それぞれが目指していく終着点   作:卯月七日

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2018年残すとこ後一日となった投稿です!

来年もどうぞよろしくお願いします!!


異・形・回・想

 

 

 

 

 

 

「う~~~~ん……。」

 

カイは悩んでいた。

ビルの屋上に寝転び、両手に持つメダルを交互に見比べては唸っている。

 

「…………どれにすべきか。」

 

右手にはクワガタムシの衣装が彫られた緑のメダル。左手にはライオンの衣装が彫られた黄色のメダル。

 

誰も居ない屋上の一角で、カイは只々悩むに悩み時間だけが過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

S.O.N.G潜水艦内、トレーニングルーム

 

「うわあああ~~~ッ!?!?!?」

 

「響さん落ち着いて!!まずは足!足を止めて!!」

 

「そうは言ったって止まらない~~~ッ!!!」

 

「危ない!!そこで止まれ立花!」

 

「無理です翼さ~~ん!!───へぶッ!?」

 

最先端科学を用い艦内で街の風景を表した室内ではただっ広い屋外であるが故に室内の壁に激突した響が壁に張り付いた後、大の字で倒れた。

尽かさずギアを展開している奏者一同が目を回す響の元に集う。

 

「あぅ~~。お星さまがキラキラしてる~~…。」

 

「んなにやってんだよ、マンガ見てぇなぶつかり方しやがって!」

 

「だって~。」

 

「にしてもトンでもないスピードだったわね。ここの端から大分離れていたのに…。」

 

「やっぱスゲエよなぁ、コアメダルってヤツはよ…。」

 

一同は響の足、黄色く足の外側に噴出孔が着けられた彼女の足を。

 

今響はキャロルの作ったと思われるメダルの力を引き出すドライバーと、カイから新たに入手したメダルの性能を確かめるべく万全の状態でテストを行っている最中だった。

 

「あいたたた…チーターって言うから足が速い、て言うのは想像出来たけど、これじゃあむしろじゃじゃ馬だよ…。」

 

「でもこれを使いこなせたら、この中で一番の機動力になりますよ。」

 

「……。」

 

「あ、調が危機感感じてるデス…。それよりも響センパイ!早く次のメダルも試してみるデスよ!」

 

「分かった!えーっと、コレはトラのメダルと変えて、っと…。」

 

響は腰のドライバーからトラメダルを取り、変わりに緑のカマキリメダルを嵌め込み聖唄を唱えるとメダルが輝き、その姿を変えてった。

 

<< タカ! カマキリ! チーター! >>

 

光が収まると響の腕と胸部は緑色になり、腕部にはトラクローの代わりにカマキリの鎌を思わせるカマキリソードが着いていた。

 

「オォッ!緑の鎌デスよ!ワタシとお揃いデスよ!!」

 

「腕のメダルは着いている武器が変わるのかしら?…どんなカンジ?」

 

「う~ん…鎌として使うのならどうもイマイチ…これならトラの爪の方がまだ使いやすいです。」

 

「格闘が主流の立花からしたらもっともだが、斬撃武器が扱えるのならば越した事はない。私が最低限扱えるよう指導をしよう。」

 

「ワタシも鎌を扱う者として教えるデス!泥船に乗ったつもりでドーンと任せるデスよ!!」

 

「翼さん、切歌ちゃん…!よろしくお願いします!」

 

「オイオイ、あのバカに先輩要素が継げ込まれねぇか心配になってくんだけどよ?」

 

「まぁ大丈夫じゃねえの?むしろ翼が響相手にちゃんと教えられるかどうか…。」

 

「切ちゃんも同じくです、切ちゃん典型的な感覚派ですから…。」

 

トレーニングルームの一角で行われるレクチャーの一面を何処か不安そうに眺める奏者達。

 

 

 

そんなやり取りを別室のモニターで、弦十郎とエルフナインが見守っていた。

 

「カマキリか……蟷螂拳の出るカンフー映画を探しとくか。」

 

「やっぱり映画なんですね…。」

 

苦笑いを浮かべつつエルフナインはモニターに記されたドライバーの状態を確認する。

 

