至高の兄(骸骨)と究極の妹(小悪魔)   作:生コーヒー狸

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感想欄でウンコネタはしないと書きましたが、もう少しだけお付き合い願います。
さらっと済ませるはずがトイレ関連で3000字になってしまいました。


※9/16改題
 トイレ問題のタグ追加


逆転お白州

 見目麗しいメイドに案内された場所は、ジルクニフ達にとってあまり馴染みのない場所だった。白い砂利が敷き詰められた地面に、草で編まれた敷物。その上には件のワーカーと思われる者達が座っている。全員が真っ白なローブのような服を着ているが、丈が短く両足の部分は素肌のままで靴も履いていない。

 

 ワーカー達は膝を揃えて畳んだ状態で座っているが、両腕を後ろで縛られている。それを見たジルクニフは「姿勢は良く見えるが、あれでは足が痺れるのでは?」と思う。さらに何人かは三角形の木の棒を並べた板の上に座らされ、膝の上には石板が置かれている。多い者で3枚、少ない者は1枚だ。

 

「あれは拷問か?石板が多い者は罪が大きい…主犯という事か?(あの3枚の男はエルヤー・ウズルスだな。あの男…いつか何かをやらかすと思っていたが…やはり仕官を断って正解だ。何がおっぱいチャレンジだ!帝都の風紀を乱しおって!)」

 

 ワーカー達の前には見慣れない様式の建物があるが、ちょうど正面が吹き抜けになっている。内部は壇上になっており最上段には玉座が二つ――そこに座っているのはアインズ・ウール・ゴウンと妹のさっちんだ。一段下がった場所にいるのは検事のデミウルゴス、反対側に弁護人のロウネ・ヴァミリオンだ。さらにワーカー達を左右から挟むようにして壇があり、左側が帝国側の証人で右側がナザリックの証人だ。

 

「くっ…何が罪かを裁くのは自分という事か。それにナザリックの証人という奴らは誰だ?…(全員が人間のようだが…あの男、どこかで見覚えが?…それに一部の証人は未だ到着していないだと?)」

 

 ジルクニフはここへ案内される前の事を思い出す。メイドから裁判の説明があると聞かされて「あっ!そういえば」と慌てて自分の立場を思い出した。そのまま案内された部屋(驚くほど豪勢であった)に待っていたアインズ・ウール・ゴウンと妹のさっちん、その配下達は人間ではなかった。

 

 それについては驚きというよりは、当然だという気持ちが強かった。あれだけの力や財を持つ存在が人間であるはずが無い。部屋に入った瞬間にフールーダが卒倒したが、それにかまっている場合ではなかった。お互いに名乗った後で聞かされた裁判の説明。状況はかなり不利と言わざるを得なかった。

 

「――そういった訳で、皇帝陛下と臣下の皆さんは帝国側の証人席で傍聴していて下さい。何か証言を求められた場合は真実だけを述べるようお願いします。弁護人のロウネ・ヴァミリオン氏は私と一緒に来て頂きます。」

 

 そう言ってデミウルゴスという悪魔が恭しく礼をするが、全く敬意など籠っていない、こちらを嘲笑うかのような礼だった。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「これよりナザリック地下大墳墓における不法侵入と強盗殺人事件についての詮議を開始する。ワーカー達よ、おもてを上げるがよい。」

 

 こうして「お白州」とやらが始った。まずは検事であるデミウルゴスがワーカー達の罪状を並べ立てる。

 

「この様にヘビーマッシャーとフォーサイトの2チームは、墳墓内を警備中であったスケルトン94名、ゾンビを89名殺害するという、稀に見る残虐な犯行を――」

 

「異議あり!スケルトンやゾンビはアンデッドであり、生命をすでに失っています。殺害という表現は不適切です。」

 

 デミウルゴスが述べた罪状に真っ向から反論するロウネ。

 

「ロウネ氏の意見は悪意と偏見に満ちています。我がナザリックでは意思を持って活動するアンデッド(低級のスケルトンやゾンビに意思は無いはずだ)も1個の生命体と認識しております。」

