それぞれが目指していく終着点   作:卯月七日

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敵対と心とメダルの力

「ハァ!ハァ!ハァ!…オイッ、急げよ!!」

 

「ま、待ってくれよ! ぜェ!ぜェ!」

 

 

とある海岸のコンテナ置き場で二人の男が肩で息をしながら必死の形相で何かから逃げていた。

コンテナの影に隠れ顔を覗かせる一人の男は、追って来ている存在の姿が無い事確認すると、腰が抜けた様に地面に座り込む。

 

 

「ハァ、ハァ…!一先ず、振り切ったようだ…!」

 

「ゼェ、ぜェ……な、何なんだよアイツ!?いきなり出て来たと思ったら、江藤と佐々木を一瞬で…ゥッ!」

 

「吐くなバカ!…アイツ、恐らく噂になってる”災厄の異形”だ。」

 

「ッ!? あ、あの、他の転生者を何百も殺したって言う、あの!?

どうして!?ヤツは襲って来た転生者しか殺さないって…!」

 

「オレが知るか!! ともあれ今は逃げるのが先決だ!何時までも此処に居ると…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つかっちゃう、よねぇ~?」

 

 

 

「ッ!?」

 

「ッ、う、うあわあああああッ!!!」

 

 

 

頭上から聞こえてくる軽薄な声。見上げると積まれているコンテナに腰を掛け足をブラブラと揺らしている黒衣の男。それを見るや一人の男が悲鳴を上げて後ずさっていた。

 

二人の元へ降り立った黒衣の男、”災厄の異形”とも言われている若い男、カイは絶望に染まる二人を前に口を開いた。

 

「もっと休憩したかった?悪いね…。」

 

「ああああ…!」

 

「ま、待ってくれ!何でオレ達を襲う!?お前、い、いや、アナタはいつも向かって来る転生者だけに力を振るっていた筈だ!!」

 

「へ~そんな事も知られてんだぁ、変な所で有名になっていくんだなぁオレ…。

あぁっとゴメンゴメンそういう話じゃ無かったよねぇ、まぁ一言で言って、念の為?

オレやりたい事あってね、もしかしたら邪魔してきそうなおたく等?不安要素はぜーんぶ摘み取って置こうと思って。」

 

「ある事?…だ、だったら!オレ達はアナタの邪魔をしない!!なんなら、アナタの仲間になって協力してもいい!!」

 

「で、ですから命だけは!! なんでも従いますから助けてください!!」

 

「え~~?」

 

突然仲間になるという男に釣られて腰を抜かしていた男は土下座してまでしてきた。これに対しどうするかと悩むカイは何か思いついたように手をポンと叩いた。

 

「じゃあさ、今からちょっとした試験やるから。それに合格したら仲間にしてあげるよ。」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「試験って言うのは一体何だ?」

 

「まぁそんな身構えなくてもいいよ。簡単なヤツだから…。」

 

そう言いながらポケット弄るカイが取り出したのは、掌に小さな山となっている砂だった。

 

 

 

 

 

「この砂吹きかけるからさ。それで生きてたら合格ね。」

 

「は?」

 

「あの、それってどんな意味が…。」

 

「はい開始ー──フゥ!」

 

疑問を抱く二人を余所にカイは二人に砂を吹きかける。突然吹きかけられた砂に二人は目入った砂など擦ったり口に入った砂をペッペと吐き出している。

 

「何をするんだよ!!うえッ、まだ口に…?」

 

「こ、これって何の意味があるんですか?…?…ぁ。」

 

悪戯としか思えない行為に思わず口調が素に戻ってしまう二人であったが、何やら体に妙な違和感を感じ始める。

 

不意に手を見ると、指先から砂が水の様に地面に落ちている。指先だけじゃない。足からも、腹からも、顔からも砂が崩れる様に落ちている。

 

 

 

そこでようやく気付いた。自分の体が、砂となって崩れている事に。

 

「う、うあわああああッ!?!?!?」

 

「な、何だよコレェ!?オイッ!!どうなってんだよォ!!!」

 

 

「だーから言ったじゃん。生きてれば合格って…つまり、そういう事ね。」

 

 

カイの提示した合格の条件は生きていればそれで合格。なら逆に不合格の条件は自然と決められている。

 

 

 

不合格の末路は、その場で死ぬ。

 

 

 

 

「あ…あああああああぁぁぁッッッ!!!」

 

「イ゛ヤ゛ダァァァァッ!!!じに゛だぐな゛い゛ィィィィッ!!!」

 

 

必死にカイに手を伸ばしていくも、砂となって崩れた腕は何処へ伸ばしているか分からない。

 

やがて二人は痛みを感じる事無く、風に乗って消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれから一カ月か…。そろそろいいかな。今ので大分減ったでしょ。」

 

とても人二人の命を奪ったとは思えない口調の軽さを咎める者も無く、その場を後にするカイ。

見上げた欠けている月を眺め、口角が僅かに上がった。

 

「欠けた月をブチ壊す位なら、化けモンの一匹や二匹もブッ飛ばせるだろう?……立花 響。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日。通ってる音楽学校から下校している少女。立花 響は親友である小日向 未来と共に買い出しの為街仮出ていた最中だった。

 

「昨日は魚だったから今日はお肉かな~。響は何食べたい?……?響?」

 

「……ふぇ?あ、ゴメンゴメン!ちょっとボーっとしてた。」

 

