至高の兄(骸骨)と究極の妹(小悪魔)   作:生コーヒー狸

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今回は微エロネタと下ネタが含まれます。
特に食事中の方は注意して下さい。


大墳墓への侵入者

 帝都アーウィンタールの郊外にあるフェメール伯爵の屋敷。その庭園には早朝にも係わらず多くの人間が集まっていた。多くが戦士やレンジャー、神官に魔法使いといった出で立ちをしている。普通に考えれば冒険者という事になるが、彼らは全員がワーカーと呼ばれる冒険者組合には属さない者達で、金銭の為なら非合法な依頼も辞さない存在である。

 

 帝都を中心に活動するワーカーチーム「フォーサイト」の4人も、今回の伯爵からの依頼を受けたチームである。最後に到着したフォーサイトは他のチームへと挨拶に向かう。組合の様な後ろ盾がないワーカーにとっては同業者との関係が重要視される。今回の様に合同で依頼にあたるなら尚更だ。もっとも同業者=ライバルでもあるので馴れ合う様な関係ではないが。

 

「グリンガムのところの「ヘビーマッシャー」に老公が率いる「竜狩り」そして、あの「天武」かよ……」

 

「うげぇ~!?ヘビーマッシャーが参加するのは聞いていたけど、()()()も一緒なの?サイッテー…じゃあ、あのエルフ達が例の…」

 

 チームのレンジャー役であるイミーナが、リーダー兼恋人であるヘッケランに愚痴を零す。どうやらイミーナは天武のリーダーの男に思うところがある様だ。ちなみにヘッケランも似たような反応だ。

 

「イミーナさん…その様な露骨な態度は…」

 

「私も女性として、あの()()()には好感を持てない。」

 

 神官のロバーデイクが彼女を諌めるが、フォーサイト最年少ながら第三位階魔法すら使いこなす、マジックキャスターのアルシェはイミーナと同意見だった。

 

「俺達で最後みたいだな。待たせてしまったか?」

 

「ヘッケランではないか。遅かったな。お前のチーム以外は揃っておるぞ!」

 

「これて全員か揃ったかの。ては道中の役割分担を決めるとするかの。」

 

 フォーサイトとは比較的友好関係にあるヘビーマッシャーのグリンガムと、80歳という高齢でありながら現役最年長ワーカーとして知られるパルパトラがヘッケランに応える。

 

「そちらさんとは初めてだったよな?天武のエルヤー・ウズルス――噂は色々と聞いているぜ。俺はフォーサイトのヘッケランだ。」

 

「こちらこそ!フォーサイトの噂は聞いていますよ。」

 

 そう答えたのは天武のリーダーである剣士エルヤー・ウズルス。剣の腕だけならアダマンタイト級に匹敵するという噂で、刀という珍しい武器を愛用する事で知られている。実力はあるのだが性格と、彼の率いるチームである()()()()()()()()()で、同業者であるワーカーはおろか冒険者からの評判も良くない。ヘッケランとしてもイミーナの事があり、彼とはあまり関わりたくないと思っていた。

 

「あちらがフォーサイトのメンバーですね?おやおやぁ~」

 

 イミーナを目にしたエルヤーの目に不穏なものが宿る。

 

「おいおい、俺の女に手をだすなよ?」

 

「勿論ですとも。今回は同じ仕事をする仲間ですからね。幸い女性には不自由していませんので。(フフン)それで先程の話なのですが、道中の指揮権については遠慮させて頂きます。よほどの事でなければ指揮権を任された方に従いますし、戦闘であればお任せ下さい。私の刀で全て切り伏せてみせますので。」

 

 そう言ってエルヤーは自分のチームメンバーが待機している場所へ歩いて行く。非常に高慢な態度であり、周囲の者もあきれた様子だ。そして彼のチーム天武はリーダーであるエルヤー以外が、全員エルフの女性――それも元奴隷で構成されている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 エルヤーと女性を見るイミーナの目は汚物を見ているかの様だ。険悪になった空気を払拭するかのようにヘッケランが声を上げる。

 

「ご無沙汰しています老公。相変らずお元気そうで!」

 

