お父さんになったら部屋にサーヴァントが来るようになったんだが   作:きりがる

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どうも、お久しぶりです。
とりあえず、半分はスランプで出来ており、半分は優しさから遅くなりました。(?)

前半がガチ(年々何もネタが思い浮かばない、これが老い…)、半分は待ってない人のための敢えて遅くするという優しさという名の言い訳。(??)

本音:モチベやネタすら思い浮かばないから次は何年先になるのかわからぬ(???)

まあ、つまり、前話のは最終話じゃないよってことですね、ええ。


18 半分は優しさと言っておけば大体のことは解決する

 もはや下っ端とか言ってられない。

 

 既に徹夜7日目を突入しており、俺自身が他の職員よりも頑丈でスキルも魔法もナビのサポートもあるからして、仮眠も取らずに他の職員の分の仕事もこなしているくらいである。

 修理も研究もチェックにサポート……俺を含めて仲間たちもそこそこ以上に仕事ができると露見してしまった今、もはや中心で共に仕事しているのだ。

 

 眠気のピークなんて既に越えており、体はフラフラになり頭も揺れている状態でモニターとにらめっこして新たなシステムを構築し始めた。畜生、おのれレフ・ライノール…貴様が情報処理を行っている機器…母体を破壊さえしなければこんなことまでやらされなくて済んだだろうに。

 

 ところで、隣で物凄い隈を作って死にかけているドクターは寝させた方が良いのだろうか。他の仕事に加えてマスターちゃんのバイタルチェックやレイシフト中のサポートも行ってるんだろう? 死ぬぞ、こいつ。

 

『身体及び脳の極度の疲労がみられます。休息を摂らないと過労死する可能性が高いですね。無理やり眠らせますか?』

 

 マジか…そこまで行ってるのか。俺のようにちょいとずるしているのではなくて普通の状態で頑張りすぎているこの人は、周りからの信頼も厚く、誰もが分かるほど優しく、マスターちゃんだけではなくて他職員からもひと目置かれているような人物である。

 

 ドクターと言うだけあって怪我だけではなく、心理面にも精通しており、ちょっとした気遣いも的確。

 

 ドクターにおける情報は聞いただけでもこれ以上のことを教えてもらったが、所長に変わって最高責任者となり数多のことを熟すこの人は居なくてはならない存在…居なければ人理の修復なんて難しいのではないだろうか。

 

 俺も少し接しただけでどれだけのお人好しでどこまでも他の人のために考えている奴だというのは分かった。

 

 だから、こいつは今後のためにも休ませるべきだ。そして、元気な姿を見せてマスターちゃんや他の職員を安心させるべきなのだ。

 

 だから…だから、こいつを一刻も早く……

 

「うへへ…コーヒーカクテル美味しいなぁ……カラダもってくれよ! 30倍カフェインだっ!!!」

 

 一刻も早く、この気が狂った状態をどうにかしてやるべきだッ。

 

 虚ろな瞳でモニターを凝視し、片手でキーボードを叩いてもう片方の手にはカップが把持されているのだが、その中身が問題である。中身は珈琲なのだが濃くしすぎてもはや泥水状態であるのに、そこに数種類のエナドリをぶちこんでかき混ぜ、最強最悪のカクテルを作り出している。

 

 俺だって既にエナドリのちゃんぽんはしているが、珈琲に入れようとは流石に思いつきもしなかった。

 この狂人じゃないと思い浮かばない悪魔の方法を実行したドクターは既に限界だろう。もういい、もういいんだ…後は俺に任せろ。

 

 優しく、ドクターの手からコーヒーカクテルを取り上げてやると、それを不思議に思ったドクターがこちらを向く。目が死んでいる。

 

「…? どうしたんだい、アルン君。あっ、君もボクの珈琲が飲みたくなったのかな? 仕方ないなぁ、ちょっとだけだよ?」

 

「ドクター…俺達は二人並んでこの激戦を越えてきたよな」

 

「うん、そうだね。いやぁ、しかし忙しいものだよ。何度、珈琲に手を振ったかわからないんだからさ。ふふふ、エナドリに歌って珈琲をブレイクダンスしたのなんて楽しかったよね!」

 

「もういい…もういいから喋るな、我が戦友(とも)よ! 何を言ってるのか分かってるか? 何を言ってるかわからねぇぞ!」

 

「あはは、アルンきゅんは面白いなぁ」

 

「眠れ…次に起きたときはきっと、優しい世界が待ってるさ……」

 