 

「待った!それはあくまでナザリックだけのものであり、周辺国家の一般的な認識とは差異があります。」

 

 ロウネの反論を強引な解釈(詭弁)で封じようとするデミウルゴス。すかさず切り返すロウネだが、ナザリック一の知某を誇るデミウルゴスは全く動じていない。

 

「ふむ…(さすがに無理がないか?デミウルゴス…)」

 

「裁判長――ではなく御奉行。さきほど新しい参考人が到着したので、この件について証言を求めます。」

 

「許可しよう。参考人を連れてまいれ(皇帝が和式を選んだのでこうしているが…やりにくいな)」

 

 ナザリックには裁判の為の「大法廷(アルベドに使われた)」と「お白州」があるのだが、いくら元日本人のアインズでも江戸時代の裁判については全く未知であり、それはデミウルゴスも同様であった。

 

「それでは参考人を紹介します。()()()()()()()()()()()()を務めるレイモン・ザーグ・ローランサン氏です。」

 

「ばっ、馬鹿な!ありえないっ!?」

 

 まさかの人物にジルクニフも同様を隠せない。

 

「私の事は皇帝陛下もご存じの様ですので、自己紹介は省いて証言だけを簡潔にさせて頂きます。えー、アンデッドが生命を持つか否かという問題でありますが、我がスレイン法国では「死の神」であるスルシャーナ様を信仰している関係からも、知性あるアンデッドであれば1個の人格を持った生命体という意見が主流となっております。(すまんな皇帝。アインズ様に恩を売れるなど滅多にないチャンスなのだ)」

 

「ありがとうございます。スレイン法国の高名な神官であるレイモン氏の証言からも、こちらが主張した「殺害」という表現は妥当と考えます。」

 

「ぐぎぎぎぎぎ…(なぜ法国の神官長がここにいる?それにアンデッドが生命体だと!法国の人間がそれを言うのか!)」

 

 あまりの詭弁と予想外の証人の登場と証言に、ジルクニフは歯噛みするしか出来なかったが……

 

「異議あり!スケルトンやゾンビに知性があるとは思えません。ですから先程の証言にあった「知性あるアンデッド」とは矛盾していますっ!」

 

「異議を認めよう。しかしワーカー達がスケルトンやゾンビを倒した事は間違いなく事実である。よって「器物破損」という事でどうだろうか?(自動でPOPするシモベだし、俺は気にしていないんだがな)」

 

「御奉行の裁定に異論はございません(スケルトンに偽装したエルダーリッチに証言させる予定でしたが、アインズ様の裁定ならこの辺にしておきましょう)」

 

「異議を認めていただき感謝します。」

 

「!(よくやったロウネ!帝都に帰ったらボーナスだ)」

 

 見事に一矢を報いたロウネ。これにはジルクニフも心の中で拍手する。そして裁判は次の罪状説明に移る。

 

「――逮捕の際にワーカーが所持していたマジックバッグからは、大量の金貨、宝飾品、武具が発見されています。ワーカーもこれが盗品である事を認めていますので、彼らの罪に疑いの余地はありません。さらにワーカーの証言からバハルス帝国のフェメール伯爵の関与が濃厚ですので、この点についての真相解明を強く求めます。」

 

「窃盗行為について異議はありません。同じ帝国の臣民として遺憾に思います。フェメール伯爵についても同様ですが、つい先日、伯爵は()()()()()で死亡しておりますので真相解明は困難と言わざるを得ません。私から申し上げられるのは、この件に関してバハルス帝国の国としての関与は一切ないという事です。こちらの謝罪の証として伯爵の首級を提出いたします。」

 

 そう言ってロウネは壺に収められた伯爵の首級をデミウルゴスへ渡す。

 

「♪(伯爵を殺しておいて正解だったな。ザマーミロ)」

 

「御奉行、バハルス帝国の参考人に証言を求めます。」

 

「認めよう。」

 

「♪(誰に聞かれても答えは一緒だぞ。()()は喋れないからな)」

 

