線を映す。……モニターには赤い三角形の矢印を中心に、三つの白い光点が衛星の軌道のごとく動き回るさまを映し出していた。あまりにも規則正しく動き回るその様子に、女教師は鼻で笑った。

 淀みなく続く、三匹の攻撃。ところが何度目かの飛び掛かりの最中、突如ビークルは急上昇した。

 骨鎧の獅子たちに訪れた一瞬の間は、呆気に取られた証。だが、彼らにしてみればこれは好機だ。なるほど、はるか上空にまで逃げおおせればいいのだろうが、所詮ビークルの速度では獅子たちに対抗できるはずもない。

 すかさず跳躍、天を衝く獅子たち。三匹の爪が勢いよく伸びて捉えんとしたところで、頭上の標的は突如、空よりもまぶしく輝いた。

 獅子たちは地面に叩きつけられ、雪と泥のしぶきを飛ばす。激しい地響きを立てながらも、連中はすぐさま立ち上がって虚空をにらむが。

 彼らのはるか頭上では、光の球が太陽と見紛うほどの輝きを解き放っている。Eシールドだ。

 女教師のかぶるヘルメットとシールドの隙間から青白い輝きが漏れ出し、狭いビークルのコクピット内を照らしつけている。彼女はこのときとばかりにコントロールパネルを素早くいじる。

 輝きは、ほんの数秒で弾け、消失した。ところがその直後、獅子たちはあわてて逃げ出したのだ。光の球が弾けたと同時に、無数の鬼火が射出され、獅子たちに襲いかかる。ビークルをはさむ銃器に装備された誘導弾だ。

 無数の鬼火は異様な軌道で獅子たちに群がり、ついばんでいく。爆炎に包み込まれ、苦しそうにもがく獅子たち。

 そのはるか頭上で、一発、また一発、鳴り響く銃声。

 ビークルのコクピット内では、女教師の着席する座席の後方から物干し竿のようなアンチゾイドライフルがぬっと伸び、装甲の外にまで銃口が突き出ていた。グリップを握る長い指には震えなど見受けられない。

 標的は、獅子たちの腹部・ゾイドコア。銃声が無様な断末魔をかき消し、この場に静寂を取り戻すまでものの数分もかからなかった。……あくまでも、この場では。

 モニターより導き出されたゾイドコア反応の停止を確認し、エステルはヘルメットのシールドを持ち上げる。先ほどより、眉間のしわはずっと深い。

 ノイズが止んだのはこのときのことだ。女教師は我に返ると左右を見渡す。はるか彼方で仰向けに倒れた深紅の竜を見つけ出すと、彼女はハッと息を呑んだ。

 やや離れたところにあって勝利のがい歌を唄う青い獅子は、うずくまった。頭部を覆うオレンジ色のキャノピーが開いたとき、怒りに震える女教師エステルの切れ長の瞳は斬りつけんばかりの鋭い輝きを放った。

 

 ギルガメスが再び円らな瞳を開けたとき、真っ暗なコクピット内に一瞬慄然となった。だがこの直後、計器類が明滅し、全方位スクリーンが映像を表示しはじめるに至って、相棒が意識を取り戻したことに深く安堵した。

 だが、もっとまずいことにも気がついた。コクピット内がこんなにも真っ暗ということは、己が額に輝くはずの刻印が消失していることを意味する。自分自身もほんの数秒だが失神していたに違いない……。

 そして、今、自分の身体が逆さ吊りに近い状態にあることも。ハーネスで完全に固定された身体だが、ボサ髪やTシャツの裾は垂れ下がっている。相棒は、あお向けにひっくり返された状態にあるはずだ。

 すぐに立て直さなければいけない。相手の能力は常識外だ。少年は周囲を見渡しささやいた。

「ブレイカー、大丈夫?」

 すぐに相棒の甲高い鳴き声が聞こえたものだから、少年の表情は少し緩んだ。が、それも一瞬のこと。相棒は低く、低くうなり声を上げている。

 その対象を少年は認識できなかった。……無理もない、あお向けにひっくり返されたので下半身側が青い獅子の側に向けられている。だがすぐに全方位スクリーンの真っ正面にウインドウが開くと対象を映し出した。ウインドウの左右に後方を示す矢印が明滅している。

 ぬかるんだ荒野を走ってきたのは、人ほどの大きさしかない銀色の獅子。だがその背中には金髪銀瞳の美少女がまたがっている。一糸まとわぬ姿で、耳上に束ねた金髪をたなびかせる姿は妖精にも見紛うが、大きな銀色の瞳が狂気をはらんでいるのは明らかだ。

