ドンナ・ボンゴレの憂鬱   作:あきた百瀬

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麗しのボンゴレ

アルプスの近くにある重厚な大邸宅の一室

 

天蓋付きベッドに行儀悪く寝転がりながらチョコを頬張る女は近くに控えていた渋い顔をした和服の男に自分の忠臣とも言える人物を呼ぶように頼む

和服の男は黙って頷くと広い部屋で遊んでいた少年たちを呼び寄せるとすたすたと部屋から出ていった

 

困ったように笑いながらため息をついた女に少年が手を貸すと礼を言いながらゆったりと起き上がる

別の少年が寝乱れた髪をすかし、服の埃を落とすとゆったりとした動きで女はソファまで移動した

 

ベッドで適当に開けられたチョコレートを皿に並べ直した少年は慣れた手つきでこの邸宅にはミスマッチな急須を使うとこれまたミスマッチな湯呑み茶碗に茶を注いだ

 

「悪いわねえ薬研」

 

「それは俺っちじゃなくて獄寺の旦那に言ってやったほうがいいぜ大将」

 

「それもそうねえ」

 

女は湯呑み茶碗を片手にのんびりと過ごす姿といい口調といい老人じみているが顔立ちを見る限り20歳そこそこといった年頃に見える

 

「大将ったら全く急に供をしてなんて言うからびっくりしたよ」

 

「遠くに行きたくなったのよ、でもこれ以上は無理ね家が燃やされちゃうわ」

 

「ザンザスの旦那なら不在の間に燃やさず乗っ取りそうだけどな」

 

「雲雀さんがいるもの平気よ、修復費用が嵩むだけ」

 

「絶対に誰かしらが真っ青になるね」

 

可哀想にと赤髪の少年、信濃藤四郎は心にもないことを言った

自分の大将が良ければボンゴレのことなど信濃の知ったことではない

これは自分だけではなく男士たちの総意だった

 

「知らないわ」

 

ソファにもたれかかった女があっさりと言う

本当に知らないしどうでもいいと思っているようだった

 

世界一の規模と歴史を誇るマフィア ボンゴレファミリー

女こと沢田新奈は紆余曲折を経て10代目のボスに据えられた

界隈の人間なら一度はなりたいと望む地位だが当の新奈は残念ながら一度たりともなりたいと思ったことはない

身の安全さえ保障されれば、別の人間に譲りたいくらいだ

命をかけてまで辞めようとは思わないが気に入らないというのが事実だ

 

そもそも日本で生まれ育った新奈にとってヨーロッパでの生活はあまり好ましくはない

美しい街並みや歴史ある建物と芸術は好きだ

目的がそれだけなら熱意を持って生活を楽しめただろう

新奈は自分がかなり忍耐深く温厚だと思っていたが故郷から遠く離れたイタリアでの生活を半強制で送らされればそんなこと言ってられない

豪邸での生活も贅を凝らした食事も膨大なストレスの前には無に等しい

 

イタリアでの収穫は人に振り回されてきた新奈が人を振り回せるようになったことだ

 

というより今の今まで耐えすぎてここまできてしまったのだ好きなことをしたって良いじゃないかと気づくと憎たらしい父を解任しうるさいだけで役に立たない男を切り捨てると優秀な忠臣に仕事を任せてイタリアを飛び出したのは数ヶ月前だ

 

視点を変えればこの地位は素晴らしい

どんなところにも傘下のファミリーがいるから特別待遇だし金も湯水のようにある

元々美大志望だっただけあり芸術巡りを心置きなく出来るのは最高の気分だった

 

伴には初期刀を含め特に信頼している刀を連れてきた

 

本丸は気になるがオンラインで指示は出せるので問題はないし、ボンゴレは自分に害がなければ心底どうでもいい

 

いっそ滅んだら面白そうだと思ってたくらいだが流石に不在期間が長すぎたのか昨晩元家庭教師からお叱りを受けたので渋々といった感じでイタリアまで帰ってきたのが今日のことだ

 

ナポリにある本部を蛇蛇蝎の如く嫌っている新奈は別邸に入るとボンゴレの最低限の仕事を終え、審神者の仕事を始めた

政府からの報せを整理し、練度が高いため殆ど損害はないがわずかなダメージの蓄積を丁寧に手入れをすると短刀たちと遊んだり、お茶をしたりとまったりと過ごした

 

旅の荷造りを終わり次第、出立しようと思ったが流石に忠臣なら対して悪いと思い

挨拶くらいはしようと呼び寄せたのが先ほどのことだ

 

 

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