「主も元気そうて何よりしゃ。それにしてもアレはちと危険よのぉ…」

 

「そうですよねえ。向こうが自滅するだけならまだしも、こっちまで共倒れというのは避けたいですね。」

 

 いままでの実績や長いキャリアから、ワーカーたちから一目置かれているパルパトラにとってもエルヤーの言動は目に余った様で、ヘッケランもそれに追随する。

 

「彼奴が強者であるのは事実であるが、あの言動はいただけないな。油断は命取りに繋がりかねんし、巻き込まれては適わん。」

 

「実際のところエルヤーの実力はどうなんだ?俺は奴が戦っているのを見た事はないんだ。闘技場にも最近は顔を出して無いしな。」

 

「かの帝国四騎士に匹敵するという話だが…老公は何かご存知ですか?」

 

「何かの大罪を犯してスレイン法国を追放されたという噂は聞いた事かある。その事とあの言動が無けれは皇帝陛下も放っておかんしゃろうともな…」

 

「そこまでの実力が!?信じられない…あの様な男が。」

 

「まあ、実力と人間性が比例していれば良かったのだが――」

 

 彼らがエルヤーについての話しをしていると、女性達の黄色い悲鳴が上がる。悲鳴の発生源であるエルヤーと女性達に周りのワーカーたちの視線が集中する。

 

「エルヤー、あんな髭もじゃのドワーフもどきの言っている事なんて気にしちゃダメよ!あのカブト虫みたいな鎧、格好いいとでも思ってるのかしら?だっさー…」

 

「そうよ!あんな爺さんの話しなんて関係ないわ!入歯くらい買えばいいのに。あのチャラ男だって貴方に嫉妬しているだけなんだから。あの貧乳だって大した事ないじゃない。ププッ。」

 

「大丈夫?おっぱい揉む?(あのハーフエルフには無理でしょうね)」

 

「ハハハ僕なら大丈夫さハニー達♪(モミモミ)」

 

 エルヤーに陰口を言っていた3人とハーフエルフ1名を公然とディスる天武のエルフ達。これはちょっとヤバいんじゃないのか?と感じた何名かは戦闘態勢に入っている。

 

 エルフ達は奴隷として売られていたのをエルヤーに買い取られ、どんな扱いをされるか戦々恐々としていたのを、美味しい食事や清潔な衣服を与えられ、さらには切断された耳まで治療された事ですっかりエルヤーの信奉者となっていた。

 彼もまたスレイン法国では異端者だったが、()()の事を知る前にエルフ擁護の発言を咎められて故郷を出奔したのだ。その後は帝国の闘技場で日銭を稼いでいたのだが、さすがのジルクニフでも法国から逃亡して来た政治犯を仕官させる訳にもいかず、帝国でワーカーとして活動していたのだ。

 

 ちなみにエルヤーはワーカーとしての収入の殆どを彼女達に貢いでおり、彼の装備は法国から持ってきた愛刀を除けば銅級冒険者程度のものだが、それでアダマンタイト級に匹敵といわれる実績を残しているのだから凄いものである。

 一方のエルフ達は貴族とはいかないまでも裕福な商家の娘のような服装だ。間違ってもワーカーの仕事に就く者の格好では無い。唯一の装備が「ポンポン」と呼ばれるカラフルな玉房飾りである。これを使ってエルヤーを応援するらしい。そんな天武の評判はあまりよろしくないが、中には「男のロマン」「エルヤーさんパネェっす」といった意見もある。

 

「…ドワーフもどき…カブト虫…」

 

「入歯…」

 

「チャラ男…それに()()って――マズイ!」

 

 3人は何とか持ちこたえたが、自分が気にしている身体的特徴を揶揄されたイミーナは、全ての感情が抜け落ちた様な表情だ。後少しでも切っ掛けがあれば、即座に弓矢を全弾一斉掃射しかねない状況だろう。ヘッケランはロバーデイクとアルシェへ目配せして、イミーナを押さえさせる。

 

「と、とにかく移動中の役割分担を決めてしまいましょう。」

 

「そうであるな!全体を統括するのは天武を除いた3チームで持ち回りという事でどうだろう?」

 

