お父さんになったら部屋にサーヴァントが来るようになったんだが   作:きりがる

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お久しぶりです。

コツコツ書いてたんですよ。コツコツ……一ヶ月に一文とか、二ヶ月に30字とか。

ある意味、最高に難しい事してたんですよ…。

褒めて…?


20 タコパのパって、頭がパーのパでしょう?

 額に怒りマークを浮かべた俺の前の席に、少し怯えたマシュが座り、その隣にマスターちゃんが座るような配置。

 先程までレイシフトを行っていたからなのか、その他にもサーヴァントがいたのだが、そこまで干渉するつもりがないのか、それとも離れたところから観察していたいのか、散り散りとなっている。

 

 テーブルの上には追加で置かれた人数分のカップに、更に追加となった紅茶。そして、四人席最後の。

 

「ねえ、アルン。これ、アレじゃないよね…あの珈琲と同類の物じゃないよね…?」

 

 アストルフォが、俺の隣りに座って、湯気の立つ紅茶を微動だにせずに見つめていた。

 

 このままでは「オソマ…」とでも言いそうな顔をしている。

 

 どうやらフォウ珈琲がトラウマになっているようだ。

 あと、流石にこの紅茶はフォウが産んだ実を焙煎したものではないので安心してほしい。マシュが持ってきたものである。

 

 というか、なんでお前ここにいるんだ。そしてこの四人で丸テーブルを囲んでいる状況よ。背後の静謐なんてどこから取り出したのかはわからないが、ダンボールを被っている。流石ダンボール、誰にもバレていない。

 

「は…はぁ…はっぷ……はっぷ……」

 

 アストルフォがカップを手に持って、紅茶を飲もうか飲ままいかと、口元に近づけては遠ざけてと葛藤している姿が面白いため黙っていると、マスターちゃんが話しかけてきた。この雰囲気で最初に口を開くコミュ力には脱帽する。

 

「あのー、確か、アルンさん……でしたよね? こうしてちゃんと話すのは初めてですよね。私は藤丸立香です! 気軽に立香とでも呼んでください!」

 

「はい、藤丸さん。自分はアルン・ソルシエ、このカルデアで下っ端職員として雑用等の仕事をしています。はい。今回はどういったご用件でこの席に来られたのでしょうか」

 

「おっとー…これは攻略難易度が高そうだねぇ……」

 

 俺はギャルゲのヒロインかなにかか。

 

「特に要件はないんですけど、マシュと仲が良さそうだったので、つい。あと、アストルフォはなんでいるの?」

 

「ん? ボクかい? それはもちろん、アルンがいるからだよ?」

 

「へー。アストルフォはアルンさんと仲がいいんだ」

 

「うんっ。それはもう、恋人以上、夫婦未満さ!」

 

「それはそれでどうなの!? 男同士だよね!?」

 

 ドヤ顔で胸を張るアストルフォに驚愕するマスターちゃん。まあ、それはそう。普通そこは友達以上、恋人未満とかじゃないのだろうか。恋人以上夫婦未満の立場は、男同士であればどのポジションに落ち着くのかとても気になるところであるのだが……ナビ曰く。

 

『男同士でそれは適切ではないかと…普通に親友だと思います』

 

 確かに。チョップを入れながら、ナビさんの言った通りに訂正しておくことにした。

 

「そこは親友とかそこらへんでいいだろ。あらぬ誤解を招くわ」

 

「物足りぬわッ!!」

 

「そうか、じゃあ、21歳拳でッ!!」

 

「ちょっと待って下さい、お二人共! キャラッ! キャラッ!! あと、アストルフォさんはチョップに対する物足りなさを言ったんじゃないと思いますよ!」

 

 しかし、時既にお寿司。肉厚とろ鯖のようなゴンッ!という鈍い音がアストルフォの頭から鳴る。でもあれはどちらかといえば、ずんっ!とくる食べごたえ。のくせに、割と個数食べれちゃう不思議。しゅき。でもやっぱりバッテラが好き。

 

 拳の落ちたところの頭を抑え、ふくれっ面になり涙目で見上げてくるアストルフォは可愛いが、なんだ、やろうってのか?