 もはや狂っているとしか思えないドクターの額を人差し指の先でトンと軽く突けば、一瞬でドクターは意識を失って深い眠りについた。眠ってしまったことによって倒れ込んできたドクターを優しく抱きとめ、そっと頭を撫でてやる。

 

 別に男の頭を撫でる趣味があるのではなく、回復魔法をこっそりとかけてやっただけであり、これで短い睡眠でも全快以上のコンディションを発揮できる、モンハン式睡眠術とよばれるものである。

 

 ただ、一つ欠点を上げるとすれば、起きた瞬間にシャキーン!という音とともにコロンビア。他の人に見られていたら恥ずか死ぬ。

 

 眠ったドクターを抱え上げ、プリンセスポジションに持って行き、医務室にこの壊れかけのDoctorを持っていくことにした。道中で俺達と比べれば全然と問題のないスタッフにすれ違ったが、どいつもこいつも俺のやつれた顔や死んでんじゃねってドクターを見て驚いたような顔をする。

 

 まあ、ドクターが抱えられていたら誰だって驚くだろうというもの。

 俺も若干ながらフラフラしながらも、靴とリノリウムの床が出す小さな音を聞きながら医務室に向かっていく。ただまぁ、そこそこに距離があるので誰か力の有りそうなやつがいればそいつに任せて俺は戻り、仕事の続きでもしようかとは思っているのだが、こういうときに限って誰にも出会いはしないというのはよくあることだ。

 

 しかし、疲れている身に人を運ぶというのは結構面倒くさいものではある。

 

 ここで紹介したい商品がこちら。全自動で運んでくれるストレッチャー。

 このストレッチャーは頭側についているモニターに行きたい場所を入力し、半分の優しさともう半分のお茶目心で人に途中で止められたり触られないようにするために、サイレンやアナウンスが流れるという仕様になっている。

 

 このストレッチャーにドクターを乗せれば、下腿、腰部、胸部にベルトが巻き付き、反対にくっついている部品にカチリと装着された。少しばかりのモーター音が鳴り響きベルトが巻き取られて隙間なくきっちりかっきり締め付けられて、その姿はまさに直立不動のまま貼り付けられたかのような哀れで滑稽な姿である。

 

 手足をぴーんと伸ばして白目をむいているドクターがストレッチャーに固定されている。これがある意味無人で自動に通路を走り回っているのだ。絶句するか、笑い転げるかの二択になるのではないだろうか。

 

「よし、これでいいだろう」

 

『しっかりと固定されているので落ちませんし、揺れることもないですね。マスターはとてもお優しい……一歩間違えなくても虐めと嫌がらせの所業ですが』

 

「地獄の鬼も笑って流すお茶目な所業だろう? 子どもたちが見れば笑うに違いない」

 

『ええ、きっと、嘲笑うでしょう』

 

 噛み合っているようでどこか噛み合っていないナビとの会話を行いながら、ボタンを軽く押す。大きく遠回りをする様に設定された目的地とルートを走り出すために、自動ストレッチャーは起動する。

 

 頭部の上から一本の棒と赤いランプ、四方の角から同じ様に棒が飛び出し巻き付いていた布がバサリとほどかれてその姿を露にす。

 

『患者に触れないでください』

『只今お昼寝中のため起こさないでください』

『ドライブなう』

『優しい目で見守ってください』

 

 そう文字が書かれている旗が広がっていた。

 更にサイレンとともに機械音のような女性の声が流れ出してくる。

 

『患者が通ります、道を開けてください。極めて(頭が)重症な患者が通ります、道を開けてください。事件は会議室で起こっているんじゃない、管制室で起こっているのです』

 

 ストレッチャー下に設置されたスピーカーから、既に組み込まれていたプログラムからセリフを抽出してランダムに発せられており、優しさとお茶目さが半々に織り交ぜられていた。

 

 そのドクターを乗せた阿呆みたいなストレッチャーが俺の目の前で動き出して小走り程度の速度で通路の向こう側へと消えていく。うーむ、あのサイレンとセリフと旗と格好は色んな意味で危険だ。主に後のドクターの名誉などなどに関してなのだが。

 

 まあ、俺も疲れていたから仕方なかった、ということにしておこう。誰も俺がヤッたというのはわからないのだから…そう、誰も……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、なんだありゃあ……」

 

「もしかして、ドクター? ドクターじゃない、あれ!?」

 

