至高の兄(骸骨)と究極の妹(小悪魔)   作:生コーヒー狸

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3話でも纏められなかったので、このシリーズは全4話構成に変更します。


大墳墓への挑戦者(3)

「ハッ…私はいったい!?それにここは…」

 

「目が覚めたか?ここは最上階だ。クアイエッセよ!よくぞここまで登って来たな。」

 

 目の前には豪華な全身鎧を纏い、両手にそれぞれグレートソードを手にした漆黒の戦士がいた。

 

「たしか白い稲妻を浴びて……いや、あれは夢だったに違いない!何故か体力や魔力が回復しているが、これこそ神の恩恵!――という事は…貴方が最後の試練ですか?望むところです!」

 

「……(こいつ相当イイ性格してるな…あの女の兄だけあって)」

 

 ナーべの魔法で黒焦げにされた事を夢だと思いこみ、いつの間にか回復している事も神の恩恵と断じるクアイエッセ。

 

「オホン、その前に最上階まで登って来た(登らせてやった)事の褒美として、お前が求めていた存在に会わせてやろう!ナーべ、あの女を連れてきてやれ。」

 

 漆黒の戦士がそう言うと、部屋の奥から何処かで見たような気がする怪しい格好の女が、両手を後ろ手で縛られた女を連れてやって来た。縛られた女はクアイエッセも良く知っている女だ。何せ自分の妹、それも今まで様々なトラブルを引き起こし、最後に特大の事を仕出かして出奔したクレマンティーヌだ。しかし……

 

「ありがとうお兄ちゃん!私を助けに来てくれたんだね(キラッ☆)」

 

 自分が知る妹のイメージを粉々に破壊する仕草に、クアイエッセの心の中の何かが変わった。決定的な何かが……そう思った直後、クアイエッセの心が塗り潰されていく。思考の一部が変わっていく感覚。それが何か理解して、何が起こったかを悟ったとき、クアイエッセは大いに驚愕し、ロリコンにもかかわらず歓喜する。

 

「このクレマンティーヌは偽物だ。ありえないよ。(俺の妹がこんなに可愛いわけがない)」

 

「……(少しあざと過ぎないか?俺はこういうのも嫌いじゃないが…)」

 

「……(すべった?言われた通りにやったのに!?)」

 

「……(しかし何というかあの仕草、こう…グッとくるものがあるな。悪くないかもしれん。見た目があの妹というのがちょっといただけない――いや、こういうのをギャップ萌えというんだったか?そこまで計算しての事とは、さすがは神という事か!)」

 

<<おいクレマンティーヌ、偽物とか言われてるぞ!>>

 

<<そんなこと言われても!アタシは教えられたとおりに……こういうのはアタシの芸風じゃないんです!>>

 

「あのー、そちらの事情は存じ上げませんが、その偽クレマンティーヌが「ごほうび」という事でよろしいのでしょうか?」

 

「そ、そういう事になるが…偽クレマンティーヌ?」

 

「はい。私には分かりますとも。あの妹は加虐性欲者で殺人狂の人格破綻者です。そちらのセクシーでキュートなご婦人(ババア)のような「萌え」など欠片も持ち合わせてありません。まったく…幼いころはあんなにも可愛らしく控えめだったというのに。やはり女というのは――」

 

「テメーに言われたくねえよクソ兄貴!そっちだって奴隷のエルフ姉妹を監禁して楽しんでんだろうが?神官の治癒魔法が必要なほど痛めつけたのも知ってんだぞ!」

 

「何をバカな!あの姉妹は奴隷などではない。「幼さ」を失った妹に代わって私を癒してくれる天使ちゃんだ!神官を呼んだのだって、姉妹の損傷した耳を治す為にコネと金を使って呼んだんだっ――何故それを知っている!?ま、まさか本当にクレマンティーヌなのか?」

 

「ま、まさかテメー…ロリコンだったのかよ?それで…ハ、ハハハハ。だから私が大きくなってからは…(優しくてカッコ良かった兄が最低のロリぺド野郎だったなんて…)」

 

