青の少女のヒーローアカデミア   作:かたやん

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第47話

「見苦しい姿を届けて申し訳ねぇ、全国のリスナー諸君!

 じゃあこれから質問タイムに入るぜ!」

 プレゼント・マイクの実況が始まる。

 と言っても、次の競技の準備が整うまでの時間稼ぎだ。

 次の競技をどうするのか、取り敢えず職員たちの方で概ね決まったらしい。

 ひとまず各関係者への伝達や諸々で時間がかかる。

 その時間を稼ぐための放送だ。 

 

 青の少女が再び引き起こした騒動は、相澤らの手により収められた。

 機材は何とか無事だった。

 念のため予備の機材に入れ替えられてはいる。

 放送中に予期せぬ不具合を起こしたら大変だ。

「相澤さん」

「先生だ、青石」

「なんでボク、まだぐるぐるに巻かれてるんですか?」

 青石は椅子に座っている。だが先ほど実況室に居た時と違い、相澤の捕縛布でグルグル巻きにされている。

 まるで連行される(ヴィラン)だ。

 もちろんその姿も全国に放送されている。

「お前が馬鹿な事をしないようにするためだ。諦めろ」

「酷いや! こんなのあんまりだ!」

「それは俺の台詞だ! 機材滅茶苦茶にしやがって!」

 相澤は若干キレ気味だ。いや実際キレている。

 となりのプレゼント・マイクは「まぁまぁ」と宥める。

(ほど)いてやれよ”イレイザー・ヘッド”。俺達が側にいるからもう大丈夫だ。

 それにこれじゃ格好つかねぇだろ!」

「そうだ!」

 青石がふんと鼻の穴を大きくする。お前が言うなと相澤は心の底で思った。

 相澤は青石を無視しプレゼント・マイクの顔を見る。

「仕方ない」

 彼が手を動かすと、捕縛布は生き物みたいにうねって解けた。

「おおーありがとう相澤さん」

「……」

 青石は解いた捕縛布を見ている。

 どうやら相澤の技術に感心しているらしい。

 相澤は相変わらず複雑そうな顔をしている。

 渋々だと言わんばかりだ。

「HEY! 青石! 全国から寄せられた質問に答えていくぜ!

 準備は良いな!?」

「おー!」

「さっさとしやがれ」

 せかす相澤。プレゼント・マイクが苦笑しつつ手元のタブレットから質問を選ぶ。

「じゃ、一番目の質問だ。えー、神奈川県に在住のペンネーム〇〇〇さんから。

 『青石ヒカルさんの”個性”はどんなのなんですか?』だとさ。

 ()()()()()()()()()()! 一体どんなのなんだ!?」

 相澤と一瞬視線が合う。もちろん青石も分かっている。

「えと、ごめんなさい。それには答えられないかな」

「おー? 個性は一切不明! それで通すって事か?」

「……うん」

「オールマイトみてぇだな!」

 もちろんプレゼント・マイクだって青石の個性を知っている。

 それを全国に公表できない事も。知らないふりも只のパフォーマンス。

「その、ごめんなさい。ボクの個性について喋る事は出来ないんだ。

 そういう質問はごめんなさい、全部却下でお願いします」

「おーおー分かったよ」

 青石ヒカルはふーっと息を吐いた。

 相澤も胸をなでおろす。

「じゃあ次の質問だ。福岡県在住の×××さんからだ。

 『青石ヒカルさんの好きな食べ物は何ですか?』」

「……!」

 これもまた青石には答えにくい質問。

 彼女は今、シアンの出す食事を食べている。それもムース食と呼ばれる代物だ。

 それは一般的に介護などで使われる。

 普通の人が想像する食べ物とは若干違う。

 中身も普通のムース食とは、これまた少し違う。

 彼女の味覚に合わせられて、アレンジされているからだ。

 普通の人間に食べられたものではない。

 実際相澤は一口食べたが、ゲロが出るかと思う程不味かった。

「えと……」

 オロオロしている青石に助太刀が入る。

 視界の端。そこに人が居た。赤く短い髪が、ぴょこんと跳ねている。

 相澤の知らない人物だ。青石も知らなそうな顔をしている。

 果たしてその人物は男なのか、もしくは女なのか。

 相澤には判別が出来なかった。中性的というのだろうか。

 男の様であり、女の様でも有る。

 ともかくその人物は、携帯できる大きさのホワイトボード。

 それを掲げていて、そこには……

 ”ハンバーグ、エビフライすっよ!”

