この商才無しの店主に幽霊を!   作:漆黒のマッハチェイサー

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えっと、おはようございます

もうお気づきの方のいらっしゃるとは思いますが、サブタイを「○○!〜!」の形にするのに限界が来ました。
まだ六話です。自分の語彙力の限界だと思って勘弁してください。


第六話 電気と雪崩とかき氷

季節はまだまだ冬。相変わらず客のいないウィズ魔道具店で、無気力な俺は机に突っ伏している。

 

先日のクエスト。テイラー達のパーティにカズマと一緒に混ぜてもらった俺は、ゴブリン討伐でも初心者殺し戦でもまったく役に立つことが出来なかった。

結局俺は駄目駄目じゃないか。思い返せば、ゴーストドライバーを手に入れてからの戦績は、ゴブリン数匹の討伐、アクア退治、ダスト退治、あと…えっと…

 

 

それだけだった。ああ、俺は神器で、主に人間をぶっ飛ばしてただけで強くなった気でいたんだな。

 

「まったく駄目じゃないか…何をやってるんだ俺は…」

 

ウィズを守るどころか、こんなザマで一緒にクエストを受けたりなんてしたら迷惑をかけること間違いなしだ。

いや、ウィズだけじゃない。このざまじゃ、どこのパーティにも入れやしない。

 

なんとかしなきゃならないのはわかってる。でも、そんなのどうすりゃいいんだ…

 

考えに行き詰まった俺は、机の上にあったドリンクの蓋を開けて中の液体をグイッと

「ああっ駄目ですライさん!それは飲むと嫌な臭いを発してあらゆる生物に嫌われるモンスター避けで、効果がとても良いので人間にも嫌われてしまうという…ちょっ、こっち来ないでください、気持ち悪い!」

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

翌々日。結局あの日は知り合いにも散々嫌われ、心に大きな傷を負って帰ってきた。一番のダメージはウィズの「気持ち悪い」だったけど。

ちなみに臭いは二日間取れず、頑張って身体を洗ってやっと収まった。着ていた服は仕方なく捨てることになった。

なかなか強力だったなぁ。あれは売れる。

 

しかし、二日間考え通しても俺はこれからどうすればいいのか検討がつかなかった。

いい武器を持っていても、たとえ上級職でも身体や頭の使い方によっては全く役に立たないことだってある。それが俺なんだろうなぁ。

同時にアクアのことも思い出した。あれも同じケースか。あれっ、なんか急に深く考えるのが馬鹿らしくなってきたぞ。すごいですねアクア様。

 

「す、すみませーん…」

 

そうだ。この前の初心者殺し戦。あの時テイラーがくれたアドバイス。よく考えたらその通りだ。やみくもにハンマー振り回したら余裕で避けられるに決まってるじゃないか。ハンマーの使い方は少し考えた方がいいかもな。

 

「あのー…」

 

その前のゴブリン討伐は?あの時、俺が飛び出したりしなければもうちょっと作戦も立てられたんだろうな。とっさにニュートンに変身出来ていたらキースが矢を受けることもなかったかもしれない。

 

「店員さーん…」

 

俺はとっさに物事を考えられないんだろうな。直していかなければいけないポイントだ。上手く立ち回れるようになればこのゴーストドライバーだってかなりの効力を発揮するはず。

 

「あのっ店員さん…!」

「え?」

「さっきから何度も呼んでます!えっと…ライさん…ですよね?」

 

俺に話しかけてきたのは見た目16歳くらいの女の子。いつの間に目の前にいたんだろう。全く気づかなかった。

 

「俺がライですけど…」

 

「はじめまして!わ、我が名はゆんゆん!紅魔族随一の上級魔法の使い手にして、いつか族長になる者…」

 

この子…ゆんゆんが、紅魔族特有を名乗りと共に自己紹介してくれた。途中から恥ずかしくなったのか、声が小さくなってきたけど。

紅魔族。なるほど、恥ずかしさで紅い目が輝いている。

 

「今はこの店俺しかいないから、恥ずかしがらないでもいいぞ」

 

俺がそう言うと、ゆんゆんが顔を赤らめる。言わないであげたほうが良かったらしい。なるほど、こういう咄嗟の判断力が戦闘にも必要なんだろうな。

こういう時はどうするべきか…ならば、俺も。

 