「それではフェメール伯爵に証言をして頂きましょう。《蘇生の短杖》」

 

 目の前で復活したのは紛れもなくフェメール伯爵だった。首から下もちゃんと付いている。

 

「!!(馬鹿な!馬鹿な!)」

 

「異議あり!異議あり!待った!待った!ちょっと待ったぁーっ!!」

 

「証人は間違いなくフェメール伯爵です。証言を求める為に帝国から提出された遺体に蘇生魔法を施しました。蘇生にかかった費用は()()()()させて頂きます。それで何の異議があって、何を待てというのでしょうか?」

 

「い、異議を撤回します…失言でした。」

 

 幸いな事にフェメール伯爵の証言には、帝国の関与を決定付ける内容はなかった。しかし生首からの大復活という超弩級のインパクトに帝国側の受けた衝撃は大きかった。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「詮議の結果を申し渡す。被告人のワーカーを、それぞれが盗んだ金額に応じて懲役3~5年に処する。未決拘留日数4日間をその刑に算入する。詳しい内容はハンチョウより説明があるので、ワーカー達は確認しておくように。」

 

「そしてワーカーへ窃盗行為を依頼したフェメール伯爵を懲役5年に処するが、バハルス帝国伯爵という社会的地位を考慮して、刑の執行を3年の間猶予する。さらにフェメール伯爵には蘇生費用として帝国金貨10万枚を請求する。この費用については、バハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス陛下が連帯保証する事。以上だ。」

 

「ふざけるな!控訴だ!不服を申し立てる!」

 

 何時の間にか首だけにされて、蘇生されて、有罪判決を受けて、莫大な請求をふっかけられたフェメール伯爵は断固として抗議する。

 

「この白州に控訴というシステムは存在しない。」

 

「全く問題は無い。早急に伯爵の財産を処分して、不足分は帝国が責任を持って弁済する。(まさか蘇生魔法とは!これほどの力を持つ相手だったか…)」

 

 支配者達の無慈悲な宣告にフェメール伯爵は崩れ落ちる。

 

「これにて一件落着…と行きたいのだが、続けてナザリック地下大墳墓における迷惑行為についての詮議に移る。デミウルゴス、彼らの行状を()()()()()()()()ようにしてやれ。」

 

「かしこまりました。それではワーカーが行った迷惑行為の証拠として、誰もが理解出来るように実際の「映像と音声」を魔法によって再生させて頂きますが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事をご了承下さい。」

 

「異議あり!ある程度と言いますが、それはあくまでそちらの主観あり、修正された部分に重要な事実が含まれる可能性があります。それでは()()()()()()()()()おそれがあります。その様な証拠では客観性と信頼性に重大な懸念があります。こちらは()()()を要求します!」

 

「ブッフォォーッ(何言ってんだコイツ!?)」

 

 この茶番劇を黙って見ていたさっちんも、ロウネの要求に思わずコーヒーを噴き出す。彼女としては、こんなどうでもいい事はさっさと終わらせてしまえと思っている。あくまで兄の顔を立てているのと、この後にする「おねだり」を成功させるためのゴマ擦りだ。あんなのをもう一度見せられるのは勘弁して欲しい。

 

「余も皇帝として臣民が犯した過ちから目を逸らす事はしたくない。アインズ・ウール・ゴウン殿、私からも無修正での公開をお願いする。(思い切りうろたえたな!反撃のチャンスだ!良くいったロウネ、帝都に戻ったらビッグボーナスだ!)」

 

「あ、アインズ様?(皇帝の狙いは何だ?あんな汚物をアインズ様やさっちん様の目に触れさせられるものか!)」

 

「あー、デミウルゴスも言ったのだが、あまり見て気分のよい物ではないのだ。異議を却下する。」

 

「異議ありです!あくまでも無修正を要求します。(証拠と言いながら、見せられない部分が存在する。ついに矛盾を見つけたぞ!)」

 

「余も同じ意見だ。(あの冷静沈着な悪魔が動揺している!これは決まりだ!覚悟しろアインズ・ウール・ゴウン!)」

 