「それて問題無いしゃろ。」

 

 出発前から微妙な雰囲気になってしまった彼らを見て、依頼主であるフェメール伯爵の家臣たちは不安を拭えないのであった。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「ワーカー達は用意した餌に飛びついた様だな。薄汚い盗賊共だが皇帝へのメッセンジャーとなる訳だから多目にみてやるしかないな。依頼料とでも思って割り切るとするか…だが少しだけ、不快だな。」

 

「あんな財宝や金貨どうしたの?あれってユグドラシルのじゃないでしょ?」

 

 ワーカー達がナザリックへ侵入しているのを、アインズは玉座の間で監視していた。すぐそばのプチ玉座には妹のさっちんが座っている。他にもプロジェクトリーダーのデミウルゴス、世話役のセバスやプレアデスが側に控えている。他の守護者達はそれぞれの階層で任務に就いているが、アウラとマーレの姉弟はお出かけ中だ。

 

「ん?ちょっとした臨時収入だ。お兄ちゃんだってナザリックに引き篭もってばかりじゃないんだぞ!(王国中の貴族からパクッたのは内緒だ)」

 

 早朝というにはまだ早い時間、帝国のワーカー達がナザリックの地表部中央にある霊廟の前に集まって、自分達の戦果を報告しあっていた。昨夜の未明にナザリック地下墳墓へ到着し、手始めに敷地内の四隅にあった小型の霊廟をチーム毎に分かれて散策したところ、いきなり大量に発見された財宝に沸き立っていたのだった。財宝の半分は金貨、残りは宝飾品であった。

 

 簡単に財宝が発見された事や、金貨の殆どがリ・エスティーゼ王国で流通している交金貨だったり、宝飾品のデザインがリ・エスティーゼ王国で好まれるデザインである事に気を留める者は殆どいない。そして王国内において貴族の邸宅を狙った大規模な窃盗事件が多発しているという噂を知る者はこの中に誰も居なかった。

 

「うひょー♪たっまんねえな!見ろよこの金貨の山を!?」

 

「このブローチも素敵ね♪売れば金貨500枚はいくんじゃないかしら?」

 

「依頼主の話ではオリハルコン製の武具が大量に発見されたとの事だったが…?我らとしてはこれだけでも十分だと考えるが。」

 

「だが依頼は「遺跡に眠る武具の発見と回収」しゃからの。このまま帰るのは少しますいしゃろ。」

 

「その通りだ。それにさっきの霊廟でこんだけのブツが見つかったんだ。この先の霊廟だって期待できるはずだ。(アルシェの為にもデカイ山を見逃せねえ)」

 

 グリンガムとパルパトラの意見に異を唱えたのはヘッケランだが、これは彼が強欲な守銭奴という訳ではない。彼はフォーサイトのあるメンバーの経済状況を考慮していたのだった。

 

「霊廟の中には地下への階段があると思われる。そこの調査を進言する。(これなら借金も一気に返せる!)」

 

「私としても不満ですね。なにせ私の剣技を披露する相手に出くわしていないのですから。」

 

 エルヤーの意見は論外だが、グリンガムとパルパトラの意見はどちらにも理がある。そしてヘッケランやアルシェの意見もワーカーとして正論なのは間違いない。彼らは喧々囂々と意見を飛ばしあい、途中で軽い食事さえ挟んで、何時の間にかすっかり日も登った頃に結論は出た。

 

「それじゃあ老公の竜狩りを除いた3チームで霊廟の奥を調査する。そして夜までには帰還する。竜狩りは地表部分を調査して、隠し通路を探しつつこの場を確保してもらう。俺達が霊廟で入手したブツの10%と、発見された場合は地下部分の優先調査権を報酬として提供。これで問題はないな?」

 

「我らヘビーマッシャーに異論はない。」

 

「儂らはそれて構わんよ。主らも気をつけて行ってきてくれ。」

 

「勿論フォーサイトは賛成。(大丈夫…いける…)」

 

「全面的に賛成という訳ではないですが、こちらも構いませんよ。譲歩してあげましょう。」

 

