私の描写力不足で読みにくいですがご了承ください。
「詮議の結果を申し渡す。被告人のワーカーを、それぞれの迷惑行為に応じて懲役半年~1年に処する。これは先程の判決に加算される。詳しい内容はハンチョウより説明があるので、ワーカー達は確認しておくように。」
「そしてレイモン・ザーグ・ローランサンが身元引受人となった天武の4名については、刑期の半分を務めた時点より服務態度を考慮したうえで仮釈放の対象となる。これにて一件落着とする。」
長かった裁判もようやく判決が確定した。関係者のほぼ全員が「やっと終わった」と心の底から思っていたが、2人だけ納得がいかない、というよりも「真の狙い」がなんなのかを量りかねている者がいた。
(アインズ様の目的は何だったのだ?当初の計画を大幅に変更…否、全く別物といってもいい内容にしてまで「お白州」なる茶番劇を演じられた。帝国にも大した事は要求をなされなかったし、さらに破廉恥な剣士とエロフ共を法国に引き渡すとは?そしてナザリックを汚したワーカー共へも懲役などという温情までおかけになる。解らない…)
(アインズ・ウール・ゴウン!いったい何が目的だ!?一国の皇帝を呼びつけて、わざわざ茶番劇を見せつける。確かに強大な力を見せつけられた事で度肝を抜かれたのは確かだ。だがそれが狙いなら他にいくらでも遣り様がある……配下のクレーマーだけで帝城にあれほどの惨劇を引き起こせるのだからな。他に狙いがあるはずなのだが全く読めん!あれほどの力を持つだけでなく、おそるべき鬼謀の持ち主とは!それにワーカーに与えられる罰も軽すぎる…あのクレームは何だったんだ!?)
(これで冒険者達のトイレ問題に目処がついた。エ・ランテルや法国へも根回しは完了しているし、帝国についても皇帝に直接、言質を取ったのだから大丈夫だろう。ナザリックの各階層に休憩所を設置させているが、やはりこの世界の奴らは安心出来ないからな。リアル世界でも中世のヨーロッパなんて酷かったと、大学教授だった死獣天朱雀さんに聞いた事が有る。道端に平気で糞尿を捨てていたらしいし、貴族でさえ庭の茂みで用を足していたと言っていたからな。ナザリックで所かまわず粗相をされては適わんぞ。シモベにうんこ清掃なんてさせたくないからな。それにバカも法国が引き取ってくれるなら大助かりだ。ハンチョウから言われていた鉱山の人手不足も解決したし大成功だ♪)
「ジルクニフ殿、何か不明な点があるのなら、遠慮なく聞いてくれてかまわない。」
「それはありがたい。アインズ・ウール・ゴウン殿。色々とお聞きしたい事があるのです。(いきなり名前呼びかよ!?ルーン・ファーロード・エル=ニクスをつけろよ骸骨野郎!)」
これはアインズの対応が不適切かもしれない。法国があまりにも土下座外交に徹しているので、一国のトップ相手にも上位者として接する事に疑問を感じなくなっているのだ。上位者というのは間違っていないのだが、いきなり名前呼びというのはフレンドリー過ぎるのではないだろうか。
「ああ、ジルクニフ殿。私の事はアインズで構わないぞ。君ほどではないが、私の名前も結構長いからな。(さっちんはカルネ村の姉妹と仲良くなったと言っていたし、俺もこっちの世界で親しい人間を1人くらいは作らないとな。)」
アインズは妹のコミュ力に感心しつつも、若干の危機感を覚えていた。村娘と親しくなったり、雇っただけの冒険者達からも「お嬢様」と慕われている。シャルティアとも非常に仲が良いようで、さすがは「誰からも愛される妹」だな!と思ったが「それに比べて俺は?」という不安も拭えない。
NPC達はよく尽してくれるが、友達や家族というわけではない。さっちんがナザリックを空けている間は、アルベドともご無沙汰になっている事もあり、少し寂しく思っているのも事実だ。先日も……
「お早う今日もいい天気だ。(昨晩の当番はフォスだったな。また一晩中、座ったまま俺を見つめる仕事をしていたのか)」
「お早うございますアインズ様(ニコニコ)」
「朝食の用意を頼む(あの視線…プレッシャーだ)」
「かしこまりました。(ニコニコ)」
「パクパク…モグモグ…パクパク…モグモグ…(1人で食事というのも味気ないな。前に「一緒にどうだ?」といったら全力でお断りされたからな…※仕事中のメイドを食事に誘うのは主人としての自覚を欠いた行為です)」
「じぃぃぃ~(ニコニコ)」