「なんだ、アレ……新しい遊びか何かかね…」

 

「ねえっ、みてみて! 何かしらあれ! 勝手に走っているわ!」

 

「うわぁ……あれぜったいにおとうさんだよ……それ以外にヤる人いないもん……流石だなぁ」

 

「今、患者と重症という言葉が聞こえました。患者はどこですか!! 消毒殺菌します!!」

 

「おい、逃げんぞマスター、巻き込まれちゃ堪んねえ」

 

「ええ、もうちょっと追いかけてみようよ術ニキ。なんか面白そうだよ!」

 

「確かに面白いが…いや、マジで何だあれ。あいつなんで拘束されて走ってんだ?」

 

「あ、ナーサリー、ジャックー! あんまり近づくと何があるかわかんないよ!」

 

「だいじょうぶだよー! あれ、半分の優しさと半分のお茶目で出来てるからー!」

 

「なにそれ、バファリン?」

 

 

 

 

 

 

 後日、相当以上に疲れ切っているとカルデアに居る全ての者に判断されたドクターに一週間の休暇が無理やり渡された。笑いの種及び酒の肴、妙に優しくされたドクターは結構堪えたという。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 ドクターがカルデア内を駆け巡り、笑い者にされた(させられた)らしいが疲れ果てた俺にとってはもはや関係ないと言ってもいいのではないだろうか。いいよね。ただのクズじゃないか。

 

 管制室に戻った俺はドクターの分の仕事も、俺の残りの仕事も、他のスタッフが休憩に入った瞬間にスキル全開で終わらせた。一秒間に十六連打のタイピングはまさしく音速のソニック。指が分身に分身を重ねてもはや指が何本も生えている宇宙人のような手に見えるほどであるが、これを見ていたのはナビだけだった。

 

 しかし、やっと仕事を終わらせることができた。今までは手加減していたのさ………これが、俺の本気。これが私の全力、だぁぁぁぁ!! 俺のレールガンが火を吹くぜ。

 

 流石の俺ももう眠気の限界が来ており、このままではうっかり何をしでかすのかわからないので直様に部屋に戻らなくてはならないだろう。うっかり魔法でも発動して、うっかりどこの世界にいるのかわからないレフなんちゃらのモジャモジャを燃やし尽くし、うっかり裸にして貼り付けにした状態を、うっかりカルデアの食堂のど真ん中に設置してしまうかもしれない。

 

 うっかり属性もここまで来るとあざとさの欠片もないものだが、どこかの一族のうっかりさんも別に可愛いものでもなかったし、問題ない。なんなら俺のうっかりの方が可愛いね。うっかりが擬人化してドジっ子メイドみたいにあざとさ全開にしてくれるもんね。はわわっ!ってよくわからない普通なら口にしないだろう声を出してくれるもんね。

 

『はわわっ、私、うっかりしっかり転移魔法を発動させてしまいました』

 

 ……いきなりどないしたん?

 ナビさんが突然に無感情棒読みではわわっとか言い出したのだが、なにも萌えることはなかった。しかも、うっかりしっかりと言っている時点で、しっかりと魔法を発動させてるじゃねえかと。うっかりはどこにいったんだと。

 

『さあ、うっかりしっかりきっかりかっきりきっちりと、お休みくださいませ』

 

 こってりあっさりうっかりと、ラーメンみたいに休んでやるよこの野郎。

 

 頭の悪そうなナビに無理やり俺の部屋に転移させられ、部屋のど真ん中に魔法陣とともに出現した。

 久しぶりに見たような俺の部屋には、いつもはその他諸々のサーヴァント達がいるのだが、今は誰も居ないために伽藍堂とした印象を与えてくる。

 

 静かなのも久しぶりじゃないだろうか…。

 

 どうせ寝るのだし別にいいかと、伸びをしながら服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びるのも億劫だったので魔法により身を清めてからベッドに置かれていたパーカーを着る。

 このパーカー、何やら胸元が緩くなってやがる……それに邪ンヌの匂いが漂ってくるところから、あいつまた俺の服を勝手に着て、脱ぎ捨てていったな。

 

 まあもともとぶかぶかのパーカーを着ていたので、少しの緩さなんて気にもしない。邪ンヌによってお伸びになった灰色のパーカーを適当に着込めば、それだけで全身の余分の力が抜けていくかのような錯覚にとらわれる。自室でラフな格好というのが開放感あふれる一人の世界を、更に助長させているからだろうか。

 