 こうして3つのワーカーチームが霊廟の奥へと足を踏み入れていった。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「よかったんですか老公?かなりのアガリが期待できそうでしたけど…」

 

「お前らも甘いの。おかしいと思わんかったのか?こんな()()()()()()()()()()()()()()()()に?既に何組もの冒険者チームか調査済みなのにしゃそ?」

 

「そ、それは確かに!」

 

 パルパトラの鋭い指摘に他のメンバーが大きく頷く。

 

「それに見つかった財宝も怪しい…未発見の遺跡で見慣れた交金貨があるのも不思議と思わんか?それに宝飾品もそんなに古い物には見えんかな。」

 

 彼の理に適った考察にメンバーは感嘆している。そして……

 

「中々鋭い者がいる様だな。亀の甲より年の功といったところか…」

 

 不可知化能力を持ったシモベ達による密着取材によって、ワーカー達の言動は筒抜けになっていた。さらに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 

「そういった訳しゃな。それしゃ儂はちょっと――」

 

「私も同行します、老公。」

 

「ん?聞き逃してしまったが何を言っていたのだ…まあいい、あの二人を追跡しろ。」

 

 アインズの指令を受けたシモベは彼らのすぐ後ろからピッタリと纏わりついている。彼らの鼻歌まで聞こえてくる程だが、彼らは全く気付いていない。

 

「カァァァァーッ、ぺッッ!!!」

 

「少し煙草を減らしたらどうですか、老公?」

 

「今さら無理しゃよ。とれこの辺りて――」

 

 ジョロロロロロロロ――

 

「ふー…スッキリしたわい♪」

 

 シモベが後方から撮影していたのが幸いして、アインズ達が見ているモニターに見苦しいモノが映る事はなかったが、彼らが何をしていたのかは一目瞭然だ。2人の脚の間から見えた一条の線…霊廟の壁にかかる水飛沫…スッキリした表情…

 

「し、神聖なナザリックにおいて……これほど不快なことがあるものか!」

 

「ま、まあオシッコくらいは仕方ないんじゃないのかな?ちょっとマナー違反だけどね…アハハハハハ(キレてる!お兄ちゃんがキレてる!)」

 

「ア…インズ様…その、この不届き者への対処は…い、いかがなさいますか?(これほどの不快感を表すアインズ様は初めて見た!)」

 

 あまりにもアインズの怒りと不快感が大きかったので、さっちんを始めとした周りの者は却って引いてしまった。しかしアインズの怒りは正当なものだろう。自宅の玄関前ともいえる場所、それも神聖な墓地で地面に痰を吐き捨て、あまつさえ立ち小便だ。いくら粗暴なワーカーといっても限度があるだろう。

 

「ユリ・アルファに命じる。ナザリック・オールドガーター50体を率いて奴らを引っ立てて来い。行先は第五階層の氷結牢獄だ。ニューロニストに命じて無礼な振舞いを矯正させろ。」

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「スケルトンにゾンビ……雑魚アンデッドばかりだな。」

 

「数だけは多かったな。それと…気のせいかもしれんが、普通のスケルトンやゾンビより強くなかったか?」

 

「それでも所詮は雑魚アンデッドです。ですがより強いアンデッドに警戒するべきでしょう。ここはアンデッドの巣窟の様ですね。」

 

 霊廟の奥にあった地下への階段、その先にあったのは二本の通路が交差した十字路だった。右側の通路を選んだグリンガム達ヘビーマッシャーの5人は、通路の両側に並ぶ扉を1つずつ開けて室内を調査して行った。それほど広くは無い部屋に待ち受けていたのは低級のアンデッドばかりで、ヘビーマッシャーの敵ではなかった。

 

「それじゃ次は反対側の扉だな。」

 

「我は少し()()()があるので外で待っていてくれ。それほど時間はかからん。」

 

「あいよリーダー。油断はするなよ。」

 

 そう言ってグリンガム以外のメンバーは部屋を後にする。残ったグリンガムは扉が閉まったのを確認すると、その場にしゃがみ込んで――

 

「――な、何だと?ち、中止だ!カメラを止めろ!早くしろっ!間に合わなくなってもしらんぞーっ!!」

 