 と書かれていた。

 それに青石は縋ったようだ。

「は、ハンバーグエビフライ! が、好きです」

 青石は食べた事がないので、どんな味がするのか知らないが、とりあえずそう答えていた。

「ハンバーグにエビフライか。何て言うか子供舌だな!」

「そうかな? 変?」

「いやいや、食べ物の好みなんて人それぞれだろうがよ!

 実際美味いしな、ハンバーグとエビフライ」

 プレゼント・マイクも意地悪だなと相澤は思う。

 もっと答えやすい質問を選べばいいだろう。そう思う。

 マイクもそこは分かっているだろう。

 青石が今までどんな生活を送っていたのか。それを承知で質問を選んでいる。

 だがあまりに不自然な質問の選び方をしていたら、それこそ聡い人間は何か勘付いてもおかしくない。

「じゃぁ次行くぜ!

 福岡県在住の△△△さんから。

 『青くてとても綺麗な髪ですね。「あ、ありがとうございます」

 染めているんですか? 地毛ですか?

 お風呂でシャンプーはどんなのを使ってますか?

 リンスはどんなのを使ってますか?』」

「えと、髪はそのまま地毛だよ。染めてないよ。えと、お風呂は……」

 相澤はジトっと見る。分かってるんだろうなと暗に告げる。

 隅でさっきの知らない人がいそいそホワイトボードに書き込んでいる。

 だがあまり頼っても居られない。変に時間を置いても不自然だ。

「お風呂は入っているけど……シャンプーとかはあんまり気にしたことないかな。

 適当に有るものを使っていると言うか。リンス……? 使った事ないや」

「おー青石は特に拘りは無いのか。ま、人それぞれだわな」

 また青石は息を吐く。

 一つ一つの質問に気を遣う。聞かれれば聞かれるほど、普通とは違う人間なのだ。

 そう実感させられるのだろう。

「じゃあ次。東京都在住の●●●より。

 これは単純で短いな!『好きな人は居ますか?』」

 聞かれた瞬間、ボンと音がしたと錯覚するくらい。それほどに青石の顔が赤くなった。

「えと……ううぅー……」

 青石は手を膝の上にやりながら顔を俯かせ、もじもじしている。

 時折チラッと相澤の方に視線を向けて、逸らし。それを繰り返している。

 いくら何でもそんな態度を取られていて、気づかない程相澤は鈍感じゃない。

 正確には鈍感じゃないというより、彼女の気持ちは、とっくに知っている。

 そっちの方が正しい表現だろうか。 

「い、居ません」

 この上なく説得力がない。

 今の彼女の反応を見たら、誰だって察してしまうだろう。

「あー……おー……。なんつーかその。……頑張れ」

 先ほどホワイトボードでカンペをくれた人も何か書いて青石に見せている。

”ファイトっすよ! 恋は戦争っす! 例え禁断の愛でも勝てば官軍っす!”