 獅子にまたがる美少女は、高らかに笑いながら急速に接近してくる。すぐさま懸命に尻尾で払いのけんとする深紅の竜。

 この小さな銀色の獅子はノミのように跳躍した。一体、自分の身長の何倍飛んだのか。あっさり竜の尻尾に飛び乗ると、そのまま胴体に乗っかり、怒涛の勢いでコクピットの真っ正面にまで回り込む。

 深紅の竜は両腕を振り上げる。そのまま打ち付ければ、全て解決するに違いない。

 ところがその場に降り立った美少女は微動だにせず、彼女も同時に細い両手を上げてみせた。額より金色の輝きがほとばしると、竜の両腕は至るところから火花が吹き出す。感電でもしたかのように、竜の両腕は力なく地面に落ちた。

 鼻で笑った美少女は、両腕を降ろすと一転、低く叫んだ。

「カエサル、やれ!」

 美少女のすぐ後ろで、その名を呼ばれた銀色の獅子が見る間に液体と化していく。意志を持つかのようにうごめく液体は、コクピットハッチの隙間に流れ込んだ。バチバチと火花が上がり、空気の抜ける音ともに固く密閉されていた内部がさらけ出されるまで、さして時間はかからない。

 逆さまのコクピット内に足を踏み入れた美少女は、口元も抑えず高らかに笑い出した。

 真っ正面には、彼女の獲物が確かにいたのだ。ギルガメスは逆さ吊りとなったまま呆然としている。ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、彼女は一歩一歩近付いていく。

 目前にまで接近した美少女は、ふと眉をひそめた。

 風を切る音ともに、彼女の眉間めがけて伸び迫ったものがある。ギルガメスの右手にしっかりと握りしめられたそれは、あの、ゾイド猟用のナイフだ。少年は練習道具そして御守りとして、足元の棚の中に着替えとともにいつも忍ばせていたのだ。

 起死回生の一撃は、しかしながらいとも簡単に封じ込められた。美少女のたった二本の指が、ナイフの切先をはさんで動きを止めている。そのままあっさりと払われたナイフは、本来は天井の役目を果たすはずの床の片隅に転がった。

 その機を逃すはずもなく、美少女は少年の両手首をガッチリとつかみ、ひねり上げる。

 悲鳴を上げ、苦悶の表情を浮かべるギルガメス。こんな細腕を力で押し返すことさえ、かなわないのか。だがそれでも、円らな瞳だけは怒りに満ち満ちて目前の強敵をにらむのをやめない。

 そんな少年の瞳をまじまじと見つめた美少女は高らかに笑って毒づいた。

「アッハッハ。心だけは折れぬと誓ったつもりか?」

 少年は、答えない。返答に窮したのは事実だが、下手な返事は一層つけ込まれる。

 そんな胸の内を見透かすように鼻で笑うと、美少女は小さな顔を近付けてきた。……今や少年の目と鼻の先だ。

 彼女はしばらく逆さ吊りの少年の表情を眺めていたが、それもほんのわずかな時間だ。浮かび上がった微笑みは淫らでさえある。

「ギルガメスよ、教えてやろう。敗北の最たるものはな……」

 見開かれた銀色の瞳に、少年は釘付けになった。身体に、力が入らない。近付く彼女の顔を払いのけたくても指先一本、動かない。声も出ず、まぶたも降りない。よもや魅入られてしまったのか。

「憎き仇(かたき)に、溺れることよ」

 そう、ささやくと美少女は逆さ吊りの少年の頭を両手でつかみ、一気に唇を寄せた。

 彼女の舌は少年の唇をこじ開けると、のたうち回るヘビのように彼の口内をまさぐり、舌に絡みついていく。

 ギルガメスは声も出せず、両手で払いのけることもできぬまま。いつしか脳裏がぼやけてきたことに気付き、愕然となった。かつて経験したことのない絶望感は、同時に想像を超えた恍惚を彼にもたらしている。少年の円らな瞳からはいつしか涙があふれ出てきた。

 やがて快楽のヘビがするりと口内から逃げおおせていく。

 少年の円らな瞳は輝きが失せ、唇を閉じる力も失われている。この狭い室内からは美少女が解き放つものを除き、一切の輝きが失われたのである。

 美少女は口元のよだれを右手の甲で拭くと、一転、野獣のように銀色の瞳をぎらつかせた。彼女の細腕は少年の身体を固定するハーネスにかかる。その先のことを済ませるには邪魔なこの器具は、メキメキと音を立てはじめる。

 そのときのことだ、何とも鈍い音がコクピット内に響き渡ったのは。

 音と同時に全身をよじらせた美少女。苦悶と憎悪の表情を浮かべながら背後を振り向こうとする。

 ちらりと見えたその姿に、美少女の血液は沸騰しかかった。彼女の背後に仁王立ちになっていたのは、あの憎き、憎き蒼き瞳の魔女だったからだ。彼女が外したヘルメットは、そのまま鈍器として美少女の後頭部に叩き落とされたのである。

