この商才無しの店主に幽霊を!   作:漆黒のマッハチェイサー

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ちょっとだけ謝罪を。
既に一話に変更した点があります。というのも、主人公の年齢を18から16に下げただけなんですが。
…特にストーリーに支障はありません。


第二話 衝突!水の女神!?

今日の初クエストで死に(?)、一度耐え難い後悔を経験した俺、ライは、明日ウィズさんのお店を訪問することにした。

出来れば今日のうちにウィズさんに再会したかったのだが、クエストから帰り、ギルドから報酬を受け取った頃にはもう夜中。店もやってないだろうし、こんな時間に訪問するとて迷惑になるだけだろう。

 

今日は馬小屋で寝ることにして、続きはまた明日…

 

 

 

…寝れない。

あんなに動いた後だというのにちっとも眠くならない。そして、不思議と疲労もないことに今気づく。

まあ、俺が死んで幽霊になったというのならそれも当たり前のことなのかもしれないな。

俺は仕方なく、寝静まった街を徘徊することにした。

 

街へと繰り出した俺は人目がないのをいいことに浮遊し、空中を暴れまくる。しばらく暴れ回ったからか、結構コツが掴めてきたようだ。

どうやら俺は浮遊だけじゃなく、身体を透けることも出来るようだ。本格的に幽霊。

と、そこに見えてきたのはウィズ魔道具店。

 

…あれっ。

これ俺、身体を透過させて家に入って、ウィズさんの寝顔を拝むことなんかも出来ちゃうんじゃ…

 

そんなイケないことを考えついてしまい、良心と悪心の間で頭を抱えていると、急に店のドアが開き、黒いローブを身に纏ったウィズさんが出てきた。

 

咄嗟に隠れてしまった俺に気づくことなく、ウィズさんはそのままそそくさと何処かへ向かっていく。

今は真夜中、午前二時前といったところ。

 

ーこんな夜中に何を?

 

不審に思った俺は、ウィズさんの後をつけてみることにした。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

俺はサトウカズマ。日本で若くして不幸な死を遂げ、水の駄女神アクアを転生者特典として選び、この世界に転生した冒険者だ。

 

そこにめぐみん、ダクネスを迎え入れた俺のパーティは今、墓地に出るゾンビメーカー討伐のクエストに挑戦している。

 

めぐみんは、生まれつきにしてアークウィザードの素質を持つという紅魔族で、職業は勿論アークウィザード。だがスキルは爆裂魔法しか取っておらず、高火力の必殺技を一日一度撃てるだけのロリっ子だ。

 

ダクネスは職業、クルセイダーで、防御力に関してはかなりのものなのだが、全くと言っていいほど攻撃が当たらない。更にドM属性も所持しており、自分から攻撃を受けに行ってしまうのは本当にやめて欲しい。

 

そして俺が転生者特典として連れてきた駄女神アクア。ステータスが全面的に高く、蘇生魔法さえ使いこなすアークプリーストだが、知力が絶望的に低い。

 

「ちょっとカズマ、今私に失礼なこと考えてなかった?」

 

「考えてない」

 

こういう時だけ妙に勘が鋭いんだよなぁ、コイツは。

 

 

 

時間は午前二時を過ぎた頃。そろそろ頃合いだと思い、俺達は墓地に向かっていた。

 

「冷えて来たわね…。ねぇ、受けたクエストってゾンビメーカー討伐よね?私、そんな雑魚よりもっと大物が出そうな予感がするんですけど…」

 

 

アクアが不安になることを口走る。

 

 

「おい、そんなフラグビンビンなことを言うな。いいか、今日はゾンビメーカーの討伐、そして取り巻きのゾンビもちゃんと土に還す。んで帰って寝る。もしイレギュラーが起きたらすぐにトンズラする。わかったな?」

 

 

そう言うと、皆こくりと頷いた。

 

墓地へと進んでいくと、俺の敵感知スキルが何かピリピリ感じ出した。

 

「何かが敵感知に引っかかったな、いるぞ、一体、二体、三体、4体…?」

 

あれ、多いな?