 アインズやデミウルゴスが初めて見せた動揺を、帝国側は全力で攻め立てる。これまで殆ど一方的に押されているのだから当然だ。それが悲劇の再現になるとは知らずに……

 

「……そこまで言うのなら異議を認めてやろう。やれ、デミウルゴス…(俺は止めたからな!)」

 

「か、かしこまりました。それでは皆様…モニターに注目して下さい。(ええい、ままよ!)」

 

「お兄ちゃん…私、帰ってもいいかな?<<ソリュシャーン、いつものガードお願ーい>>」

 

 ジルクニフとロウネは、これから流れる映像を一瞬たりとも見逃すまいと集中する。どんな些細な部分も見落とさない様にモニターを凝視する。

 

「映像…まさか!?」

 

「止めてくれー!これ以上俺の…俺の尊厳を傷つけないでくれ!」

 

「もうお終いしゃな…」

 

「いやあああぁぁぁーっ」

 

 ワーカー達は教育(拷問&説教)のおかげで、自分達の行いを深く恥じていた。だからこれから流される映像を見られる事には耐えがたい苦痛と恥辱を伴う。アインズの温情を踏みにじった皇帝に憎しみが湧きあがる。

 

「あいつ等は何をしたっていうんだ?」

 

「分からない…エルヤーは何も言わなかった。」

 

「同室のエルフ達も教えてくれなかったわね。」

 

「竜狩りもヘビーマッシャーもあの様子だったので、何も聞けませんでしたからね。」

 

 ワーカーの中で唯一、教育的指導を受けなかったフォーサイトは全く心当たりが無かった。何度か情報交換を試みたりもしたが、彼らの口は固かったのだ。

 

「見苦しいぞ!己の罪が白日の下に晒されるのを拒むとは!それでも我が臣民かあっ!!(ここまで動揺するとは何をやらかしたんだ?)」

 

 見苦しくうろたえる罪人を一喝するジルクニフ。多少は違和感を覚えていたが、ここでアインズが「じゃあやっぱり…」となっては堪らない。そして帝国の覇者が発する烈火の様な気迫にさらされたワーカー達は……

 

「アンタは何を言っているんだ!」

 

「あんなモン見て誰が得するんだ?」

 

「くたばれ皇帝!」

 

「私は帝国の臣民ではありません!だいたい仕官を断ったのはそっちじゃないですか?」

 

 皇帝の気迫に押されるどころかますますヒートアップしていた。鮮血帝にここまで正面切って言い放った者は初めてだろう。

 

「騒々しいぞ!静かにせよ。」

 

 絶対的支配者の一喝で辺りに静寂が戻る。さしものジルクニフでさえ黙らせられる一喝だった。

 

「此方からの質問以外で被告人には発言を認めない。そして……私は基本的に警告を二度以上しない。なぜならその者の選択を尊重するからだ。たとえ結果がその者にとっては不幸だとしてもだ。始めてくれ、デミウルゴス。」

 

 アインズの言葉に、自分は何かとんでもない勘違いをしていたのでは?と思い始めたジルクニフとロウネ。しかし既に手遅れだった。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「そういった訳しゃな。それしゃ儂はちょっとそこら辺て小便をひっかけてくるとするわい♪」

 

※これ以降の描写は第25話「大墳墓への侵入者」を参照して下さい。

 

「この様に他人の住居の玄関とも言える場所、それも死者が眠る墓地(只のオブジェクト)で地面に痰を吐き捨て、霊廟の壁に粗相をする。彼らの見識を疑わざるを得ません!参考に帝国の法に詳しい弁護人へお聞きしたいのですが、これと同じ行為を帝国、それも皇帝陛下の居城で行った場合は帝国ではどの様な罪に問われるのかお答え願いたい!」

 

「へ、陛下への不敬罪として当人はそ、その場で処刑。家族は臣民としての権利を剥奪…ど、奴隷となります。」

 

