お父さんになったら部屋にサーヴァントが来るようになったんだが   作:きりがる

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 そろそろ、次話あたりで新しくキャラ入れたいなって思いながら現在作成中ですが、いつの間にかあの真面目な子が修復不能レベルで壊れ果てていた件。もうむりぽ

 でもそろそろ少しだけマスターちゃんとも絡ませてみたいし…。

 書き直そうとすれば色々面倒くさくなって来年になるだろうと思うけどいいよなって思い始めてきた今日此頃。


16 あきめたらそこで試合終了ですよ…?

 幾多の死線を越え、敗北を背負い、勝利を刻み続け、数多の世界を救い続けてきた。何百何千と殺し、何万何千万と救い、恨み、恨まれ、喜び、崇められ、救世主となったときもあれば、目的のためにまさしく世界を破壊する悪魔や魔王にだって成り下がった時もあった。

 

 この手は既に血に濡れて綺麗な所など在りはせず、武器の重みと冷たさ、そして命の軽さがへばり付き、微かに残った愛すべき者や頼れる仲間の温もりが前へと進む力を作り続けていた。

 

 化け物を殺すのはいつだって俺達人間だった。だからこそ、人間から英雄と呼ばれる存在になり、希望を常に人間という種に見せ続けねばならない。

 

 しかし、それはやはり、殺し奪い続けた命の数が英雄と呼ばせるのだ。戦いは終わらない。家族のために、愛する者のために、仲間のために、人のために、信念のために、希望のために、そして、自分自身のために。

 

 そうやって、あらゆる物を犠牲にし、あらゆる物を生み出し前に進み続けている。後に下がることは許さないと声なき声と見えない手に常に背中を押されながら。

 

「クソが……」

 

 だが、そんな俺も今回ばかりはもう、駄目かもしれない。

 

 ただでさえ体を酷使して疲れ果てているという状態であるのに、極限まで集中力を高めて技術を振り絞り、体を傷つけながら見えない先へと進み続けていたが、喜びと可能性を見せつけた瞬間…一歩、たった一歩で地獄とも呼べる絶望が身を襲う。

 

 どこまで進んだと思っている。

 どこまで勝ち進んできたと思っている。

 幾千幾万の戦いを超え、敗北を乗り越えて結果を出し続け、俺の人生は止まること無く…俺の世界は壊れること無く……。 

 

 生まれ落ち果てるまでの運命のように長い時を使い、あらゆる物語を数え切れないほどの世界に、時計の針が時間を刻むように刻み続けてきた。

 

 今回だってそうだ。終わりを迎えるために最善策を出し、実行し続けてきた。

 

 しかし…しかしッ!それでも俺は屈しそうになるッ!

 終りを迎えるはずなのに始まりが許してくれない。常に始まりという深淵が手を伸ばして俺の足を掴み、引きずり降ろそうとしてくるのだ。

 

 まさしく終わりがないのが終わり……これが、ゴールド・エクスペリエンス・レkッ……ではなく。

 

 本当に、今回ばかりは諦めてしまうかもしれない。久々だ、久々の感覚だ。

 

 ………駄目だ、このままの思考ではまさしく駄目になってしまう。体が疲れ果て、精神が病んでいるのだ。休息、息抜き…そう、気分転換だ。気分転換が必要だろう。

 

 だから俺は手にしていた物を手放し、相手を睨みつけ、その場に背を向けて立ち去った。

 

 待っていろ。

 

 次は必ず俺がこの手で終わらせてやる。

 

 必ず――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそったれ……なんなんだ、あれ…」

 

「あー、もー、巫山戯んじゃないわよ! どう足掻いてもクリアできないんですけど! なにあれ、嫌味? あのナレーション嫌味なの?」

 

「確かにあれはイラつく。集中と時間と慣れがものを言うんだろうなぁ……クリアは出来るだろうが、色々犠牲にしそうだぜ」

 

「もう限界に近いのですけれど…」

 

「限界はあるものではなく、自分で決めるものでござるよ」

 

「じゃあここで限界ということで」

 

「お前のメンタル脆すぎだろ。剣心に謝れ」

 

 そうぶつくさと吐き捨てるように文句を言いつつ、糖分を寄越せとばかりに邪ンヌと二人で食堂の一角にて、負のオーラを撒き散らしつつパフェをぱくついていた。割とゲームをしているが負けず嫌いのくせにあまり保ちが良くない邪ンヌと、廃ゲーマーの俺が辟易としつつグダっているのだ。

 