「もう、ここ最近ずっとそうじゃない。正に心ここに非ずだよ。」

 

「アハハ、ゴメン…。」

 

「…そんなに気に成る?そのカイって人の事。」

 

「…未来は何でもお見通しだな~。」

 

 

 

 

話しは半月以上前に遡る。

 

響達が属してる組織、S.O.N.Gの全メンバーが集まっており誰もがその顔を驚愕に染めていた。

そんな中、S.O.N.Gの最高責任者である大柄の男性、風鳴 弦十郎が代表して口を開く。

 

「それは本当なのかエルフナイン君。カイと言う男が、キャロルと密会していたというのは。」

 

「はい。シャトーの建造作業中の合間に確かに居ました。キャロルとカイさんが何か話している場面を。」

 

弦十郎の前に素直に答える小柄な金髪の少女、エルフナインは、かつて自身の生みの親でもあるキャロルと面を向かい合って何かを話し合ってた場面を。

 

「あの時は遠くから見ていたというのもあって話の内容までは知り得る事が出来ませんでしたが、確かに覚えているんです。

あの時あの人は、コレと同じモノをキャロルに見せていました。」

 

エルフナインに釣られて一同が視線をそこへ向ける。

 

銀のパッドに載せられた三枚のメダル。鷹の意匠が描かれた赤いメダル。虎の意匠が描かれた黄色のメダル。飛蝗の意匠が描かれた緑のメダル。以前カイとの戦闘で響がカイの体から掴み取ったコアメダルであった。

 

「このメダルと回収された銀色のメダルを調べた結果、このメダルは錬金術によって造られている事が分かりました。

ただ分からないのがメダルの中にある強大なエネルギー、これはフォニックゲインとは全く違う性質のエネルギーなんです。」

 

「それでいて私達のシンフォギアよりも遥かに上回っている。私達全員で掛かって行ったにも拘らず手も足も出なかったわね。」

 

「問題はそれだけでは無い。これまで奴が関わった騒動の際に見せた力は全てが異なる姿、異能の力を見せていた。

未だ明かしていない力がまだ数多くあるのやもしれん。」

 

「反則級じゃねぇかよそれぇ。ライブの時のヤツだってデタラメだったてのによぉ。」

 

「ネフィリムや私達との接触も難無く交してましたし…。」

 

「全然敵わなかった…。」

 

「デース…。」

 

「………なぁ。結局の所よ、アイツは一体何がしたいんだ?」

 

「?それってどういう事?クリスちゃん。」

 

「言葉通りだよバカ。狙いが分かんねえって事だよ。

今まで戦ってきた奴と比べてアイツは、何かこう…ハッキリと見えねえって言うか、掴めねぇっていうか…。」

 

「うむ。クリス君の言う事も一理ある。

これまでの敵は目的が判明していたからこそ対策も動きも予測出来た。だが彼のこれまでの行動を顧みるに、そもそも敵と見て良いのかどうかすらの判断も未だ掴めん。」

 

「武力行使する時は限って正当防衛が成り立つような状況に限ってですからね。」

 

これまでカイがシンフォギア装者達や、彼女等の知らない転生者による存在からの襲撃も、カイは決まって先に相手から仕掛けた時にしか力を振るっていない。

ソレに加えカイが動いた際に生じた結果は少なからず此方にとって都合の良い結果ともなっているのも悩みの種だ。奏の言ったライブ時におけるノイズの襲来事件や、セレナの言った研究所のネフィリムの暴走の一件など。

 

これまで脅威を振るってきた強敵と比べ、カイは比較的穏健な部類に入る。本人の口からも争いを好まないと聞いているので上手くいけば此方に力を貸してくれるかもしれないのだ。

 

「ともあれ彼をこのまま野放しに出来ないのは確かだ!

引き続きS.O.N.Gはカイと名乗る男の身柄を保護あるいは確保する方面で行く!」

 

「司令。ボクは引き続きこのメダルについて調べてみようと思います。

彼が響さん達に言った言葉が真実なら、これでギアの強化が可能かもしれません。」

 

「うむ。分かった。緒川、回収したシャトーの残骸からメダルに関するモノが無いかもう一度調べてくれ。キャロルと接触したというのもメダルに関する事やもしれん。」

 

「分かりました。」

 

一先ず話は着いたという形となり、その場は解散となった。

 

そんな中、響だけはどこか顔色が曇っていたのにこの場に居る殆どが気付いた者が気付いていたが皆あえてそれを言わなかった。

 

自分達が声を掛けるより、彼女の親友がまた良き相談相手になるだろうと思っていたから。

 

 

 

 

 

 

 

「──そっか。響にとってはその人の事が分からない事に悩んでいるんだね。」

 

「うん………クリスちゃんの言う通りあの人は今までの人達とはどこか違う…。

了子さん、マリアさん達、キャロルちゃんにサンジェルマンさん達…あの人達は絶対に譲れないって言う気持ちを形にして私達と戦っていたんだ。

でも、カイさんはそれとは違うんだよね。まるで、仕方無く戦ってる。ってカンジがして…。」

 

「…響は、その人の事悪い人じゃないって信じたい?」

 

「…うん。そうであって欲しいって思う…だから次会った時は戦わずにちゃんと話し合って分かり合いたいなって思うんだけど…。」

 

