ボーカロイド達の日常   作:新参者

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鏡の歪み

 四月はもう下旬に入り、クラスの周りの人達は五月の連休に胸を躍らせていた。バーベキュー、旅行、カラオケ等々、様々な娯楽を挙げてまだかまだかとここ数日、クラスの話題で持ち切りになっている。

 「レンは何か連休中にするの?」

 「いや、別に」

 「そっかぁ、だったらさぁ、一緒に何処か行こうよー」

 「あぁ!それいいねぇ!!何処にする?」

 ボクの周りでもそういう話題は出てくる。意図した訳でもないのに、何故か自然とそんな雰囲気になる。

 「ならさぁー、私、リンさんと遊んでみたいんだよね!」

 「あ、私もー!」

 なんで、こんな展開になったのだろうか。面倒で仕方ない。別に次の連休に外に出る予定は無いし、リンも家にいる筈だ。

 「でもさぁ、リンさんってさ、最近友達作ったらしいし、多分その人達と遊ぶと思うよ」

 

 ぴたり、とその言葉が脳内で止まる。

 

 「え、そうなの?だったら難しいかなぁ。私、リンさんもそうだけど、その友達の事すら知らないからなぁ」

 「だよねぇ、私も隣で楽しそうに話してるのを遠目に見ただけだからなぁ……ってレン?」

 頭は冷えるが、思考が高速で回る。いつの間に?と思ったが、その兆候はあった。

 

 あの、GUMIとかいう女だ。 

 

 最近一緒に帰らなくなって不審に思っていたが、彼女達の言っているのは恐らくソイツのことであろう。あの不真面目そうな女の何が良いと言うのか。

 ……一回調べてみるのもいいか?この連休中に会ってみてソイツの動向を伺ってみるか。

 「ねぇレン?どうしたの?ぼーっとしてさ」

 「分かった、リンにその事伝えてみる」

 「え?それってどういう事?」

 「そのグループに入れてもらえるか聞いてみる」

 「本当に!?やった!!」

 「レンありがとう!」

 「ううん、別に」

 他人なんかの為に動かない。ボクはボクとリンの為に動くだけだ。

 

 

 

 リンが遅れて帰ってくるとボクはリンに五月の予定を聞いてみた。

 「五月の連休……?あー、うん。確かにGUMI達と遊ぶ予定入ってるけど、なんか用事とかあったかな?」

 ボクの眉は微かにピクリと動いた様な気もするが、それはともかくとして今日あった事を話した。

 「一緒に遊びたい……か。うーん、多分大丈夫だと思う。けど、GUMIに連絡入れておこうかな」

 彼女はスマホを取り出してポチポチと入力している。数分してスマホをポケットにしまうと彼女はにっこりと笑った。

 

 らしくないな

 

 これまで二人っきりで彼女の隣に居続けていたボクは反射的にそう思ってしまったが、出来る限りの笑顔を見せて部屋に戻った。

 

 

 

 暫くしてソイツから『確認取れた、全然大丈夫!』という返信が来たらしく、こうして五月の連休の予定が決まった。


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