 

 もちろん俺らは抵抗するで。拳で。

 

 まあ、流石にネタでやっているのでこれ以上のことはないが、そこそこに痛かったのか、アストルフォが腰に抱きついてきて、拳を受けた部位を俺の腹にぐりぐりと押し付けてくる。スマンて。多分クリティカルやったんやろ。

 

「そういえば、アストルフォさんとの仲はよろしいのですか?」

 

「まあな」

 

 ピンクの頭を撫でてやっていると、マシュが紅茶を飲みながらそんなことを聞いてくる。傍から聞けばただ仲が良いのかと聞こえるだろうが、マシュが言ったのは、俺の部屋の外でこんなにも仲が良い関係だとバレても良いのか、ということだ。

 

 アストルフォに限っては…いや、ダ・ヴィンチちゃんもだが、この二人は最初の頃から割と外でも話しかけてきているため、そこまで不思議に思われていないと思う。というか、(サーヴァント)によるが話すくらいなら注目なんてされん。もちろん、例外もあるが普通にサーヴァントと話をするスタッフもいるわけだし。

 

 マスターちゃんは物珍しいものでも見たかのように驚いているが、この二人に限っては今更である。

 

 邪ンヌ? あれはブーディカくらいしか知らない。マシュ? ああ、今回のことで露見したな! まあ、俺の部屋のことを知られなければそれでいい。

 

「先輩、それほどまでに驚くようなことなのですか?」

 

「そりゃそうだよ! 確かに誰にでもフレンドリーなアストルフォだけど、一定以上は踏み込ませてくれないような距離感を保ってたのに。私だってまだここまで仲良くないよ?」

 

 ぐぬぬ…と羨ましそうに見てくるマスターちゃんだが、なるほどどうして、よく見ているじゃないか。元一般人とは思えないほどの洞察力…隠れた才能でもあったのだろう。でなければ、ここまで多くのサーヴァントと絆を結ぶことなんて出来ないはずだ。

 

 マスターちゃんの言葉を聞いて、アストルフォがまたドヤ顔しながら顔を上げた。

 

「当たり前さ。ボクが一番アルンと仲が良いんだからねッ!」

 

「なっ!? 何を言うんですか、アストルフォさん! 私のほうがアルンさんと相思相愛の両思いです! 絆レベル10なんて既に天元突破グレンラガン!」

 

「おっと待ちなよ二人共。ここで私というダークホースを忘れてもらっては困るよ…というか、仲間に入れて! 私はアルンさんと、将来的には、アイコンタクトだけで戦闘・炊飯・掃除・談話ができる……そんな関係を目指しています」

 

「……先輩? それ、私の台詞じゃないですか?」

 

 お前はそんな意味のわからない台詞を持っていたのか。アイコンタクトで俺とともに戦闘を行うマスターちゃんの関係性も気になるところだが、そろそろ本当に何しに来たのかを知りたいところである。

 

 初対面のくせにフレンドリーで、接しやすく話しやすい。人の感情も良く感じ取り、判断も機敏で、それでいて人の機微な話題には触れないようにしている。この歳にしては上手いコミュニケーションをとれているが、レイシフト先での多くの出会いがそうさせたのだろうか。

 

 色々と経験してきた英霊達には心地よいものかもしれないが、俺のようなちょっと特殊で疑り深く、ぼっち気質の人間には、逆に警戒させてしまうものである。

 

 いい人も悪い人も疑りから始まるコミュニケーション。俺の隠れた特技である、パンチから始まり、キックで終わる交渉術を披露しなければならないようだ。

 

 冗談は置いといて。

 

「それより、そろそろ本当の用事を教えていただいてもよろしいでしょうか。藤丸立香さん」

 

「すっごい他人行儀! いや、用事もなにも、マシュと仲が良さそうだったので、私もアルンさんと仲良くなれたらと思ってるんですけど……」

 

「いえ、間に合ってます」

 

「心の壁がッ!!」

 

 え? 俺そんなにATフィールド強そう?

 ズダンッとテーブルに腕を叩きつけて台パンをし、打ち拉がれたように項垂れるマスターちゃん。リアクションがとてもよろしくて、少し離れたところにいる人達が視線を向けてくるが、ああ、またかというように直ぐに戻った。

 

 俺がマスターちゃんと関わってみろ。あれやこれやと気を使わなければいけなくなるし、下手に深く関われば、マスターガチ勢やちょっとやばそうなサーヴァントに喧嘩売られるかもしれない。

 

 それこそ、俺がパンチで始まり、キックで終わる交渉術を有無を言わさずに食らう可能性がある。

 

 くっそーと震えるマスターちゃんを眺めながら、紅茶を口にする。少しぬるくなってきたそれは、香りも薄くなっているようで、苦味を感じた。顔を顰めるのはそれだけじゃない。何やら一つの視線を感じ取れるのだ。

 

『視線の主は、騎士王アルトリア・ペンドラゴンですね。恐らく、騎士らしく主の心配でもしており、何かあれば駆けつけられるようにしているのでしょう』

 

 なるほど。ナビの言う場所をちらりと見てみると、真剣な顔でこちらを見ているきらっきらなオーラを放つ青いサーヴァントが一人。知らない男と話しているから訝しんでいるようだが、マスターちゃんに何もないので、こちらには干渉してこないようだ。

 

 ……突然、一人になったところを辻斬りのように斬り捨てられないか不安なんじゃが。

 これ、仲良くしといたほうが良いんちゃいますか?