「じゃあすればいいじゃない。むしろどうしてそんな悩む必要があるのかなって。今までもずっとそうして来た事じゃない。」

 

「未来…。」

 

「きっと今の響は初めて会ったタイプの人にまだ整理が付いていなんだよ。だからやろうと思えば出来る。もしその人とどう向き合えばいいのか分からなくなったら私も力を貸すから、ね?」

 

「………うん!ありがとう未来!何か一気にモヤモヤが晴れた気分!!」

 

「どういたしまして。それじゃあ今日は景気付けに夕飯はお肉にでもしようか!」

 

「それとご飯ね!……ッ!!」

 

「? どうしたの響?」

 

悩みが吹っ飛んで陽気な笑顔が戻った響の顔色が突然変わった事に首を傾げる未来。彼女が向けてる視線を辿ると、ベンチに座っている黒衣の男に注がれていた。

 

男は凝視している響達に気付くと、此方に手を振ってきた。

 

 

「よぉー、久しぶり。元気してたか?」

 

「…カイさん。どうして?」

 

「ッ!この人が…。」

 

予想だにしない展開に頭が追いついていない響の隣で未来は立ち上がった男、カイに目をやる。カイは立ち上がって響達の前に相対した。

 

「そんなにびっくりする事かねぇ?それともずっと姿を見せない方が良かった?」

 

「い、いえ!!ただその、まさかこんな形でまた会うなんて想像していなかったから。」

 

「ま、それもそっか。隣に居るのは、友達?」

 

「はい!親友の未来です!」

 

「あ、あの、こんにちわ!」

 

「はい、こんにちわ。」

 

思わず挨拶をした未来。それに対して向こうも頭を少し下げて挨拶をしてきた事に少し面を喰らった未来であった。

聞いていた話しでは響たちシンフォギア装者全員と戦っても軽くあしらう事が出来ると聞かされてはいたが、どう見ても目の前に居る男からはそう言った印象は見れない。

そんな風にカイの事を思っていたら、カイの方から未来に話し掛けてきた。

 

「ねぇ。」

 

「え、あ、はい!」

 

「楽しく下校してる所悪いんだが、キミの友達、ちょっと借りてもイイかな?」

 

「ふぇ!?」

 

「響を?……一体何をするんですか?」

 

「お誘いだよ。ゲームの。」

 

「ゲーム?」

 

「あぁ…。」

 

そういいながらカイは懐から響達に見せ付ける様に取り出したモノ、紫色のボタンが二つ付いたパッドらしきアイテムのボタンを押すと待機音らしき音が響達の耳に入り込んで来る。

 

「最高にスリリングな、命懸けのゲーム──。」

 

「「ッ!!」」

 

 

「──培養」

 

 

<< INFECTION! >>

 

<< Let`s GAME! BAD GAME! DEAD GAME! Whats your NAME?──>>

 

 

紫のパッド、バグバイザーを右手に持っているグリップと合わせると、カイの体から放たれる赤い波動と共に姿が変わっていく。

 

 

 

<< THE BUGSTER! >>

 

 

紅い屈強な体なと牙をもつ龍戦士の姿へと。

 

 

「ッ!」

 

「か、変わった…!?」

 

 

突然現れて姿を変えたカイを前に生じた困惑と、龍戦士となったカイから放たれる圧倒的プレッシャーを前に気圧される中、カイは背中に背負っている牙で出来た双刃を手に口を開く。

 

【どうした?お前も早くあのみょうちくりんな格好になれ。じゃないと始まらないだろ。】

 

「そんな……カイさんどうして…?」

 

【そういう問答は要らないんだよなぁ…それともこうしなきゃやる気出ないか?──ッ!、ハァァァッ!】

 

「ッ!?」

 

困惑する響を前に双刃に力を籠めるカイ。それを目にした響は直感的にヤバいと感じだす。

 

 

【──”激怒竜牙”ァ!!】

 

 

「未来ッ!!」

 

「ッ!」

 

 

双刃から放たれる赤い斬撃は響と未来の居た場所を瞬く間に爆炎を巻き起こす。

 

 

燃え盛る爆炎の中から飛び出て来た響は瞬時にシンフォギアを纏い、未来を炎から守る様に身を挺して抱えている姿を双刃を肩に乗せながら眺めていた。

 

【まぁ当然そうするよな、お前は。】

 

「…未来、下がってて。」

 

「…うん。」

 

狙いは自分だと言った矢先隣に居た未来諸共攻撃を仕掛けたカイに響の目つきが変わる。カイ本人は自分が未来を助けると最初から知っていて攻撃をした様であったが、それでも到底許される行為では無かった。

 

「一体どういう事ですか?…どうして今になってこんな事するんですか?