 今回のゲームは精神的に来る。しかもマウスで操作しているのでいつものコントローラー操作とは違い、あまり慣れていない。とはいえ、これは邪ンヌに言えたことで、俺はFPSなどで慣れているからいいものの、そんな俺も疲れ果てている。

 

 久々にゲームでこんなにも疲れてイライラする。ある意味、この感覚も懐かしいものであり、楽しいのかもしれない。必ず、クリアしてやる。

 

 だが、交代でそのゲームを行っていた俺以外の奴らはイライラがマックスまで達したようだ。故にこうして気分転換に食堂でお茶でもするかということである。

 

 俺の抹茶パフェから小さな抹茶のケーキを邪ンヌが手を伸ばして摘んで口に運び、俺は邪ンヌの食べているチョコパフェの板チョコを摘んで食べる。声の掛け合いもアイコンタクトもなしに互いの物を交換するように食べている姿は、傍から見ればカップルのようではないだろうか。にしては行動が自然すぎるし、わかり合っている感が凄まじいが。どこかで聞いたことのある聖女様の黄色い悲鳴が聞こえた気がする。

 

「根気だな。もはや気合で乗り切るしかないのでは」

 

「確かに、もうそれしかないわよねぇ……癒やしが欲しいわ。ちょっと九尾の狐に変身してくれない?」

 

「後でな。大体ここでやればヤバいだろ、確信犯か。俺にも癒やし寄越せ。胸揉ませろ」

 

「後でね」

 

 はぁ…と二人でテーブルにぐでたま。

 

 そう言えば他の一緒にやってた奴はどうだと耳をすませば。

 

「おい、沖田よ。一体どうしたんじゃ…目が死んでおるぞ」

 

「……………あぁ、ノッブですか……………ハハッ、ノッブノブー……あー…」

 

「だ、駄目じゃ、嘗てないほどに沖田の精神が死んでおるッ! 何があった、言ってみるがいいッ!」

 

「………終わりがないのが終わり……これがゴールド・エクスペリエンス・レクイエム…」

 

「え、マジで? 病みすぎじゃね? どしたん、壺でも割って怒られた?」

 

「壺………。壺………? 壺ッ………うがぁ! ちっくしょぉおおぉぉぉッッ!!」

 

「ちょ、まっ、何をするッ……のぶわぁああぁぁぁ………ッ!!」

 

 ガシャーンッ!と連続で何かが壊れる音と沖田の渾身の叫び声に、誰か女のヘンテコな悲鳴が聞こえ、何やら黒い物体が吹き飛んで壁に激突している。是非もないよネ。

 

 その叫びは悔しさと怒りとやりきれない思いが詰まっているかのようだった。

 あいつはもう駄目だ。ええ、もう駄目ね、狂化スキルが入ってるわ。どうやら沖田はいつの間にかクラスがバーサーカーになっているようである。

 

 さて、それでは最後の一人は…と、地獄イヤー。

 

「ふふっ、紅茶が美味しいわね」

 

「ねえ、どうしちゃったの! なんか今日おかしいよ!」

 

「酷いわ酷いわ。これではもう別人のよう……うぅ、見ていられないのね…」

 

「あらあら、お二人共、そんなに慌ててどうされましたか? もう、紅茶が冷めてしまいますわよ?」

 

「いっつもジュースとか喜んで飲んでたのに、ストレートな紅茶!? しかもどこかのお嬢様然としてるし!」

 

「ふぅ…今日もいい天気ですわね」

 

「外は吹雪だよ! しかも室内だから天気もクソもないからね!?」

 

「あらやだ、マスターさんったら。そんなに揺さぶられては困ってしまいますわ。はしたないですわよ」

 

「困ってるのはこっちだけども! もしかしてお父さんとやらになにかされた!?」

 

「まあ、そんなことありませんわ。(わたくし)はお父様の娘であり、お嫁さんですもの。愛し合う(わたくし)達がなにかあろうなんてございません」

 

「なんか怖い! ねえ本当に何があったの! 何かあったのなら相談してよ! 力になるから! だから…だからいつもの元気な姿を見せて…!」

 

「うふふ」

 

「ねぇ………()()()()ってばぁッ!!」

 

 ……ありゃマジで駄目だ。うちの娘、もう駄目かもしれんね。

 涙目のマスターちゃんに揺さぶられ、お友達の紫の女の子に泣かれているのに、ジャック本人はまるで綺麗な庭園でティータイムを嗜む、白いドレスでも似合っていそうなお嬢様のように静かに微笑み、優雅に紅茶を飲んでいる。誰だあれ。もはや別人枠だろ。責任者呼んでこい。