この前の戦闘でメダルの力によるリバウンドを抑えるべくメダルの出力を下げる様調整を施したドライバー。

ドライバー自体を設計し、製作したのは自身の親でもあるキャロルが作り出したメダルの力を引き出すドライバー、その性能は出力を抑えた今でも相当優れていると言うのがモニターの数値が表してくれている。

 

しかもメダルによって様々な能力を有しているのがチーターとカマキリを使って明らかになった今、ドライバーはカイと戦う上で必要不可欠なモノとなっていた。

 

「コアメダルか…まさか聖遺物でも無い、カイの所有していたモノが我々にとって唯一の対抗策になるとはな。」

 

「えぇ。今までのカイさんの記録を見た以上、イグナイトやエクスドライブでも通用するか分からない以上、彼の力の一部であったメダルを使うのが一番の有効策だと思いますし。」

 

「カイ…彼が初めてその力を見せたのが、セレナ君がネフィリムの暴走を抑えようとしたあの事件からか…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

F.I.S.による完全聖遺物【ネフィリム】の起動実験。

 

結果的に言えば、実験は失敗。暴走を起こすネフィリムを前に崩壊して行く研究所。このままでは人的被害も大きく出ようとした時、実験に参加していた当時の奏者、セレナ・カデンツァヴナ・イヴが絶唱による暴走の鎮火を行おうと決心した際、それは上から突如現れた。

 

 

 

ードォォオオオンッ!!ー

 

 

 

「ッ!?な、何ッ!?」

 

研究所の天井をぶち破って落下して来たソレにセレナは驚いた表情を隠しきれずにいた。

 

落ちて瓦礫の山となった所から動きが見れる。ネフィリムも含め、注意深く見ていると瓦礫の山から出て来たのは自身より少し年上であろう黒衣を身に着けた青年だった。

 

「ひ、人!?」

 

落ちてきた正体が予想外の答えなだけに面を喰らうセレナ。

 

当の落ちて来た青年は、頭を抑えながら研究室内を見渡している。その様子はまるで自分が置かれている状況が分からないという雰囲気を見せていた。

 

「ココは?……オレは一体……どうなって……?」

 

「あ、危ない!!」

 

酷く困惑している青年の背後から迫りくる巨腕。咄嗟にセレナが叫ぶも、青年は巨腕、ネフィリムの振るった一撃を喰らい、研究室内の壁まで吹っ飛ばされた。

 

その吹き飛びようから、とても命の保証は絶望的と言える位に。

 

「あ……そんな…。」

 

突然天井を突き破って落ちて来た謎の青年だとしても、目の前でネフィリムによって命を散らす様を見せられたセレナはあまりのショックに膝が崩れてしまう。

 

ネフィリムが次の得物といわんばかりにセレナに向けて近づいた、その時だった。

 

 

【…ァ……ゥァア…。】

 

 

「ッ!!」

 

先程青年が吹き飛ばされた所から微かに聞こえて来た声にセレナは伏せていた顔がバッと上がる。

 

まだ生きているのなら早く助けなければと思い立ち上がるが、ネフィリムがその行く手を阻む。

 

「退いて!早くあの人を助けないと…!」

 

ネフィリムの妨害を掻い潜ろうとアームドギアを展開するセレナ。いざ行かんと足に力を込め一歩を踏み出そうとした時、

 

 

【ァ…ァア゛ア゛ア゛アァアァアアアーーーーーッッッ!!!】

 

 

「ッ!?な、何!?何が起きたの!?」

 

 

突如虫の声程だった青年の声が、絶叫の声を研究室内に響かせる。

 

理解が追い付かず困惑するセレナ。そしてその原因がようやく形となって、セレナの目に飛び込んだ。

 

「ッ!!…な、なんなの……アレは……。」

 

セレナの目に入ったのは、先程吹き飛ばされた青年の姿では無かった。

 

全身が灰色の異形。先程より巨躯な身体つきになり、頭部から生えてる巨大な二本の角と両腕に籠手らしき形で着いた牙のついた龍の頭。

 

青年の変わり果てた異形の姿にセレナは言葉も出ず、呆然と見る事しか出来なかった。

 

 

【なんなんだよコレ…!一体何がどうなってんだよ!!】

 