 

「ところで藤丸はん。最近、調子はどうでっか? ワシ、これでもここのスタッフやってん。秘技をつこうたマッサージや、入用でしたらマシンガンから核兵器まで、なんでも取り寄せまっせ! まま、なかよーしていきましょーや! へへ、へへへっ」

 

「何突然そのキャラ崩壊……え、怖いんですけど。なんかちょっと危ない人が上の立場の人に媚び売ってるみたいなんですけど…」

 

 手をスリスリ下っ端ムーブで今更ながらに媚を売ってみたが、逆効果のようだ。マスターちゃんは、あ…これ映画とかで昔見たことあるやつだ…とでも言わんばかりの目で、引き気味にそう呟いている。

 

 これは俺のコミュ力の低さが出てしまいましたね。下手にでて真っ先にこのキャラが出てくるあたり、俺も相当偏ってると言わざるを得ないだろう。自分で言っておいてあれだが、相当キモい。

 

『マスター、おやめください。それは女性の方々に向けて良いムーブではありません。あえて言うなら、叔父貴とか若頭とかそこら辺の方々に向けるものではないでしょうか』

 

 それで気に入らんとかでぶん殴られて、以降は一切出番がないモブキャラだろう? 知ってた。

 

 だが、その甲斐あってか、騎士王様は問題ないと判断したのか、それともあいつ程度ならどうとでもできると判断したのか、引いたように顔を反らしていた。

 

 ふ、ふんっ、今回は失うものもデカかったけど、俺の勝ちなんだからねっ。未来への投資なんだから。か、勘違いしないでよねっ!

 

「アルン、それ、女の子の顔で本気で照れながらもう一回やってくれない?」

 

「言い値で払いますよ」

 

「やってないし、言ってないよね?」

 

 両手を合わせて頼み込んでくるアストルフォと財布を取り出すマシュ。

 

 21歳ならぬ26歳拳一発で沈めた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 マスターちゃんとのお茶会から1週間。頭に拳2発喰らったアストルフォの、低下しきった機嫌を回復するのにそれはそれは苦労し……たこともなく、一週間放置した結果。飄々と日常を過ごしていた俺を遠巻きに、チベスナの如き目で見つめ続けるアストルフォにストーキングされていた。

 

 このまま放置すれば、ハイライトがさよならバイバイしかねないが、別にそれはどうでもいいとして…俺の生活には面倒事が増えていた。

 

「アルンさん、こんなところで奇遇だねっ! いつもお疲れ様。今日レイシフト先で海産物を沢山獲ってきたんだー。お裾分けしてあげる!」

 

 そう言って手渡されたのは、プラスチック製の籠いっぱいに詰め込まれた、禍々しい色をした蛸に似た足や毒々しい色のヒトデ達であった。ぶつ切りにされ、粘液を垂らしており、時折思い出したかのようにピクピクと動いている。これは断じて、海鮮物でもなければ、お裾分けするものでもない。

 

 君、もしかしてだけど、俺の事嫌いじゃないか? 攻略やら好感度やら言っているけども、ガン無視だよね。

 

「アリ……ガ、ト……」

 

 心を知り、言葉を覚えたばかりのモンスターのように礼を言う。

 笑顔で籠を渡してくるマスターちゃんの背後では、いつもは素敵な笑顔のアーラシュさんが引きつった笑顔を浮かべていた。

 

心を失いそう。

 

 アストルフォどころか、俺がチベットスナギツネ……俺の手の中には蠢く振動が伝わってきている。

 最近、このマスターちゃんは何を考えた結果なのか、行く先々で俺のことを待ち伏せしては偶然あったという体で接触してくるのだ。

 

 時には廊下の曲がり角で。多くは食堂で。はたまた仕事先で。

 

 アサシン仕込みなのか、気配を消すのが割りと上手いが気配察知スキルの前では無力どころか、ワクワクそわそわしている様子まで全てお見通しなのである。その度に悲しきモンスターの顔を晒す俺に対して、少しは配慮してくれてもいいんじゃないだろうか。

 

 というわけで。

 

「今夜はタコパします!」

 