「パクパク…モグモグ…パクパク…モグモグ…(妙齢の女性相手に気のきいた会話なんて無理だしな。さっちんがいてくれれば、もっとアットホームでフレンドリーな感じだったんだが。)」
この様に、リア充な妹に対して、自分は
「これからコーヒーでも飲みながら話そうじゃないか。美味しい菓子も用意させよう。ナザリックの菓子を随分と気に入ってくれた様だからな。(おかわりもいいぞ)」
「それは感激です♪ご馳走になります。(えっ!またお菓子食べていいのか!!)」
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「――それではリ・エスティーゼ王国についてはバハルス帝国が主導で併合を進める。我がスレイン法国はそれをバックアップしつつ王国へ圧力をかけるという事で。現在も王国の貴族から嘆願や問い合わせが来ている様ですが全て黙殺しております。皇帝陛下には心置きなく計画を進めて頂きたい。」
「了解した。旧王国領の分割についてだが、両国で問題になっていたエ・ランテルについてはどういった扱いになるのだろうか?(コーヒーとお菓子をご馳走したいと言ったくせに!神官長も2国間の機密をペラペラと話してんじゃねえよ!)」
ジルクニフの目論みはいきなり頓挫していた。アインズとの会話で少しでも情報を探ろうとしていたはずなのに、何故か法国の人間を交えて国際問題について討議させられていた。しかも善意の第三者の目前で国家機密を暴露するというおまけ付きだ。
「ジルクニフよ、エ・ランテルについては独立都市として運営する事になっている。」
「アインズ様の後押しがあれば何の心配もありませんな。(エ・ランテルがアインズ様との間で緩衝材になれば、国民の不安も減るからな)」
「はぁ!?(なに言ってんのお前ら!?何時の間にそんな話しが!)」
さらに自分の知らない間に重要事項が決められていたりする。特にエ・ランテルを掻っ攫われたのはかなりのショックだ。
「そ、それはアインズが統治するという事かな?(エ・ランテルを足掛かりに帝国へ魔の手を伸ばすと言うのか?王国みたいに!)」
「エ・ランテルはあくまでも(名目上は)独立した都市だよ。まあ都市長とは信仰(誤字にあらず)があるので、多少(どころではない)の便宜くらいは量って貰う事もあるかもしれないがね。(ウチでは間に合っているからな)」
ウソだ!!と心の中でジルクニフは叫ぶ。いったいアインズの魔の手はどこまで伸びているのだろうかと不安になる。ここへ来るまでは、アインズ相手に下手に出て、必要であれば軍門に下るか偽りの協力関係を持ちかけて、その後は周辺国家による同盟をもって対抗するか?などと考えたりしたが、もっとも頼りにしていた法国が向こう側なのだ。
それなら王国という生贄を捧げて時間を稼ごうと考えれば、「ウチでは間に合っていますので結構」という答えだ。領土欲や支配欲はないのか?と思ったら、エ・ランテルという一番美味しい部分はしっかりとキープされている。尽く自分の思惑の上をいくアインズに戦慄を覚える。
「アインズはいずれ……いずれは国を興す予定などは無いのか?これだけの財力や兵力を持っているのだから、そんなアインズに相応しい立場というものがあるんじゃないかと思うのだが?(いずれ大陸を手中に収め、その後は世界征服…と言われても驚かんぞ)」
「興味は無いな。私にとっては家族とナザリックに連なる者達が全てだ。私はジルクニフの様な働き者ではないのだよ(俺の仕事を増やすなよ)」
「私が働き者?…確かに忙しい身だと自覚はしているが…(そうだぞ、ここに来る為のスケジュール調整にどれだけ苦労したと思っている?プンプン)」
「バハルス帝国の皇帝である君に聞きたいのだが……皇帝である君の目的は何だ?そして国の統治者の責任についてどう考える?本音で答えて欲しい。(俺は元々しがないサラリーマンだからな。生れながらの支配者の考えを知りたいものだ)」
思ってもみなかった質問だ。しかしここまで真正面から問いかけられると清々しい気分だ。信じられないほどスムーズに、そして正直な答えが口から発せられる。
「無論、皇帝としては帝国をより強大にしていく事だ。その為には軍事や経済で力を蓄えて、国土を拡げる事が必要だが、それは手段であって目的ではない。そうする事で帝国に暮らす臣民の生命と財産を守る為だ。これは統治者としての義務だと考えている。そして1人でも多くの臣民に平和な生活を送って欲しいと考えている。(お前みたいな化け物がいるからこっちは大変なんだよ!)」