自身の今の姿に理解が追いついていないのか、現実を受け止めきれず声を荒げる青年にネフィリムは標的をセレナから異形になった青年へと変えた。

 

一瞬で間合いを詰め、振り下ろされる巨腕。生身の人間が受けたら忽ち肉塊へ変り果てるそれを、青年は拳の押し潰される形で受けた。

 

確実に死んだと思われる一撃。だが地面目掛け振り下ろしたネフィリムの腕が次第に押しあがっていく。

 

叩き潰したと思われた青年が、ネフィリムの腕を掴み、押し上げているのだ。

 

【ァア───アアァアアァッ!アァアアアッッッ!!】

 

狼狽えていた筈の青年はネフィリムの一撃を喰らった所為か、突如凶暴な雄叫びを上げネフィリムの腕を弾いた。

 

バランスを崩したネフィリムの眼前に、跳び上がった青年の腕が振り下ろされ、自身より遥かに巨体のネフィリムが大きく殴り飛ばれた。

 

【ォォォオオオァアアアァアーーーッッッ!!!】

 

壁に激突するネフィリムに向かってその剛腕を立て続けに振り下ろす青年。殴った箇所から舞い散っていく灰が無機質な血が飛び散って行くように見え、セレナは思わず顔を逸らした。

 

【あのッ!あの野郎ッ!!オレの!!オレの体をッ!!!畜生ッ!チクショウッ!!ンアァアァアアアッッッ!!!】

 

殴りながら荒く叫びから、怒りが、憎しみが、そして嘆きの感情が籠められた叫びが、耳を塞いでも聞こえてしまうセレナの心を締め付けていった。

 

青年の暴走はネフィリムが活動を停止し白い繭の状態となっても殴る蹴るの行動を止める気配が無かった。

 

それが暫く続き、やっと冷静となったのか、青年はネフィリムに対しての攻撃を止め、異形から人の姿へと戻った。

 

「………。」

 

「あ、あの…。」

 

フラフラとした足取りで何処かへ向かおうとする青年をセレナは呼び止めるが、目は生気を感じず絶望し切った空気を漂わせる彼をセレナは駆ける声が見つからないまま、通り過ぎて行くのを許してしまう。

 

先程まで恐ろしい異形となりネフィリムを圧倒したとは思えない程、彼の背中はとても小さく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──その後は各地で異能者と戦闘している場面が目撃されながら行方を晦まし、次に公の場に姿を見せたのが…。」

 

「ツヴァイウィングのライブ…あの大災害とも言える日ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

「──生きるのを諦めるな!」

 

天羽 奏は後悔した。

 

自身にもっと力があれば今腕に抱いている少女を命の危機に立たせる事無く上手く逃がせられたと言う後悔の念に捕らわれていた。

 

辺り一面瓦礫の山と憎き災害が奪って行った命の燃えカスとも言える灰を見て奏は決意した。衰弱し弱り切った命を代償とする、禁断の唄を歌う決心を。

 

(翼…ゴメンな。)

 

 

 

 

「あいたッ。」

 

「?……ッ!?」

 

決意を決めた奏の背後から何処か間抜けな声が入って来たのに対し後ろ振り向くと、先程まで自分のいた傷ついたた少女の傍に腰を擦ってる黒衣の男が突然いた。

 

(な、何だコイツ?ライブの客か?でももうこの辺の避難は終わってる筈だぞ…?)

 

「イテテ、また開けるトコ間違えちったよ、今度は何処繋いじゃ……何このカオス?世紀末?」

 

「お、おい!何呑気な事言ってんだ!?兎にも角にも早く逃げろ!!」

 

「ん?……何そのカッコ?え、ちょっと待って、ココ地球だよね?間違って別の星に来ちゃたとかそういうのじゃないよね?」

 

「はぁ!?何言ってんだよオメェ!?いいから早く逃げろって───ッ!!」

 

黒衣の男の言う陳腐な発言に気を取られてしまった所為か、背後から間近で迫って来るノイズの不意打ちに気付くのが遅れてしまった。

 

迎え撃つ為に槍を振るおうとするも、最早武器すらまともに触れない体の所為か手からスルッと抜け落ちてしまった。

 

(ッ!ヤベェこのままじゃあの二人も…!)

