立ち尽くすレイガンダム。
燃え上がる1機のスペモス。
その状況は両陣営に衝撃を与えていた。
地球軍側は――
(ビームバルカンの存在を見せてしまったが、スペモス1機を撃破できた……。
クロノ・ゼンキくん。予想通り使えそうじゃな)
周りの研究員が驚愕しているなか教授は一人笑みを浮かべる。
一方、宇宙コロニー軍は――
「た、隊長……」
「……なんということだ」
眼前で燃えている自軍の1機。
戦争中である以上、死は常に付きまとう。
だがガンダム1機による反撃。たかが1機の確保とたかをくくっていた。
隊長隊員皆が同様で動けなかった。
そしてクロノも――
「お、俺は……」
自身の謎の覚醒が止み、意識が現実に戻る。
決して覚醒中の自分を忘れたわけではない。だが……。
「これは俺がやった……?」
眼下で燃えさかるスペモス。
今まで戦争行為とは無縁だったクロノにはそれが初の――人を殺すということだった。
膠着していた状況から先に動いたのは宇宙コロニー軍側であった。
「い、今、ガンダムの動きは止まっている! バズーカを使え!」
「了解!」
スペモス部隊はマシンガンからバズーカに持ち変え構える。
「ゼンキくん! いつまでぼーっとしておる。さすがにバズーカは避けんとまずい!」
「あ、ああ」
発射されるバズーカ群。クロノはそれを躱すが動きには先ほどまでのキレはない。
弾がかすめ、少しずつ追い込まれてく。
「どうした!? 反撃を!」
「だ、だけど……」
命を奪う。その行為がクロノに攻撃をためらわせる。
「そのままでは君が死ぬんじゃぞ!」
「……くっ!」
死ぬ気はない。その一心でクロノはビームバルカンを撃つ。
だが宇宙コロニー軍側も甘くはない。散開して攻撃を躱す。
「このままだと――」
クロノもいつまでも避け続けれるわけではない。数で圧倒されている状況ではいずれ攻撃を受けてしまう。
その時――
「隊長! 地球軍です! ガンダムタイプもいます!」
「なにい!?」
現れたのは、数機の地球軍地上用量産MS『ランドール』、空戦用量産MS『スカイン』
1機の金色のMA(モビルアーマー)と、赤いガンダムタイプであった。
赤いガンダムは持っていたバズーカをスペモスに向け発射する。
スペモス達は散開して躱すが、その内の1機に赤いガンダムは接近するとヒートソードを抜き放ち切り裂いた。
「ちいっ、ガンダムめ――」
「た、隊長――」
スペモス達が赤いガンダムに気を取られていたその時。
金色のMAがその翼部分に付いている刃でスペモスを一閃する。
「は、速い――」
続けざまにMAは、剣を一閃しながら形を変化させる。その姿は――
「こ、こいつもガンダム――!?」
言い終わる前にスペモスは爆散。その場には金色のガンダムが降り立った。
新たに現れた2機のガンダムの戦果もありスペモスは全滅。
クロノは敵がいなくなったと感じそっと意識が落ちていった。
宇宙
「シーザ。地球に3機のガンダムが現れたそうよ」
「ほう。面白いじゃないか。だが地球に何機ガンダムがいようと――」
宇宙の中、漆黒のガンダムが光に照らされる。
「この俺とダークアルムガンダムがいる限り地球軍に勝利はない!」
漆黒のガンダムの周りには、多数の地球軍機の残骸が漂っていた。
「う……ここは?」
クロノが目を覚ますとそこは――
「牢屋……か」
「そうだ」
階段を下り、赤髪の大男が歩いてくる。
「よう、元気か?」
男は気さくに話しかけてくる。
「こんな場所じゃなければ」
クロノは嫌味を混ぜつつ思った通りに返す。
「ははっ、ちげえねえ」
男は牢屋に響く声で笑った。
「おっと、自己紹介がまだだったな。
オレはブレン・テイジ。フレイムガンダム……赤いほうのガンダムのパイロットだ」
「クロノ・ゼンキです」
「おう、クロノ。よろしくな。さて――」
ブレンの飄々とした雰囲気が一転。真剣な眼差しをクロノに向ける。
「なぜここに入れられてるかわかるか?」
「……事情はどうあれ、ガンダムに乗ったからでしょう」
「わかってんならいい」