…カイさんはこんな事しないって、信じていたのに…。」

 

【何を根拠に言っている?それは身勝手な押し付けと一緒だ。

オレはお前とゲーム…いや、戦いに来た。ただそれだけの為だ…さぁ、構えろ。】

 

「…イヤです……私はアナタと戦いたくない!カイさんは、私にとって恩人なんです。だから…。」

 

【……お前この前言ってたな。”思いを拳に乗せて伝える” か?……あの言葉が本当なら、その拳を振るえ。言っとくがバケモノのオレを言って聞かせるのに言葉なんざクソの役にも立たないぞ。】

 

「………分かりました。」

 

意を決したような顔になった響は中国拳法の型を模った独特の構えをする。カイもフッ、と小さく笑うと双刃を構える。

 

「……いきますッ!」

 

【来いッ!】

 

撃槍と龍戦士が同時に、地面を割り、風を切りながら駆ける。

 

 

「ハァァアッ!!」

 

【ムンッ!!】

 

響の突き出される拳。カイはソレをあえて無手の拳で迎え撃ちに行く。

 

拳が合わさり、二人を中心に荒い風が起きる。

 

合わさった拳からピキッっと音が鳴った。響の拳を纏っているガントレットに僅かなヒビが入ったのだ。

 

「ッ!?」

 

【ウラァア゛ッ!!】

 

僅かに生じた動揺から生じた隙をカイは逃さなかった。響の脇腹を目掛け横薙ぎに振るわれる双刃。躱しきれいないと判断したのか響は空いている腕を使ってガードをするがそれは悪手だった。

 

「ッ!!──ガッ!!」

 

【ヌ゛ア゛ァッ!!】

 

龍戦士──グレングラファイトバグスターの姿となっているカイの力はあの日と比べ数段上がっている。叩き込まれた双刃 グレングラファイトファングはガードした響を簡単に吹き飛ばし、木々やビルの壁を突き破っていく。

 

「がッ…ハ…ッ!」

 

「響ィ!!」

 

【まだまだ行くぞォ!】

 

「ッ!」

 

追撃を仕掛けるカイ。振るわれる双刃は嵐の如く、速く力強い乱撃を前に響は防御に徹する事しか出来ない。少しでも防御の型を崩したら忽ち双刃の牙に食い破られるビジョンが浮かぶほど、カイのプレッシャーが強大だからだ。

 

(反撃できないッ!前に戦った時とは全然違うッ!! 今ならハッキリ分かる…ッ!

カイさん、本気で私を倒そうとして来ている…ッ!!)

 

【デァアアッ!!】

 

「ッ!ココだぁぁーーーッ!!」

 

僅かに双刃の振りが大振りになったのを響は見逃さなかった。腕のガントレットをパイルバンカーのような形状に変形させ針の穴を通すように僅かな一撃をカイの腹部へ叩き込んだ。

 

【ッ!!……この程度か?】

 

「え…。」

 

【この前の一撃より腰が入っていないぞォ!!】

 

「がはッ…!」

 

渾身の一撃のつもりが、カイの動きを僅かに止めただけで対して効いていない様子。腕を払い除け、お返しと言わんばかりに響の腹部へフックを叩き込み響は体をくの字に曲げて吹き飛んでいく。

 

【その程度か立花 響? 出し惜しみせず本気で掛かって来い!!まだあるだろう?イグナイトとかいう隠し札が。】

 

「ッ!? どうしてイグナイトの事を…! まさか、キャロルちゃん!?」

 

【オレを前に他の考え事か?……甘く見られたなぁ!!】

 

「響ィ!!避けてぇ!!」

 

「ッ!!」

 

【”激怒竜牙”ァ!!──】

 

カイの放った斬撃は無情にも響の元へ向かい、爆散していく。

 

未来は炎に向かって響の名前を叫び、カイは双刃を肩に炎を見つめる。

 

次第に炎が晴れ視界が良好になっていくと、そこには先程まで無かった銀色に光る壁が立ちはだかっていた。

 

【あれは…盾?】

 

 

「否ッ、剣だ!」

 

頭上から聞こえる声に沿って見上げると盾と言っていた壁の正体は確かに両刃の剣であり、その柄頭部分に此方を見下ろす人影が見えた。

 

そして周囲を見渡すと自分が取り囲まれている事に気付く。

 

【団体様のご到着か。】

 

「無事か!?立花!!」

 

「はい!」

 

「オイコイツはどういう事だよ、何でアンタが響のヤツ襲ってんだ!戦いは嫌いって言ってただろ!?」

 

【その言葉にウソは無い。今でもオレの中に戦いを嫌悪している心はまだ残っている──人であった時の感情がな。】

 

「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」

 

カイを取り囲んでいる装者達が皆顔を驚愕に染めた。これまで驚異的な存在と力を見せて来た男の正体が、自分達と同じ人間だという、あっさりとした発言とは反対に思考を停止させるほどの衝撃発言に。

 

【?…あぁ、そういえば言ってなかったな。オレが前は人間だって事。】

 

「なんていう事……それも異端技術によるものなの?」

 

【いや、オレは呪いと見ているよ。徐々に人だった記憶が無くなっていく。今では元の名前も顔の形も思い出せん。】

 

「それが今やっている事とどう関係あんだよ、身も心も化けモンになったって言うのか!?」

 

【そうだ。日々姿と力が、そして中身も徐々に変わっていく今のオレには最早戦う事でしか喜びを感じない。だから…ッ!!】

 

カイの体から黒いエネルギーが放出される。並ならぬ殺気と共に。

 

【殺し、殺されるつもりで戦え!!そして…オレの心を満たしてみせろォォォオッ!!!ァァアアアァァーーーッッ!!!】

 

「カイさん!!」

 

【”ドドド 黒龍剣”ッ!!】

 

 

「皆全力で避けてッ!!」

 

周囲を取り囲む装者達に黒い斬撃を放つ。装者達は皆跳んで回避したが、その技の高威力に唾を呑み込む。

地面を見れば、カイを中心とした地面以外が焦土と化していたからだ。

 