 

 

 

ーバンッ!ー

 

 

「……え。」

 

咄嗟に身を乗り出して庇おうと考えていた奏であったが、自分を襲いかかろうとしたしたノイズが一瞬の内に消えてしまった事に、理解が追い付かず呆然と立ち尽くしていた。

 

 

「なになに、今度は珍生物?しかもきっもち悪~。」

 

その声で自身の顔を横から突き出された手が出ている事に気付く奏。手の主である黒衣の男は辺りをキョロキョロと見渡すと、ノイズが人を灰に変えた瞬間を見た。

 

「へぇ、あんなのが居んだ。こりゃ害悪以外の何物でも無い、ね。」

 

 

ーギュイィィィィィィインー

 

「なッ!?」

 

男が手を空へ向けて伸ばした瞬間、何も無い空間からチャックのジッパーが幾つも開きだし、しかも開いたジッパーからノイズとはまた別の灰色のダンゴ虫の様な生物インベスが何体も出現、ゾロゾロと男の元に集まっていく。

 

「な、なんだよコイツ等!?新手のノイズか!?」

 

「違うよ?て言うかノイズってんだあの珍生物…んじゃ取り敢えず、あのノイズっての全部片付けちゃって。」

 

 

【【【【【ギャァァッ!!!】】】】】

 

男から告げられた命令を守りインベス達はノイズに向かって攻撃して行く。空を飛んでいるタイプも背中に虫の様な羽を開いて空を飛びノイズを瞬く間に鎮圧して行く。

 

ノイズに触れても灰にならず、寧ろノイズの方が灰となって散っていく様を見て奏は戦慄する。時間が経てば自然と消えていくノイズとは違い明らかに実体のインベスを見てノイズ以外にもこのような生物が居たと言う現実に。

 

だがそれよりも恐れを抱かせるのは、そのインベスを呼び出し従わせているこの黒衣の男の正体。奏は思わず、男の正体を問いてしまう。

 

「あ…アンタ、一体…何者なんだ?」

 

「ん?……化物。」

 

「………。」

 

あっさりと告げられる正体に掛ける言葉が出て来ない奏であったが、ドームの外から現れた巨人と見間違う大型ノイズが空を飛ぶインベスを叩き落としていた。

 

「まだあんなのがいるのか…!」

 

「うわー、あれもう怪獣ってレベルじゃん……どれ。」

 

「ッ!オイッ!!──ッ!?」

 

黒衣の男はドーム内に入って来た大型ノイズに向かってゆっくりと歩いて行くのを止めようとしたが、突如男の体が光と共に蔦に包み込まれるとその姿は先程のと大きく変わっていた。

 

頭部から二本の角を生やし赤いマントを腰に掛けた真紅の異形は、大型ノイズにある程度近づくとその場から大きく跳躍。あっと言う間に大型ノイズの眼前にまで迫ると、拳を力強く握り締めた。

 

【フンッ!!】

 

振るわれた一撃を喰らった大型ノイズは瞬く間に灰となって散っていった。

 

地面へと降り立った真紅の異形は元の姿であろう男の姿に戻り、インベス達がドーム内のノイズをすべて倒したのを見るともう一度空に手を翳し、空に巨大なジッパーを開けた。

 

「ハイお疲れ。もう戻っていいよー。」

 

男が気さくに軽く言うと、インベス達は羽を生やしジッパーの中へ入っていった。

全てのインベスがジッパーに入ってくのを見届けた男は、ジッパーを閉じると突如首元に刃を突きつけられる。

 

「ん?」

 

「動かないで。色々と聞きたい事があるのだけども、応えて貰えるかしら?」

 

「翼!」

 

「ん~?また変なカッコのが居たよ、何ソレ?流行ってるの?」

 

「はぐらかさないで!変な行動を取ると、実力を行使させて貰うわよ!」

 

「物騒だなぁ。一々こんなモン突きつけなくとも、”ベキッ”あ。」

 

「ッ!!」

 

男は突きつけられた刃を指で掴んだ途端、刀身が薄いベニヤ板のような軽い音を立てて真っ二つに折れてしまった。

 