――パチパチパチパチパチパチ……
「素晴しい見識だ。同じ統治者の端くれとして心から賛同する。そしてそんな君を応援したいのだ。
ジルクニフの答えに満足したアインズは非常に満足そうに哂っている。まるで罠に掛かった哀れな獲物を眺める狩人の様だとジルクニフは戦慄する。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
「お、お前らは、いったい何を言っているんだあぁぁ~っ!」
「(うろたえない!皇帝はうろたえない!)」
彼らの前には八肢刀の暗殺蟲によって取り押さえられたフールーダ・パラダインとレイナース・ロックブルズの姿があった。事の起りは10分ほど前に遡る……
「――といった訳なので、ワーカー達の労働環境についての心配はない。ワーカー達はしっかりと更生して社会復帰する事になるだろう。」
ワーカー達への罰が軽すぎるのを不審に思ったジルクニフの質問に返って来たのは、斜め上の回答だった。渡された書面に纏められた内容は3食オヤツ付や、きちんと決められた休日や労働時間(残業なし)という囚人にあるまじきホワイトさだ。これのどこが懲役だ!と憤慨するジルクニフだったが、これを見て黙っていられなくなった者が2名いた。
「何という素晴しい事をして下さるのだ…何という事を!こんな素晴しい話は聞いた事が無い…これこそ私が200年以上も求め続けていた事だ。これに比べると帝国の魔法学院はカスだ。」
滂沱の涙を流すフールーダ。両目から止めどなく流れ続ける涙が彼の感動の大きさを物語っている。彼が握りしめた書類にはこう記されていた。
~囚人への
ナザリックでは出所者の再犯を防止する為に、囚人の適正にあったスキルアップをサポートしています。魔法関連では一流の魔法詠唱者(第十位階魔法が使える専門家です)による指導で、出所後の就職活動がスムーズに進められるよう取り組んでいます。
さらに魔法適正がない場合も転生などの処置を受ければ、魔法を使えるようになります!この処置(痛みの無い、自然な仕上がり)を受けて社会で活躍している人達も大勢いますので、貴方も第二の人生にチャレンジしてみませんか?
※皆さんからの感謝の声を紹介します※
「私は子供の頃からエルダーリッチになるのが夢でした。自分でも様々な方法を試みたり、怪しげな宗教団体に騙されたりしましたが、至高の御方のおかげで無事にエルダーリッチになる事が出来たのです。現在はナザリックの紹介でカルネ村という所で警備関係の職に就いています。さらに職場の女性(ポーション職人)とお付き合いさせて頂いており、公私ともに充実した生活を送っています。」
カジッチャン氏(カルネ村在住)
「とにかく感謝しています。以前はフォレストストーカーとして活動していましたが、才能に恵まれずに自暴自棄になり、遂には痴漢行為で罰を受けるほど落ちぶれてしまいました。しかし至高の御方のお勧めでエルダーリッチとして第二の人生をスタートする事が出来ました。冒険者という不安定な仕事で、自堕落な生活を送っていた私がエ・ランテルの公務員(門番)になれたのも至高の御方のおかげです。先日は割り込みをしようとした犯罪者を捕らえた事で、都市長から表彰していただきました。これからも市民の皆様に愛されるように職務に邁進したいと思います。」
イグヴァ氏(エ・ランテル在住)
「疎遠になっていた兄と和解できました。私は些細な誤解で家族と不仲になりグレてしまいました。就職後も問題行動を起こし続けて、遂には窃盗事件(強盗殺人)まで起こしたあげく職場をバックレてしまったのです。その後は犯罪組織に身を寄せ、ある事件で捕まってしまったのですが、至高の御方の尽力で、拘置中の私に兄が面会に来てくれて家族愛の素晴しさを知りました。今は兄妹でボランティア活動をしながら罪を償う毎日です。」
クレマンティーヌ氏(竜王国在住)
「人生大逆転!奇跡体験続出!雇われただけで奇跡を起こす究極のお嬢様!銀級冒険者だった俺が勝ちまくり!モテまくり!お嬢様に雇われてからというもの――依頼は大成功の連続で、あっという間にミスリル級に昇格!さらにお嬢様の紹介で美人メイド(ツンデレ)の彼女をゲット♪この前もお嬢様とのコネのおかげで、金貨1000枚の臨時収入とウハウハ♪俺はこの勢いでアダマンタイト級冒険者を目指します!」