「我が名はライ!アクセル随一の死に損ないにして、数多の英雄を使役せし者!」

 

まだそんなに眼魂は集まってないけど。他に思いつかなかったしいいだろう。

…あ。使役っていう言葉のチョイスは良くなかったらしい。ポケットの中の英雄眼魂が心無しかガチャガチャいってる。眼魂が動くわけなんてないから気のせいだろうが、俺の潜在意識下で英雄の怒りが伝わってきてるのかもしれない。

 

「え…」

 

ゆんゆんを見ると、驚いたような顔をしている。お気に召さなかったか?

 

「笑わないんですか?私の名乗りを聞いて?私の名前を聞いて…」

 

「笑わないよ。だって、それが紅魔族の特徴だろ?」

 

「そうですか…この街の人達は優しいんですね」

 

ゆんゆんが、そう言って笑みを浮かべる。俺にはウィズがいるのに、ちょっとドキッとしてしまう。

落ち着け、俺にはウィズがいるだろ、思い出せ…

一度落ち着いたので、そろそろ本題に入ってもらうことにしよう。

 

「あ、そうだ。それで、俺に何か御用でも?」

「え!?あっ、えっと、ご要件っていうのは…えっと…」

 

なかなか要件を伝えてくれないゆんゆん。どうしたんだろうか。

 

「私だけのためじゃないんだから…頑張れ、頑張れ私…」

 

「えっと、大丈夫?」

 

「え!?あっはい、えっと、その…わ、私と!クエストに行っていただけないでしょうか!」

 

「クエスト?」

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

こうして俺は、ゆんゆんと臨時パーティを組んでクエストをこなすことになった。

今回のターゲットはカキゴーリ。雪山において雪崩を起こし、巻き込まれた人やモンスターを掘り出して捕食するらしい。大きな雪玉にデカい口と角が生えたような容姿をしていて手足はなく、常時浮遊していて、猛スピードで突進してくるというなかなか恐ろしいやつだ。

え?ポケモン?なんだそりゃ?

 

「ほんとに寒いですね…はぅっ」

 

もちろん今、俺達は雪山を歩いていた。マジ寒い。

だが、俺はともかくゆんゆんは何も厚着をしてきてないのだ。ゆんゆんの方が断然寒いだろう。

 

「なんであったかい格好してこなかったんだよ…ほら、これ着るか?」

 

「え?いや、いいですいいです!雪山の寒さを甘く見ていたのは私なのでっ」

 

「いいから着ろって!俺としても女の子を寒いままにさせとくのはあんまり気が乗らないんだよ」

 

「ひゃっ!ありがとうございます、やっぱり優しいんですね」

 

俺が無理矢理着せると、そう言って寒さで真っ赤になった笑顔を向けてくれた。

 

「いいってことよ。それより、カキゴーリの目撃情報があったのこの辺なんじゃないか?」

 

「え?…いや、どこ見ても真っ白なので位置とか全くわからないんですけど…」

 

え?いや、それもそうだ。一面の銀世界。むしろ何故俺はこの辺だと思ったんだろう?これが第六感とかいうやつだろうか。

 

その時、ゆんゆんの足元の雪がわずかに揺れた気がした。

 

「ゆんゆんゆん!」

「えっ」

 

咄嗟にゆんゆんに飛びつき、その場から離れさせる。

すると、ゆんゆんのいた所の雪がはじけ、人の半身はある巨大な雪玉が勢いよく飛び出した。

よく見ると角らしきものがあり、目と口もある。なるほど、これがカキゴーリだな。

 

「あの、ゆんゆんです…」

 

カキゴーリに注意を向けていると、体の下からそんな声がしてくる。

おっと、ゆんゆんを助けるために押し倒したままだった。ゆんゆんの柔らかい特定部位が俺の下腹部に当たって…

 

「これは失敬」

 

もう少しそのままでいたかったが、ゆんゆんの上から退く。

 

いや、思わず変に呼んだ名前を訂正されただけだから、退く必要はなかったのか。しまったな…

 

「ギャガァァァァ!」

 

っと、今はそんな場合じゃねえな。

 

飛び出してきた一体をはじめとして、数体のカキゴーリが次々と飛び出してくる。全部で四体いるようだ。

 