 ヘルメットを脇へ投げ捨てた魔女エステルは、凍えるほどに冷たい眼光を解き放ち、破廉恥に及ぶ金髪銀瞳の美少女をにらみつけている。それに、青白い刻印の禍々しい輝き。

「エステル、貴様……!」

 そう言いかけたのも束の間。首根っこをガッチリとつかまれた美少女は、そのままボールのようにコクピットの外へと投げ飛ばされた。すぐそのあとを銀色の獅子が追いかけていく。

 魔女エステルはすぐさま外に躍り出る。その脇には物干し竿のように長いあのアンチゾイドライフルが置きっ放しだ。すかさずそれを両手に取ると、一発また一発と狙い撃ち。

 長い両足を踏ん張って着地した美少女。そのすぐ後ろでは銀色の獅子カエサルがたちまち液状化してカーテンのように広がり、障壁を築き上げた。

 水面に波紋が広がるかのように障壁は震え、どうにか魔女の正確な狙撃をしのぐ。その間、美少女は何十メートルも先に逃走していた。障壁はもとの獅子の形状に変貌、追走をはじめる。あっという間に追いつくと、彼女の足元にまで潜り込む。ふわり、彼女は跳躍し、馬乗りとなった。

 かくて逃走する獅子と美少女。その向こうでは異変を察知した青い獅子が駆け寄ってきたところだ。目前にまで到着すると青い獅子は頭部を伏せてコクピットへの搭乗をうながす。……たちまち青い獅子の頭部に駆け上がった銀色の獅子。美少女はひらりとコクピット内に飛び移る。銀色の獅子もあとに続き、美少女の足元に潜り込むとすぐさま液状化してコクピット内に同化していく。

 一方、このふしだらな宿敵を追い払った魔女はアンチゾイドライフルを急ぎ折りたたむと、荒い呼吸を繰り返しつつ、額に長い指を当てていた。弱まる刻印の輝き。先ほどまでの憤怒の表情から、女教師としての柔らかな表情を取り戻すと、すぐさま振り向いて天地反転したコクピット内に乗り込み、愛弟子のもとへと駆け寄っていく。

 逆さ吊りになったままのギルガメスは虚ろな瞳。両手はだらりと下がり、力がない。

「ギル? ……ギル!?」

 懸命に呼びかけるが、反応がない。唇を噛んだエステルはすぐに真下に向かって叫んだ。

「ブレイカー、ハッチを閉めて! 身体を戻して!」

 鳴き声を絞り出した深紅の竜。ハッチの方はすぐに閉じられる。だが体勢の方は、両腕を少しもがくものの、変化が見られない。もがけないのだ。先ほどの美少女の攻撃がいまだ効いているようで、大きく身体を動かすことができない。

 だが数秒も経ずして、コクピット内がぐらりと傾いた。女教師はとっさに惚けたままの愛弟子の身体にハーネスごとしがみつく。

 深紅の竜ブレイカーは右の鶏冠と翼だけを伸ばして、身体を傾けていた。蒼い炎を噴き出し、どうにか身体をごろりと横倒し。そしてもとのうつ伏せに戻すと、足元をふらつかせながらもどうにか立ち上がる。

 エステルはうまくハーネスにしがみつきながら天地の反転に合わせて身体を動かす。ヘルメットやナイフ、ライフルがゴロゴロと転がってくるがそれもどうにかかわしてやり過ごし、依然として放心の解けぬ愛弟子の足元にすがりつくような状態になると、どっとため息をついた。

 その間にも、深紅の竜はそばに置いてあったビークルを拾い上げ、両腕に抱えたところだ。だが突然、足元の泥が爆ぜる。

 首をもたげた竜の視線の先には、あの青い獅子が悠然と立ちふさがっていた。

 と同時に、コクピット内に響き渡るノイズ。だが先ほどまでと比べて何度か音切れがする。エステルは直感した……ノイズの発信源はカエサルと呼ばれたあの銀色の獅子だ。彼女の正確な狙撃によるダメージは一時的にせよ、ノイズの支配力を弱めている。

「逃げられるつもりか!」

 ノイズに割り込んで、美少女の怒鳴り声が届く。

 このとき、どうにか完全に復旧した全方位スクリーンの左方にウインドウが開き、鳥瞰図が表示されたことはさすがに美少女の方には察知できぬことだ。その内容を見たエステルは切れ長の瞳を見開きつつフン、と鼻を鳴らす。