 

 

「…どうやらヤツを見るべき目が決まったようだな。」

 

「…そうね。ここはもう戦うしかないわ。」

 

「だな。これ以上ヤツに振り回されちまったら街が荒廃地帯に早変わりだ。」

 

 

翼、マリア、クリスが各々の武器を構え、カイに敵意を向ける。彼女等三人はカイの動機を聞いて野放しにしては危険だと判断しての行動だ。

だが三人以外の装者は納得がいっていないという表情を表していた。

 

「待てよ翼!! アイツの話聞いたろ!?まだアイツはまだ完全にバケモノになった訳じゃねえ!!説得してエルフナインにでも診て貰えば…!」

 

「それは無理そうよ奏。アナタが彼個人に対して思う事があったとしても、アレはもう私達の手に負えそうに無い。」

 

「翼の言う通りね。確保にするにしてもどちらにせよ戦わなければいけないのが現状よ。

セレナ、切歌、調。アナタ達も腹を括りなさい。」

 

「姉さん…でも、私は…。」

 

「結局こうなっちゃうの…?」

 

「デース…こんな事になるなんてあんまりデスよ…。」

 

「ってワケだバカ。お前もいい加減気を引き締めて掛かんねえと真っ先にお陀仏コースだ。野郎何故かお前にご執心らしいしよぉ。」

 

「クリスちゃん…でもカイさんはまだ人の心を持ってるかもしれないんだよ!?」

 

「いい加減にしろ! 今回ばかりはお前の流儀は通用しねぇんだよ、あの野郎には!!」

 

 

【お喋りはもう終わったか?…そら来い。手加減無用だ。】

 

 

「あぁ、お言葉に甘えて先制ぶっ飛びミサイルだぁ!!」

 

「ハァ!!」

 

「喰らいなさい!」

 

 

三人の繰り出すミサイル、斬撃、レーザーが避ける素振りの無いカイの元へ真っ直ぐ向かっていく。

 

魔弓の爆撃が、絶刀の斬撃が、烈槍の一撃がカイを包む。

言われた通り手加減なんて一切無い本気の一撃。そうでもしなければ目の前の怪人に勝てないと本能で感じ取ったからだ。

 

 

【……こんなもんかよ…しょっぼいなァ…。】

 

「「「ッ!!」」」

 

故にこうなる事は薄々感じ取っていた。

 

ミサイルの爆炎は、絶刀の一振りは、烈槍から放たれたレーザーは彼の表皮を撫でただけ。

 

落胆の声を出すカイは再びバグバイザーの待機音を鳴らした。

 

【花火を上げるつもりならこの位の火力は出して来い。】

 

<< INFECTION! >>

 

 

<< ──THE BUGSTER! >>

 

 

「姿が変わった!?」

 

「戦闘機になっちゃったデス!?」

 

 

 

【テイクオフ──!!】

 

カイは龍戦士からオレンジの人型戦闘機の姿へ変わるとブースターを吹かし空へと舞いあがった。

 

「こんのッ、撃ち落としてやる!!」

 

「雪音ッ!」

 

 

【ふん───出撃!】

 

 

「!? ハァッ!?子持ち戦闘機とかそんなのアリかよ!!」

 

カイから続々と飛び立っていく黒い戦闘機はクリスを含め装者達を一斉に取り囲んだ、サイズは人と比べると小さいが両腕のガトリングとその機動性はクリスを翻弄するのに暴力的な相手だった。

 

 

【一斉射撃…撃てぇ!!】

 

「ちィ! こんちくしょうがァーーーッ!!!」

 

 

小型戦闘機とカイから放たれるガトリングガンとミサイルの嵐が奏者達を襲う。クリスは四方八方からの爆撃を自身のガトリングと小型ミサイルで迎え撃つも焼け石に水。クリスの得意とする高火力広範囲攻撃を上回る爆撃の炎にクリスは包み込まれた。

 

「グアァアッ!!……ガァ…!」

 

 

「雪音ぇ!!おのれ…ッ!」

 

【ふん…次はチャンバラ勝負か?】

 

<< INFECTION! >>

 

 

カイは地上で睨む翼を目に、また姿を変える。

 

鬼面の編笠を被った虚無僧は背中に背負った刀を抜いて正眼で構える。

 

【いざ参る…。】

 

「剣の勝負か…受けて立つ!」

 

「待ちなさい翼!ここは二人で掛かるわよ!」

 

刀を構えカイへと駆ける翼を追ってマリアも続く。

間合いを詰めた翼は刀を磨き抜いた業を以って袈裟懸けに振るう。マリアも翼に続く様に槍を突き出す。

 

カイは二人をギリギリまで引き寄せ、動きを見極め、刀を振るった。

 

 

【───未熟。】

 

 

「ッ──グッ!?バカな…!」

 

「全然、見えなかった…!」

 

 

「翼さん!!」

 

「姉さん!!」

 

 

通り過ぎ様に見せた剣戟。接近戦に長けた二人の目にも捕えられぬ剣閃の一刀の元二人は気られた個所を抑えて膝を着く。

 

奏者達の中で戦闘力の高い三人が容易く打ちのめしたカイ。カイの強さがかなりのもの知ってはいたが、クリス、翼、マリアを瞬殺と言える速さで倒した事に衝撃を隠せずにいた。

 

 

 

