それぞれが目指していく終着点   作:卯月七日

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怪人が辿り着く終着点
人外


「……何でこうなったぁ。」

 

 

呟いた言葉に誰もが答える訳も無く、真夜中の森林のど真ん中で全身黒の服装で固めた二十代半ばの男、カイは空に向かって項垂れる。

 

この男は前世の記憶を持つ俗に言う転生者と呼ばれる存在。だが、彼は進んで第二の人生を望んでおらず死を受け入れるつもりだったが、本人の意志関係あらず、望まぬ特典、否、呪いとも言える力を授けられ今この地に立っている自称被害者なのだ。

 

現実逃避もそろそろ止め、仕方なく、本当に仕方なく今自分が目の当たりにしてる現実に戻ろうと首を戻す。

 

「いたぞ!!コイツが例のターゲットだ!!」

 

「コイツを殺せば特典がもう一つ手に入る!!」

 

「よくもオレの弟を殺してくれたな!!テメエは絶対許さねえ!!」

 

 

 

「………ぁ~~~、イヤになるわぁ。」

 

 

カイを取り囲む集団は自身と同じ存在の転生者。四方八方からカイに向けて殺気を放ち、その中には欲に塗れた視線も向けられる。

 

こうなった原因はカイを転生させた神の仕業である。この世界に送られる転生者の中で唯一反抗心を見せたのがカイであった。

 

神に刃向った罰であるかのようにこうして自身に他の転生者を仕向ける様上手い口で唆したり、カイ個人の記憶を消失したりと、悪質な嫌がらせを受けているのだ。今自身が名乗ってるカイと言う名も本名から取ってるのでなく、渋々特典の内容から取ってる次第だ。 

 

「ホント、クソッタレの言葉しか思い浮かばんわぁ…ハァ~~~。」

 

「ギャハハハッ!! 何だコイツ聞いてたヤツと全然イメージが違うじゃねえか!!本当にコイツが”災厄の異形”?ただの陰気なモブじゃねえかよ!!」

 

「こっからは早いモン勝ちだぜぇ! 殺して特典を貰って、ヒロイン全員モノにしてやるらぁ!!」

 

「ハァ、ヤダヤダホントもうヤダ……あー、皆さぁーんちゅーもぉーく。」

 

周りの様子に心底嫌な顔を隠さずに、殺伐とした空気に合わない口調でやや大きめに声を発する。

 

「何だよ? 命乞いか?」

 

「似たようなモノかなぁ、オレは前世の自分についてなーんにも覚えていないけれどもさぁ、少なくともオレは、やられるのもやるのも嫌いな平和主義者だってのはハッキリ分かるよぉ。だからさぁ、嘘か本当か分からない話で無駄に争って血を流すよりさぁ、ココはお互いの為を思って…。」

 

「ふざけるな!!お前はそう言うが、オレの弟を殺したのは紛れも無くお前だ!!そんなヤツが平和主義なワケないだろ!!」

 

「ウソは吐いてないよぉ。争い事が嫌いなのは本当ですよぉ…でも殺して来るヤツを殺さない理由にはならないでしょ?」

 

「なッ…!」

 

「それにさぁ、オレは向かって来たヤツ全員には毎回毎回こう言ったよ?でもそれで死んじゃったならソイツの自業自得じゃん。殺したのはオレだから恨まれるのは分かってるけどさぁ…ソイツが”死んだ理由”にオレを使うなよ。それコッチからしたらすっごく迷惑だから」

 

「お前ェエエッ!!」

 

「ハッ、平和主義だ理由だ何だ語ってんじゃねえよ!!オレや此処にいる奴等はお前を殺したくて来てるんだよ!!」

 

「今まで運良く生きて来られたのはソイツ等が雑魚だったからだろ? オレの力にかかればテメエなんざ10秒もたたねえ内にお陀仏だぜ!!」

 

「………ハァ。」

 

このやり取りも何度目になるのかがっくしと首が下がるカイに転生者達はそれぞれ剣や槍、銃と言った武器や、手から火を灯したりしていた。

 

「死ねええ!!オレの輝かしい未来の為にィ!!!」

 

「ヒャッハアァアッ!!!」

 

転生者達がカイに向けて攻撃を放つ、炎や雷、刀剣類が次々と放たれ、やがて攻撃が止むとそこにはカイの姿が無く、あるのは大きなクレーターだけだった。

 