「うー……だから居ないってばー」

「おっと! そうこうしているうちに準備が整ったようだぜ!」

 プレゼント・マイクがそう言うと、スタジアムの中央に人が出てくる。

 言わずと知れた主審。ミッドナイトだ。

 それにスタジアムの隅には、控室から出てきた生徒達の姿。

 彼らは緊張した面持ちで結果を待っている。

 もちろん1-Aの生徒達もそこに居た。

『長らくお待たせしました。ではこれより、第三種目の概要を説明いたします』

 彼女の言葉にスタジアム中が静まり返った。

 青石ヒカルにより引き起こされたイレギュラーな事態。

 一体どのような扱いになるのだろうか。

 まぁ相澤は知っているのだが。

『今回第二種目騎馬戦において、青石ヒカル及び爆豪勝己の二人組の騎馬が、全てのハチマキを独占する事態になりました。

 この事態を雄英側は想定していませんでした。

 本来の想定としてはポイントはばらけ、上位4チームの12人から16人の決勝トーナメントが組まれる予定でした』

 ここまでは誰でも理解できる。

 それが想定していた通常の雄英体育祭。

 青石ヒカルがいなければ、まず間違いなくそうなっていた。

『そこで我々は騎馬戦の試合の映像を確認し、青石ヒカルが独占する寸前のポイント。

 それを確認していました。

 今回は試合において、青石ヒカルが”個性”を使い、最初にハチマキ取る寸前のポイント。

 それを決勝進出の評価の基準とさせて頂きます。

 つまり、進出するのはこの生徒達!』

 中央のモニターにデンと大きく効果音と共に名簿が出る。

 

 決勝トーナメントに進むのは……

 爆豪チームから、青石ヒカル(1-A)、爆豪勝己(1-A)。

 緑谷チームから、緑谷出久(1-A)、麗日お茶子(1-A)、常闇踏陰(1-A)、発目明(1-H)。

 轟チームから、轟焦凍(1-A)、飯田天哉(1-A)、八百万百(1-A)、上鳴電気(1-A)。

 心操チームから、心操人使(1-C)、庄田二連撃(1-B)、青山優雅(1-A)、尾白猿夫(1-A)。

 

『……以上、14名よ。さぁ! これから組み合わせの抽選を……おっと失礼!』

 ミッドナイトは手元のインカムでどこぞと話し始める。

 スタジアムは決勝トーナメントの面々の評価で騒がしくなってきた。

 皆思い思いに話し合っている。

 ふと、青石は気になる名前を見つけた。

 彼は確か障害物競走43位で、惜しくも敗退したはずなのだが

「えっ!? 青山君!?」

 青石の疑問に相澤が答える。

「あいつは一人体調不良で、欠場者が出て繰り上がったんだ。

 入るチームは、選べなかったようだがな。知らなかったのか?」

「うん、全然知らなかった……」

 青石は決勝トーナメントに進む面々を見る。

 それにしても1-Aの多さは異常だ。

 14人中なんと11人が1-Aの生徒だ。余りにも圧倒的過ぎる。

「おいおい! 凄ぇなA組! (ヴィラン)と会敵したっつーだけでこんな差が出るもんか!?」

 プレゼント・マイクが驚いている。それは青石も思う。

 いくら何でも偏りすぎでは無いか?

 本当に不正はなかったのか?

 相澤が口を開いた。

「……きっかけを掴んだら伸びるってのは珍しくない。

 実際(ヴィラン)を見る見ないの経験の差。それは思った以上に大きかったんだろう」

「にしても圧倒的過ぎるぜ!」

『はい、大変長らくお待たせいたしました。

 それでは! 改めて決勝トーナメントに進むメンバーを紹介するわ!』

 

 青石ヒカル、爆豪勝己。

 緑谷出久、麗日お茶子、常闇踏陰、発目明。

 轟焦凍、飯田天哉、八百万百、上鳴電気。

 心操人使、庄田二連撃、青山優雅、尾白猿夫。

 

『以上の14名で決勝トーナメントを開催します。

 本当は生徒たちで抽選を直に行う予定でした。ですが時間も押しています!