「ゆんゆんは下がって魔法の用意を!」

「はい!」

 

言われた通り、下がって詠唱を始めるゆんゆん。

 

「変身!」

 

『レッツゴー!覚悟!ゴゴゴ・ゴースト!』

 

仮面ライダーゴースト オレ魂に変身した俺は、ガンガンセイバーを持って前衛としてカキゴーリに斬り込む。

前衛にも後衛にもなれるのが仮面ライダーのいいところだ。

 

「ヴッ!」

 

剣で一体のカキゴーリを倒すが、別の一体がわき腹にタックルしてきた。重い一撃に飛ばされ、自分の身体が雪原で跳ねる。

 

視線を向けると、二体のカキゴーリが突進してくるところだった。くそ、避けられねえ!防御の体制を取ろうとしたその時、カキゴーリ達が燃える。

 

「『ファイアーボール!』」

 

ゆんゆんの魔法がヒットしたようだ。すごく助かった。

倒した三体のカキゴーリを確認し、ゆんゆんが駆け寄る。

 

「大丈夫ですか?怪我とか…」

 

「問題ないかな。ちょっとお腹が痛いくらい」

 

「なら良かったです。」

 

ゆんゆんがホッとした表情を見せてくれる。

 

「あっあの、今日はありがとうございました!」

 

「いや、別にいいから!こっちも助かったから!一人でクエスト受けるのは心許ないし!やめてやめて」

 

頭を下げてしまったゆんゆんに困惑しながらなんとか取り繕おうとしていると、何か上の方から何かが爆ぜるような音がしてきた。

 

「…え」

 

最初に確認していたカキゴーリは四体。倒したのは、三体。逃げた一体が引き起こしたんだろう、広域にわたる雪崩が俺達の元に向かってきていた。いや、向かってきていたでは少し語弊があるかもしれない。

雪崩を確認した時、それはもう俺達の目の前まで、今から瞬間移動しようとしたところで到底間に合わないであろう、まさに目と鼻の先まで迫ってきていた。

 

「ゆんゆん!」

 

俺はせめてこの子だけでも守ろうと、また咄嗟にゆんゆんに抱きつく。でも、そんなのなんの足しにもならないだろう。どのみち、すべて雪に埋もれて潰れてしまうのだから。

俺はゆんゆんを抱きしめたまま目を閉じた。雪に押し潰される直前、ポケットの中がまた動いた気がした。

 

 

 

 

 

だが、いつまでたっても雪が上にのしかかってくる感覚はなかった。もう感覚が雪にやられてしまったんだろうか?それとも、もうとっくに死んでー…俺はもう既に死んでいたことに気付いた。

 

そっと目を開けてみる。ゆんゆんが見える。見える?

何故だろう、すごく明るい。

 

「ライさん、すごい…!」

 

「え?」

 

ゆんゆんの感嘆の声を聞き、あたりを見回してみる。

 

何か黄色いバリアのようなもの。それが俺達の周囲に半球状に張ってあって、雪を防いでくれていた。

 

何かの魔道具だろうか?

 

俺はバリアの出ているところを辿っていき…それは、いつの間にか俺が持っていたガンガンセイバーの先から出ていた。

 

「ッ!?」

 

いつの間に変身していたんだろうか、ゴーストドライバーにはエジソンの眼魂がセットされていて、俺が電撃のバリアを出している!

 

「なるほど…と、とりあえずこれで雪に潰されて死ぬことはなくなったな。で、ここからどうするかだ…」

 

とりあえずゆんゆんの前で平静を保つことには成功したが、これがなかなか難しい問題だ。

 

なんで俺が無意識に変身して、こんな攻撃を出せたかは定かではないが、このままじゃ脱出は出来ない。

 

ゆんゆんの魔法で雪を溶かしてもらってもいいが、バリアを解かないとこっちの攻撃も外側には届かないだろう。

かといって、バリアを解くともれなく雪に押し潰されて終わりだろうな。

バリアを解いてすぐゆんゆんに魔法で雪を吹き飛ばしてもらうか…ダメだ、上にどれくらい雪があるかわからない。ゆんゆんが魔力を使い切って、そこでまたカキゴーリに襲われたらどうする?リスクが、高い。

ウィズや他の冒険者に助けてもらう?いや、まずどうやってここから連絡を取ればいいか…

 

…うん、まずいな。

 

これっバリアの維持結構キツイ!