 ブリブリッ…ブボッ…ブーッブリブリブッブッブッー

 

「ブッフォォォーッ!!」

 

「(文字通り)糞! 糞! 糞!」

 

「ア、アインズ様、お怒りをお、御鎮め下さい…」

 

 グリンガムの行動に不審を抱いたシモベが後方、それもスキルを使用して床に潜り込んでローアングルから撮影していたのが悲劇の元凶だった。そして手遅れだった。モニターいっぱいに映し出されたグリンガムの××は、××の穴の皺まで確認出来るほどの高精度だ。さらにそこからひり出される××はクリアな音声と合わさって、モニターから臭いが漂って来ると錯覚するほどのリアルさだった……

 

 呑んでいたココアを盛大に吹きだしたさっちんのすぐ側に控えていたセバスは、直撃弾を浴びる事になったが微動だにしていない。さすがはナザリックが誇る鋼の執事である。

 

「ルプスレギナ・ベータに命じる。エルダー・リッチ50体を率いて奴らを引っ立てて来い。行先は同じく第五階層の氷結牢獄だ。ただしこのクソ野郎だけは特別に第二階層の黒棺に招待してやれ。恐怖公にもしっかりと伝えておけ。」

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「せっかくですから私は真ん中の通路を選ぶとしましょう。」

 

 そう言って他のチームの了解も取らずに真ん中の通路を選んだエルヤー率いる天武であったが、彼の期待とは裏腹に低級アンデッドはおろかネズミ一匹現れない事に、エルヤーは不満と退屈を感じていたが、取巻きのエルフ達と他愛もない会話をしながら進んでいった。

 

 しばらく進んだ先はかなりの大きさの部屋だった。何十人が走り回っても問題が無いほどの広さで、室内には何もない。自分達が入った入口の反対方向には奥へ続く通路が見える。

 

「丁度良いので昼食にしましょう。部屋の中央なら何者かがやって来ても直ぐに分かりますし、準備する時間も稼げます。」

 

「分かったわ、エルヤー。ちょっと待っててね♪」

 

「マジックバックにサンドウィッチがあるから皆で食べましょう。」

 

「私はお茶の準備をするわ。」

 

 昼食の準備を進めるエルフ達を眺めながらエルヤーはこの墳墓について考える。あまりにも拍子抜けだ。見つかった財宝には満足しているが、彼のお楽しみである「自分を満足させる相手との戦闘」が起こる気配が無い。普通なら危険を回避出来た事は喜ばしいのだが、肥大した自尊心を持った彼には当て嵌まらなかった。それに「もう一つのお楽しみ」を我慢しているのも彼にとってはストレスだった。

 

「それにしても広い部屋ですね。何も無いので余計にそう感じます。」

 

「そうですねえ。すっごい開放感を感じちゃいます。」

 

「ここって地下なのにねー?」

 

「誰も居ないんでしょうか?」

 

 食事を終えたエルヤー達はお茶を飲みながらまったりと過ごしていた。任務中のワーカーに有るまじき行動だが、天武にとってはこれが日常の風景だ。今回は合同依頼という事で他のチームに遠慮していたが、今は別行動で他のチームの目も無い。それ位はエルヤーでも弁えていたが、これまで我慢していたの反動で、少しだけタガが外れてしまった。

 

「開放感…地下…誰も居ない?これならば…ムフフ♥」

 

「あ~っ、エルヤーったらエッチな事考えてるでしょ♪」

 

「うわー変態♪えろすけべー♥」

 

「今回は他のチームが一緒だったもんね。溜まっちゃった?」

 

「フフフフ…せっかくですから「おっぱいチャレンジ」といきますか♪ここなら誰も来ないでしょうし、もし誰かに見られてもモンスターなら大丈夫、最近の帝都は官憲の目も厳しいですからね。それでは3人揃っていってみましょう♪」

 

 アダマンタイト級のバカ野郎、いやワールド級の大バカ野郎がここに居た。当然だが一部始終をライブで見ていた墳墓の支配者は……

 

「クゥ、クズがぁああああああ!!この俺がぁ、仲間たちと共にぃぃ、作り上げたナザリックでぇ、さらにわぁぁ妹の見てる前でぇ!許せるものかぁああ!!」

 