ゾンビメーカーの取り巻きはせいぜい二、三体って聞いてたが…まあ誤差の範囲だろう。

 

そんなことを考えていると、墓場の中央で青白い光が走った。

 

それは、妖しくも幻想的な青い光。

遠くに見えたのは、大きな円形の魔法陣で…

その隣には、黒い人影のローブが見えた。

 

「…あれはゾンビメーカー…ではない…気が…するのですが…」

 

めぐみんが自信なさげに呟いた。

 

「突っ込むか?ゾンビメーカーじゃなかったとしても、こんな時間に墓場にいる以上はアンデッドに間違いないだろう?ならアークプリーストのアクアがいれば…」

 

「あーーーーー!」

 

アクアが俺の声を遮って、とんでもない行動に出る。

突然叫んだアクアは、何を思ったのか立ち上がり、そのままローブの人影に向かって走り出す。

 

「ちょっ!おい待て!」

 

俺の制止も聞かずに飛び出して言ったアクアはローブの人影に駆け寄ると、ビシッと人影を指さした。

 

「リッチーがこんなところにノコノコ出てくるとは不届きな!成敗してやる!」

 

リッチー。それは、ヴァンパイアと並ぶ、アンデッドの最高峰。魔法を極めた偉大な魔法使いが、魔道の奥義により人間を辞めた姿。通称ノーライフキング。簡潔にいうとアンデッドの王のような存在。

 

そんな、超大物モンスターが今…

 

「やめやめ、やめてえええええええ!誰なの!?いきなり現れて、なぜ私の魔法陣を壊そうとするの!?やめて!やめてください!」

 

魔法陣をぐりぐりと足で消そうとするアクアの腰に、泣きながらしがみついていた。

 

アクアはリッチーだと言い張っているが、俺にはこの人がただのいじめられっ子にしか見えない。

 

「黙りなさいアンデッド!どうせこの怪しげな魔法陣でろくでもないこと企んでるんでしょ!」

 

「やめてーやめてー!この魔法陣は成仏出来ない迷える魂を天に返してあげているんです!見てください!沢山の魂が天に昇っていってるでしょ!?」

 

なるほど、見れば確かにそのようだ。

だが、アクアはそれがむしろ気に触ったようで。

 

「アンデッドの癖に生意気よ!そんな善行は私がやるから、あんたは引っ込んでなさい!見てなさいよ!私が墓地ごと浄化してやろうじゃないの!」

 

「えっちょっと待っ」

 

リッチーの静止も聞かずにアクアが手を広げ、大声で叫ぶ。

 

「『ターンアンデッド』ー!」

 

墓場全体がアクアを中心に白い光に包まれ、周辺のゾンビ達の存在を消失させる。

その光はもちろんアクアにリッチーと呼ばれた黒いローブの女性にも及び、徐々にその身体が薄くなっていった。

 

「やめてえええええええ!消えちゃう、私消えてなくなっちゃう!やめて、誰か助けてえええええええ!」

 

いいことをしていたというこの人をこのままアクアに浄化させるのがちょっと可哀想になってきた俺が、アクアに止めさせようとしたその時。

 

そんなリッチーの声が届いたのか。

勝ち誇ったように高笑いするアクアの腹に、どこからともなく高速で飛んできた“何か”が潜り込んだ。

アクアが「ぐえ!」という、女神らしくも、そもそも女らしくもない声を出しながら弾け飛ぶ。

アクアを弾き飛ばしたそれの正体は、黒ベースにオレンジのラインが施されたパーカー。

自由自在に浮遊するそれは墓地を飛び回り…いつからかリッチーと俺達の間にいた誰か…いや、“何か”にまとわりつく。

 

『レッツゴー!覚悟!ゴゴゴ・ゴースト!』

 

俺達からリッチーを守るかのように目の前に立ちはだかったそれは頭からフードを外し、一本の角を持ったその顔を顕にする。

 

「大丈夫ですか、ウィズさん?」

 

オレンジ色に光るその顔は、背後のリッチーを顔を向け、そんな声をかけた。

 

「え、ええ、なんとか…」

 

ターンアンデッドから解放されたリッチー…ウィズと呼ばれた彼女は、唐突な救世主の登場に困惑している。

 

「何なのよあんた!一介のゴーストが女神である私に牙を向いて、タダで済むと思わないことね!」

 

「ふぇっちょっ…!」

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』ー!」

 

「うわあああああーーーー!」

 

パーカーに殴り飛ばされ、敵意MAXのアクアのターンアンデッドは確かにそれに命中したはずだった。しかし。

 

本来なら、通常のターンアンデッドで倒せるであろう、アクアにとってそこまで強い敵ではないはずのゴースト。

 

「…効いてない?」

 

それは、ゴースト自身が発した言葉。彼にとっても、これは予想外だったのだろうか。アクアの攻撃を受けたそのゴーストにダメージはない。

 

「…あなた、よく見たら私が前に送り出した転生者じゃない?」

 

ターンアンデッドが効くはずの敵に効かず、驚いたように相手を見ていたアクアがそんなことを。

 

…今、なんつった?