 にらみ合う、竜と獅子。両者の距離は竜の体格にして四、五匹分程度しかない。

 泥が、爆ぜた。

 深紅の竜は強く地を蹴り、反時計回りに旋回した。まともにやり合えるわけがない以上、最善の策は後ろを見せて逃げ出すことのみだ。鶏冠を逆立て蒼き炎を吹き出し、桜花の翼を広げて、泥の波濤とともに退却を目指す。

 ところが青い獅子もまた、地を蹴り旋回したのだ。互いの尻尾が背を向けた形。……そのまま、またたく間に獅子の頭部を光の壁が覆う。

 獅子の眼前に襲いかかってきたのは、あの太い光の槍衾(やりぶすま)だ。ひとたびは獅子の巨体を呑み込むが、程なく閃光の消失とともに、のたうち回る電流のヘビを払いのけつつ光の矢尻をかぶった獅子が雄叫びを上げる。

 ガン、ガンと美少女は、コクピット内のコントロールパネルを殴りつける。あの美貌がどこへ行ったのかとばかりに白目を剥き、怒鳴り散らした。

「ふざけた真似をしてくれるなぁ! 貴様か、水の総大将というのは」

 槍衾(やりぶすま)が放たれた方角には、銀色の竜ゴドスの群れが整然と隊列を組み、あの荷電粒子砲を発射する長い槍の穂先を獅子に向けている。先ほどギルガメスたちを襲った一団の倍以上はいる。ざっと五、六十匹はいるのではないか。

 群れの中から現れた、水色の竜一匹。やはり槍をたずさえている。……その頭部・オレンジ色のキャノピー内ではあの異相の男が落ちくぼんだヤモリのように大きな眼で青い獅子を凝視している。極めて、無表情。

「ギルガメスは逃げたか……。やむを得ん。

 貴様も刻印の持ち主だ。ここで死んでもらう。惑星Ziの、平和のために!」

『惑星Ziの平和のために!』

 水色の竜が槍で天を衝くと同時に、銀色の竜たちは吠え叫び、一斉に構えた。同時に回転をはじめる槍の穂先。束ねられた長剣と長剣の間に電流がうねる。

 美少女は鼻で笑った。

「フフフ、話しに聞いた通りだな。理路整然と殺しにかかる。

 しかしあいにくだが、おまえたちと戦ってもつまらん……ほら、出番だぞ」

 彼女のひと声に応えて、彼方のまだ残る雪の中から現れたのは一台のビークルだった。軍用のスマートな流線型の周囲に何やら得体の知れない装備がゴテゴテと取り付けられている。ビークルは青い獅子と銀色の竜の群れとの間にするりと割り込んだ。

 上部のキャノピーがせり上がり、中から立ち上がったのは防寒着で全身を固めた中肉中背、黒ぶちの眼鏡をかけた男だ。その風貌、きっと白衣がよく似合う。

 眼鏡の男に対し、水の総大将は厳しいまなざしを投げかける。

「ドクター・ビヨー、黒幕は貴様か」

 眼鏡の男は寒そうにしながらも笑顔を見せた。ふてぶてしくもあり、とぼけているようにも見える。

「いやいや、私は使いっ走りにすぎませんよ? それよりほら、ご覧なさい。委任状ですよ。

 あなたのゴドスのカメラでもよく見えるでしょう?」

 眼鏡の男ドクター・ビヨーはそう言って座席から何やら取り出し、両手で掲げてみせた。

 巨大なバインダーの中身が見開きの状態で晒されている。左右とも文書が綴じ込まれており、右側にはヘリック共和国の国旗が印刷され、左側には数行の文書と手書きのサインが記入されている。

 水の総大将はヤモリのような眼をひときわ大きく見開いた。キャノピー上で極限まで拡大された映像には「貸し与えた共和国軍所有ゾイドの繁殖と運用の一切を任せる」と記されているではないか。

 その中にはドクター・ビヨーの後ろに立つ青い獅子たちも含まれるのか。いや、それより問題なのは、このような代物を発行できる者は惑星Ziにおいてはただ一人しかいないということだ。即ち逆らえば、この恐ろしくも任務に忠実な男でさえ国賊とされる。