 

 とまぁ、この二人の豹変ぶりに周りは唖然騒然とし、俺達二人が仲良くイチャついて?いるのなんて若干1名を除いて目にも入らないわけである。部屋の隅で全貌を知っているダ・ヴィンチちゃんが笑いすぎて死にかけていた。

 

「もうあの二人は使えないわね」

 

「選手交代だな。無理だろうけどワンチャンアストルフォ。おそらく黙々とクリアするまでやるであろう静謐。しかし、静謐は溜め込むタイプだから終わった後のストレス発散で俺がヤバい」

 

「どうヤバいのよ」

 

「とある薬を何本も用意しなければならない」

 

「……? ……ッ!! なっ…!!? なっ、何言ってんのよ!! そんなこと私の部屋でさせませんからね! 静謐は却下しますッ!」

 

「俺の部屋だぞ」

 

「私の部屋でもあるわ」

 

「巫山戯んな巻き込むぞ」

 

「………考えておきます」

 

 何いってんだコイツ。

 真っ赤になった邪ンヌは置いておいて、寒くなってきたので温かいお茶を頼むことにする。アイテムボックスから紙とペンを取り出して注文内容を書き、邪ンヌにも目で問いかけると要ると頷いたので2つ。

 

 この紙を折折と折って紙飛行機にし、キッチンに向かって投げれば一直線に向かっていく。しかもこの紙飛行機、魔力によるブーストが付いているので、ジェットのように風を取り込んで後方に吐き出し、剛速球並みの速度で飛んでいくが、キャットにとっては何のその。主人が投げたフリスビーか枝をキャッチするが如く、横から飛びついて口で犬のようにキャッチした。よく躾ができている。結構苦労した。

 

 ビシッと親指立てれば、ビシッと獣のお手々が返ってくる。後は待つのみ。

 

「ところで話は変わるけど、そろそろ夏よね」

 

「夏はとっくに終わってんだよなぁ……」

 

「何言ってんのよ。これが書かれているのはまだ夏よ。下手に先読みしないで頂戴。それで、夏休みとかあるの?」

 

「さあ、あるんじゃね? 無けりゃ他のスタッフ連れてデモ行進を行ってやる。プリーズサマバケ」

 

 まあ、たとえ夏休みがあったとしても部屋でゲームや映画、漫画にゲーム、カラオケに何か影響されて新しいこと始めてみたり、ゲームしたり、ゲームするだけの日々だろうけども。

 

「それでちょっと水着とか考えてみたりしてるのよ。その水着衣装で刀でも使おうかなって思ってるから、アンタの刀貸してくれない?」

 

「景光と吉野? 別に構わんが、水着に刀ってなに? どんなコンセプト? 厨二病?」

 

「うっさいわね。いいじゃない、なんでも」

 

「ま、いいけど。水着姿後で見せろよなー」

 

「はいはい」

 

 言質取った。もう刀使う時点でどんな水着姿なのか割と気になるし、絶対にコイツの水着姿とか最高に決まっている。

 まあ刀は後で渡してやるとして、食べ終えた器にパフェで使う長細いスプーンを放り入れれば、カランと音を立てながら少しばかり縁でくるくると遊んで止まった。それと同時に注文のお茶も来たようだ。

 

「はい、おまたせ。温かいお茶だよ」

 

 持ってきたのはキャットではなくもはや俺のときは必ずと言ってもいいほど来るブーディカさんのようだ。お盆の上には湯呑みが2つあり温かいということを主張するように湯気を上げていた。そのお茶を俺達の目の前に置くようにしながらも、視線は俺と邪ンヌの顔を行き来して、一つ頷いては笑みを浮かべた。

 

「うんうん、二人とも一人でいるのが多かったけど、まさか二人がお友達になるなんてね。よかったよかった」

 

「失敬な。俺は別にぼっちではあったが一人きりというわけではなかった。なんなら俺がコイツの友達になってやったまである」

 

「はぁ? 何言っちゃってくれてんの? 私から話しかけてあげたんでしょう? 勘違いしないでもらえます?」

 

「出たよ、この相手のマウント取りたいムーブ。お前、縛り付けてクリアするまで休憩もなしで延々とプレイさせるからな。身動きできず動けるのは右腕一本。何があろうとそこから動かさないかんな。そう、たとえ漏らしたりしそうになってもだ」

 