 

「おい、どういうことだ?確かにお前が送り出した転生者なのか?」

 

「間違いないわよ、いつもは送り出した人のことなんてわざわざ覚えてないけど、カズマに連れてかれる直前に送った人だからまあまあ覚えてるわ。あのオレンジ色の鎧は間違いなく仮面ライダーゴーストだもの。ねえ、あなたも覚えてるでしょ?あなたをこの世界に転生させた水の女神アクアよ?ほら、分かったらそこをどきなさいな、そのリッチー浄化するから」

 

だが、仮面ライダーゴーストと呼ばれたその人はキョトン、とした様子で。

 

「…俺は君に会った記憶はないけど?」

 

そう言って変身を解除させた。その素顔を見たアクアが叫ぶ。

 

「あんた誰よ!」

 

おい。

 

「俺はライだ、覚えとけ。それより、どういうことだ?ウィズさんがリッチーなわけないだろ、適当言うんじゃねえよ」

 

「あ、あの…」

 

そう言ってアクアからウィズを庇うライに、ウィズが申し訳なさそうに。

 

「すみません私、実はリッチーだったりしちゃうんです…」

 

「は………?」

 

ウィズが、本当に申し訳なさそうにそんな告白をー

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「本当にすみませんでした。別に騙すつもりではなかったんですが…」

 

時刻は午前三時頃。

 

墓場で冒険者達に襲われていたウィズさんを助けた際に、ウィズさんが実はリッチーだったという衝撃告白を聞いてから30分程が経つ。

 

あの後結局、ウィズさんは今まで人に危害を加えたことはない、ということで冒険者達には見逃してもらえることに。

あのアークプリーストはゴーストドライバーを知っているようで、後日詳しく話をしてもらうことになった。

 

夜も遅いのでとりあえず解散、馬小屋に戻ったところで眠くならない俺はウィズさんを家まで送り届けることにしていた。

 

「別にいいですよ、気持ちの整理もつきましたし。リッチーであることなんて明かしたら街で暮らしていけなくなるかもしれませんもんね。でもリッチーだなんて凄いじゃないですか、俺なんかゴーストですよゴースト」

 

「そんなことないですよ。というか、ライさんもこの街に来てたんですね」

 

「まあ、駆け出し冒険者ですし」

 

ウィズさんとの他愛ない会話。俺はウィズさんがリッチーだということを知らされて尚、自分の気持ちが変わらないことを実感していた。というか、俺もゴーストだし。

ならば、やることはひとつ!

 

「あの、ウィズさんっ!俺をっ!ウィズさんの店で働かせてください!」

 

「ライさん!?あの、えっと…申し訳ないのですが…今私のお店にはバイト代を出せるほどのお金が…」

 

「ならバイト代はいりません!ウィズさんのお手伝いさえ出来れば!」

 

「えっ、えっと、それはさすがにちょっと」

 

「遠慮はいりません!ウィズさんの近くにいたいだけなので」

 

なんかナチュラルに告ってしまった気もするが、気のせいだろう。

しばしの沈黙が走る。頭を下げているのでウィズさんの表情は見えないが、多分困ってるのだろう。もうちょっといい交渉の仕方があったもしれないと若干後悔しつつも、俺はおそるおそる顔を上げた。

 

すると、ウィズさんが何かを思いついたように手をたたく。

 

「そうだ、お手伝いしていただく代わりにうちに住みませんか?」

 

…うちに?

それはつまり、ウィズさんとひとつ屋根の下で生活を…

 

この魅力的な提案に、俺は喜んで乗ることにした。

 

 

 

「では、ライさんのお部屋は掃除しておくのでお昼頃にまた来てくださいね」

 

ウィズさんを家まで送り届けた俺はウィズさんに背を向け、荷物をまとめるために馬小屋に戻ろうと…

 

「ライさん…」

 

したところに、30秒前に別れたはずのウィズさんの声が背後から聞こえてきた。

 

「店に結界が張ってあって入れません…」

 

ウィズさんが涙目でそんなことを。

もしやと思い、辺りを見回すと…

 

「プークスクス!ざまあないわねあのリッチー!」

 

道の曲がり角で笑っている、さっきのアークプリーストを、俺は剣を召喚し、瞬間移動して殴り飛ばした!