 前の2チームの行為にも我を忘れるほどの怒りと不快感を感じたが、ここまでではなかった。アンデッドの精神鎮静作用によって落ち着いた後では「そうだよな。アンデッドの俺には関係なくなったけど、ゲームじゃないんだから仕方ない事だよな。さすがに場を考えて欲しいが」と一定の理解を示して「ナザリックの各階層に来客用のトイレを設置する必要があるな」と対策を考えた上で、彼らへの教育的指導も終了させて牢内で拘束するだけに留めていた。

 

 しかしエルヤー達の行為は酷過ぎる。ノリノリだったエルフにも情状酌量の余地はない。これがユグドラシルであれば速攻で強制終了のうえで、警告なしでアカウント剥奪は間違いない。あのぺロロンチーノですらここまではやらなかった。

 

 ちなみにさっちんは目と耳をソリュシャンによって塞がれているが、彼らの破廉恥な行為をしっかりと目撃してしまった。既にナーベラルがレベル80モンスターのハンゾウ10体に加えて《サモン・モンスター・10th/第10位階怪物召喚》で呼び出されたケルベロスまで引き連れて、彼らの現行犯逮捕へ向かっている。その時にアインズが告げたのは「悲鳴と呪詛以外、もはや聞きたくないぞ」の一言だけだった。裁判も弁護士も必要無い、そのまま黒棺へ直行だ。

 

「ワーカーという連中はこんなのばかりなのか?いくら何でも酷過ぎるだろう。これだから非正規雇用は…やはり冒険者組合に梃子入れして…」

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「最後に残ったのはフォーサイトというチームか…。こいつらが多少はマシである事を願うとするか。最早何を見せられても驚かん。呆れるだけだ。」

 

 ようやく落ち着いたアインズが見つめるモニターには、エルヤー達の犯行現場と同じ造りの部屋で野営をしているフォーサイトの姿が映っていた。すでにさっちんとセバス達は下がらせている。これ以上の視聴は妹の教育上の観点からも許せなかったのだ。

 

「申し訳ございませんアインズ様。ワーカー共があれほどまでに下劣で礼儀知らずとはこのデミウルゴスの目を以ってしても見抜けませんでした。」

 

「お前の責任ではない。これは私が発案した計画であり、奴らの品性の無さを想定していなかった私の落ち度だ。こちらにも不備があった事だしな。」

 

 たしかに想定外だった。転移後にナザリックへやって来た者達は、今回のワーカー達の様な粗相をする前に殲滅されたり、そんな暇もない程に戦いづくめだったりといった事情があり、今回の様な事態は発生しなかったのだ。現在は各階層に「来客者用トイレ」の建設が進められている。そしてさすがにエルヤーの様なバカは想像の斜め上を超える逸材だった。

 

「しかしこのチーム…いくら最弱のスケルトンやゾンビとしか遭遇していないとはいえ、こんな場所で野営をするとは度胸があるというか、欲深いというか…」

 

 フォーサイトは侵入時に全チームが同意した「夜までに帰還」という取り決めを無視していた。既に結構な量の宝箱を発見しており、このまま帰還すれば大成功間違いなしだろう。これはフォーサイトの、それもアルシェの事情を考慮した行動であった。

 

 彼らがここまでの成果を上げたのは、取り決めを無視して探索を続行した事もあるが、アインズがシモベによる監視を緩和させた事が影響している。他のワーカーの所業を見てきたアインズが、フォーサイトの女性メンバーに配慮したからだ。さすがにアインズも女子トイレを覗き見する様な恥知らずな支配者と誤解されたくは無い。

 

 既に何かを悟っていたアインズは、リーダーの男と神官の男が鼻歌交じりに連れションをしていても動じなかったし、ハーフエルフの女性とマジックキャスターの少女が「お花摘みに行ってきます」と言えば、黙ってチャンネルを変えていた。

 

「今回の依頼は大成功だな。これでアルシェの借金もどうにかなるだろう?それじゃ依頼の大成功の前祝いとして…乾ぱーい!」

 

「乾杯!」

 