<< INFECTION! >>

 

【トマーレ!】

 

そうしてる間にもカイはまたも姿を変える。白いフードを被り赤い宝石を付けた杖を振るい、奏、セレナ、切歌、調の足元の魔方陣が彼女等の動きを止めた。

 

「な、んだよッ、こりゃ…!」

 

「う、動けない…!」

 

「アームも動かない…!」

 

「コッチもダメデス!!」

 

 

【クダケチール!】

 

 

身動きの取れない四人の頭上に展開した魔法陣から炎と雷を纏った氷の塊が落ちて来て、叩き付けて砕け散った氷と炎、雷がその身を焦がし、爆砕して行った。

 

【戦う気が無いならさっさと倒れてろ……さて。】

 

「うわァアアアァアーーーーッッッ!!」

 

 

カイの頭上から聞こえる悲鳴にも聞こえる叫び声。次々と倒れていく仲間の姿を見て動いた響がガントレットをドリル状に展開してカイに殴り掛かった。

 

【仲間がやられてようやくヤル気になったか!!】

 

<< INFECTION! >>

 

カイは向かって来る響に嬉々としながら龍戦士の姿へ、右腕に紅蓮の炎を思わせるエネルギーを纏い、響の拳に真っ向から向かっていく。

 

【ドゥラァアッ!!!】

 

 

「ッ!?───ウワァァッ!!」

 

「響ィ!!」

 

 

カイは彼女の本気と思われる一撃を完膚なきまでに砕いていった。ドリル状に展開したアーマーの破片が四方に飛び散り、カイの一撃は響の顔面に叩き込まれ大きく吹っ飛ばした。

 

「ぐッ…!!」

 

【さぁ立て。お楽しみはこれからだ…。】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令!今のでガングニール、アガートラーム、イガリマ、シュルシャガナのギアが活動を停止!装者自身のダメージも深刻です!!」

 

「響さんのガングニールのギアも60%のダメージ率!!次大きいの喰らえば全滅です!!」

 

「マズイな……仕方がない、ココはオレが…!!」

 

「司令!!」

 

「エルフナイン君!どうし…ッ!それは!?」

 

「はい!どうにか間に合いました!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ぐうあぁッ!!」

 

【……はぁ。ダメだな。全然、ダメ。】

 

殴り飛ばされ地面を転げ回る響を目にカイは落胆の声を隠さずに出す。龍戦士となったカイの前に響の繰り出す攻撃は全て通らず、纏っているギアはカイの攻撃する度にヒビが入るくらい消耗されている現状であった。

 

【ふぅん…あの日からあちこちの害虫駆除を兼ねて力を付けたは良かったが、流石にレベルの限界突破は差を着け過ぎたか。

オイ、いい加減本気を出して来い。】

 

「…イヤ、です…。」

 

【あ゛?】

 

「…アナタとは、カイさんとは戦いたくありません。例え人でなくとも、あの日助けてくれたアナタとは…!」

 

【オレはその時の記憶、もう無くなったんだけどなぁ…仕方ない。もう少し痛ぶっていう事聞かせるかぁ…ッ、ん?】

 

背中の双刃を引き抜き響に向けるカイは突如腰元を掴まれ動きを止める。それはカイの動きを止める程強い力でも無く、むしろ今にでも振り解けそうなくらい弱い力。

下を見ると今まで隠れて見ていた未来が必死にカイの腰にしがみ付いていた。

 

【なんだぁ?お前。】

 

「未来!!何やってるの!?早く逃げて!!」

 

「逃げない!どこにも!もう響を傷つけさせない!!」

 

【ハッ、大した力も無いクセに、大した友情だ。だが…。】

 

「きゃあ!!」

 

「未来ッ!」

 

カイは腰を掴んでいる未来の襟首を掴んで猫みたいに持ち上げ、自身の目線と合わせる。

 

【それは殺し合いの場に、要らねぇんだよ!!】

 

「止めてカイさん!!」

 

カイが未来を力任せに投げ飛ばそうとした、その時だった。

 

 

「響さぁん!!」

 

「ッ!──エルフナインちゃん!!」

 

【ん?】

 

荒れた地を危なっかしい歩調で走って向かって来たのはエルフナインだった。大事そうに何かを抱えながら息荒く此方へと向かって来る。

 

【…あのチビ、確かアイツんトコの……まさかアレが助っ人だなんて言わねえよなぁ?】

 

「響さん!コレを使って下さい!」

 

「えぇ!?──っとと!」

 

【?…ッ!アレは。】

 

「きゃ!」

 

エルフナインが響に投げ渡したモノを目にカイは手に掴んでいた未来を手放す。

 

響の手の中にある円形のバックルに嵌められたメダルを。

 

【そいつはこの前取られた…それにソイツは…ドライバー?】

 

「響さん!それを腰に着けてもう一度聖詠を歌って下さい!そうすればメダルの力を使えます!」

 

「分かった!──スゥ」

 

エルフナインの言う通りバックルを腰に当てると腰にベルトが巻き付かれる。そして小さく息を吸い込み歌を口にする。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron──」

 

本来シンフォギアを起動させるキーとなる歌はベルトに嵌められているメダルが反応するかの様に光り輝いていく。

 

三色の光に包まれていく響に光の眩さに手で目元を覆うカイ。

 

光が収まると響の纏うギアの装甲が大きく変わっていた。

 