「ッハ!もう終わりかよ、詰まらねえな!!」

 

「ってオイ!これじゃあ誰が殺したか分からねえじゃねえかよ!!どうすんだよ!!」

 

「なら今度はここに居る奴等全員で殺し合いすっかぁ?誰が褒美の特典を受け取るかでよォ、こんなんじゃ消化不良だぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

【碌に死亡確認しないで何進めてんだが…。】

 

 

 

「ッ!? この声ッ、野郎まだ生きてるのか!!」

 

「何処だ!?何処に居やがる!?」

 

「ていうかどうやってあの場から…!?」

 

 

【知りたい?なら教えてあげるよ…。】

 

何処からとも聞こえるカイの声に辺りを見渡す転生者達。

 

風が木々を揺らす音が聞こえる森林の中で、二人の転生者の背後に影から手が伸ばされた。

 

 

ーバッ!!-

 

 

 

「ッ!?!?…な、なぁ…!?」

 

「う、うわぁぁああッ!!!高いッ、高いィィイッ!!!」

 

二人は襟元を掴まれた事に気付いた時には、地上から遥か高く”跳んだ”後であり、突然の事に慌てふためく二人の後ろでは、二人を上げた張本人が…。

 

【ボグジャデデ・ジョベダンザジョ(こうやって避けたんだよ)】

 

二人を掴んで跳んだ張本人の姿は、人間では無かった。

 

人の形をしてるが肌色では無く全身が茶色のバッタを思わせた異形は、二人を掴んでいた手をその場で離し、二人は重力の法則に則って落ちて行く。

 

「ワァアアアァアッ!!!!」

 

「助けてエエエエェッ!!!」

 

落ちながら手足をバタバタと動かしても落ちて行くスピードは時間が経つにつれ次第に増していき、地面に付く頃には絶命するであろう。

 

落ちて行く二人が手を伸ばした先にあった光景は…。

 

 

昆虫であるバッタの背中から、鳥類の羽が生えたのが最後に見た光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーグシャッ!ー

 

「ッ!こ、コイツ等…!」

 

「し、死んでる…。」

 

地上では突然空から落ちて来た転生者二人が転落死して来た事に狼狽えだす転生者達。先程の態度から一変して、底知れぬ恐怖に、誰もが怯えだしていた。

 

「ま、マジで死んでやがる…野郎空にいるのか!!」

 

「クソッ、撃ち落として”ビスッ”…え?…ガッ!?…ハッ、ァア…!」

 

「お、おい!どうし”ビスッ”うぅッ!?」

 

「何だ!?一体何”ビスッ”っがッ!!」

 

次々と胸を抑えて倒れて行く転生者達に周りは既に冷静を欠いていた。やがて一人の転生者が倒れた転生者達の胸に銃弾で撃たれた様な傷跡を見ると、その正体に気付く。

 

「狙撃だ!!空から撃って来てやが”ビスッ”あぁッ!!!」

 

「ッ!! 木陰に隠れろ!!」

 

 

 

【…ガクガビ・ゴボラゼ・ザガゼザバギバ(流石にそこまでバカでは無いか)】

 

 

上空で羽ばたきしながら地上を見据えるフクロウの様な異形は、手にした吹き矢を投げ捨ててその姿を変える。

 

鳥類であるフクロウの姿から昆虫の中でも屈強な力を持つとされる角持ちの甲虫へと。

 

 

 

 

 

 

「…や、止んだ、か?」

 

「隠れてる間はだろ!!下手に姿を出したらまた狙い撃ちされちまう!!」

 

「クソクソクソッ!!何でこんな目に遭わなきゃいけねえんだよ!!」

 

「もうこれは特典どうこう言ってる場合じゃねえぞ!!残ってる奴はどのくらい要るんだ!?」

 

「誰でもいいからヤツを引き摺り降ろせよ!!いるだろ、空飛べるヤツ!!」

 

 

 

 

 

ードォォォオンッ!!!ー

 

 

 

「「「ッ!!」」」

 

 

木の下で空から姿が見えない様に隠れる転生者達。

 

どうにかして空に居る敵を炙り出さないといけない言った所で誰が行くかで言い争ってるなか、丁度木々が生えて無い開けた場所に激しい豪快な着地音と共にソイツが降り立った。