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「なあ、拗ねてないで教えてくれよ。大体お前が悪いんだろ?」

 

あれから数日。俺はウィズの家に部屋を借り家賃の代わりに店を手伝うことになった。心優しいウィズは、食事も提供してくれる。ゴーストは本来食事をしなくても生きていけるのだが、せっかくだからご馳走になることにしている。

呼び捨てでいいとのことなので、喜んでウィズ、と呼ぶことにした。

 

そして今は魔道具店でこの前のアークプリースト、アクアにゴーストドライバーの話を聞いているのだが。

 

「だってコイツ、あろうことか女神であるこの私に剣で殴りかかってきたのよ!?それでいて許せっていう方がおかしいんじゃないかしら」

 

この前剣で殴り飛ばしたのを根に持つアクアは、いつまでも教えてくれないでいた。

 

「そもそも、私が女神であることを信じてくれないんじゃ話が進まないわよ」

 

そう、コイツは自分が女神であるとの、よく分からない主張を続けているのだ。そんなもの、信じろという方が馬鹿げている。

 

「先日のターンアンデッドの件で引っかかってたんですが、アクアさんって、本当に女神様だったりするんですか?」

 

アクアに言われるがままにせっせとお茶を用意していたウィズがそんなことを言う。

 

「だからさっきから言ってるじゃない。私はアクア、アクシズ教の崇める御神体、水の女神アクアよ!」

 

「ひいいぃ!」

 

それを聞き、怯えて俺の後ろに隠れるウィズ。

 

「そんなに怯えなくてもいいと思うぞ?まあ、女神とリッチーなんて水と油のような存在なんだろうけどさ」

 

そういってカズマがウィズをなだめる。

 

「い、いえ、そうではなくて、頭がおかしい方が多いと評判のアクシズ教の元締めの方と聞いて…」

 

「なんですってぇ!?」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

俺はいきり立つアクアから怯えるウィズをなだめる。怯えるウィズも萌えるが、それよりも。

 

「ていうことはウィズ、アクアが女神っていうのは本当なのか?」

 

「ええ、それなら私にターンアンデッドが聞いたことも納得がいきます」

 

なるほど。

 

「どうやらやっとライも信じたようね。じゃあ話を進めるわ。天界では今、他の世界で若くして死んだ人達をこの世界に送ることになってるの。送ってすぐに死なれちゃ困るから、なんでも欲しいものをひとつだけ与えてね。まあ、その特典として私はカズマに連れてこさせられちゃったからここにいるんだけど…」

 

カズマがふいっと目を逸らす。何やってんだ。

 

「その特典として、転生させたとある子が持ってったのがそのゴーストドライバー、仮面ライダーになるためのアイテムのひとつよ。その子はゴーストを望んだから、そのドライバーで変身するとゴーストになれるようにしてあるの。とは言っても、オレ眼魂を発現させるには自分が1回死なないといけないから、それを発現させるのは推奨してないんだけど…」

 

「オレ眼魂ってこれか?なんだオレって。いや、俺は一人称オレだから間違ってないのかもしんないけど、もうちょいかっこいい名前なかったのか」

 

「考えたの私じゃないんだから、私に言わないでよ。それでね?もしかして、アナタが死んだ時に近くで同時にその子が死んじゃったりしたんじゃない?」

 

「よく分かったな、俺達はパーティ組んでて一緒に死んだんだ」

 

「悲惨だな」

 

カズマがうるさい。

 

「眼魂は死んだ人の魂をその中に入れておくことが出来るのよ。それで、その場合基本は持ち主の魂の保存が優先されるはずなんだけど、多分アナタの方が生きることへの執着が強かったのね、それに呼応した眼魂がアナタの魂を保存しちゃったんだと思うわ」

 

「もうちょっといい言い方出来なかったのか?」

 

「出来なかったわ。あなた冒険者でしょ?他の人に見せてもらえばなんでもスキル習得出来るはずだから、誰かに召喚魔法を教えてもらってきてね。そしたらその力のもっと便利な使い方を教えてあげるからね」

 

そう言ってアクアは席を立った。




次回まではまだライのチュートリアル的な感じですかね。
えっと、かなり早いけど一巻の内容はもうすぐ終わる予定です。
今回の話で分かる通り、そもそも内容が既に一巻の中盤あたりですしおすし
あと二、三話ほどで二巻の内容入りますかねー

感想などいただけると有難いです。でも作者は口下手なので面白い返しは期待しないでください!!!
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