 組み合わせは、こちらで勝手に決めさせていただきます!』

「不正は無いの?」

 青石の疑問は実況席から聞こえている。

 ミッドナイトは頷いた。

『無いわ! 文句言いっこなし! 完全にランダムよ! スイッチオン!』

 中央モニターになにやら演出がかかる。

 そしてやがてトーナメント表が映し出され、名前がランダムに割り振られていった。

 

 

       ┌─  飯田天哉

     ┌─┤

     │ └─   発目明

   ┌─┤

   │ │ ┌─  常闇踏陰

   │ └─┤

   │   └─   轟焦凍

 ┌─┤

 │ │   ┌─ 青石ヒカル

 │ │ ┌─┤

 │ │ │ └─  心操人使

 │ └─┤

 │   └───  緑谷出久

─┤

 │     ┌─  尾白猿夫

 │   ┌─┤

 │   │ └─  上鳴電気

 │ ┌─┤

 │ │ └─    青山優雅

 └─┤

   │   ┌─ 庄田二連撃

   │ ┌─┤

   │ │ └─  八百万百

   └─┤

     │ ┌─ 麗日お茶子

     └─┤

       └─  爆豪勝己

 

――おおおおおおっ!!

 

 場内に独特の緊張が漂う。

 相澤はトーナメント表を見た。

 青石の一回戦目は、心操人使(しんそう ひとし)という生徒らしい。

(コイツ……確か)

 相澤は手元に有る資料を漁り情報を確かめる。

 そしてその個性を知った時、何となく法月の顔がチラついた。

(心操人使……こいつの個性ならもしかしたら。……まさかな)

「出たぁああ! おいマスコミ! お前ら待たせたな!

 これが今年度一年の決勝トーナメントだ!

 ……上の方ヤバくね? プロヒーロー(おれら)でも放り込まれたら死ぬぞ?」

「ぶっちぎってる青石と緑谷が同じブロックだからな。

 現状目立った奴らは、殆ど上のブロックに居る。

 下のブロックも、爆豪含めて優秀な奴らだが……」

「まぁぶっちゃけ地味っつーか何て言うか……」

 どうにも乗り気にならないマイク達。

 横から青石が噛みついてくる。

「もう! 教師がディスるなんて駄目だよマイクさん! 相澤さんも!

 みんな真剣なんだから!」

 珍しく青石が怒っている。いつの間にそんな「ディスる」なんて言葉を覚えていたのか。

 おそらく峰田実辺りの影響か。

 だが言っている事は正しいだろう。

「おーそうだな青石! 決まったもんは決まったもんだ! 楽しんでいこうぜ!」

「おー!」

 相澤は青石の顔を見るが、不安そうな顔は欠片も無い。

 彼女は自分が勝つと信じ切っている様だ。

 しかし相澤は心操人使の個性を知って、考えが変わる。

 心操人使が、青石に勝てる確率。

 それは万が一どころか、五分五分位では無かろうか。

 それほどまでに心操人使の個性は強力。強力なのだが……。

(ったく、合理的じゃねぇな。あの入試試験はよ)

 心の中で愚痴を吐く。

 相澤もこの個性で苦労してきた。

 対人に特化した個性は、相性によって大きく左右される。

 時と状況を選ばないと、十分なポテンシャルを発揮することが出来ない。

 心操人使。まず間違いなく、普通科に所属していい生徒では無い。

 だが雄英高校の不合理な選別により、彼は燻ぶっている。

 それこそ、地下に幽閉されていた、かつての青石ヒカルの様に。

(万が一も有るかもしれないな)

 相澤の心配をよそに、彼女は能天気だ。

 青石の顔は負ける未来など、考えていないように思える。

 彼の中の不安は、どんどん膨れ上がっていった。

 

……。

 