 

 

【…ドシガゲズ(取りあえず)】

 

降り立って来たソイツは木々に隠れてる転生者達にも分かる程の威圧と殺気を混ぜたモノを当たり全体に放ち、一人も生かさないという無言の死刑宣告。

 

首に賭けた首飾りの一部を取るとボウガンへと姿を変えて構える。

 

 

【ギベ・ダザダザザジャブ・ギンゼギベ(死ね。ただただ早く死んで行け)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~~~~ぁあ~~~~~~~~~。」

 

 

 

異形の姿から人の姿に戻ったカイは、落胆の色を全開にして表に出しながら土の上で大の字になって寝転んでいた。

 

ふと目を向けた先には、山となって積み上げられた転生者達の亡骸。物言わぬ肉塊となったソレを見て、実に落ち込んでいるという表情をする。

 

「まぁ~~~たただ殺しただけに終わっちゃったぁ……あーーーッ!自分で死ねるならとっくに死んでるのに、ホンット嫌……ッ!!グゥゥゥッ!!!」

 

ダダ捏ねる様に地面に転がってたカイは突然頭を抑えて苦しみだした。

 

激しい頭痛に見舞われながら声を押し殺して悶えるカイ、その痛みは頭だけでなく体中の細胞一つ一つが悲鳴を上げる様な痛みが走る。

 

体が書き換えられていく痛みが少し続いたカイは、ようやく収まったのか肩で息しながら目を開ける。

 

夜空に浮かんでいる、”欠けた月”の輝きは色あせた様に灰色一色にしか見えず、耳に聞こえる風の音も不快感を湧き立たせる雑音と化していた。

 

「あぁーーーもう時間かぁ、しかも今日はコレかぁ……でもいいかぁ。」

 

そういいながら積み上げられた何の感触も無い死体の山に手を合わせる。この時のカイの目は一瞬の間、紫に光っていた。

 

「こうして後片付けするのには、ラクちんなんですけどねぇ。」

 

触れた死体の山は一瞬にして凍り付き、ほんの少しの力でデコピンするとガラス細工の様に次第に罅割れ、やがて氷の塵となって砕け散った。

 

「さぁーてこれからどうするかなぁ、この森の事はバレちゃってるし………取り敢えず近くの街に降りて、ご飯にでもしようかなぁ……ん~?」

 

 

ふと空を見上げると、知らぬ間に頭上を飛んでいるヘリコプターらしき物体が通り過ぎる。 

 

そしてヘリから飛び降りて来たであろう”8つ”の人影がカイを取り囲む様に降り立つ。色彩が見えない目でも顔の造形で誰が囲んでるか知ったカイは本日何度目になるかの重い溜め息を吐いた。

 

「もぉ~う、最悪すぎなぁい? どうぉしてこうも良く無い事ばかり起きちゃうのさぁ?」

 

「るっせぇ!!テメエがあっちこっちに隠れてる所為で動かせられるこっちの身にもなりやがれ!!」

 

「じゃあもうこんなバケモノ追い掛けるの諦めて帰ってくれません?もうこんな時間だよぉ?夜更かしはお肌の天敵っていうでしょうぉ?」

 

「なら我々の安眠の為に今日こそは着いて来てもらうぞ。

何度も言うが、お前に危害は加えない。話がしたいだけだ。」

 

 

「ふぅ~ん……でもこの中に真っ先にオレをとっ捕まえようとして手を出してきた人達がいるんだけどなぁ~?」

 

「ッ…そうね、だからこそ私達は失った信用を取り戻したいのよ。」

 

「だから…チャンスを欲しい。」

 

「皆で一緒にごめんなさいするデス!」

 

 

「カイさん!」

 

やたらと奇抜な格好する少女達がカイを連れて行こうと説得をするなかでその内の一人が前に出て話し掛ける。

 

「まぁ~たキミかぁ…。」

 

「カイさん!もうこんな事終わりにして、ちゃんと向き合って話し合いましょう!そうすればきっと私達分かりあえる筈です!!」

 

「…それは人間同士が、でしょう?バケモノのオレに、そんな理論が通じるとでも?」

 

「あぁ言える!だってお前は…。」

 

カイの言葉に反論するように、等身大の槍を手にした長髪の女性が口を出す。

 

「お前あのライブの時、突然ノイズのど真ん中に出て来たと思ったらスゲェ力でノイズブッ飛ばしてお蔭で助かった命がたくさんあるんだぜ?」

 

(ノイズ?…………あーそれって、適当に開けたクラックの先がなんちゃって百鬼夜行のど真ん中だったからびっくりしちゃってついやっちゃったアレかなぁ?)