 風呂入ってる場合じゃねえ!とばかりに、某白黒熊のようにダメソファを飛び越えてベッドにダイブすると、飛び込まれたベッドが悲鳴を上げて大きく揺れる。浄化により体を清潔な状態にしているので汚くはないのだが、風呂後のさっぱり感はないためにどこか違和感を感じる魔法である。本来、清潔目的で体に使うものじゃないからだろう。

 

 ところで、違和感を感じる、という言葉は頭痛が痛いの兄弟のようなものであるのに、俺たちは普段から疑問に思うこともなく使用しているのだが、そこのところどうお考えだろうか。

 頭痛という時点で頭が痛いという意味を持っているために頭痛が痛いというのは違和感を感じるのだろう。ほら、既に違和感さんが出現した。こやつ、違和感という時点で既に完結しているのに、感じるまで付け加えられても、頭痛さんのような違和感を感じない。ほら、これまた違和感さんry(永遠ループ)

 

『くだらないこと考えていないで、早く寝てくださいませ、ご主人様』

 

 なにその嬉しくないメイドさんじみたセリフは。

 疲れ切っているのにいざ寝ようとすると、どうでもいいことを考えてしまって寝れなくなることがあるだろう。その感覚を味わっていてだな。

 

 まあ、ナビさんの言う通りに本当に疲れて眠いので、大人しく寝ることにする。これがゲームとか趣味による連続徹夜とかであれば問題ないのだが、さして面白くもないことで連徹しているので疲れ切っているのだ。

 

 久しぶりに一人の部屋で、一人で寝るかもしれない……本来であればこれが普通であったのにひどく懐かしく感じる。なんだかんだで皆といる時間が気に入っていたのか。

 

 きっと、起きたら誰かしらが部屋にいて、また騒がしくなる。ベッドにも静謐あたりが潜り込んでいるだろう…ジャックなら大歓迎。俺の癒し、天使なので大歓迎である。むしろ推奨。

 

 あー、ジャック今すぐ来て抱き枕になってくれねぇかなー…なんてことを考えていると 今度こそ次第に思考力が溶けていき、完全に寝落ちしてしまったようだ。

 

 翌朝、ナビによる脳内アラームと平坦な声ではあるが負担をかけないようにという優しさのみえるような声掛けにより目が覚める。たったの一夜程度の睡眠しか取っていないが(普通に十分)、割と回復できているのだろう。思考も通常モードの寝ぼけモードで体の気怠さもあらかた消えている。

 

 布団の中で寝起き特有の動きたくない症候群に捕らわれてもぞもぞと動いていると、隣に人肌程度の温かな塊があることに気づく。寝ぼけている思考はいつものように我が娘だろうと思ったのか、寝返りを打つとともにその塊に抱き着く。

 

「うぐっ…! こ、これは過去最大級の危機ですッ…!! 耐えろ、耐えるんだ私! あぁ、暴走モード突入はヤバいです……行きましょう私! 確率変動、確率変動! あれ? おめでとうという先輩や皆さんの声が拍手とともに聞こえる……?」

 

 これはイッテイーヨという啓示では…?という声が聞こえるような聞こえないような…。

 

 何故か何かを耐えるように震えている、抱きしめている存在をさらに強く抱きしめることで震えを収めようとする。もしかしたら怖い夢でも見たのかもしれない。

 

 片方の手で背中を撫でつつ、もう片方の手で頭を抱えこむ。髪の中に差し込むようにして添えた手は、まるで絹糸のように柔らかな感触に包まれている。少し触れるだけでも手入れが行き届いているというのは容易に想像できる。少し動かすだけで良い香りが一瞬にして鼻腔を満たす。

 

 撫でる背中も男のそれと比べたら天と地ほどの差があるほどに柔らかで、服の上からでもわかる滑らかさ。少し押すだけで簡単に指が適度に沈み込み、女性特有の柔らかさを感じ取れる。

 

 そして何よりも抱きしめているために自身の上腹部から胸板にかけて、覆うように密着している極上の柔らかさと温かさ。呼吸のようなほんの少しの動きだけでも、それはむにゅりと好き勝手に形を変え、何とも言えぬ幸せを与えてくれている。

 

 これこそ、男には生み出せない最高の感触……そこ、大天才は?とか血迷ったこと言わない。あれは例外である。イレギュラーなんだよ、奴は。

 