「フッ、エルフは人間に比べて成長に時間がかかる。あの姉妹も10年以上たっても外見は殆ど成長していない。あれなら私はあと30年は戦える!だがさっきの「キラッ☆」は良かったぞ。お前にもあんな魅力があったとはな。私は新しい扉を開いたかもしれない。本当に残念だ…もっと早くそれに気が付いていれば。」

 

 兄妹の誤解が解けかけていた頃、第六階層では両腕を失いながらも、コキュートスへ必死に喰い下がっている漆黒聖典隊長の雄姿があった。

 

「それにしても妹萌え+ババア萌え、さらにギャップ萌えというのか。こういうのも悪くないな……クレマンティーヌよ、お前が心を入れ替えたというのなら兄として妹の減刑を嘆願してやろうじゃないか。さすがに無罪放免とはいかないが……兄妹で力を合わせて罪を償うという事なら神官長も寛大な措置を取ってくれるだろう。会長達には強いコネがあるしな。どうだ?お兄ちゃんとやり直さないか?」

 

「誰がババアだ?ふざけんじゃねーよ変態クソ兄貴!何がお兄ちゃんだ!」

 

「これは「ツンデレ」とうやつか?聞いた事はあったが新鮮な感覚だ!あの姉妹の庇護欲をそそられる態度もいいが、こういった物もあったのか!まさに「ごほうび」というやつだな。さすがは神の与えた試練だ!」

 

 アインズの存在も忘れて兄妹喧嘩?を続ける2人。兄の方は歩み寄りを見せ始めたが、裏切られた妹の心の傷は深い様だ。蟠りを解く為にも、ここは第三者の仲介が必要だろう。

 

「ナーベラルよ、これは仲直りという事でいいのか?」

 

「私には下等生物(バカ)の生態は理解出来かねますが、当初の予定通り兄の方の下等生物(ロリコン)が譲歩しているのですから問題は無いと考えます。さすがはアインズ様。」

 

「ふむ、私はさっちんと喧嘩などした事は無いからな。兄妹喧嘩というのはいまいち理解に苦しむ。お前達はどうなのだ?プレアデス同士で仲は良いと思っているが?」

 

「私達も姉妹同士でちょっとした意見の違いもありますが、喧嘩などという愚かな行為は致しません。アインズ様とさっちん様という至高にして究極のご兄妹の仲睦まじい様子を、目の当たりにしているのですから。」

 

「フハハハハハ!そうだろう、そうだろう。そうやって仲良くしないとな。」

 

 しばらく兄妹の言い争いを眺めていたアインズは、そろそろ頃合いか?と声をかける。

 

「2人ともその辺にしておけ。そうやっていがみ合っていてもしょうがないだろう。お互いの誤解?も解けたのなら、蟠りを捨てて兄妹仲良くするのが一番だぞ。」

 

「その通りです!私が間違っていました。もっと早くに妹の魅力に気付いてやる事が出来ていれば……貴方が何方かは存じ上げませんが、このような機会を設けて頂き感謝に堪えません。妹よ、お前からも御礼を言いなさい。」

 

「そうだな。家族…兄妹の絆というのは素晴しいものだ。」

 

「ちょっ…これはそんな問題じゃ…」

 

 己の過ちを悔いる様なクアイエッセにアインズも満足そうだ。しかしクレマンティーヌは納得いかない。確かにこれまで感じていた兄へのコンプレックスや、どろどろした憎しみの情念は綺麗さっぱり無くなった。しかしあまりのバカバカしさと兄への軽蔑の念に、これまでの人生は何だったのかと思ってしまう。

 

<<クレマンティーヌ、兄がこうして歩み寄ってくれているのだから、お前も我儘を言わずにだな…>>

 

<<ハァ?こんなロリコンと仲良くなんて!>>

 

<<男にはそういった趣味もあるんだ。それにこれからは悔い改めると言っているだろ?>>

 

 大親友だったぺロロンチーノの事もあり、アインズとしては特殊な性癖にも比較的寛容だ。ぺロロンチーノの趣味に賛同する訳ではないが、彼だって実際に犯罪行為に手を出したりはしていなかった。同じ男としてもそういった事を理由に友人を軽蔑したりはしない。妹には内緒だが。

 