 

あの時はやり過ぎて反省したなぁと思い出しながら、今度は亜麻色の髪の少女が出て来た。

 

「それだけじゃ無いですよ、アナタが研究所でネフィリムを抑えてくれなかったから、私や姉さん、マムも無事でいられたんです!」

 

(ねふぃりむゥ?…………そう言えばあのクソ神に無理矢理送られた直後にブチ切れて、偶々近くにあったデカくて白いのに八つ当たりしたっけ?)

 

「私も!…あのライブ時に助けて貰っただけじゃなくて、中学の時虐められた私をカイさんは助けてくれました!!

そんな人が…そんな人がバケモノだなんて私は思いません!!」

 

(……………そんな事あったっけ?)

 

曖昧な記憶を辿るカイを置いて温度差の激しい話をしてくる少女達の勘違いをどうにか解こうと思うカイ。

 

 

望まぬ生を得たとしても、それでも生きて行く苦渋の決断を決めて災厄と言える自分を認めた事を。

 

自分は心など無いただのバケモノだという真実を。

 

「…何が何だが、色々力説してるとこ悪いんだけど、オレはキミ達を助けた覚えはこれっぽっちも無いよぉ。

 

それは只キミ等が、オレの気まぐれな行動で勝手に助かっただけ、だからオレに対して変な感情を向けるのはお門違いだよぉ………それに。」

 

 

「「「「「「「「ッ!!」」」」」」」」

 

 

カイの雰囲気が肌で感じ取れるほど豹変したことに気付いた8人は思わず無意識の内に身構えてしまう。

 

 

「さっきまで一方的に何十人も殺したヤツでも、そんな事が言える?」

 

「ッ、ならこの地の荒れ具合は…。」

 

「さっきまでやっていた跡だよ…どうしてもオレを連れて行きたきゃ…。」

 

カイの姿がメダルに包まれるとその姿が変貌して行く。

 

鬣を長髪の様に後ろに靡かせる獰猛な猫の異形と化した。

 

【力ずくで従わせるしか無いぞ。】

 

 

「ッ、今まで見た事の無い姿にッ!」

 

「チィ!、結局こうなるってかよ!!」

 

「クリスちゃん待って!別に戦うと決まった訳じゃ…!」

 

「現実見ろバカ! お前に無くとも向こうはヤル気満々だろうがァ!!」

 

赤い少女は何処からか取り出して来たガトリング砲がカイへ放たれる。

 

カイは向かって来る弾丸を俊敏な速さで全て躱しながら赤い少女の元まで詰めると、ガトリングの砲身を両手の爪で切り裂く。

 

「速ッ…!」

 

【キミが遅いんだ、よォッ!】

 

「ガハッ!」

 

懐に潜り込んだカイは赤い少女の腹部目掛け蹴り飛ばす。赤い少女は背後にあった木々に激突し咳き込む。

 

「雪音! ッ、止むを得まいか!」

 

「一度無力化させてからでしか効く耳を持たないようね!」

 

【無力化?…ハッ。】

 

赤い少女に代わり青い少女と黒い女性が剣と槍を振るって来るが、両手の爪と軽快な動きで捌き切って距離を取った後、両手から竜巻を二人に向けて起こし吹き飛ばす。

 

「クゥ……ヌアァッ!!」

 

「キャアッ!!」

 

【無力化なんて生温いのじゃあ…?、アレ?】

 

カイの動きが次第に鈍くなりやがて足が一歩も動かなくなる。何かと思って原因を探ると、自分の足元に短剣らしいモノが地面に刺さってる。

 

【なにコレ?】

 

「今がチャンス!」

 

「デス!」

 

動けなくなったカイの体にヨーヨーらしきワイヤーとアンカーが巻き付かれて完全に身動きの取れない形となる。

 

両サイドを見て見ると緑と桃色の少女の仕業だと認識する。

 