 顔面を蒼白にしたロウネが答える。たしかに酷過ぎる、そして予想外の行為だ。そして次の映像が映し出される。

 

「我は少し野暮用があるので外で待っていてくれ。それほど時間はかからん。」

 

※これ以降の描写は第25話「大墳墓への侵入者」を参照して下さい。

 

「大変に見苦しい内容でしたが、()()()()()()()()()()()()()()()()だという事を、改めて明言させていただきます。ここで被告人のグリンガム氏に聞きたいのですが、他人の住居で許可なく、それも室内でこの様な行為を行った理由について何か言う事はありますか?」

 

「くっ…ワーカーや冒険者が任務中に野外での、時にはダンジョンでウン…排泄する事は仕方ない事だと思います。私はナザリック地下大墳墓が他人の住居であった事を知りませんでしたので、その点については謝罪します。」

 

「知らなかったから仕方ないというのは無責任ではありませんか?弁護人からは何かありますか?」

 

「被告のした事はそれほどまでに許されない事でしょうか?排泄というのは生物にとっては欠かせない行為です。便意に耐えかねてどうしようもなく…という事だってあります。それに住居、それもこれほど広大な住居というのであれば、トイレの設置は持ち主の責任でされてしかるべき。また被告のワーカーという職業上の問題もあります。この2点をふまえて情状酌量をお願いしたい。(何で他人の野グソの弁護をしなきゃいけないんだ)」

 

「異議あり!職業上の問題といいますが本当でしょうか?参考人に証言を求めます。」

 

「許可しよう。参考人はこの件に付いて証言するように。(これは帝国にも理解して欲しいからな)」

 

 発言を求められたのは、最初からナザリック側の席にいた初老の男だった。

 

「私はエ・ランテルで冒険者組合長を務めるプルトン・アインザックと申します。被告人は「ワーカーや冒険者」と言いましたが、これは大変な誤解です。少なくともエ・ランテルの冒険者は野外任務中に「エチケット袋」を持参して、排泄物の扱いについては充分に配慮しております。これは組合に登録する際の注意事項に(3日前から)含まれている常識です。」

 

「なっ?そ、それは初耳ですが…い、異議あり。それらはエ・ランテル特有の事情ではないのですか?帝国の冒険者組合でその様な規則があるとは聞いた事がありません。被告のワーカーにも証言を求めます。(そんなの聞いた事ないぞ)」

 

「発言を認める。」

 

「10年以上もワーカーとして活動してきましたが、そんな事は聞いた事もありません。」

 

 当り前だろう。3日前に決まったばかりなのだから。

 

「異議あり!エ・ランテル特有の事情というのは誤解です。弁護人や被告は帝国の遅れた法整備を誤魔化しているだけです。こちらも参考人に証言を求めます。」

 

「許可しよう。参考人はこの件に付いて証言するように。(この件は有耶無耶にせず徹底させないと困るからな)」

 

 アインザックの隣に座っていた男女が立ちあがる。顔立ちが似ているので兄妹だろうか?

 

「私は竜王国のアダマンタイト級冒険者チーム「クインティア♥」のエッセと申します。」

 

「……同じくティーヌです。(何でアタシがウンコについて証言しなきゃいけないのよ!てゆーかクインティア♥なんて勘弁してよ!)」

 

「ちょっと待て!思い出したぞ!男の方とは面識があるぞ!お前はスレイン法国の者だろう。(法国との会合で警備としていた男だ!なぜ気が付かなかった)」

 

「それは過去の話です。今は愛する妹と竜王国の為に戦う単なる一冒険者(人類最強クラスです)です!」

 

「ハイソノトウリデス。」

 

 2人の正体は法国の仲よし兄妹だ。妹のやらかした行為の司法取引として、たった2人でビーストマンに攻められている竜王国へ出張中(任務外のボランティア)だったのを、アインズの要請で遥々やって来たのだ。勿論だがフォローもしっかりと行っている。