<<えっ…アインズ様もロリコン!?ウソ…最悪>>

 

<<何を言っている!私は断じてロリコンではない!アルベドの様なグラマーでおっぱいが大きいほうが好みだ!それに妹だっているし、もうすぐ子供が生まれるんだぞ>>

 

<<子供!?骨なのにどうやって??ちゃんと付いてるの?>>

 

<<今はそういった話しをしているのではない。お前達兄妹についてだ!>>

 

 さすがにロリコン呼ばわりされては黙ってはいられない。もし妹にそんな誤解をされたら生きていけない。アインズの怒りの波動がメッセージを通しても伝わって来る。

 

<<ヒッ…申し訳ありません。物理的な疑問というか…>>

 

<<とにかくだ!多少の事には目を瞑ってやれ。それで仲直りだ>>

 

<<わ、分かりました!もうどうでもいいです。お任せします>>

 

 こうしてアインズの尽力の甲斐もあって、長くすれ違っていた兄妹の和解が成立した。兄は過ちを認めて、妹は誤解を解いた。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「見事であったぞコキュートス。お前の戦いは記録された映像で改めて確認させて貰うが、さっちんからも圧倒的だったと聞いている。褒美として貸し与えた武器はそのまま所持する事を許すとしよう。」

 

「ハハッ、有リ難キ幸セ!」

 

 仲直りした兄妹を連れて第六階層へ転移して来たアインズは、コキュートスの戦いぶりを称賛していた。ちなみに《パーフェクト・ウォリアー/完璧なる戦士》は解除して、いつもの姿に戻っている。

 アインズとしては最後の試練としてクアイエッセに立ち塞がるつもりでいたのだが、必要がなくなってしまったので解除したのだ。出来れば戦士として戦ってみたかったという気持ちもあったので残念だったが、和解した兄妹を見て思いとどまったのだ。クアイエッセが予想以上に情けなかったというのもあったが……※デスナイトにさえ勝てないのは想定外だった。ボロクソにやられたクアイエッセを見て、慌ててソウルイーターとデスナイトを帰還させたくらいだ。

 

「さて…闘技場のフィールド効果でHP1の状態で生きているとはいえ、これ以上苦しめるのは本意ではない。プレアデスよ、奴らの装備を剥ぎ取れ。その後でルプスレギナが回復してやれ。」

 

「かしこまりました。アインズ様。」

 

 第六階層の闘技場では様々なシチュエーションに対応する為の機能がある。正々堂々と戦う為にナザリックのバフ効果を無効化したり、今回の様に致命傷を受けてもHP1で死亡しない様にする効果だ。この効果はギルメン同士のPVPで使われていた。

 

 あちこちで倒れている面々の装備を容赦なく剥ぎ取っていくプレアデス。瀕死の彼らは「ぎゃっ」とか「ううっ」と呻き声をあげるが、彼女達に気にするそぶりは無い。全員の装備を剥ぎ終えた後、ルプスレギナが全員を回復していく。さすがに見苦しいので代わりの衣服を着せてやっていたが。

 

「さてと…お前達はナザリックに対して礼を示し、さらに武と勇をも示した。褒美としてお前達の話しを聞いてやろう。《グレーター・クリエイト・アイテム/上位道具作成》」

 

 そう言うとアインズは魔法で玉座を作って腰掛ける。法国の者達は慌ててアインズの前に平伏する。守護者達もアインズの後方で控えているが、何かをすれば即座に鎮圧出来る様に警戒している。

 

「フム……礼儀のほうは問題無い様ですね。では代表の者、発言を許可します。」

 

「ははっ。私はスレイン法国、土の神官長レイモン・ザーグ・ローランサンと申します。まずは無力な我らに拝謁の機会を戴けた事に感謝いたします。」

 

「我が名はアインズ・ウール・ゴウン。このナザリック地下大墳墓の支配者だ。そしてこの子が我が妹のさっちんだ。知っているとは思うが、我ら兄妹はお前達が言うプレイヤーと呼ばれる存在だ。」

 