「捕まえた!」

 

「これで袋のネコさんデス!」

 

【そこはネズミでしょうが。】

 

「イイわよ二人共!そのまま彼を縛り付けて!」

 

「ムッ!? アレは!?」

 

 

青い少女が巻き付かれてるカイの変化に気付く。

 

カイの体はまたもメダルに包まれ、猫の異形から角と触角の緑の複眼をした昆虫を思わせる異形になり、頭部の角に雷が奔る。

 

「いかん!二人共離れ…!」

 

【だから、遅いってェ!】

 

「「キャアァァアッ!!!」」

 

「調ェ!切歌ァ!!」

 

頭部から広範囲に放たれる雷撃に二人は見舞われ、地面に刺さった短剣も飛んでいき拘束が緩んだのを皮切りにカイは力ずくで引き千切り自由となった。

 

【フゥ…殺す気で掛からんとオレは止められんよ。】

 

「ウオオォッ!!!」

 

背後から槍を突き出して来る茜色の女性の槍を、またしても姿を変えたカイはガードもせずその身で受ける。

 

「ッ!?固ぇッ!?」

 

頭部がサイとゾウを合わせた分厚い外骨格に槍は突き刺さらずカイは分厚い腕で槍の刃を掴み取る。

 

「なぁ聞けって!!アタシ等はアンタとは戦いたくないんだって!!」

 

【オレだってそうだよ。オレは無意味に争いはしたく無い。】

 

「じゃあなんで!?」

 

【キミ等が人間で、オレがバケモノだから、さッ!】

 

「おぉわァッ!?」

 

カイは掴んだ槍を持ち主ごとその剛腕で投げ飛ばし、女性は青と黒の二人が受け止めた。

 

【何時の時代も、何処の国でも、人間とバケモノは相容れない存在として語られる。人種差別何て時代がある程だ。人間じゃ無いオレがどう思われるか簡単に想像尽くだろう?…だから…。】

 

カイの元に飛んで来る無数の短剣。カイは姿を変えていき、液状化した体で向かって来る短剣を呑み込んで短剣を操る白銀の少女に自らが濁流となって体当たりし突き飛ばすと、液状の体から元の人の姿へと戻った。

 

「お互いどう思ってもこうして戦い合うのが必然となっちまうのさ…どうやっても分かり敢え無いからな。」

 

そう語るカイは未だ手を出さずカイをバケモノでないと否定した橙の少女へと目をやる。

 

むしろコレは彼女に向けて言ってる言葉だ。人と人が仲良く手を取り合うという事自体が到底難しい事なのに人とそうでない生き物が手を取りあえるかと言われれば、大抵の人間は無理だと答える。

 

その主張がちゃんと伝えるべき少女の元に伝わってるかを危惧してるカイであったが、その心配は的中してしまった。

 

「…カイさんの言ってる事、大体は分かりました。」

 

「いや大体なの? かなり分かりやすく言ったつもりなんだけど…。」

 

「それでも!!」

 

少女は拳を構え、意志の籠った目でカイと相対しだす。

 

「私はそれでも繋がり合えるのを信じてる!この手が届く限り、伸ばすを諦めなければ!

だから…この思い、拳に乗せてアナタに伝える!!」

 

 

「………ぁ~あ、火に油注いじゃったかぁ……だったら。」

 

 

 

彼女の想いが本物かどうか、この身で確かめる為カイは空に上がる。

 

 

巨大な赤い羽根を広げながら羽と炎を散らせながら少女を見据える。

 

 

少女は鷹の頭部をした鳥の異形と化したカイの威圧に臆する事無く、真っ直ぐ跳び出す。

 

 

カイは少女が動いたと同時に両足に力を集中させ蹴りの体制で少女に向かって行く。

 

 

二人の攻撃がぶつかり合い、辺り一面に衝撃が広がり木々が吹き飛んでいく。

 

 

地上の7人は吹き飛ばされないように足を踏ん張りながら上空を見上げる。

 

 

発生源となってる二人の拮抗具合は、カイに傾いていた。

 

 

【オラどうしたぁ!?その程度かよ、人間サマよぉ!!】

 

「まだだ!……まだだァアアアァアッ!!」

 

【ッ!?コイツ…力がッ!!】

 

 

「オオオオォオォーーーッ!!!!」

 