 今日一日で入手した財宝を前に全員の表情は明るい。ヘッケランが乾杯の音頭を取り、それに全員が応える。そして夕食を終えて寛ぐフォーサイトの面々。

 

「申し訳ない。私のせいでこんな無理をさせてしまった。」

 

「いやいや、この娘っこは何を言ってるんですかいなって。」

 

「ですね。皆で決めて選んだ仕事です。貴女が気に病む必要はありません。」

 

「そーいうことよ。気にする必要なんかないわ。そろそろ休みましょ!私とヘッケランは先に休ませて貰うわ。」

 

 そう言うとヘッケランとイミーナは連れだってテントに入っていき、テントからそこそこ離れた場所でロバーデイクとアルシェは、それぞれが反対の方向を向いて、出入り口の通路を見張っている。

 

「このフォーサイトというチームは他よりはだいぶマシだな。仲間の為に危険を省みないというのもポイントが高い。立派なチームじゃないか。」

 

「それは宜しゅうございました。」

 

 これはフォーサイトにとっては幸運だったろう。救いようのない天武は別として、監視のタイミングが代わっていれば、竜狩りやヘビーマッシャーの所業にあそこまで激怒しなかったかもしれないし、逆にフォーサイトが彼らの様な目に遭ってもおかしくはなかった。だがしかし……

 

 ヘッケランとイミーナが休息を取っているテントは小刻みに揺れておりギシアン♥ギシアン♥といった音が漏れている。それに背を向けているロバーデイクは右手が規則的に上下しており「色即是空~空即是色~煩悩退散」といった呟きを繰り返す。そしてアルシェもテントの傍で聞き耳を立てて……

 

「元々この計画には無理があった。ナザリック地下大墳墓に薄汚い盗賊を招き、報酬まで与えてやるなどという事はな――まぁ、いい。愚痴は終わりだ……気が変わった。薄汚い盗人として処理してやる。」

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

 トブの大森林の北にある巨大な湖。その周辺にはリザードマンの集落が点在する。そのうちの一つ「緑 爪(グリーン・クロー)」の集落に訪れる存在があった。それは竜と呼ばれる存在。強靭な肉体と様々な能力、そして無限の寿命はこの世界における最強の存在であり、祖霊とともにリザードマン達の信仰対象になっていた。

 

 リザードマン達が固唾を呑んで見守っていると、竜の背から飛び降りる二つの人影があった。それはダークエルフと呼ばれる存在で、リザードマンとの交流が無い為に彼らには判別が出来ないが、幼い男女であった。

 

「皆さん聞こえますか!?あたし達は偉大なる御二方に仕える者で、先触れに来ました!」

 

 少年の方のダークエルフの声が緑爪の集落に響き渡る。

 

「み、皆さんに死を宣言します。い、偉大なる御二方は皆さんを滅ぼす為に軍を動かします。でも偉大なる御二方は皆さんに無駄な抵抗をする時間を与えてくれました。き、今日から8日後に、この湖のリザードマン部族の中で、皆さんを2番目の生贄にします!」

 

 少女の方のダークエルフの声が緑爪の集落に響き渡る。少年と違っておどおどとした話し方だ。

 

「必死の抵抗をして下さーい。嘲笑を以て偉大なる御二方が御喜びになられる様に!」

 

「わ、忘れないで下さい。8日後です!」

 

 そう言うとダークエルフの男女は竜の背に飛び乗る。それを見ていたリザードマン達、その中でも緑爪の族長であるシャースーリュー・シャシャと、その弟でリザードマンに伝わる「四至宝」の一つである「凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)」の所有者であるザリュース・シャシャはというと……

 

「偉大なる御二方に忠誠を尽します」

 

「リザードマンに繁栄を」

 

 全てのリザードマンが平伏している姿を見た2人は困惑する。

 

「お、お姉ちゃん…この村もさっきと同じだよ~?」

 

「おかしいなあ?デミウルゴスに言われた通りにしたんだけど…」

 

 




原作とは異なり無事に生還するはずだったワーカー達ですが
原作並みかそれ以上にアインズ様の怒りを買う羽目に…どうしてこうなった!?
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