 想定していたとはいえ、はっきりと肯定された事で法国の面々は改めて驚愕する。十三英雄以来、二百年振りに確認されたぷれいやー。法国にとっては六大神を喪ってより五百年振りに庇護を得られるかもしれないのだ。レイモンは一瞬たりとも気を抜けないと集中する。

 

<<お兄ちゃーん、ちょっといいかな?>>

 

<<どうしたんだ?>>

 

<<ちょっとお願いがあるの…ごにょごにょ>>

 

<<成程、それ位はかまわないぞ。そういった感じで話しをしておこう>>

 

<<よろしく~♪>>

 

 さっちんがお願いしたのは漆黒の剣(白)の事だ。スレイン法国に寛大な措置をとるのは彼らがさっちんに要請し、それをさっちんがアインズへ頼んだという事にする為だ。これで漆黒の剣(白)、さらにさっちんの重要度が大きくなる。漆黒の剣(白)の小遣い稼ぎは如何でもいいが、妹の重要度に影響するならアインズにも否は無い。

 

「まずは最初に言っておく。お前達が無事なのは妹から嘆願があったからだ。それが無ければお前達の何人かは命を失っていただろう。詳しい事は国へ帰ってからスタメンという男に聞くがよい。」

 

「スタメン!?なぜ我が弟の名が…」

 

 当然、兄であるニグンは困惑する。弟は任務の為にエ・ランテルへ向かったはずだ。

 

「お前の弟らしいな。弟に感謝しておくがいい。スタメンがさっちんの配下に必死に懇願したそうだ。だから配下も感ずるものがあり、妹に伺いをたてたのだ。そして妹の言葉は私にとって非常に重要視すべき事だ。」

 

「お、弟が私の為に!な、何という…」

 

 弟のとった行動にニグンは感激する。そして何人かはこう考える――アインズ・ウール・ゴウン様は苛烈な御方だが、妹君の事は無碍にしない。そして妹やその配下は「人に優しい御方♥」だと。つまり何か交渉をするなら、妹君は難しいとしても、その配下であれば多少は接触もし易いはずだ。

 

「家族への愛と、友への友情――これが私の最も重要視する事だ。今はもう一つ…二つ増えたがな。だからそこの兄妹にも力を貸したのだ。」

 

 そう言ってクアイエッセとクレマンティーヌを見やり、兄妹の事情と和解(笑)について説明する。

 

「何と…その様な事情があったとは!?」

 

「……(第五席次って最低のクズね)」

 

「ありえん……」

 

「事情は承知しました。アインズ・ウール・ゴウン様のお口添えがあるというなら、無罪…とは確約出来ませんが、最大限に配慮させていただきます。」

 

「!!(よっしゃあー♪)」

 

 ガッツポーズをとるクレマンティーヌ。法国に戻ったら希望の未来にReady Go!だ。

 

「他にも何某かのお力添えを頂けるとの事ですが?」

 

「例の叡者の額冠は妹が正当な報酬として入手した物だ。よって代替品となる遠隔視の鏡と、蘇生魔法を込めたスクロールを用意した。持ち帰るがいい。」

 

「そ、それ程の物を頂けるとは感謝いたします。(やはり叡者の額冠は神にとっても重要な品だったか)」

 

 法国でも、いや世界に4つしか存在しない希少品だが、それでぷれいやーの関心を買えるなら許容範囲だ。特にスクロールについては魅力的だ。それに遠隔視の鏡というのも説明を聞けば、かなりのアイテムという事が理解出来た。

 

「あの叡者の額冠は酷過ぎるぞ。メリットとデメリットが全く釣り合っていない。たかが第八位階魔法を使う為に、人ひとりを廃人にするとは犠牲が大き過ぎる。何を考えてあの様な欠陥品を使っているのだ?」

 

 アインズもさっちんと同意見だ。叡者の額冠=ゴミである。しかしナザリック随一のアイテムフェチは欠陥品をそのままにはしていなかった!