 ナザリックでも広範囲殲滅を得意とするマーレを派遣して、数千体のビーストマンを殲滅させたうえで、その功績をクインティア♥に押しつけた事で、2人は竜王国で2番目のアダマンタイト級冒険者チームのなったのだ。これにはドラウディロン・オーリウクルス女王も大喜びだった。ちなみにクアイエッセはマーレに深い感銘を受けたようで、「アリだな…」という発言で、妹からさらなる顰蹙を買っていた。

 

「竜王国の冒険者として発言させて頂きますが、先程のプルトン・アインザック氏が証言した内容は竜王国でも(非)常識です。」

 

「兄貴の言う通りです。」

 

「我ら兄妹はこの「無限のエチケット袋」というマジックアイテムを愛用しています。これには1ヶ月分の()()を収納可能です。(いくら俺でもここまでマニアックなプレイは御免だがな)」

 

「僭越ですがスレイン法国としても同様であると証言します。我が国に冒険者組合はありませんが、軍では全兵士にエチケット袋を支給しておりますぞ。(ぷれいやー様の居城でこのような事をするとは…帝国との手切れも考える必要があるかもしれん)」

 

 たかがウンコが帝国と法国の外交問題にまで発展しかかっている。

 

「この様に他国においても当たり前の常識と認識されているのはあきらかです。今回の件は帝国の未発達な法律に情状酌量の余地がありますが、帝国にはしっかりとした法整備を強く求めます。」

 

「ぜ、善処いたします。(国は冒険者組合には不干渉じゃないのか?ウンコ位好きにさせてやればいいじゃないか!)」

 

「これは私からも強く要請したい。ジルクニフ殿にもぜひ理解と協力を求めたい。」

 

「り、了解した。帰国次第、臣下と図って法整備に取り組むことを約束する。軍についてもだ。(何でウンコの事でここまで言われなきゃいけないんだ!ロウネが余計な事をするからだ!ボーナスカットだ)」

 

 これはアインズにとっても重要な事だった。それほど今回の事は「嫌な事件」だったのだ。わざわざエ・ランテルから呼び寄せたアインザック(初対面時は泣かれて命乞いされた)を巻き込んで、スレイン法国に貸しを作ってまで行ったのだ。

 22世紀で生きて来たアインズとこの世界の住人の間で、衛生観念に大きな隔たりがあったのも影響している。元人間として所かまわず粗相をするのは許せなかったのだ。冒険者のトイレ事情を「どげんかせんといかん」と一念発起したのだ。

 

「おい…俺達もまずくないか?」

 

「しかし…今まで特にお咎めはありませんでしたよ?」

 

「まさか!?見られてた!!ウソ!ウソ?」

 

「あんなのを公開されたら……死のう…さよなら…クーデ…ウレイ…」

 

 さすがに事情を察したフォーサイトも、己の所業を思い出して戦々恐々だ。何せ裁判は終わっていないのだ。これまで気にも留めていなかった事が、こうして赤裸々にされてみると、どれだけ重大なことかを実感していた。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「続いてワーカーチーム「天武」の行為についてです。モニターを御覧下さい。」

 

 もう何を見せられても驚かん。そう考えていたジルクニフだったが……

 

「それでは3人揃っていってみましょう♪」

 

※これ以降の描写は第25話「大墳墓への侵入者」を参照して下さい。

 

「――という訳です。帝国の方にお聞きしたいのですが、帝国にはこの様な破廉恥な風習があるのでしょうか?」

 

「そんな訳があるかあぁぁーっ!!」

 

 思わず絶叫するジルクニフ。自らが治める国がとんでもない誤解をされては黙っている訳にはいかない。

 

「皇帝陛下に直答して頂けるとは光栄です。」

 

「少々興奮して取り乱したようだ。断言するが「おっぱいチャレンジ」なるものは、彼らだけの趣味趣向であって帝国にこの様な風習ないと我が名にかけて誓おう。当然だが情状酌量など考慮する必要はない。ロウネも弁護などする必要はないぞ。」

 

 ジルクニフに言われるまでも無く、ロウネもこんなバカ野郎達の弁護は願い下げだ。すでにどん底まで落ちた帝国の権威が、さらに底を破って落とされたのだ。

 