「総員、撤退」

 あまりにも不本意な指令を、それでもこの男は眉一つ動かさずにつぶやいた。

 思いもかけぬ言葉に一瞬、銀色の竜たちもざわめく。だがそれも数秒のことであった。……最後列の竜たちがきびすを返し、次々に追従する。

 しんがりを務める水色の竜はまじまじと青い獅子と眼鏡の男に視線を投げかけると、やがてゆっくりと旋回を開始する。

 美少女は意外そうに、彼方で爆ぜる雪と泥を眺めていた。

「感心したぞ、ドクター・ビヨー。

 まさか本当に、委任状一つで撤退するとはな」

 眼鏡の男はくしゃみを連発しながらも笑顔をのぞかせる。

「ハハハ、水の総大将は忠誠心の厚いお方ですからね。

 それより、追わないのですか?」

 美少女は一転、忌々しげに舌打ちした。

「あいつらが『墓所』に到達するまで時間の問題だ。次回に持ち越す」

 やがて純白の山々の中から、あの鋼鉄の海亀・タートルカイザーが浮かび上がった。

 結局は、青い獅子ブレードライガーもそれを確認してからきびすを返したのである。

 

 ホリゾントは青いまま、爆ぜていた泥が、やがて再び雪に変わる。

 深紅の竜ブレイカーは滑るようにひたすら荒野を駆け抜けていた。背負いし六本の鶏冠から吹き出す蒼い炎は盛大に雪を溶かし、足跡とともに雪原に道を刻んでいく。両手には銃器にはさまれたビークルをガッチリと抱え込んでいた。

 追走は免れないはずだ。だが優しき深紅の竜はそんなことなど気にしてはいられない。とにかく先ほどの戦場から離れてわずかでも立ち直る余裕を獲得しない限り、竜とその大事な者たちに明日はないのだ。

 それに、本当に心配なのは己を構成する鋼の身体ではない。優しき竜は己が胸元を、何度もちらりちらりと見やる。

 若き主人ギルガメスの円らな瞳は依然、虚ろなまま。レバーを握ることなど到底かなわず、座席に身体を投げ出しているのみ。

 魂の抜けたような少年のかたわらで、女教師エステルは何度も呼びかけ、揺さぶる。変化が見られずとも、何度も、何度も。額を、頬を汗が伝う。その汗も蒸発せんばかりに白い頬はすっかり紅潮していた。

「ギル、ギル、聞こえて!? ギル! ギル!

 ブレイカー、ハーネス上げて!」

 天井を見上げてエステルは叫ぶ。彼女の求めに応え、ギルガメスの身体を押さえつけるハーネスが持ち上がった。

 少年の小さな身体は座席から崩れ落ちそうになった。間一髪、長い両腕で女教師は受け止め、抱き寄せる。

 鼓動は、肌で感じ取れた。女教師の額に青白い刻印の輝きが宿ると、彼女はすぐさま少年の前髪をかき上げ、額に近付ける。切れ長の蒼き瞳はまぶたを閉じて、全神経を額の一点に注ぎ込んだ。

 やがてコクピット内に広がっていく輝きはぼんやりと、暖かい。

 この間、女教師エステルにとっての時間は停止していた。それが再び動くまで、何秒、何分を要したのかもわからない。

 女教師の口元に、軽く息が吹きかかる。彼女はハッと気がつき、瞳を見開き額を離した。

 目前の虚ろな瞳は、水面の波打ちが止んで映り込む月がもとの形を取り戻すように、緩やかな時間の経過とともに生気を帯びはじめた。

「エステル……先生?」

 愛弟子の小さな口から漏れた呼びかけを耳にして、女教師は笑顔と余裕を取り戻すはずであった。ところが。

 彼は突如、小動物のような悲鳴を上げた。抱きしめていた女教師を跳ねのけると、座席の上で赤子のように身をよじらせる。肌は青ざめ、恐怖に怯えて震え上がるばかり。

 尻餅をついた女教師。切れ長の瞳を丸くするが、愛弟子の異変がすぐに視界に飛び込んできた。

「見ないで……見ないで……」

 かすれ声で愛弟子はつぶやく。

 切れ長の蒼き瞳は、彼の意思に逆らうかのようにその小さな身体を凝視してしまった。

 両足を、懸命に抱え込もうとしている。垣間見えた、いびつに膨れ上がった股間の急所。

「汚いです。見ないで、触らないで……」

 うわ言のように、かすれ声は続く。

 こんなにも卑屈な愛弟子を目の当たりにしようとは。女教師は呆然となった。だが同時に、コクピット内で何が起きていたのか直感した。

(『ブライド』の仕業……!?)

