あるところに、雪のように真っ白でふわふわな髪をもつ可愛らしい少女がいました。服は白と黒のゴスロリ服で名前はグレー。グレーは少し内気な性格でした。それにグレーの家族は皆、髪が灰色でグレーだけが違います。同年代の子は白の魔女と揶揄い、あまり友達はいません。白の魔女とは、この地に伝わる破滅を呼ぶとされる魔女です。なのでほぼぼっちです。
「わたしの髪はなんで真っ白なんだろ」
そんなことを考えながら毎日を過ごしていたある日の事、グレーは夢を見ました。すぐそこが見えないほどの霧に包まれた場所。そこには髪が真っ黒でワインレッドのゴスロリ服を着た、グレーにそっくりな少女がいました。グレーは鳩が豆鉄砲食ったように驚いて目を丸くします。
「どうしたの。そんなに驚いて」
グレーはその少女に名前を訊きました。
「あたし?あたしはあなたよ。あなたはあたし」
グレーは頭を傾げました。わたしはここにいるのにわたしが前にいるのはおかしいと。少女はクスクスと笑いました。
「そうね、ならこんな名前はどう?アナザーってのは…」
そう少女は答えました。グレーはアナザーに尋ねました。ここは何処っと。
「何を言ってるの。ここは森でしょ」
すると霧がすっと晴れ、周りを見渡してみると木々に囲まれていました。木漏れ日が揺れ、鳥のさえずりが聞こえます。そんな世界を眺めてみると、痛っ!とグレーは頭を抑えました。上を見ると栗鼠がどんぐりをグレーの頭に落して笑っています。失礼な栗鼠さん、とグレーは思いました。
「もう時間だわ、次はもう少し長くお話しましょう」
アナザーがそう言って微笑むと、周りがまた霧に包まれ隠れてしまいました。まって!っとグレーはアナザーを追いかけましたがもうそこにはアナザーはいません。そしてグレーは目が覚めます。
いつもの天井、窓からの木漏れ日、規則正しい時計の音、ふかふかのベッド、そこはグレーの部屋でした。グレーは寝起きでまだ頭がぼーっとしてます。しばらく布団の温もりを感じながらぼーっとしていると部屋の外からグレー、ご飯よーっと女性の声が聞こえます。それはグレーのお母さんの声でした。グレーはベッドから起き上がり、洋服に着替え、下の階へ降りました。
ダイニングにはお父さん、お母さん、姉のセルイ、三毛猫のマロン、マンチカンのベイスがいます。グレーはベイスの足を持ち、おはようと挨拶をしました。食卓の下にいるマロンにも挨拶をしようとしましたがマロンがそっぽを向いて、グレーはムッとしました。
「グレー、早く食べなさい」
お母さんはグレーにそう言って焼きたてのフレンチトーストをグレーに出しました。とても甘い匂いがします。一口食べると口の中がまろやかになる甘さです。しかし、いつもは「甘ぇ…」と言うグレーですが夢で見たことが気にかかり、まだぼーっとしてます。
「じゃあ、父さん仕事へ行ってくるよ。グレー、今日は天気がいいんだ。外へ遊びに行きなさい。」
お父さんは食べ終わるとお母さんとキスをして車で仕事へ行きました。お母さんも今日は用事でお出掛けです。グレーは春休み中でまだお休み。グレーはほぼぼっちなので退屈しのぎにテレビをつけました。しかし、あまり面白い番組はやっていません。つまんないっと思い、グレーはお母さんが作ってくれたお昼ご飯をお弁当箱に詰め、ショルダーバッグに入れて外へと出掛けて行きました。
グレーは少し離れた草原でお昼ご飯を食べながら寝転がりました。昨日の夢がとても気になって仕方がありません。そんな時になにか声が聞こえてきました。耳を傾けるとグレーを呼ぶ声が聞こえます。グレーは声がする方へと歩み始めました。
しばらく歩くと、大きな森につきました。その森は家族からは子供一人では入っては行けないと言われた迷いの森でした。しかしその森からはグレーを呼ぶ声が聞こえます。グレーは好奇心に負け、森の中へと入っていきました。グレーは声が聞こえる方へ、深い深い森を進みます。すると森の出口が見えてきました。出口へ進むとそこにはなんと森に囲まれた、大きなお花畑がありました。綺麗っと思いグレーはお花で冠やネックレスを作りました。
グレーが夢中になっているとあっという間に夕方になってしまいました。大変、早く帰らなきゃとグレーは冠やネックレスを置いて森へ走りました。その途中グレーの頭になにかが落ちました。痛っ!とグレーは頭に落ちたものを拾いました。それはどんぐりでした。上を見上げると栗鼠がどんぐりを落として大慌てしていました。
その日の夜、グレーはまた夢を見ました。昨日とは少し違って周りがお花畑でした。
「どう?あたしのサプライズは?あとこれ、あたしのために作ってくれたの?ありがとう♪」
グレーの目の前には昨日作った花の冠と花のネックレスを付けたアナザーがいました。
「ねぇ、遊びましょう」
アナザーがそう言うと周りにボールや人形などか現れました。グレーはえっ?と理解できてない様子です。アナザーはボールを手に取りグレーに向けて投げ、グレーはボールをキャッチしました。
「ほら、投げ返して」
そうアナザーが微笑みました。グレーも最初は戸惑っていましたが少しづつ楽しくなっていきました。誰かと遊ぶことがなかったグレーにとって新鮮味を感じました。二人がしばらく遊んでいるとグレーがロケット型のおもちゃを森の方へ飛ばしてしまいました。グレーはアナザーに取りに行ってくると言い、森の方へ走って行きました。グレーはロケットを拾い、アナザーの元へ戻ろうとした時。
「やぁ、こんにちわ」
ヘンテコな顔のジェントルマンスーツを着た男が目の前に現れました。グレーは驚きすぎて声が出ず、慌てて木の後ろに隠れました。
「おっと、そんなに怯えないでくれたまえ。私はクロドリ。色んな夢を旅している紳士さ。ここには不思議な匂いがしたから寄ってみたんだ。ちなみにこの杖は世界樹の木を特殊な方法で加工して作ってもらった特注品で世界にふたつもない品なんだ。この葉巻も世界樹の葉で作ったんだ。他にもこの頭ねぇ・・・」
男は聞いてもいないことをペラペラ喋ってきました。しばらく独り言を喋った男は落ちていたロケットに気づきグレーに差し出しました。
「これは君のかな?」
グレーは警戒しながらロケットを取りました。
「ここは随分賑やかな世界だね、色んなところから話し声が聞こえるよ」
クロドリはそう言いましたがグレーには何も聞こえません。グレーは薬物でもやっているのかなと思いました。
「よーく耳を澄ませてごらん、ほーら聞こえるだろ」
半信半疑で耳を澄ますと何処からか声が聞こえてきました。
「……(歌)」
よく聞くとその声は周りの花や動物達の歌い声でした。グレーは驚いて尻餅をついてしまいました。
「ここは君の世界だろ、そんなに驚くことかい?」
グレーはクロドリに手を貸してもらい、立ち上がると遠くからグレーを呼ぶ声がしました。
「さて、私もそろそろ行くとするかな。また会おう、goodbye!」
そう言うとクロドリは霧のようになって消えてしましました。そしてグレーも目が覚めました。
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