 雄英体育祭は昼休憩になった。

 雄英体育祭もあくまで体育祭。休憩時間は有る。

 最終種目のトーナメント表が発表されたが、それはあくまで最終種目。

 実際に行うのは、各種レクリエーションが終了した後だ。

 でないと予選落ちした大部分の生徒が、暇を持て余してしまう。

 それはそれとして

「……スヤスヤ」

 青石ヒカルが、シアンの膝に頭を乗せ寝ている。

 シアンは相変わらずいつもの丈の長いメイド服。今日は雄英体育祭で、外部からの人間がそれなりに来る。

 だというのに頑として、その服を着続けている。

 何がそれほどまでに、お気に入りなのだろうか。

 雄英の中庭。その木陰の下で涼しい風が吹いている。

 時折強い風が吹いて、青の少女の髪を揺らした。

 相澤は緊張感がまるでない青石を呆れたように見る。

 起こそうと思って近づくが、シアンは自らの口元に人差し指を当てた。

 俗にいう「シーっ」というポーズだ。

 相澤は声を抑えながら聞いた。

「飯は?」

「もう食べられてしまいました」

 彼女の傍らには片づけられたお弁当箱があった。

 どうやらお昼は食べてしまったらしい。

「ううん……相澤さぁん……」

 青石はボソッと寝言を漏らす

 相変わらず幸せそうな顔で寝ている。

 相澤何気なく空を見上げる。ずっと青石は閉じ込められていた。

 外に出られるようになったのは、雄英に通うようになってからだ。

 青石がずっと憧れていた外。何処までも広がる青い空。

 それは相澤にとっては当たり前に有るもの。そんなつまらないものでも、彼女にとっては何よりも見たかったものだ。

 空を見られるというだけで幸せを感じた事は、相澤にはない。

 人間は既に持っている物だけでは、満足できない生き物らしい。

「いつかは私に、こうやって膝を乗せてくれる事も無くなるのでしょうか」

 シアンが青石の頭を優しく撫でる。

「いくら何でもいつかは大人になる。いつかは、そうなるだろう」

「ふふふっ」

 シアンは何かおかしそうに微笑んだ。

「何がおかしい?」

「いえ、何でもございません。……相澤様、この子の気持ちには気づいていらっしゃいますよね」

「……あんな露骨な態度を取られて、気づくなという方が無理だ」

「応える気にはなりませんか?」

「……」

 相澤は無言で答える。

 何よりも雄弁に目が語っている。

 もし青石が直接口で告白したところで、相澤はきっと受け入れない。

「ですが、一言だけ言わせていただきます。

 相澤様、人の気持ちは移ろいゆくものです。この子は既に別の人にも、惹かれ始めています。

 一途に一人だけを想い続ける事は、存外難しいものですから」

「シアン、何が言いたい」

「私は、後悔して欲しくないのです。この子にも相澤様にも。

 いつか言える、いつでも言える。

 そんな気持ち程、伝えられなかった時に後悔するものですから」

「……お前にはそんな経験があるのか?」

 風が吹いた。木の葉や草を舞いあげて、空へと還っていく。

 新緑の匂いが鼻に届く。風に揺らされた木に合わせ、木漏れ日の班目が揺れ動いた。

「さぁ、どうでしょうか」

 シアンには謎が多い。

 法月の側近だとは、はっきりしている。

 だがそれ以外の事は調べようと思っても、全然分からない。

 ヒーローの権限を使って調べようとしてみても、情報そのものが見当たらない。

 法月が手を回しているのだろうか。

 シアンは元(ヴィラン)だったとは聞いている。

 だが相澤は彼女が、(ヴィラン)だった時が想像できない。

 シアンは一体、どのような人生を歩んできたのだろうか。

「あれ……ふあぁああ」

 青石が目を覚ました。シアンの膝からゆっくりと上体を起こす。

 まだ眠たそうに眼をこすっている。

 そして目の焦点がゆっくりと相澤に合った。

 目と目が合う。瞬間青石は顔を真っ赤にして

「ああああ、相澤さん!」

 シアンの後ろに隠れてしまう。

 シアンは笑いながら青石に話しかけた。

 緩やかに、穏やかに時間は過ぎる。

 信頼でき甘えられる二人の元。青石が幸せそうに笑っている。

 第三者から見たら、まるで家族が団らんしているかに見えるだろう。

 相澤には、青石が何が一番欲しいのか。

 それが分かったような気がした。

 傍らのシロツメクサに、蝶がゆっくり舞い降りた。


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