 愛弟子ギルガメスはあの金髪銀瞳の美少女によって、魂が抜けるほどの屈辱的な性的快楽を味わわされたに違いない。そして彼にとっては何とも不本意なことに、その余韻はつい先ほどまでくすぶっていたのである。

 多感な、純粋な少年の内に秘めた獣性は、もっとも許しがたい存在によってさらけ出され、しかもよりにもよって、もっとも見せたくない者の前で露にしてしまった。少年を怯えさせるのは敗北よりも、死ぬことよりも無様な現実だ。

 女教師エステルは、自身の呼吸の乱れ、急上昇する脈拍を押さえようと何度も口で呼吸を繰り返す。だがやがて、それもままならない状態で意を決すると、怯える少年の上に覆い被さった。

「そんなこと、ないわよ! ないに、決まってる!」

 叫んで、細長い両腕で彼の小さな身体を抱きしめる。

 ハッと、ギルガメスは息を呑んだ。

 青ざめた愛弟子の右頬に、エステルの紅潮した右頬がすり寄せられる。

 呼吸、脈拍、そして心音。憧れの女性が発する様々な生を告げる音が乱れ聞こえ、少年の五体をかすかに震わせる。そしてその中でももっとも大きな音が、声となってささやかれた。

「聞こえる? あなたが無事だとわかっただけで、息も、脈も……。

 汚くなんか、ないわよ。私は、知ってる……」

 そうささやいて、強く、強く抱きしめるが、すすり泣きが混じって途中で声にならなくなった。

 それでも、少年の閉ざされかけた心に届くには十分だった。彼は改めて、自分を恥じた。さらけ出した弱さが憧れる女性までも傷付けてしまったことに。

 様々な音は静寂と折り重なって、この狭いコクピット内に束の間の調和を作り出す。

 どうなるのかとヒヤヒヤしながら己が胸元を見つめていた深紅の竜は、そんな調和を感じ取ってようやく胸をなで下ろしたのである。

 

 陽射しは少し、傾きかけていた。深紅の竜ブレイカーの逃走は続く。辺りが闇に呑まれるまでに、進めるだけ進むのだ。

 一応、全身の傷口はふさがりつつある。さすがは古代最強の一角を担うゾイドだ。だが己が負傷以上に、追撃が心配である。頼むから、同士討ちでもしていてくれと竜は願う。

 それに、若き主人にしたって立ち直れはしたが、万全にはほど遠い。しばらくは彼が憧れる女性に任せるしかないのが辛いところだ。

 さて竜の願いが込められた胸部コクピットハッチの中。

 ギルガメスはゾイド猟用のナイフを拾い上げると、まじまじと刀身を見つめていた。……一応、憧れの女性に扱いを相当習ったはずではある。だがあの魔物のような美少女には、全く通用しなかった。

(……いや、今は考えるのをよそう)

 思いを胸に秘め、今はそっと、鞘に納めた。

 それを合図に、自然とくしゃみが出た。二人分だ。

「ギル、着替えのシャツ、借りていい?」

 少年のかたわらでは女教師エステルが、体育座りで全方位スクリーンに広がる映像を眺めていたところだ。風景、鳥瞰図、様々なステータス……。しばらくは彼女が、愛弟子の耳目の役割を担っていた。その足元にはヘルメットと折りたたまれたアンチゾイドライフルを丁寧にそろえてある。

 少年は座席の下の棚にナイフを収めると、代わりに二着、引っ張り出して一着を彼女に渡した。……彼女はふと何を思ったのか、座席の真後ろに回り込んでから、漆黒のパイロットスーツのチャックに手をかけた。あんなことになった以上、さしもの彼女も気を遣わざるを得なかったのである。

 少年もそれを察し、何とももどかしい気分になった。ままならない、何もかも。彼は首を横に振って、さっさと着替えに入る。

 それにしても、落ち着きは取り戻せたものの何とも気まずい、間だ。

「あの少女は……」

「あいつは……」

 声がそろってしまった。師弟はかえって押し黙ってしまう。

 やがて先に、エステルがつぶやきはじめた。

「あいつはね……」

 ギルガメスはちらりと、横目で後ろを見る。

 女教師は脱ぎ捨てた黒のタンクトップで汗をぬぐっている。あわてて、正面を向き直した。

「あいつは、『家族』の仇(かたき)よ」

 少年は背筋が凍りついた。あの金髪銀瞳の美少女の口ぶりからして、間違いなく彼が憧れる女性のことを知っている。だがそんな因縁をいきなり聞かされるとは、予想していなかった。

 エステルは愛弟子の驚きを察したのか、座席の真後ろで着替えつつ首を横に振ると微笑んだ。

「でもね、それは気にしないで。

 あいつは……『ブライド』は捕らえられて、冷凍刑でトライアングル・ダラスの孤島に封じられたわ。仇(かたき)は取ったつもりよ。

 だからお願い。あいつの戯れ言には耳を貸さないで。どこまでも、自分の信じる道を進んで」

 こくりと、ギルガメスは正面を向いたままうなずいたのである。

 いつしか全方位スクリーンの前方に、雪で覆われた森林が広がってきた。いつしか右を見ても左を見ても稜線が白いとんがり帽子の連なりばかりに見えはじめた。樹海、と形容しても良いのかもしれない。少年は軽くため息をもらす。