<< タカ!・トラ!・バッタ! >>

 

<< タ・ト・バ! タトバ・タトバ! >>

 

 

脚部の装甲が緑になり、両足の脹脛部にアンカージャッキのようなパーツが取り付けられ。胸部と腕部は黄色になり前腕部に鉤爪のクローが畳まれた状態で取り付けられ。頭部のヘッドギアは赤くなっており額の両サイドに小さな翼の装飾。響の瞳の色も緑になっていた。

 

「……ん?…えぇえええッ!?何コレ!?今の歌もなに!?タカトラバッタって!?」

 

【その姿……成程、そういう事か…。】

 

自身のギアが大きく変わった事に驚愕する響の姿とエルフナインを交互に見て何かを悟ったカイは双刃を握る力を強め、未だ驚いている響に不意打ちを仕掛けた。

 

「ひ、響さん!!」

 

「響!危ない!!」

 

「ふぇ?」

 

【ムンッ──!】

 

完全に響の不意を突いた完璧な奇襲、振り下ろされた双刃の一振りを──受け流した。

 

「ッ──アレ?」

 

【へェ───デェァアッ!!】

 

 

一瞬の事に受け流した響でも理解が追い付いていない様子。カイはそんな響の様子を観察するような視線を飛ばしながら双刃を暴風の如く振り回す。

 

先程響が体感したのよりギアを上げた連撃の嵐。常人から見れば双刃の牙がどう振るわれているか見えない位だ。

 

そんな嵐の攻撃を響は見切っていた。

 

鷹の目がカイの動きを捕え、虎の屈強な腕が双刃の牙を捌き、飛蝗の軽快なフットワークがカイの動きに追いついていく。

 

(視える!武器が来る瞬間と次にどう来るかがハッキリと! 手も足もギアを纏っている時より凄く軽い──!)

 

響の緑色の瞳が一瞬の内輝く。カイの僅かに出来た攻め入る点が、獲物を捕らえた空の狩人の如く。

 

「ハァッ!!」

 

【ッ!──ガッ!!】

 

柔軟な動きで獲物を仕留める虎の如くカイの懐に一撃を入れ怯ませ。

 

「セェェェィッ!!!」

 

【ングゥッ!!】

 

昆虫界で一の脚力を誇る飛蝗の足による連撃がカイの強靭な体にダメージを与える。

 

「セェァッ!!」

 

【ガッ!……ハ、ハハハ!イイねイイねェ!!コアメダルの扱い方を掴んだな!?】

 

「コアメダル…これがメダルの力…?」

 

【その調子でこいつも受けてみなァ!──超絶奥義!!】

 

「ふぇ?…ええぇぇッ!?ど、どうすればいのコレ!?」

 

カイの双刃に溢れんばかりのエネルギーが宿り、周囲に軽い被害が及ぶ。響はカイの突然の申し出にどうすればいいのか慌てふためくばかりだった。

 

そんな響に助け船を出したのは負傷した翼達を介抱していたエルフナインだった。

 

「響さん!!歌って下さい!!そのドライバーにはメダルの力とフォニックゲインの波長を合わせる事が出来ます!!」

 

「エルフナインちゃん…分かった!!──♪~!」

 

響の唄に呼応するかのようにベルトのメダルが輝き出す。カイも双刃に送り込んだエネルギーがMAXにまで達すると、鼓舞する心を表すかのように、敬意を示す自らの最終奥義の名を口に叫んだ。

 

【”ドドドドド──ッ!】

 

「♪~!♪~!!」

 

自身の頭上に双刃を振りかざすカイ。唄を口にしながら宙を跳び、現れた赤、黄、緑のリングに両足を突き出す。響。

 

 

【──紅蓮爆龍剣”ッ!】

 

「セイッ、ヤァーーーーッ!!!」

 

 

カイの振るわれた双刃から解き放たれた赤い龍が、蹴りかかって来る響の元へ飛んでいく。

 

リングを潜り赤い羽根を生やしながら龍と激突する響。

拮抗する龍との正面衝突、響は半ば押され気味になりながらも唄を奏でる。

 

自身の気持ち、カイに届いて欲しいと言う”欲望”を唄に載せて。

 

「♪~~!!!」

 

【ッ!?】

 

響の唄う歌がメダルの輝きを強くする。ぶつかり合ってる龍が次第に押され出していき、遂には龍の力を上回った。

 

「ハァアアアーーーッ!!」

 

【何ッ!──グゥッ!! グァァッ!!】

 

「セイヤァァアッ!!」

 

紅い龍を打ち破り、響の両足がカイの胴体へと叩き込まれると、両足に着いていたアンカージャッキが下ろされると倍増した威力によって、カイはピンポール玉の如く大きく吹っ飛んで壁に激突。派手な爆炎がカイを包み込んだ。

 

そして巻き上がった炎の中から飛び出て来た小さな物体が、緑と黄色に光りながら弧を描いて響の元に振って来たソレを掴み取った。

 

掴んだ手を広げると、響が今使っているコアメダルだった。緑のカマキリと黄色のチーターが描かれたソレを肩で息をしながらマジマジと見つめていた。

 

「コレって…違うメダル…?」

 

 

「響さん!!」

 

「響ーーッ!!」

 

 

呆然とする響の元へ駆けよって来るエルフナインと未来。他の装者達は駆け付けたS.O.N.Gの医療チームによって密かに搬送されている所だった。

 

「未来、エルフナインちゃん…。」

 

「響!!大丈夫!?」

 

「…うん!エルフナインちゃんが届けてくれたコレのお蔭でへいきへっちゃら!