「言っておきますが――」
クロノはブレンを睨み付ける。
「教授がどう言ったかは知りませんが、俺は仕方なく乗っただけです。
だいたい中立地帯で地球軍側のガンダムが開発されていたこと自体おかしいじゃないですか」
クロノがしゃべり終わるのを聞くと、ブレンは「くくっ」と笑った。
「安心しな。爺さんは正直者だ。事情はきちんと聞いている。
中立地帯でガンダムが開発されてたことについては……もっと上の奴に聞けるなら聞いてくれ」
「知らないんですね」
「ほっとけ。さて――」
一呼吸入れて再び真剣な表情に。
「事情は知っててもだ。はい帰っていいとはいかない。それくらいわかるな?」
それぐらいはクロノもわかる。となると選択肢は。
「選択肢は2つ。秘密を知ったから処刑されるか。ガンダムに乗って地球軍のパイロットに正式になるかだ」
実質1つしかない選択肢。だがそれよりもクロノが気になったのは――。
「パイロット候補は他にもいるんじゃないですか?」
そう。パイロットになる以前に他のパイロットがいては意味はない。
「あー、そこに気づくわな。なんか機密上の問題でなあ。
最初に乗ったパイロットをシステムに登録してるらしい。
解除手続きなんかやってたら、時間がすげえかかるらしいわ。
それにお前のさっきの戦闘データ見せてもらった。
複数のスペモス相手のあの動き。素人にしておくにはもったいない」
「友人の頼みでMSシミュレータによく乗ってただけですよ」
クロノはそれまでMSに乗ったことのない素人だ。
だが、クロノ自身も感じていたこと。自分はMSに乗るときに初めてじゃない感覚がある。
「で、どうするんだ?」
「俺は……」
考えてクロノは1つの結論を出した。
「教授と……もう1機のガンダムのパイロットに合わせてくれませんか?」
「ここだ」
ブレンに案内されてきたのはガンダムの格納庫、その横の1室だった。
「おい、じいさん」
「なんじゃ、テイジ少尉。……クロノくんか」
部屋にいたのは教授。そして――
「教授……と?」
場違いな少女が一人。
「お孫さん?」
「ははっ、そういう感想だよな。この嬢ちゃんが――」
少女が立ち上がりクロノをすっと見た。
「イヴ・ヘヴン。トネールガンダムのパイロットです」
「え? きみが……?」
残る金色のガンダムのパイロット。
凄まじい速さで敵を殲滅していたパイロットはクロノとそう変わらない、いやもっと小さい女の子。
「……」
「おい、何か聞きたいことがあるっていうから連れてきたんだぞ」
予想外のパイロットに唖然としていたクロノをブレンが戻す。
「あ、ああ。ブレンさん。そして――」
「イヴで構いません」
「う、うん。イヴ。きみたちは何のために戦う?」
クロノは聞きたかった。
ガンダムのパイロット。それぞれの戦う理由を。
「何のために戦うねえ……。オレは軍人だからな。
ま、地球軍として地球のために戦うだけさ」
「わたしは命じられた通り戦うだけ」
「そう……」
クロノは正直、今の問答に答えはなかった。
だが1つだけ明確に出た答えがあった。
「わかりました。俺も……ガンダムで戦います」
「おお、そうか。よく決断したのう」
「おう、よろしく頼むぜ」
「……よろしく」
それぞれと握手する。
が、イヴとの握手の時――
「うん、よ、よろしく」
クロノは赤面しながらイヴと握手する。
その様子を見たブレンは。
「ははーん。坊主。嬢ちゃんに惚れたな?」
「は!? な、なに言ってるんですか!?」
分かりやすい反応。
そう、クロノはイヴに一目惚れをした。
明確に出た答え。それは彼女を、イヴを守りたいと思ったこと。
「くくっ、いいじゃねえか。
女のために戦う。それは男にとっちゃ重要な理由だぜ?」
「そのからかい口調で言われても説得力がありません!」
とてもガンダムのパイロットとは思えないほどのバカ騒ぎ。
それを教授とイヴは眺めていた。
「教授」
「なんじゃ、イヴ」
「惚れた、ってなに?」
「あー……そのうちわかるじゃろう」
「そう」