「せ、聖遺物が…。」

 

「えっと…ゴメン、こんなあっさり壊れるとは…いや本当に。」

 

「ハハ…もう何が何だが……ッ、ゴフッ…!」

 

「ッ!か…奏ェ!!」

 

理解が追い付かない場面を見過ぎた所為で最早乾いた笑い声しか出ない奏であったが、突然膝を着いて吐血し翼が折れた刀を捨ててすぐさま駆け付ける。

 

「奏!奏しっかりして!!」

 

「だ、ダーイジョブだって、ちょっと飛ばしすぎただけだって…。」

 

「うっわ。何その体、中身ボロボロじゃん、よくそんなんで生きていられるね…。」

 

「ッ!」

 

「お前…ッ!」

 

「え、なにコレ言っちゃいけなかったの?だって何時死んだって可笑しくないからアンタの体。」

 

「そんな事も分かっちまうのかよ……。なぁ、アンタなんて名前だ?」

 

「無いよ。あったけど忘れちまった。」

 

「何だよソレ…まぁいいや。

…頼む、この通りだ!お前のその凄い力でよ、私の代わりにノイズから人間を守ってくれないか!」

 

「え、ヤダよ。バケモノのオレに何頼みこんでんの?バカなの?」

 

「ッ!…き、貴様ァ!!奏の思いを…!!」

 

「止めろ翼!ここでコイツに刃向っちゃあダメだ、まず絶対に勝てない。」

 

「でも!」

 

「…頼むよ翼。」

 

「奏…。」

 

「…悪いな。

ご覧の通りさ、私の大事な相棒を一人残すのはまだ心許ないんだよ。」

 

「だから面倒を見てくれって?」

 

「それもある。それと、出来るだけノイズから人間を助けて欲しいんだ。」

 

「一番理解出来ないね。何で化物のオレが見ず知らずの人間を助けなきゃいけない?

客観的に見て今の人間もかなり酷いよ。むしろこのまま手を出さずとも勝手に滅ぶんじゃないかって思う位に。」

 

「…かもしれないな。でも私はそれでも信じたい。誰かの命を助ける事が、間違っていないって…少なくとも私みたいな復讐に呑まれた人間が出て来ない様に、さ…。」

 

「奏…。」

 

「……ふ~ん。感動的だ、良いセリフだね……

 

 

 

 

 

 

でもやっぱオレには無意味だな。」

 

「ッ……どうしても、ダメなのかよ…ッ。」

 

「うん。だってやりたくないし……だからさ。」

 

男は絶望に堕ちる奏の前にまで近づき目線を合わせると、奏の胸に自身の手を当てた。

 

胸に当てられた男の手から、金色に輝く光が奏を包み込む。

 

「奏!?キサマ奏に何を…!」

 

「黙って見てなよ。失敗しちゃうでしょうが、オレだってコレ初めてやるんだから。」

 

「何だこの光……あったけぇ。」

 

奏を包む光が収まると、奏では信じられないと言った表情で立ち上がり、体のあちこちを確認して具合を確かめた。

 

「か、奏?大丈夫なの?」

 

「あぁ…全然苦しくない。むしろ凄く調子が良くなってる!」

 

「そんだけ元気があれば、オレに頼まなくても色々出来るでしょ?」

 

「お前、まさか私の体を…。」

 

「そういう事。じゃオレはこの辺で。」

 

「ぁ…オイ待てよ!結局お前は何モンだっての!」

 

「あぁ、名前はそのうち考えとくから、そん時教えるよ。」

 

「違う!いや、そうでもないけど…って待てって!」

 

男は自身の前にジッパーを開き、中へ入るとジッパーが閉じその場から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───カイさんはLINKERで蝕まれていた奏さんの体を治しただけでなく、奏さんをLINKER無しの適合者にするという異例を引き起こして…。」

 

「これを機に彼は目を付けられるようになった。

良子君…フィーネとF.I.SのDr.ウェルに…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガッ!?───ガハッ!!」

 

雪音 クリスは理不尽とも言える一方的な暴力に見舞われていた。

 