「どこにタコがあるのよ」

 

「節穴め。そこに蠢く新鮮なタコ足が見えんのか。それに……タコはなくても、パはあるじゃないか」

 

「どこにパがあるのよ」

 

「何言ってんだ。お前らがパだよ」

 

「誰の頭がパーですって?」

 

 夜。仕事も終わり、いつもの俺の部屋に入り浸っているメンバーを集め、呼ばれたことに対して不思議そうにしているメンツを有無を言わさずに、テーブルの周りに座らせる。不思議そうにしているだけという時点で、我々は全員頭パーなのである。

 

 メンバーのうち一人である、既に色々察して顔色の悪いマシュに台拭きを渡し、綺麗に拭かせた卓上に、1度に24個焼くことのできるたこ焼き器を2つ、用意する。その他にも既に調合してある生地とジンジャエールやコーラなどのドリンクを床に並べておいた。

 

 中に入れる具材? タコ以外に何があるのだろうか。変わりタネを入れるのも醍醐味ではあるが、今回はタコが………そう、タコが!!…沢山あるので、それ以外に要りはしないというもの。それを見て逃げ出そうとしたやつをロープで雁字搦めにしておく。

 

 クックックッ、逃さねぇぜダ・ヴィンチちゃん。

 

 因みに。邪ンヌはなんやかんや言ってくるが、割りと俺寄りなので嫌そうな顔してても、心の中では楽しんでいるタイプである。

 

「ねえ、アルン。一応、聞いておくけどね…これって、毒じゃないよね。お腹壊さないよね?」

 

「だそうだが、大天才殿?」

 

「問題無し!」

 

 これまた吹っ切れたことでノリノリとなったダ・ヴィンチちゃんがサムズアップで答える。しかし、この吹っ切れ方は悪い方の吹っ切れ方ではないので、きっといい方向に、いい感じのスパイスを加えてくれるだろう。

 

 その証拠にロープを解いてやれば、いそいそと懐からとある物を取り出し、テーブルの上に置いた。

 

「これはね、とある複数の植物の種子から抽出した、激獄辛…いや、撃滅獄葬辛味成分さ。キャロライナ・リーパー? なにそれ? これがあれば竜種……いやさ、龍種も一撃な劇物だよ!!」

 

「なんだその撃龍槍みたいな名前の劇物。龍種死ぬなら俺らも死ぬやんけ」

 

 どのような植物か非常に気になるところではあるが、つまるところ、これを使用してロシアンルーレットたこ焼きにしようぜってことらしい。

 

 瓶の中の赤を通り越して赤黒い粉を目にし、一斉に顔面の色を消滅させ、信じもしていない神に祈りを捧げる一同にこちらがもはやドン引きのレベル。

 

「おぉ、神よ…迷える子羊を救い給え………そして、そこにいる大天才を地獄に落として頂戴。殺ってくれたら、私、神に感謝し尽くして聖女になれそうな気がします」

 

「ラーメンバレイショピーナツバター!! …ラーメンで思い出したけど、おとーさんが作ったパエリアは絶品だったよー」

 

「レーメンハニトーチョコムース………ん? ジャックちゃん、ラーメンからどうやったらパエリアに繋がるんですか? というか、私呼ばれてないッ!!!」

 

 沖田はそのときどこぞの特異点に遊びに行ってたとかで、邪魔しちゃ悪いと思って呼ばないでおいたんだっけか。

 ジャックと話していたはずだったのに、仲間外れにされているのではないかと必死の形相な沖田に掴みかかられる。

 

 やめろ近い良い匂い。生臭かったので助かりますわ。

 

 流石にその劇物を生地に練り込むと全てが終了となるため、たこ焼き2個程にちょびっと、そう、ほんの一片二片程度入れておいた。これに誰も文句を言わない辺り、俺たちは既に芸人の域に足を踏み込んでいるのではないだろうか。ワンチャンVTuberにでもなれそうなくらい。

 

 たこ焼きに関しては、ピックなんて暗器も同然お手の物ですと言わんばかりに、意外な才能をみせている静謐に任せている。タコの解体? 我が娘が秒でしてくれましたよ。よくある異次元料理漫画の、一瞬にして食材を細切れにするアレ。

 

 ダ・ヴィンチちゃんの劇物もだが、タコというゲテモノもどうなるか、気になるところである。

 

 

 

 




……タコパってなに? 

自分たちで焼くよりも、絶対に屋台で買った方が美味しいじゃん。

味に対する満足度違うじゃん。

準備も後片付けも友達とやらも要らないじゃん。

モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……
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