【ヌアァアァアアァーーーーッ!!!】

 

 

闇に包まれた夜空が、眩い閃光に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「グゥ!…ゥゥ…。」

 

「立花!」

 

「オイ!大丈夫かよお前!」

 

 

「ガッ!…ァ…ァア…。」

 

 

 

激しいぶつかり合いの結果、痛み分けと言う結果になった両者は元の姿となって地面に転げ落ちた。

 

少女の方は仲間が駆け寄るなか、カイは自身の体の異変に気付く。自分の中にある大事ななにかが欠けた様な感覚が先程のダメージと共に駆け巡る。

 

そしてその答えは彼女の手の中にあった。

 

「おい響、お前その手に持ってるの…。」

 

「ほぇ?」

 

彼女が開いた掌の中には赤、黄、緑の三枚のメダルが握られていた。

それと彼女達とカイの周りには同じ大きさの銀色のメダルが辺りに散らばっており、緑の少女がせっせと拾っているのを桃色の少女が注意している。

 

カイは彼女の握られているメダルを見て驚いたように目を見開くが、その口元には僅かな笑みが浮かばれてた。

 

心の無い筈の胸から感じる高鳴り、高揚感が重い体を起こしてくれる。

 

下手すれば前世の死ぬ前が最後の永く味わって無い感情は、今日一日の不幸が忘れ去ってく位の衝撃だった。 

 

「ククク……ハハハハハ…。」

 

「な、なに?」

 

「さっきので頭が可笑しくなっちゃったデスか?」

 

 

「ハハハ……ハァ~~。

…そういえば、名前、なんてったっけ?お前。」

 

「へ?わ、私!?…立花 響です!!」

 

「立花 響、ねぇ…うん。覚えた。」

 

「カイさん…もしかして!」

 

カイと討ち合った少女、立花 響は自分の想いが通じたと思い期待の目を向けるが、カイは翼を広げ空へと浮かぶ。

 

「か、カイさん?」

 

「そのコアメダル。オレに一発入れた褒美に暫く預けてやるよ、何時だって取り返せるしねぇ。

落ちてるセルメダルもくれてやる。上手い事使えば、今度はオレとまともに殺り合えるだろうよ。」

 

「殺り合うって、それどういう事ですか!?」

 

「んじゃ、まったねぇ~。」

 

カイの言っている意味が理解出来ない響はその詳しい訳を聞き出そうとするが、カイは夜の空へ高く高く飛び上りその姿を闇に隠して消えていった。

 

 

 

雪の様に舞い落ちる赤い羽根と手の中にある三枚のメダルを残していって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カイはとある街のビルの屋上へ降り立った。

 

先程響に殴られたであろう腹部を擦りながら、機嫌の良さそうな声色で一人呟く。

 

 

 

「この世界に来て初めて殴られた…おまけにコアメダルも持っていかれるとは…まぁまだ完全体の力はあるし。他のもあるから全然損得勘定には入らないし…。

立花 響、ねぇ。口だけのお花畑ちゃんだと思ってたが…。アイツなら…。」 

 

”怪物”として生きて行くことを決めたカイの唯一の望み。それを叶えてくれそうな”人間”の顔を浮かべると自然と笑みがこぼれる位の出会いが遂にあった。

 

 

自分を…。

 

 

 

 

 

「アイツなら──本気のオレを殺してくれるかな?」

 

おとぎ話の様に倒してくれる、ヒーローの存在を求める怪物の願い。

 





名前:カイ(本名不明)


転生特典:平成仮面ライダーシリーズの怪人の能力、怪人態への変身。

詳細
24時間の経過毎に変身する怪人の種族が変わる。アイテムの使用等でなる怪人(ドーパント・ゾディアーツ・眼魔)は除かれ生態系の怪人に限定される。
その際に受け継がれるのは能力以外にもその種族独特の特性も受け継がれ、弱点、不死、五感の欠如なども持つ事になる。



※今話で変身した怪人


仮面ライダークウガからグロンギ

・ズ・バヅー・バ

・ゴ・ブロウ・グ

・ゴ・ガドル・バ(射撃体)


仮面ライダーオーズからグリード


・カザリ完全体

・ウヴァ完全体

・ガメル完全体

・メズール完全体(液状化状態)

・アンク完全体


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