完全聖遺物たるネフシュタンの鎧を纏った彼女に敵う敵は居ないと言って良い位完全聖遺物の力は強大な代物。それ故に今自分がピンポールの玉のように地面に落ちずに吹き飛ばされているこの状況はクリスにとって理解出来ずにいた。

 

地面に転がる頃には、ボロボロになったネフシュタンが修復を始めるがクリスのダメージを負った体は早々すぐに回復出来ない。

痛みで蹲るクリスの目の前に、自身をこんな目に遭わせたであろう張本人が姿を現した。捕まえて来るように言われた鈍い銀色のサソリの怪人を。

 

「テ、テメエ…さっきからアタシに、なにを…!!」

 

【別に?ただ痛ぶってるだけ。

完全聖遺物やらねふなんちゃらとか言われてアレだったけど、クロックアップには追い付けないんだ。】

 

「くろっくあっぷ?…なんだよソレはぁ!」

 

【知りたい?じゃあもう一度…──ッ!】

 

「ッ!また消え──ッ、ガアァッ!?」

 

サソリの怪人がクリスの前から消えた次の瞬間またもクリスの体が宙を跳ね回るかのように吹き飛ばされていく。

二度目というのもあって自然と考える余地が出来たのか、鎧越しに感じる強い衝撃からサソリの怪人が自分に何をしているのか、その正体が分かった。

 

(そうか!こいつトンでもねェ速さでアタシを嬲ってやがんだ!目にも見えねえ位の速さで…!

こんなヤツどうやって捕まえろってんだよ!!)

 

痛みに耐えながら内心サソリの怪人を連れて来るように言ってきた主に対し悪態を吐くなか二度目のクロックアップが終わりクリスは地面に倒れる。

二度目と合って起き上がって来るのに時間が掛かっているクリスに対し、サソリの怪人は表情こそ読み取れないが、肩を落とす様は失望しているかのように見えた。

 

【……ハァ、つまんない。】

 

サソリの怪人は倒れたクリスに近づく事無く背を向ける。お前など眼中に無い、と、体現しているかのように。

 

「ま、待ちやがれ…!」

 

【じゃ、バイバーイ。】

 

サソリの怪人は手を振るとクロックアップで姿を消した。

 

残されたクリスは一人、何も出来ずにただ嬲られた事に地面に拳を打ち付けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ハァ…いきなり囲んで襲い掛かって来てこんな有り様とか…何しに来たの?キミ達。】

 

荒れに荒れた土地の一角。崩れて山となった瓦礫に腰を掛け赤い大剣を肩に担いだ不死鳥の怪人はボロボロで纏っているギアが焼け焦げたマリア、セレナ、調、切歌を前に、心底つまらなそうにしていた。

 

彼女達は元々カイとやり合う気など無かった。過程はどうあれカイの行動でネフィリムの暴走による人的被害が最少で済んだし、セレナに至っては去り際に見せたあの時の表情が頭にチラついてカイと戦う所では無かったのだ。

 

【期待は出来そうに無いか…もう行って良い?】

 

「ま、待ってください!あの!……私の事、覚えてますか?」

 

【?……誰?】

 

「ッ!!」

 

【?……まぁいいや。】

 

背中から炎を纏った翼を広げ不死鳥の怪人は空に飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だがやはり彼を規格外だと思い知らされたのは…。」

 

「パヴァリア光明結社の一件…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

響が神の力によって取り込まれS.O.N.Gに一時的に協力したサンジェルマンの情報提供も合って無事作戦は成功し解決したかと思われた矢先神の力の暴走を恐れ日本に向けて反応兵器が撃たれたとの情報が入り場は騒然となった。

 

「司令!反応兵器日本空域に突入!!もうすぐ目視出来る距離まで来ます!!」

 

「クソォ!!どうにか現場の奏者達や作業員達の避難は出来ないのか!?」

 

「無理です!!着弾後の爆発の規模から、どんなに速く動いても巻き込まれます!!」

 

「皆さん!!」

 

S.O.N.G内でもこの事態に手も足も出せず、ただ反応兵器の位置を追っていくしか出来ない事に歯がゆい思いをしていた。

 

「反応兵器まもなく着弾コースに…ッ!?し、司令!!」

 

「どうしたぁ!!今度は一体何が起こった!?」

 