 金属生命体ゾイドが闊歩する惑星Ziにおいて、平野部に森林は形成されにくい。しかもこれだけの規模だ。普段中々目にしない光景は、Zi人としては奇異に感じてもおかしくはあるまい。

 そのときのことだ、コクピット内にアラームが響き渡ったのは。師弟は一斉に、音がした全方位スクリーン左上の鳥瞰図に視線を投げかける。

 鳥瞰図には緑色の網の上に、うねって様々な形に変貌する赤い網が確認できる。

 少年の真後ろで、ため息混じりに笑い声がこぼれた。

「ようやく、たどり着けたわね。ブレイカー、もう一息よ、頑張って」

 深紅の竜は小気味良く鳴いて応えた。

 赤い網の隙間をぬうように、一本の青白い線が突っ切っていく。

「ギル、赤い網はね、レアヘルツが発生しているの。

 ここら辺はランダムで発生区域が変わっているから、それがちゃんと見えているブレイカーのようなゾイドでない限り、踏み込んだゾイドは狂って『おしまい』よ」

 青白い線に沿って赤い光点が進んでいく。深紅の竜は鶏冠も翼も閉じて、森林の中に入り込んでいった。青白い線は安全な道ということか。

 そして奇妙なことに、森林に入り込むと赤い網のうねりはピタリと止んだのである。

「そうなんだ。顔パス、まだ通じたのね」

 女教師は素直に驚いていた。どうやらこの辺り一帯を監視するシステムは竜か彼女のどちらかを認識したため、レアヘルツのうねりが落ち着いたようだ。

 ひとしきり、森林の中を竜は駆ける。と、そのうち奇妙なことが起きた。雪が爆ぜなくなったのだ。同時に、竜が地を蹴る音さえも鈍い土のそれから金属質の軽い音に変化している。

 ふと深紅の竜は立ち止まると、何を思ったのかその場にうずくまった。驚いて何ごとか口走ろうとする少年だったが、今度は全方位スクリーンが暗転した。

 何だこれは、と円らな瞳は何度もまばたき。いつの間にか、暗転した風景はぼんやりとした海藍色の床と壁を浮かび上がらせた。壁には何十メートルかおきに、竜が跳躍してようやく届きそうな位置に鋼の燭台が設置され、淡い輝きで辺りを照らしている。この廊下は恐ろしく広く、そして長い。竜が翼を水平に広げて、尻尾を伸ばして何匹分かも見当がつかない。

 そんな廊下の上を、深紅の竜がうずくまれるほど大きな鋼の板が滑って進んでいる。竜の方は勝手を知っているのか、一安心といった様子。

 どれくらい進んだのか、やがてガクン、と身体が沈むような感覚に襲われた。

 鋼の板は地下へと潜っている。円筒型の壁面にも延々と燭台が設置され、この地の底へと続く道を照らしている。

 それも何分か経過したのち、再び床が停止した。

 真っ暗な、広場。いや、広場と言うにはいくらなんでも広すぎるか。新人王戦のときに相棒が待機したあのハンガーが一体いくつ入るのかという規模だ。

 そびえ立つ高い壁のそこかしこに燭台がともったとき、少年はアッと息を呑んだ。

 辺りにはずらりと、金属生命体ゾイドの群れが整然と並び、身を伏せている。竜もいれば獅子や虎も狼も、果ては見たこともない形状のものもいる。数は一体……何匹いるのだろう。明らかに、百やそこらでは効かない数だ。

「このゾイドたちは、仮死状態よ。必要がない限り、眠りからは覚めないわ。

 こんなところだから、私たち古代ゾイド人はここを『墓所』と呼んでいるの」

 鋼の板は何分もかけて奥へ奥へと進んでいき、ようやく壁面に止まった。……そこには竜の体格にして数匹分ほどはある祭壇が設置されている。

 祭壇の上には何百体もの人間の像が居並んでいる。いずれもまばゆい金色や銀色に輝き、立っているものもあれば座っているものもある。

 深紅の竜はうずくまったまま低頭し、尻尾の先端を左右に振った。愛想を振ったとも言える態度だ。

 すると竜の態度に応えるかのように、中央に安置されてあぐらをかく金色の男性の像が、ひときわまばゆく輝きを解き放ったのである。

 竜の胸部コクピットハッチが開いた。中から師弟が現れ、竜の胸元の前に横並び。右で既に円らな瞳をますます丸くしている少年とは裏腹に、左の女教師はひざまずき、うやうやしく頭を垂れた。