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

何時間経っただろうか。

 

「くっ…」

「ライさんもういいです、やめてください!」

 

ゆんゆんがそんな声をかけてくる。魔力の限界が近い。

 

「やめられるわけ…ねえだろ!」

 

もう少し耐えれば、通りがかった冒険者が見つけてくれるかもしれない。めぐみんが爆裂魔法を撃ちに来て、全部溶かしてくれるかもしれない。

 

「やっぱり私が魔法で溶かしますから!バリアを解いてください!」

「もう少し…まだいけるから…」

 

さすがに少し意識が遠くなってきた、その時。

 

「『ファイアボール!』」

 

バリアの上が開け、光が射し込んでくる。

 

「大丈夫ですか、ゆんゆんさん、ライさん!」

 

もうすっかり聞き慣れた、憧れの人の声がする。

 

「来てくれたんですね、ウィズさん!」

 

ゆんゆんのその言葉を最後に、俺の聴覚は、視覚は、意識はすべてシャットアウトしたー

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

目を覚ますと、俺は自分の部屋にいた。

 

「あっ起きましたかライさん!」

「大丈夫ですか!?どこか痛んだりは!?」

 

「なんともないよ、大丈夫」

 

俺が起き上がると、ゆんゆんとウィズが寄ってきてくれる。どうやら、様子を見ていてくれたらしい。

 

「よかった…」

「でも、この子が来た時はびっくりしましたよ」

 

ウィズの視線の先には得意気に踊るクモランタン。雪崩に巻き込まれた時に咄嗟に俺の元から離れ、ウィズに知らせに行ってくれたのだという。

 

「そうだったのか…ありがとな、ウィズ」

 

「別にいいんですよ、それくらいのこと。それよりも!」

 

ペチンッ!ウィズの中指が、俺のおでこを叩く。そう、デコピンだ。ウィズにデコピンされた。ちょっと頬を膨らまして言う。

 

「パーティを組むなら、もうちょっとメンバーを信頼すること!ゆんゆんゆんさんだって、周辺の雪退かすくらい余裕で出来たって言ってましたよ!紅魔族の魔力を舐めちゃ駄目です!」

 

「ゆんゆんです」

 

「そっか…ごめんなゆんゆん、俺がそんなに魔力量ないからって俺基準でどうしても考えちまって。でも、それなら言ってくれれば」

 

「せっかくライさんが頑張ってくれてたので、水を差したくなくて…」

 

ゆんゆんは赤い眼を光らせて申し訳なさそうにしている。

いや、おい!まあ、紅魔族を甘く見てた俺も悪いんだけどさ!

 

「まあ、今回はみんな無事だったってことでお開きにしましょう!でも、今度からはちゃんと考えて動くようにしてくださいね?」

 

「はーい」

 

「じゃあ私、もうそろそろおいとましますね!はいこれ、クエストの報酬です!では、お邪魔しました」

 

ゆんゆんが報酬を置いて帰って行った。

 

「…ありがとな」

 

「え?」

 

俺の言葉を聞いたウィズが狐につままれたような顔をする。

 

「ウィズだろ、ゆんゆんに俺をクエストに誘うように言ってくれたの」

 

「バレてましたか」

 

そう言ったウィズはいたずらがバレたような、それでいて嬉しそうな表情を浮かべた。それは、俺に初めて見せる表情だったと思う。

 

「ライさんが悩んでいたようだったので。でも、ライさんはゆんゆんさんを助けることが出来たんですよね。ならもう大丈夫ですね」

 

そう言ってウィズはまた笑う。

 

「…そうだな」

 

まだまだ課題は残るが、俺はゆんゆんを助けることが出来た。今は、それで十分だ。俺はそう思うことにした。

 

 

 

 

「ところで、雪はちょっと圧力がかかるだけでも固まりますから、別に魔力無くなるまでずっとバリア張ってなくてよかったんですよ?」

 

えっ。

 

 

覚醒した眼魂:5個




特にゆんゆんルートに入ったわけではないです。

次回は、眼魂回の予定です。

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