にしてもスゴイねコレ、流石エルフナインちゃんだよ。」

 

「…いいえ。コレはボクが造ったものでは無いんです。ボクはシャトーの残骸の中にあったドライバーの破損個所を直しただけなんです。」

 

「え?……じゃあコレを造ったのって…もしかして。」

 

 

 

 

 

【…やるじゃあねぇか。正直に言って、予想以上の力だ。】

 

「「「ッ!!」」」

 

 

巻き上がった砂埃の中から出て来たカイ。蹴りを入れられた箇所を抑えながら体にノイズが奔ってる事からかなりのダメージを負ったのだと見える。

 

【メダルの力と唄の力を合わせる、か。確かに従来のメダルの力より強力だが…如何せん、強すぎるのがネックか。】

 

「え?…ッ!!グゥッ!、アァアアァァァーーーッ!!!」

 

「ひ、響ッ!?」

 

突如ドライバーから流れる三色の電流が響を苦しめていく。やがて絶叫を上げながら響の纏っていたギアは強制的に解除され、地面に倒れ込んだ。

 

「も、もしかしてリバウンド!?」

 

【そうだ。メダルの力を引き出し過ぎてそうなった。まだまだ改善の余地あり、か…。

次やるまでにドライバーの改良とメダルの扱い方を体で覚えておけ。オレからの宿題だ。

期待してるぜ?立花 響。それとおチビちゃん。アイツの造ったドライバー、大事に弄れよ。】

 

「ッ!ま、待ってください!!アナタはキャロルと一体何を…!!」

 

【…フッ。また会おう。】

 

その言葉を最後にカイは体をデータ状に変えその場から姿を消していった。

 

嬉々と去って行ったカイと違い、残された戦地の跡と二枚のメダル、そして深まった謎だけしか、彼女達に得られなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ん~~ッ! ッ…ハァ…。」

 

カイは元の姿に戻り、一人河原の土手で寝転がっていた。

寝ながら背を伸ばす際に感じる痛み。それと同様に感じる昂揚感。青い空を眺めながら自然と浮かべる笑みは年相応の笑顔であった。

 

「ハハッ、イテェなぁ…ハハ」

 

 

「端から見れば可笑しなヤツの言動だな。」

 

「ん?……お。久しぶりだなぁ、どーよ、一人旅の進展は。」

 

「フン。まぁまぁだ。」

 

 

寝転がるカイの元に一人の少女が声を掛け隣に座って来る。全貌は全身を包むローブで隠しきっているがカイは少女の正体を知っているのか、気さくな感じで話しかける。

 

「嬉しいよ。ちゃんとオレの要望通りに造っておいてくれて。オレの苦労が無駄にならなくて済んだよ…忘れちまったけど。」

 

「一応そういう契約だったからな。この体と、焼却した思い出を提供する代わりに、自身を殺すアイテムを造ってくれなど…あの時は可笑しな契約を結んだと今でも思うよ。」

 

「でも損はしなかったろ?お互いに。」

 

「自分がやられる光景を見せられた時は非常に複雑だったが…こうして自分を見つめ直す機会が出来たのは…まぁ悪くない。」

 

「そ、なら良かった。」

 

「…なぁ。こんな事言うのは契約を結んだ身としてあれなんだが……お前人の身に戻りたいと思わないのか?

私の体と生まれてからの記憶を完全に再現したお前なら出来なくは無いと思う…なんならこの体の礼に、私も協力してや…。」

 

「無いね。うん。それは無い。」

 

少女からの提案をきっぱり断ったカイ。伸ばした手が空にある太陽と重なり顔に影が生まれる。

 

「前に言ったじゃん?時間が過ぎる毎に変わっていく体に、消えていく記憶。そして、人間の心。

今じゃあ百人殺しても平然と寝てられるのよ…嫌気が差して何度死のうとしても厄介な呪いが邪魔してきやがる…いずれこうして呑気に喋ってるオレがオレでなくなる。そうなっちまったらこの世はどうなっちまうか想像尽かんのよ。

…だから手っ取り早く、早くオレを…。」

 

「……。」

 

「…なんてね!

人間に戻るのものすっごくめんどくさそうだし、どうせなら面白おかしく楽しんでから消えるか、って!

…それでいいんだよ。オレは。」

 

「お前…。」

 

「さて、オレはそろそろ行くわ。お前も自分探し、見つかると良いな。」

 

「…そう、だな。」

 

「ハハ…じゃあな。」

 

カイはデータ状になってその場から姿を消していった。

 

残された少女は、風に吹かれながら不意に言葉を漏らした。

 

「…シンフォギア装者共。アイツの僅かな心を救ってやるのに、殺すのか、それ以外のやり方を取るのか…私は高見から見届けさせて貰うぞ。」

 

風が外したフードから揺れる金髪を靡かせながら、嘗ての敵、キャロルは空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 




※今話で変身した怪人

仮面ライダーアギトからロード(能力のみ)

・地のエル


仮面ライダーエグゼイドからバグスター(レベル測定不能)

・グレングラファイトバグスター

・バーニアバグスター

・カイデンバグスター

・アランブラバグスター
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