「は、反応兵器が……突然消えました…。」

 

「ッ!?な、なんだとぉ!?どういう事だ!!着弾する前に爆発したのか!?」

 

「いえ、誤爆による消失ではありません!!現場作業員からの連絡では、忽然と消えたと!」

 

「馬鹿な!!都市一つ灰に変える反応兵器をどうやって、いや、それ以前に誰が…!」

 

「…ッ!まさか、あの人が…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何が起こったんだよ…?」

 

現場に居た奏が皆の心境を語る様に呟いた。

 

此方に向かって落ちて来た反応兵器が突然塵となって消えていった光景を前に誰もが唖然と空を見上げていた。

これまで非常識な出来事に見舞われてちょっとやそっとじゃ動揺しないと高をくくっていたが流石の彼女達も目の前の出来事だけは全てを呑み込むのに時間がかかった。

 

そして全員の脳裏にある男の顔が遮る。

 

 

 

「ホンット人間ってシラケる事しかしないよねぇ…。」

 

 

「ッ!あの野郎…!」

 

「やっぱりあの男の仕業だったか…!!」

 

不意に聞こえた声に一同は一斉に首を向けると、そこには瓦礫の山に腰掛けた黒衣の男、カイが足をブラブラと振りながら機嫌悪そうにしていた。

 

「見世物にしては中々楽しめたなぁって思った矢先につまらない横槍とか…流石にカチンと来ちゃったよ。」

 

「アレが人ならざるモノの力…。」

 

カイに視線が集まるなかで初めてカイを目にしたサンジェルマンが呟く。パヴァリアの中でも話にあがっていた人ならざるモノ、怪人が引き起こしたこれまでの偉業。

 

自身が命と引き換えに対処しようとした反応兵器を消し去ったカイに何とも言えない畏怖を感じるが、そんなカイの頭上に火と氷と風と琥珀が襲いかかっていた。

 

「ん?」

 

カイが気付いた時にはもう遅く、カイの座って居た瓦礫は忽ち激しい音と光によって崩れ跡形も無く消滅した。

 

「ッ!アダム・ヴァイスハウプト!!」

 

「やぁサンジェルマン。少し見ない間にシンフォギア奏者達と仲良くなったみたいで、不完全な者同士良くお似合いだよ。」

 

倒壊しているビルの上に乗った隻腕の男、アダムの登場に全員は武器を構える。

 

「テメエ何のつもりだ!どうしてあの野郎を攻撃しやがった!!」

 

「なに、前々から気に掛けていたイレギュラーな存在を念の為に消しといただけさ。左腕も使える駒も手元にないものだからね。

さて。ティキがもう使えない以上、代用をこの腕に…「へぇー、機械人間だ。やっぱそういうのもいるんだねぇ。」…ッ!?」

 

後ろから突然聞こえた声にアダムは反射的に距離を取った。

 

背後には先程不意打ちで消した筈のカイが胡坐をかいてアダムの腕の切断面をマジマジと眺めていた。

 

「びっくりした?」

 

「…貴様、どうやって私の後ろに?」

 

「ん~?さぁどうしてでしょうか?」

 

「ッ…化け物め。完全な存在であるこの私をコケにする気か…ッ!」

 

「へえ、完全な存在…そりゃ凄い凄い!」

 

「ッ~!どうやったかと聞いてるんだこの化け物めが!!」

 

何処か小馬鹿にしたカイの態度に癇に障ったのか感情的になるアダムを見て、カイは冷めた目で見返した。

 

「フゥ……そんなかっかするなよ完全さん。

たったこんだけの芸当如きでびっくりしたり癇癪起こすなよ……完全だって言うならそれらしい態度取れよ、木偶人形。」

 

「貴ッ様ぁァァッ!!!」

 

アダムが四つの魔方陣らしきモノを展開して最大出力で放とうとした。

 

 

「ハァ…。」

 

カイはつまらなそうに右手をアダムに向けた。

 

するとアダムの体が突然燃え出した。

 

「ッ!?ガアァァッ!?ウガアァァァアァアッ!!!ご、ごれ゛ばぁ゛ッ、発火現象!?」

 

「何だよ意外に頑丈だな。…ん。」

 