 

「け、欠陥品でございますか?」

 

「先程も言ったが、メリットとデメリットが全く釣り合っていない。それに装備制限が100万人に1人とかお無理があるだろう?パンドラズ・アクター、例の物を見せてやれ!」

 

「ハッ!!」

 

 ドイツ語は出なかったが、ビシッとした敬礼で答えたパンドラズ・アクターは叡者の額冠に良く似たアイテムを取りだすと饒舌な口調で説明する。

 

「これが「叡者の額冠(ツヴァイ)」でございます!装着者はかなりの生命力を消耗しますが、精神や他への副作用は一切ございません!さらに第二位階以上の魔法が使用出来る女性であれば誰でも装備可能!勿論ですが着脱も自由です。消費する生命力に応じて第八位階までの魔法を行使出来ます。現在は生命力の消費軽減と男性でも装備可能な様に改良中でございます!」

 

「短期間ではそんなものか。ご苦労だったなパンドラズ・アクター。」

 

「我が神の御望みとあらば。」

 

「なっっ!?(クレマンティーヌが出奔して1ヶ月も経っていないぞ。その短期間で…)」

 

 法国にとっては驚くべき事実だった。当時の法国で最高の技術者達が総力を結集して作り上げ、あまりの技術的難易度と素材の希少さから同じ物を造る事は不可能とまで言われた秘宝をこうも容易く再現、いや上回ったのだ!

 

「は、払える限りの代価をお支払いしますっ!何卒その叡者の額冠Ⅱを我が国へっ!」

 

「その辺りは条件次第だ――パンドラズ・アクター?」

 

「この様な未完成品を世に出すなど、制作者としては承服いたしかねます。アインズ様がどうしてもと仰るなら話しは別ですが…」

 

「という事だ。それにパンドラズ・アクターは他にも仕事を抱えているからな。(たっぷり吹っ掛けてやるのもいいかもしれんな♪いいカモだ)次の話しに移ってくれ。」

 

 いよいよ本題か…と気を引き締めるレイモン。元々クレマンティーヌと叡者の額冠については別件だったのだ。

 

「それで我が国としましては、ぜひともアインズ・ウール・ゴウン様やさっちん様を始めとした皆様と友好的な関係を築きたいと考えておりまして、人類のおかれた現状も考慮して頂ければと懇願する次第であります。」

 

「ふむ…デミウルゴスはどう思う?」

 

「はい。私としましても人間との関わりに方には様々な腹案がございますので、即座に敵対という考えは持っておりません。しかしスレイン法国には「人間以外を排斥」という、非常に身勝手で奢り高ぶった考えがありますので、友好関係を持つというのは些か無理があるのではないかと愚考いたします。」

 

 デミウルゴスの言葉を聞いた守護者やNPC達が一斉に威圧するような気配を放つ。人間如きが身の程知らずな…という思いがはっきり出ている。

 

「お、お待ち下さいっ!スレイン法国の全てがそうでは在りません。他種族との共存共栄を目指して、陰ながら活動している者達も少なくない数が存在しているのです!実を言うと私はその組織を束ねている者なのです!」

 

 必死の思いでレイモンが訴えかける。何人かは深く頷き、他の何人かは驚愕の声を上げる。

 

「あの「組織」の噂は本当だったのか?しかしレイモン神官長が…」

 

「遂に我らが表舞台に立つ時が来たという事かレイモン(獣人派(ケモナー))よ――ビーストマンの妾は健在か?」

 

「息子も独り立ちして今はのんびりとしている。カイレ(エルフ派(ショタ))こそエルフの小僧とは仲良くやっておるのか?」

 

「カッカッカ…儂らはラブラブ♥じゃよ。それに小僧などと言っては失礼じゃ。お前さんどころか儂よりも年上のナイスガイじゃぞ♪娘はアーグランド評議国で旦那と元気にしとるよ。」

 

「あり、ありえない……」

 

 次々と明かされる法国を大混乱に陥れるだろう爆弾級のスキャンダルに、約1名は信じられないといった様子だ。

 

「私のところの姉妹も元気にしております。いずれは(何十年後の話しだ!?)姉妹との間に子をもうけたいと考えています。」

 

「テメーはどこまで堕ちれば気が済むんだ!」

 

「クックックッ…これは興味深い(建設予定の「牧場」にとってよい参考になる)」

 

 デミウルゴスにとっては非常に有意義な情報だった。彼が計画している牧場の成否にも関わってくる事実だ。

 