 寝ぼけた頭に何かを期待するのも無駄というもので、腕の中と胸に感じる快楽には抗えずに強く強く抱きしめてしまう。きっと、これが正常な思考回路であったのであれば、無意識的にといえどもジャックだと判断し、優しく抱きしめていたに違いない。

 

 だが、今はそうではなかった。

 

「はうぁ! これが……天国!! ああ、全身が幸せです……これはもうゴールしてもいいのでは…? …………ヨシ!(現場猫)」

 

 抱きしめている方からも強く、熱く抱きしめてくるのが分かった。そして、するりと相手の手が服の中に入ってきて背中に添えられ、吸い付くような細く綺麗な指で撫で上げられながら、腕によって服を捲られていく。

 

 同時に脚がこちらの脚へと隙間のないほどに蛇のように絡みつき、細くながらもしっかりと肉感的で柔らかく、離すつもりはないのだとばかりに絶え間なく押し付け、擦り上げ、抵抗しようという意志さえも消し去ろうとしてくる。

 

 手も、脚も、胸も、官能的な動きと感触を与え続けてこちらをどろどろに蕩けさせようとしているかのようだった。

 

 火傷しそうなほどに熱い吐息が、頬と唇を撫でつけ、その距離は既にコイン一枚分の厚さにまで迫っている。

 

「はぁ…! はぁ…! もうっ…いいですよね…ッ!!」

 

 耐えるかのように、しかし、耳を犯し脳を溶かすかのような甘い声が聞こえるたびに、互いの吐息が混じり合う。目を開ければきっと、男なら我慢できないほどの婀娜たる姿が目に入るに違いない。

 

 そして、限界を迎えたかのように、より一層と柔らかな体を押し付けてきた瞬間に―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 思いっきりデスロールをかまして、ベッド下の床に獲物を叩きつけた。

 

「きゃいんッ!!?!?」

 

 甲高い犬のような鳴き声とともに、俺の体に絡みついていた四肢が解かれて力を失う。

 目を開けてみればそこには目を回した一匹の獲物がいた(失礼)。

 

「おーい、檻から発情期の雌犬が逃げ出してんぞー」

 

「ごめーん、餌あげようとしたら逃げ出してねぇ…どうも(朝食)よりも別の(アルン君)の方がよかったらしい」

 

「餌ってゆーな。つか、なぜ止めなかった」

 

「どうせ失敗すると思っていたし、面白そうだったからさ!」

 

 飄々とした態度でそう言ったのは大天才こと、ダ・ヴィンチちゃんである。その絶世と言ってもいいほどの美貌は、今やにやにやとしており、どこからともなく取り出した鎖で目を回してる犬……マシュ・キリエライトという名の変態を縛り上げていく。

 

 扱いが雑である。ほんと、どーしてこーなったのやら。

 

 溜息一つ吐きながら部屋を見渡せば、俺が昨日の夜に笹食ってる場合じゃなくなったパンダアクションにて飛び越えたダメソファに座っている、顔を真っ赤にした沖田と、その沖田によって目隠しされているジャックが見られた。

 

「ねー、なんでわたしたちの目をふさぐの? おとーさんが見えないよー」

 

「いいんです、今は見なくても。見るのはアルンさんに擦り寄る悪い虫を退治してからにしましょうねー」

 

「えー」

 

 …とりあえず、沖田にナイスアシストとばかりにサムズアップしておいた。

 

「ところで、なんでマシュは俺のベッドに忍び込んでたんだ。ジャックはともかく、静謐ならまあ、わからんでもないんだが」

 

「私達4人はほぼ同時にこの部屋に来たんだけどね、マシュが寝てるアルン君を見るや否や、それはもうだれも止めることができないほどの自然な動きでアルン君のベッドの中に潜り込み、添い寝を始めたんだ。いやぁ、あまりにも自然すぎて、それが当たり前かのような錯覚に陥ったよ。ねえ?」

 

「え? あ、はい、そうですね。ええ、それはもう一切の躊躇いなく、当然かのように潜り込んでいたので、止める間もなかったですね」

 

「付き合っている恋人同士だったとしても、あそこまで出来る子はいないだろうね。吃驚だ」

 

「わたしたちならできるよ!」

 

「ジャックは張り合うんじゃありません。まず土俵が違います」

 

「どすこーい!」

 

 はい、可愛い。

 

 

 




イベントは一日で終わらせるもの。

水着鯖当たらねえ…糞が…石も時間も無くなったので失踪します。

夏だからね。仕方ないね(ホラー感)






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