「ふっ、言うじゃない、上等よ………私が悪かったから許してくださいお願いします」

 

「よくってよ」

 

「軽いわね」

 

「ぷっ、あはははっ! 仲良いわね! これからもその調子で仲良くね」

 

 突然笑い出したと思えば、そんな事を言いながらもなぜか俺の頭を抱きしめてその豊満な胸で包み込む。極上の柔らかさといい匂いに暖かさ…これが、癒やし。突然のことであったがあまりの母性というか癒やしに抵抗虚しく、いやもはや抵抗のての字も出していなかったがなされるがままに胸に顔を埋めて頭を撫でられることに。

 

 邪ンヌが何やら騒いでいるが、ブーディカさんはケラケラと笑いながら躱している。

 

「なんでアルンを抱きしめて頭撫でるのよ!」

 

「まあまあ、いいじゃない。やりたいなら後でやらせてあげるからさあ」

 

「なっ!? べ、別にそんなんじゃないわよ!」

 

「照れちゃってもー。こう、不思議と甘やかしたくなるというか、可愛いからねぇ…つい構っちゃうのよね。それより、なんか騒々しいけど、何かあった?」

 

 俺に聞いているのだろうか。胸の中で上目だけで確認してみると、俺を見てるので俺に言っているのだろう。

 

「若干二名、精神崩壊からのキャラ崩壊が激しくて、その豹変ぶりに騒がしくなってる」

 

「あんっ、もう、胸の中でそんな激しくしないの。赤ちゃんじゃないんだから……よしよし」

 

 ………………。本当なら怒っても良いところなのだろうが、敢えての大人しくして堪能することに。男だもの、仕方ないよね。

 

 しかし、そろそろ邪ンヌが切れそうなので名残惜しいが、本当に名残惜しいが胸から顔を離すことにした。この人なら頼めばいくらでもしてくれそうだが、帰ってこれなくなりそうだから流石に自分からは行かない。その先は地獄どころか天国だぞ。極限まで甘やかされて駄目にされるぞ。

 

 まあ、俺は殆ど親に捨てられていたようなものだし、愛だの甘えるだの情報でしか知らないから、こういうものなのかと新鮮ではある。父性?ジャックに対してはMAXですが何か。与えられる愛は知らないが、与える愛なら溢れてますが何かっ。

 

 おっと、普段とは違うお嬢様のようなジャックに鼻血が……。既に透明化した機械の目玉が浮いているようなドローンを飛ばして全方面からジャックの録画と撮影は行われているので、あとでいくらでも楽しめる。抜かりなし。後で存分に甘やかしてもとに戻してやらねば。

 

 いい感じに温度が下がったお茶を飲みつつ、沖田の方も見てみるが、荒れている。ただ、壺という単語に過度に反応して、口にしたものを投げ飛ばしているようだ。気持ちはわからんでもないが、温度差が激しい。死んだ目で沈んだかと思うと、這々の体で返ってきた軍服っぽい物を着た美少女が再び吹き飛んでいく。哀れ、是非も無し。

 

 もうひと啜りで飲み干し、空になった湯呑みを置いて立ち上がる。

 

「おや、もういいのかい?」

 

「ああ、ごちそうさん。また、夕飯のときに食べに来るわ」

 

「それなら夕飯は何がいい?」

 

「チーズドリア」

 

「ん、りょーかい。美味しいの作って待ってるわね」

 

「おう」

 

 ブーディカにそう告げて、体を伸ばし、首と手の関節をバキバキと鳴らす。邪ンヌもそんな俺を見てお茶を一気に飲み干し、立ち上がった。

 

 更に、俺達を見たジャックと沖田も悟られないように立ち上がって体を解しつつ準備をしている。いい気分転換にはなっただろう。さあ、最高難易度で全員クリアという目標を達成しなければ。

 

 俺と邪ンヌの二人が最初に帰り、少ししてからジャックと沖田が帰ってくる手筈である。 

 

 さて、行くぞお前ら。 

 

 あの壺に入った男を空の彼方にまで連れて行ってやろうじゃないか。

 

 

 




「もう面倒くさいんで壺に火薬詰め込んで爆発させて打ち上げません?」

「どこの戦国のボンバーマン? 松永のあれ脚色されたものじゃなかったっけ」

「おとーさん、海に捨ててー!」

「わけがわからないよ…飛行石じゃあるまいし…」

「ねえ、アストルフォが死んだわ」

「嘘だろ…アストルフォの霊圧が…消えた…?」

 この後意地でもクリアした。

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