全身が燃え盛りながらもアダムの健在な様子を見てカイは人差し指を上に向けた。

 

すると先程までの空と様子が一変変わり、暗雲が立ち込めた黒い空となった。

 

「こ、これは…!?雷雲?」

 

「まさか彼は、天候すらも操れると言うのか…!?」

 

下に居る奏者達とサンジェルマンが雷が鳴る雲の登場に驚愕するなか、最早人の姿すらも見て取れない黒焦げの状態で尚も見えたカイの姿に目を離せなかった。

 

 

胡坐を搔いた格好でもその存在感を衰えさせない圧倒的威圧感を放った規格外の存在。

白い体に煌びやかな装飾を身に着けた王者と呼ぶべき者が上に向けてた指を下に向けた瞬間、身を燃やす炎よりも強烈な一撃が天から降って来た。

 

地面に打ち付けられたアダムを見てカイは「よっこらしょ。」と言いながら立った。

 

「じゃあ後は任せるんで、じゃ。」

 

騒然とした場の空気に合わない位あっさりと去ったカイ。暫くした後、雷を受けて尚異形の姿となったアダムにシンフォギア奏者達は総出で相手取ることになったのは、この時は誰も気付いてなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──…そしてカイは我々の敵となった。それも何故か響くんに執着して。」

 

「…もしかしてカイさんは響さんのアレを知って…?」

 

「うむ。それは今の段階ではまだ何とも言えん……元人間のカイ。彼の目的さえ知れれば、何か解決の術を知れるか…。」

 

 

 

 

 

 

「いいですか響サン!鎌はこうスパーン!とやって、両手ならスパパパーン!!デス!!」

 

「それでは伝わらんぞ暁。良いか立花、鎌と言えど斬る武器だ。己を剣と思って振るってみるんだ!」

 

「えーっと……分かりました!!」

 

「オイ。誰かまともなコーチ呼んで来いよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~~~~~ん…悩むなぁ。」

 

カイの悩みは陽が落ちた夜になっても未だ決まらずにいた。

 

「う~~~ん、それともやっぱコンボは止めといた方が……誰?」

 

誰も居ない虚空に向かって声を掛けるカイ。

 

すると誰も居なかった筈の所から色が付いたようにその姿を見せる三つの人影が。

 

「あーら見つかっちゃった♪完璧に姿消してた筈なのに。」

 

「これしきの術では意味が無かったと言うワケだ。」

 

「…イヤだから誰よ?」

 

「え~~?ヒッドーイ!こ~んないい女三人を忘れるなんて!!」

 

「仕方ない事よカリオストロ。聞いた所では彼は時間が経つ度に記憶を失うという性を抱えてる。

突然の来訪申し訳ない。私はサンジェルマン。過去、貴方の気まぐれに命を拾われた者だ。」

 

「あーしはカリオストロ。よろしくねん♪」

 

「プレラーティなワケだ。」

 

「…あっそ。で、何しに来たの?」

 

「今回の貴方の元に来たのは、命を拾われた事に関する礼と…貴方に一つ質問したい事がある。」

 

「なに?」

 

「あーし達今ワケあってもと居た組織に追われてる身なんだけどぉ。」

 

「これまで放たれた刺客はどれも小物だったから楽に片付けられたが……連中最近になって妙なモノを使い始めたワケだ。」

 

「妙なモノ?」

 

「貴方に質問したいのはソレに関する事なんだ。知らないだろうか?…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間を怪物に変える赤いスイッチの事を。」

 

「ッ……スイッチ、かぁ…。」

 

 

カイはサンジェルマンの話しを聞き、険しい顔で闇一色なった夜空を見上げた。

 

 

「…チッ、また余計な事しやがって。」

 

カイの目には、夜空に怪しく光る星座が鼓動の様に光って見えた。

 

 

 





※今話で出た怪人

仮面ライダーファイズからオルフェノク

・ドラゴンオルフェノク


仮面ライダー鎧武からインベス

・初級インベス(召喚)

・ロードバロン

仮面ライダーカブトからワーム

・スコーピオンワーム


仮面ライダーウィザードからファントム

・フェニックス


仮面ライダークウガからグロンギ

・???

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