ルクルット氏(エ・ランテル在住)
「驚異のナザリックパワーで恋愛運が劇的に好転!会ったその日にリザードマン最強のイケメン勇者にプロポーズされちゃいました♥典型的引きこもりで負けリザードマンだった私が、まさかの玉の輿で大感激!!セレブ夫人となりバラ色の毎日です。今は1日でも早く彼の卵を孕みたいです。」
クルシュ氏(トブの大森林在住)
※さあ、次はアナタの番です!今スグお申込みを!※
このようにナザリックのおかげでいかに幸せになれたかという事が切々と語られていた。一部に誇大表現があったり、途中からは魔法とか関係無くなっているのは気にしてはいけない。レイナースが目を皿のようにして読んでいた書類にもこのような事が書かれている。
~
ナザリックでは囚人が
就業中の事故で怪我を負った場合も、高位の回復魔法による治療が無料で受けられますし、
「わ、私もナザリックで懲役を受けさせて下さいっ!それでこの就労支援プログラムを~!」
「私もナザリックでの懲役を希望します!それで慢性的疾患(呪い)について相談を~!」
「そうか…そういう事か…(裏切ったな。この俺を…帝国を裏切ったか)」
地獄の底から響く怨嗟の声だった。ジルクニフはようやく理解した。アインズの狙いは帝国の優秀な人材のヘッドハンティングだったのだ。あの茶番劇でワーカーの罪を正当な物と主張する事によって彼らの身柄を確保する。そうすれば帝国としても文句は言えなくなる。
さらにワーカーへの待遇で本命の人材を狙い撃ちする。フールーダの魔法に対する渇望や、レイナースが呪いを解く事を切望しているのは有名な話だ。そうでなければ罪人にこんな高待遇を与える必要性など無い。ワーカーについてもミスリル級以上の人材は貴重だ。帝国への影響は少なくない。エルヤー達については法国への報酬だったのだろう。
デミウルゴスも同様の結論に達し「成程!ナザリックにとっては取るに足らない者であっても、帝国にしてみれば大問題!国にとって重要な人員を取込む事で帝国を弱体化させる。さすがはアインズ様!!」と驚愕していた。
「いや…これはあくまで罪を犯した者への罰であって、罪の無い者を懲役に就かせる訳にはいかないのだが…」
当然だがアインズにそのような神算鬼謀はない。興味本位で試してみたい事があるのと、ハンチョウからの報告で現地人に意外な使途が発見された事による計画の一環である。
「罰!?罪が必要と仰るのですね!そ、そいう事でしたら……ぐぬぬぬ――これじゃあぁぁ~っ!!」
ローブを捲り、腰巻を脱いで、その場に座り込むフールーダ。両コブシを握りしめ「ふんぬぅ~」と気張りだす姿に周りの者が凍りつく。
「さ、さすがにそこまでは…いくら何でも…ハッ!これなら私でもっ!ええいっ、やるしかないのね!」
そう言って鎧を脱ぎ始めるレイナース。鎧の下に着ていたシャツをたくし上げようとした所で、正気に戻ったアインズが叫ぶ。モニター越しでもドン引きだったのに、今度は目の前で脱糞やおっぱいチャレンジをされてはたまらない。
「お、お前らは、いったい何を言っているんだあぁぁ~っ!」
「(うろたえない!皇帝はうろたえない!)」
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「注目っ……!今日も作業ご苦労様でした。今日の分の労賃を配ります。名前を呼ばれた者は順番に取りに来て下さい。」
「ヘッケラン君」 「はいっ…」
「グリンガム君」 「はい…」
「アルシェ君」 「ハイッ…」
こうして全員に金貨が配られた後は解散となるのだが、今日はいつもとは違っていた。ハンチョウがアルシェへ金貨を手渡した後に再度声をあげる。
「注目っ……!先日アルシェ君が大変に珍しい鉱石を発見しました!これにはアインズ様も大変な御喜びようで、現在は鉱石を鑑定中との事ですが、改めて報奨があるというお話です。皆さんもアルシェ君に続いて頑張って下さい。拍手っ……!」
――パチパチパチパチパチパチ……
後日、アルシェには報奨が与えられた。妹2人と最後まで姉妹の身を案じていた老執事は、彼女の希望通り鉱山で働ける事になった。執事はハンチョウのサポートとして、幼い妹達はお手伝いとして採用された。他の使用人達には十分な退職金が支払われたが、屋敷も調度品も差し押さえられた元フルト夫妻は奴隷として売却される事になった。
ジルクニフの受難は終わりません。