 静寂は、輝く金色の像から発せられた声によって破られた。古代の楽器のようにやけに優雅な声だ。

『久しいのう、エステル。蒼き瞳の魔女よ』

「長老、お久し振りです」

 呆気に取られたギルガメス。像がしゃべったこともそうだが、この像のことを憧れの女性は知っているのだ。

 少年の左側で、エステルは苦笑する。

「ギル、あの方は古代ゾイド人の長老。古代ゾイド人の中でも抜群に能力の高い人は、あんな風に身体を金属化させて、限りなく寿命を遅らせることができるの」

 驚いた少年は、ぎこちなくも一礼を返した。

「えっと、ギルガメスと、言います」

『そうか、ギルガメスと申すか。そうか、そうか。

 遠い道のりをよく来なさった。

 お主がここへ来たのは、その額に眠る刻印が理由だろう?』

 顔を上げた少年の表情は驚きに満ちあふれていた。

「そ、そうです! 僕の、この、刻印は……!」

 優雅な声は、だがその調子とは打って変わって容赦なく少年の声をさえぎった。

『待たれよ。その質問、お主に答えるわけにはいかない。

 お主は、まだ若い。成熟したとは言えないからだ。……エステルよ』

 驚きと困惑が入り交じる少年の左側で、ひざまずいていた女教師は顔を上げた。

『お主に、全てを託そう。時が来たときに、全てを話してやるが良い』

 女教師の表情にもさすがに困惑の色が隠せない。だがすぐに気持ちを切り換えたのか、少年の両肩に触れると。

「ごめんね、あまり予想してなかったわ。

 今は、その、とりあえずこの場はね、お願い」

 話す本人がもどかしげな語り口で、彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。

 少年は不満だったが、今は笑顔を取り繕って返したのである。

 

 ギルガメスはひとまず竜の胸部コクピット内に戻った。竜の方も外部の音は完全に遮断している。それはそれで物凄く不満だったが、だが、と彼は思った。

(エステル先生を困らせたくはないよ。要は先生が認めてくれるようになるまで頑張ればいいだけだろう。頑張れ、ギルガメス)

 そう、心に誓って着席したのである。

 その間、全方位スクリーンはどこからともなく様々な機械とも、ゾイドともつかない小さな物体が代わる代わる、近付いてくるのを映し出した。竜の方は至って穏やかなものだから少年はいぶかしんだが、ウインドウが開き、ワイヤーフレームで構成された竜の身体が表示されると合点がいった。

 様々な物体は、先の青い獅子ブレードライガーとの戦いで負った傷を修復している。それに、油の補給。他にも様々な部位がいじられている。立派なオーバーホールと言って良い。……よく見れば竜の手元に置かれたビークルにもその手が施されているところだ。

 額の刻印が機能していなくとも、竜の安心し切った息づかいは十分に伝わってくる。それだけはギルガメスをホッとさせた。

 だがその一方で、と少年はスクリーンの真っ正面を見つめる。

 女教師は身振り、手振りを時折くわえ、何やら叫んでいるようにも見える。……いやな予感がする。口論でもしているのか。

 そんなやり取りもやがてひと段落したのか、勝手に胸部ハッチが開かれた。

 既に、竜の全身は修復をはじめとする手入れが行き届いた様子で、奇妙な物体たちは続々と闇の中へと消えていくところだ。

 笑顔で出迎えた女教師エステルの面長の顔には少し、疲れが見える。だが彼女は気丈に振る舞った。

「ギル、ごめんね、本当に。

 時が来たら、必ず全部、話すからね」

 少年は素直に首を縦に振った。今はそれで良い……と言うよりは、きっとここから出たら、それどころでは済まなくなる。それがわかっているから、今は良い、今は良い……そう、自分の心に念を押した。

 金色の像は再び輝き、優雅な声を奏でた。

『ギルガメスよ、済まなかったな。許してくれ。代わりに大事なことを教えておこう。

 ゾイドはのう、鏡みたいに乗り手の心を映し出すものだ。お主の駆るブレイカーはことさらに、それが顕著に現れる。それを肝に銘じて精進すれば、自ずと道も開かれよう』

 少年は円らな瞳を見開かせたが、やがて満面の笑みを浮かべると深々と一礼した。

 再び鋼の床は動き出した。水の軍団もあの青い獅子も簡単には追いつけぬところへ導き出してくれるという。それ自体には感謝の意を表したギルガメスだが、一方でエステルはどこか遠い彼方を見つめるような表情を何度も浮かべている。

「ごめんね。大丈夫よ、安心して。

 年寄りと小娘がしゃべったら、喧嘩腰なところも出てくるからね。そういうこと」

 胸部コクピットハッチ内で、座席のかたわらに寄り添いながら、女教師はそうささやいた。

 やがてまぶしい現実の世界が、目前に開かれようとしている。

 

 

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