「成程…法国にもそういった考えの者がいるのは素晴しい。私としても応援してやりたいものだ。(人間原理主義ばかりかと思ったが…まあクアイエッセみたいのも居たしな)」

 

「おお!貴方様のお力添えがあれば恐れる物などありませぬ!」

 

「うむ。神都へ戻ったらさっそく行動開始じゃ!」

 

「遂に!遂に我々ダブルピースが決起する時が来たのですね!」

 

「あ、あ、ありえるかああぁ!漆黒聖典の皆様っ!これは人類の為に戦い続けてきた皆様を裏切る大罪です!こんな事は許されませんぞっ!」

 

 生の神殿の敬虔な信徒で過激な人外排斥主義のうえ、亜人の村落の殲滅などを基本任務としてきた陽光聖典隊長のニグンにとって信じられない、そして許しがたい事実であった。そしてニグンと同様に人外の者と戦い続けてきたはずの漆黒聖典の者達は……

 

「お、俺も実はドワーフに興味が…あの髭が…筋肉が…┌(┌^o^)┐」

 

第八席次「巨盾万壁」ドワーフ派に加えて同性愛をカミングアウト!

 

「私も以前の任務でローパー系モンスターに×××されてからずっと…」

 

 第十一次席次「占星千里」まさかの異形種派宣言!!

 

「そんなはずはない!ありえない!隊長殿は違いますよね?」

 

「私が想いを寄せる彼女(番外席次)はエルフの血を引いている。さすがに同性やローパーというのは理解しかねるがな。」

 

 漆黒聖典隊長、堂々のエルフ派宣言である。さるげなく部下をディスるのも忘れない。

 

「おお!隊長殿が私と志しを同じくしていたとは!」

 

「いや!ありえん!ありえん!ありえん!こんな事はあっちゃいけないんだ…」

 

 もはやニグンに感情を抑える事は出来なかった。法国の先頭に立って人外と戦い続けていた彼らがどうして?と慟哭するが、別におかしな事ではないのかもしれない。数多くの人外と戦ってきたという事は、それだけ多く人外と接する機会があったという事だ。

 

 つまりそういった機会が多ければ多いほど、彼らは亜人達や異業種を理解する機会に恵まれていたとも言えるだろう。ならば今までの固定観念を変えてしまう者だって一定数は存在するのが道理である。そしてニグンもまた、己の鋼の如き信仰心に罅が入っていくのを感じずには居られなかった。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「メッセージ1本で金貨1,000枚とはな!大儲けだぜ♪」

 

 ルクルットは非常にご機嫌だ。何せお嬢様に雇われてからは今までの人生がウソの様にツキまくり――金はガッポリ、不思議な力もゲットして、女にもモテモテ♪なのだから笑いが止まらない。

 

「お嬢様次第になりますが、スレイン法国とのパイプも大きいですね!今回の報酬は私達が全て頂けるという有り難いお話ですがどうしますか?」

 

さらにスレイン法国の要人とパイプまで出来たのだ。お嬢様との関係もあるが、先程の話しぶりから法国と敵対する様子は感じなかったので大丈夫だろう。

 

「常識的に考えれば、装備の新調や道具の補充ですけど…お嬢様から下賜された装備以上の物なんてエ・ランテルじゃ手に入りませんよね。」

 

 彼らが身に着けている純白の装備はアダマンタイト級でも十分通用する物だ。色の事は気にしてはいけない。

 

「冒険者組合長からの相談はどうするのであるか?例の近郊の森に塒があるという…」

 

「俺達漆黒の剣(白)はお嬢様の専属チームだ。勝手な行動は慎むべきじゃないか?」

 

「そうですよね。まずはお嬢様からの連絡を待ちましょう。」

 

 後日、討伐依頼を受けた複数の冒険者チームが出撃したが盗賊団に返り討ちにあった。生き残りの銅級冒険者の女性は、それを機に冒険者を廃業して近隣の開拓村へ移住したという。そして村の狩人と結ばれて幸せに暮らしましたとさ。めでたし…めでたし…

 




書いていて収拾がつかなくなってきましたが、次こそ法国シリーズ終了です。
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