「そんなっ!?」

 

「死にたくないよー!」

 

「助けてえーっ。」

 

「……(私の崇高な趣味を理解出来る友とは遂に逢えなかったか)」

 

「おやおや、彼らを弁護する者は誰もいないようですね。(さすがの私も馬鹿らしくなってきました)」

 

「いるさっ!ここに1人な!!」

 

 立ちあがったのは漆黒聖典第五席次一人師団にして、竜王国アダマンタイト級冒険者、そしてダブルピースのエルフ派幹部クアイエッセ・ハゼイア・クインティアだ!

 

「義を見てせざるは勇なきなり!かつてエルフ迫害を批判し、それを咎められて出奔した悲劇の剣士がいたと聞いた事がある。彼の弁護はこのクアイエッセ・ハゼイア・クインティアに任せてもらおう!」

 

<<おいクレマンティーヌ!兄を止めろ>>

 

<<無理です!スイッチが入った馬鹿兄貴は止められません>>

 

 その後は怒涛の超理論を展開したクアイエッセに、デミウルゴスですら譲歩せざるを得ず(アインズから「どうでもいい好きにさせておけ」とメッセージが届いた)まさかの大逆転という展開になった。

 

「それでは彼らの身元引受人はこのレイモン・ザーグ・ローランサンが引き受けさせて頂きます。(でかしたぞクワイエッセ!新たな同士を迎えただけでなく、アインズ様にさらに貸しを作れたとは♪)」

 

「……(アインズ・ウール・ゴウンと法国が繋がっていたとは?それにしてもこの裁判…どう考えても茶番だ。何が目的だ!全く読めん)」

 

「……(こんな事をする為に今までキャリアを積み重ねてきたというのか?秘書官なんて辞めて退職金で露天商でもするか?屋台を引くのもいいかもしれないな)」

 

 だんだんとこの茶番劇の内幕を察し出した帝国側。帝国のツートップであるジルクニフとロウネの間には凄まじい温度差があるのだが……

 

 そしてアインズとしては冒険者のトイレ事情に一石を投じて、事態が改善の方向に向かってくれればそれでいいと思っている。最初は激昂したがそれも大分落ち着いてきた。何よりさっちんから「こんなバカな事より他にもする事があるじゃん?そんな事よりお兄ちゃんにお願いがあるんだけど♥」と言われた事の方が重要である。エルヤー(バカ)の事もどうでもいい。

 

 只でさえ忙しい上に、裁判で検事役に任命されてしまったデミウルゴスは「今回だけはアインズ様の真の狙いが全く分からない。このような体たらくではお二人の役に立てない!」と真剣に悩んでいた。

 

 様々な思惑を抱えながらも佳境を迎えるお白州。そして最後の映像はお待ちかねのフォーサイトだ。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「……最低。今までも野営の度に人の情事で○○ッてたの?このムッツリ神官。」

 

 それは野営の度に情事に耽っていたという事ですかイミーナさん。

 

「違う!あれは煩悩を散らして精神を落ち着かせる、賢者になる為の宗教的儀式であって――」

 

 確かに賢者になっていましたが、その言い訳は無理があります。しかしロバーデイク氏には同情すべき点もあると思います。

 

「アルシェ!俺はお前をそんなふしだらな娘に育てた覚えはないぞ!」

 

 ふしだらなのは君達じゃないのかいヘッケラン君。それにいつからアルシェが君の娘になったんだい?

 

「それは誤解。私は怪しい(意味深)物音を聞いたので、念の為に確認しただけ。」

 

 そういう事にしておきましょうかアルシェちゃん。

 

 固い絆で結ばれていたはずのフォーサイトが崩壊の危機に陥っていた。妹分として可愛がっていたメンバーの為に危険を顧みなかった3人が、愛する妹の為にどんな苦境に陥っても希望を捨てなかった少女が!どうしてこうなった?

 




アインズ様が転移後に最も力を入れたプロジェクトが「トイレ」という事実。
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